小説 介護される日々 -11ページ目

小説 介護される日々

介護される 介護する 寄り添う気持ちとともに。

突然、理学療法士というのが来た。

これから毎週来てリハビリをするという。


寝耳に水の話だ。


ケアプラザの人も来た。会ったことがある人だ。


おまけに若いのが何人もくっついて来た。

実習生とか言っていたが、

まったくおおげさに大勢で来て、どういうつもりだ。


人のうちをなんだと思ってる。


リハビリなんて必要ない。

そういうのは嫌だと言ったはずだ。

全員さっさと帰ってもらった。


娘にも電話して、一切必要ないと言っておこう。

あの連中はすぐ娘に連絡するから、面倒なことになる。

娘だって忙しいんだ。

私のことは私に全部言ってくれれば良いのに。


娘に電話した。

当分来なくていいから、と言ったが、

何故か困った様子で「来週月曜日に行きますから。」という返事をした。



この前、娘が来たときに

母さんには聞こえないように私に言った。


冷蔵庫の古くなっていたモヤシとカビのはえたショウガを捨てた、と。

「お母さんの様子、少し注意してみてね。」などと言う。


母さんは以前と変わらず買い物も行っているし、

食事もちゃんと用意しているんだから大丈夫だ、と答えた。

たまには冷蔵庫のすみに忘れたモノが転がっていることくらいあるだろう。


今日も娘は母さんと待ち合わせて買い物をして帰ってきた。

そうか、私の誕生日か。


「もう66歳になった。母さんは7歳下だから59歳。」と言うと

娘が

「何言ってんの。86歳でしょう。」と真面目な顔つきで反論した。


そうだったかな。

もうそんな年か。

まあいくつでもいい。毎日の生活には関係ないんだし。


娘と母さんと3人で昔の話をした。

そうそう木造の社宅に住んでいた時もあった。

あのあたりは今はどうなっているだろうか。

会社の上司も同じ社宅で娘をかわいがったくれたもんだった。

あの人もどうしているか、元気だろうか。







介護保険というのが決まったと娘から連絡があった。

介護度の段階があるのだという。


母さんも私も要支援1というレベルだそうだ。

ほとんど何も助けはいらない、ということなんだろう。


往診だけ来てもらって薬を出してもらえればそれでいい。


だがどうしてもリハビリをしないとダメだと医者から娘に電話があったという。

歩けなくなってからでは遅いと。


娘がサッサと医者から紹介された訪問リハビリに連絡して

来てもらうことにしたという。

まったく本人の意思は無視か。


娘は廊下に手すりをつける算段もしているらしい。

必要ないと言っているのに。


今日はケアプラザの担当が来るというから待っているのに来ない。

まったくどうなっているんだ。

ケアプラザに電話したら、「さきほど午前中に伺いましたよ。ね?」と言われた。

そうだったか?

まあいいや。来たならそれで。


そういえば保険証が探してもない。

誰かが持って行ったに違いない。


人がたくさん出入りするとこういう事が起こるんだ。

だから嫌だと言っているだ。


なんでこんなことになったんだ。

普通に二人で暮らしていたのに。

いつのまにか毎日暑い日が続く季節になっている。


今日ははじめて医者が来る日だ。


まず娘が来て、そのあとケアプラザの人という女性が来た。

以前も来たというが、覚えていない。


そのあと、女性の医者と看護師が来た。

脈や目の様子を見て、足も動かしてみたりした。

何も言わないので、どうなんだかわからない。


娘が「整形外科に行った方が良いでしょうか?」と聞くと

「循環系の問題だから、行く必要はないです。」と言われた。

「それよりもリハビリをやった方が良いです。

 リハビリ施設に通うか、訪問リハに来てもらうか、ですね。」

と進められた。


せっかく医者が来ているのだから

母さんも診てもらったらいい、と言うと、

自分で外出できるので、それは出来ない、と言われた。


ひとり診るのも、ふたり診るのも同じじゃないかと思うのに。


医者が帰ったあと、娘とケアプラザの人で

リハビリの施設の話をしていたので、

「そういうのは好かん。」と言った。

そんなことやったって無駄だ。

足があがりにくかったり、痛かったりするのは薬飲まないと治らない。

あがらないものを無理にあげたりする運動なんてできるわけがない。


家にこれ以上、人が来るのも嫌なんだ。


うちは二人で静かに暮らしているだから。




往診の医者はまだ決まらないらしい。


地域ケアプラザというところに電話したら、

まだ調整中だと言う。

「娘さんが書類を出したり面談したりしているはずです。」

と言われたが、患者本人に会わないで、なんで娘なんだ。


娘に電話する。

「往診の医者はまだか。」と聞くと

「この地域の訪問診療のクリニックに

 面談に行って、今までの薬や診断の書類も出してきたから。」

と勝手に進めているという。


「なんだ、それは。わけがわからない。」

「なんでそんなことになってるんだ。」

と言ったが、

今は往診はしてないから、そういう制度を使うんだとか。


面倒なことばかりだ。


翌日娘から連絡があり

来週医者が来ることになったという。

その医者に頼むことになるかどうかは

来てみないとわからん、と答えた。

まずは来た医者を見て、こちらが決めることだ。