小説 介護される日々 -10ページ目

小説 介護される日々

介護される 介護する 寄り添う気持ちとともに。

今日は担当の医者が私の病状について説明するという。

そのために娘と母さんは早めに病院へ来た。


医者も忙しいのか、約束の時間になってもなかなか病室へ来ない。


娘に言った。

「自分のことなんだから、私が聞いておく。

 もういいよ。帰って。」

娘は「私が希望したんだから、そうもいかないよ。」と言って

帰ろうとしない。


看護師が「先生もう少しかかるので、お待ちください。」と言いに来る。


医者は忙しいんだ。

家族に説明する時間なんて、とれないもんなんだよ。

こんなこと必要ないんだ、自分で状態聞けばいいんだから。

娘や妻に何がわかる。


「こういうイライラして待つ時間がイヤなんだ!帰れ!

 こんなこと病気に良いわけないじゃないか!

 病人をいたわれ!」と娘と母さんに向かって怒鳴っていた。


最悪の雰囲気になった時に「お待たせしました。」と医者が来た。


「すみませんね。先生。お忙しいのに、こんなことお願いするから。

 もう大丈夫ですよ。私から言っておきますから。」と医者に言うと

「いや、ご家族にはキチンと説明する必要がありますから。」と言われた。


今回は手術はしないが、今度腸閉塞になったら手術を考えた方が良いと言われる。

なんだって?この年で、手術?

そんなの無理に決まっているだろう。

まあいい、もうすぐ退院してしまえば、なんてことない。


食べ物や薬にも注意点をいろいろ指摘された。

お酒は飲めますかね?と聞くと、まあいいんじゃないですか、とのこと。

安心した。

やれやれ。





昨日はやっと重湯が出て、今日は3分がゆだった。

CT検査もしたので、疲れた。


娘と母さんは午後から来た。

担当の医者がちょうど通りかかった時に

娘が「父の状態の説明をお聞きしたいのですが」と言いだした。


医者はじゃあ来週月曜日に時間とりましょう、と言って

戻って行った。


自分の具合は自分で聞くから、そんな必要はないんだ。

子どもじゃあるまいし。

私はすごく色々なことを考えて、準備して、それから医者に質問するようにしているんだ。

それをなんで、急に勝手に医者に聞こうとか言い出すんだ。


娘に「余計なことするな!」と強く言うと

「お父さんの気持ちはもちろん優先するけど、 

 家族は家族として情報が欲しいし、考えたいと思うのは当然でしょう。」

と母さんを見ながら言っていた。


以前入院した時には自分で聞いて自分で決めて

それで誰にも迷惑かけなかったじゃないか。


今回だって同じだ。

病気したって頭はしっかりしている。

食べられるようになれば退院だ。

普通の生活にすぐ戻れるんだ。

入院中、毎日母さんが来てくれる。

娘もだいたい一緒に来ている。


有難いと思っているのだが、

イライラしてつい乱暴な対応になってしまうことが多い。


今日も薬を持って来いと言ったら

ありったけ持って来たので

「こんなにいらない!一回分でいいんだ!」と怒鳴ってしまった。


母さんは何も言い返さなかったが、

娘があきれたように「先生が全部持ってきてくださいって言ってたんだよ。」

と私に言った。


それならそうと言えばいいのに、

母さんは黙って布団をなおしたり、看護師の様子を立ち上がって見たり

じっと座っていない。


帰り際に母さんは

「わたしはもう全然だめだから。お父さんにもあなたにも迷惑かけちゃって

 申し訳ないわ。」と娘につぶやいた。


「毎日来なくてもいいぞ。少しは休め。」と言うと

「でも顔見ないと安心できないし。ご飯ものどを通らないから。」

と言った。


二人は帰って行った。

入院した。


急な腹痛で、これはどうやら昔やった腸閉塞か、と思い当たり

以前入院した病院へ行った。

前も腸閉塞で入院したんだ、ここに。


検査をしたらやはり腸閉塞だった。

60代の時の手術が原因で癒着したらしい。


当分入院だ。


母さんに本を持ってきてもらおう。

本をゆっくり読めると思えばいいんだ。


まあ腸閉塞なら一週間もしたら退院できるだろう。

前もそうだったし。


看護師が絶食中なのに食後の薬なんか持って来て、

どうなっているんだ。


娘があっちこっちに連絡しているらしい。

ケアプラザとか訪問診療とか。

あとはリハビリも来なくて良いと言ってもらわないと。


静かに読書できるな、当分。



ここのところ娘が足しげく家に来る。

なんでも娘に連絡がいくから、負担かけていることだろう。


リハビリは必要ないし

家にやたらと人が来るのは好きではないが、

少しは歩み寄ってやることも必要かとも思う。


娘が来たので、

「リハビリも必要だな。」と話す。

娘はほっとしたような様子で

「じゃあこの前来た訪問リハビリやってみましょうよ。」と言った。


翌日この前来たというリハビリをする人が来た。


契約書だの重要事項説明書だの個人情報承諾書だの

やたらと書類が多くて面倒くさい。

悪い書類が中にまぎれていてもわからないじゃないか。

こんな細かい文章読む奴なんていやしない。


娘が見かねて代理が書けるところは書こうか、というが、

住所名前くらい書けなくてどうする。

このくらいはできる。

「書類の中身は読んでおいてくれ。」と言っておいた。


体調を見るというので、横になった。

足をあげたりさげたり、上半身もあっち向いたりこっち向いたり。

「上半身は柔らかいですね。続けていけば歩けるようになりますよ。」

と言ってくれた。

キツイ動きもあるが、少しやってみるか。