しかし、下のグラフを見て分かるように、世界の中では外国人訪問者数が日本を大きく超える国があり、フランスは8千万人以上の外国人が訪れています。
資料出所:日本政府観光局「世界各国、地域への外国人訪問者数ランキング」
日本は全体の22位で、アジアの中でも7位となっています。日本への外国人訪問者数が今年2,000万人を超えると、全体ではギリシャに次いで16位となり、アジアの中では5位に上がります。
それでも、まだまだ数字上は、フランスなど外国人訪問者数の多さがトップクラスの国には及んでいません。
しかし、上のグラフに出ている国というのは、ほとんどが大陸国家であり、島国は日本と英国だけです。大陸国家であれば、陸路で国境を超えることができますので、比較的簡単に外国に行くことができます。また、英国は島国といってもフランスとの間にあるドーバー海峡は約50キロで、海底トンネルで結ばれて列車で行き来することができます。
従って、日本という国は物理的に外国からの訪問がしにくいというハンデがあります。そういった背景を考慮しないで、他の国と単純に外国人訪問者数を比較するのはどうかと思います。
また、欧州というのは結構狭い地域に国が多くありますので、物理的に簡単に外国に行くことが可能です。更に、EU加盟国であれば行き来が自由ですので、外国に行くというハードルが物凄く低くなっています。
下の2つの地図は、フランスと日本のほぼ真ん中の位置から半径1千キロの円を地図上に描いたものです。
フランスの真ん中辺りから半径1千キロというと、西欧はほぼ含まれることになり、東欧のルーマニアや北アフリカのチュニジアやモロッコも含まれることになります。
一方の日本は、南北朝鮮と中国やロシアの一部だけで、台湾も半径1千キロの範囲外になっています。フランスに比べると、半径1千キロ以内に住んでいる人の数は、非常に少ないということになります。
下のグラフを見ると分かりますが、フランスを訪れている人のほとんどは欧州から来ており、8,470万人のうち7,010万人が欧州から訪れている外国人となっています。
そして、欧州内から来ている外国人訪問者のうち4,390万人は隣国の英国・ドイツ・ベルギー・イタリア・スペインから来ています。これらの国からフランスに行くのは、距離的には日本の本州内を移動するのとそれほど変わりがありません。
従って、フランスを訪れている多くの外国人は、物理的な距離については日本で国内旅行をするような感覚でフランスに行っていることになります。
また、外国旅行をすることができる人というのは、ある程度経済的に余裕がある人達です。途上国に比べれば先進国の方が当然経済的に余裕がある人の数は多いので、近隣に先進国があるかどうかが外国人訪問者数に大きな影響を与えることになります。
外国人訪問者ランキングの上位に欧州の国が多いのは、物理的に近い所に多くの国があり、しかも外国旅行をすることができる経済力がある国が多いからです。
フランスへの外国人訪問者数が多いのは、フランスの観光資源が豊富なのだというのは確かなことです。ただそれだけではなく、西欧の中でも人口が多くてある程度の所得水準に達しているドイツ、英国、スペイン、イタリアに囲まれていることも大きな要因です。
また、米国はフランスに次いで外国人訪問者数が多く約7,540万人ですが、隣国のカナダからの観光客数は約2,300万人となっています。
外国人が訪問するための前提条件が異なる国と比べて、そのような国と同じくらいの人数を日本に呼び込もうとしても難しいような気がします。日本の置かれた地理的条件や周辺国の経済的状況を考慮しないで、フランスなどに比べて訪日外国人数が非常に少ないというのは、現状を把握できていない言い方のような気がします。
その一方で、日本には魅力的な観光資源が多くありますが、それらを十分に活かしているとは言えない状況です。特に、情報発信については、もっと様々な方法を使って積極的にやっていくべきだと思います。
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