小説 介護される日々 -7ページ目

小説 介護される日々

介護される 介護する 寄り添う気持ちとともに。

入院して三日目。

母さんが本を持ってくるはずだが、なかなか来ない。

娘と一緒かどうかわからないが、

いつも来る時間になってもまだ来ない。


病室で待っていられなくなって

エレベーターの前まで行って待っていたら

やっと二人が来た。


「遅い!心配するじゃないか!」と思わず言ってしまった。

母さんは今日クリニックの日だったとかで

そこから来たから時間かかったと娘に言われた。


「お母さんだって疲れているんだから。

 怒ったりしたら可哀想だよ。」と。

それもそうだ。

だが、こちらだって病人なんだから。


娘がナースステーションに退院のめどなどを聞きに行った。

もう重湯からおかゆになったし、

ゼリーなども食べているから、もうじき退院だろう、きっと。


娘が病室に帰ってくるなり

「お父さん、看護師さんと喧嘩したってほんとなの?」と言う。

そんなことあったか。


「昨日の夜、看護師さんに

 『もう重湯になったんだから、点滴なんていらない!とってくれ!』

と困らせたらしいじゃない。

ナースステーションで言われたわよ。」


そんなこと言ったか。


「でも最後に謝ってくださいましたからって言ってた。

 悪く思わないでくれって言ったんだって?

 看護師さんも気の毒に。」


点滴を毎日毎日。うっとうしいんだよ。

病人の気持ちにもなってみろ。




救急車で病院に来た。


医者が来て診察したところ、すぐ病院へ行った方が良いという。

娘に連絡したが、急いで来ても1時間半かかるというので、

医者が救急車を呼んだのだ。


母さんがあたふたと支度して、

一緒に救急車に乗り込んだ。

医者と一緒に来た看護師は

自分の車でついて来てくれた。


病院で検査している時に娘が来た。

娘の顔を見たらほっとした。

母さんも安心したようだ。


腸閉塞という診断が出て入院となった。

絶食して安静ということだ。

痛み止めが効いてやっと落ち着いた。


明日、新聞と本を持ってくるように娘に言って

母さんを送っていってもらった。


以前も入院したらしい。

この部屋だったか。

担当の医者は前と同じだという。

そういえば見た事ある気がする。


ここのところ腹痛でゆっくり寝られなかったが、

今日は寝られそうだ。

入院もしょうがない。

しばらくはおとなしくしていなければ。




昨日今日と体調があまり良くない。

腹痛が治らない。


昨日医者が来た時には

「先々週よりお腹の調子は良さそうですね。」

と言っていたが。


電話して今日も来てもらおう。

痛み止めの注射をしてもらわないと眠れない。


水分をとって暖かくしていろ、と言われたが、

それでも治らない。


手帳を見ると、二カ月前に入院したとある。

腸閉塞だったようだ。

再発したのか。


この年で入院はきつい。

検査も絶食も大変だ。体力がもたん。

早く医者を呼んで痛み止めだ。


母さんはのんきにいつもどおり食事の支度をしている。

食べないと言っただろうに。

それどころではないんだ。

まったくなぜわからないんだ。

早く医者に電話しろ。


しょうがない自分で電話して訴えよう。

入院だけは避けなくては。


母さんがクリニックへ通うことになった。

ひとつ向うの駅にあるという。

一人では行けそうもないので、

娘が一緒に行ってくれるそうだ。


訪問診療に来ている医者のところだというので、

「薬は毎回早く出してくれるように言ってくれ。」と言っておいた。


母さんは朝から支度して娘を待っていた。


娘が迎えに来て出かける時に

「昼過ぎるかもしれないけど。」と言っていた。

私の昼ごはんは用意してあったので、

「ゆっくししてくればいい。」と送りだした。


二人が帰ってきたのは昼ちょっと過ぎだった。


「昨日、看護師さん呼んだんだって?

 なんで言ってくれなかったの?」と

娘が帰ってくるなり言う。


そうだったかな。

なぜ呼んだんだろう。

薬がなかったからかな。

まあ大したことではないのだろう。


今日は薬もあるし、腹痛もないので大丈夫だ。


母さんは認知症検査もしたという。

娘曰く「同居は出来ないのか?と言われた。」という事だが、

母さんも私も二人の生活以外は考えられない。

たとえ娘でも、もう何十年も離れて暮らしていれば気も使うし、気がねだ。

医者にそんな事言われる筋合いもない。


今日が穏やかに過ごせるためには

二人でずっとやってきた暮らしをすることなんだ。

それしか考えられない。



薬がまだ医者から届かない。

娘が来たので、聞いたところ

医者から薬局へ処方箋が連絡され、明日届けに来るという。


本当に来るかどうか心配だ。


とにかく薬がなくなると困るので、

前の医者からもらった薬をとっておいた。

いや、かなり前の医者が出した薬か、これは。

まだ電車に乗れてた頃、以前の勤め先の近所の医者だったな。

何年前か。


と、そこへ娘が部屋に来て

「古い薬は捨てないと。」と言ってまとめだした。


驚いて

「これは必要な薬だから捨てないでとっておく。」と

やめさせたが、

「明日ちゃんと二週間の薬を持って来てくれるから

 大丈夫だから。

 古い薬は間違えて飲んだらいけないから処分した方がいい。」

となんとか捨てようとしている。


とにかく部屋から出て行かせた。

「ダメだ。薬はとっておく。絶対捨てるな。」


娘は「わかりました。」としぶしぶ帰って行った。

薬がなくなる不安がわからないのか、まったく。


しかし食堂の棚に保管してあった薬がなくなっている。

確かにここにあったはずだ。


娘に電話した。

「薬持って行ったのか!捨てるなと言っただろう!」

「持って行ってないよ。

 まだ他にも薬があったの?」

そうか。薬は全部部屋に持って行ったんだったか。

いや、確かに。。。

「もういい!もうどうでもいい!」

と電話を切った。