日本語好きな人、寄っといで -18ページ目

社名『トヨタ』の、さりげないうまさ

 3年続きで最終利益が1兆円、平成18年には生産台数でGMを抜いて世界一になるといわれるわが国のトップ企業…「トヨタ」。
 そのシンボルである「社名」の音相を分析したら、次のような結果が出ました。


 表情解析欄のポイント数を見てゆくと、「実利性」を表す語(◎印)と、「技術力」をあらわす語(∨印)、「高級感、優雅さ」を表す語(○印)に3分類されているのがわかります。
 それをポイント数の高点順に並べたら次のようになりました。


  庶民的(50.0)◎     暖かさ(40.9)◎・○
  現代的(40.0)∨     合理的(40.0)∨・◎
  活性的(30.0)∨     安定感(27.3)◎・∨・○
  強 さ(25.0)∨     高級感(25.0)○・∨
  個性的(21.4)○・∨   優雅感(18.2)○
  軽快感(13.6)◎・∨   溌剌感(12.5)◎
  開放感( 6.7)◎

 合計すると 実利性(◎)…………191,0 (37,4%)
 技術力(∨)…………128,2 (25,1%)
 高級、優雅感(○)…192,2 (37,6%)


 「トヨタ」という名が会社のアイデンティティーを的確に捉えていることがわかります。
 さらにこの語のうまさは、全体のポイント数を最高50.0と低めに抑えたところにあるようです。
 最高ポイント数を低くすると、語全体の表情が抑えられるため、軽薄感や単純さが消え、反対に内面の深さをさりげなく表す味のある語になるのです。

 そのような「奥行き感」は、音の数の多い語の場合は割合出やすいですが、この語のように3拍でそれを表現することはむずかしいのです。
 この語がそれを可能にしたのは「ト・ヨ」の2拍が逆接拍だったことによるものです。
 逆接拍とは、子音と母音がプラスとマイナスの反対方向を向く拍で、ことばに深みや奥行きを作ります。逆接拍にはどんな拍があるのかなど、詳しいことは「日本語の音相」(P103)をご参照ください。

(木通)

「ドクヌキータ」という軽薄なことば

 「ドクヌキータ」ということばが今流行っているようです。
 温泉やエステなど、美容に奔走する人たちを言うのだそうです。

 この語の分析表の特徴は、「特殊性、若さ、現代的、シンプル(単純)、庶民的、明るさ、行動的、新奇さ、現実的…」が高点で並び、高点に並びそうな「高級感、高尚さ、優雅感、爽やかさ」などが、ゼロポイントになっていること、情緒欄に情緒をあらわす語が1語もないことがあげられます。
 すなわち、この語には情緒性がまったくなく、行動だけが存在する「現代人」を捉えていることと、それを流し目で見ている第三の眼があることです。
 そのような現象に就く人々と、それを見ている人の心の内面を、的確な音で表現した、音相的にまことに優れたことばといえましょう。
(木通)

美しい日本語を壊す「語末の長音カット」

 昔から日本語の名詞には、「東京、運動、旅行、競争、哀愁、銀行…」などのように、語末に長音が多く使われています。
 これは漢語の流入を契機に生まれたもので、語末に安定感を作る上で大きな役割を果たしておりました。
(参考図書「日本語の音相」第三章)


 ところが最近外国語の増加にともなって、原語の発音に近づけようとする配慮からか、「コンピュータ」、「センサ」、「プロデューサ」「エヌ・ティ・ティ(NTT社)」「イ・アイ・イ(E・I・E社)」など、語末の長音をカットする不自然な現象が目立つようになりました。

 だが、カットをするかしないかにルールや理論がないところから、「メニュー、ショー、アイラブユー、デビュー。…」のようにカットせずに使っている語が少なくありません。

 書き文字の場合は「とーきょー」を「とうきょう」と書くように決められており、それはそれでよいのですが、音が中心となる話しことばで語末の長音をカットすると、音の流れが不自然となり、語に安定感がなくなるため、書きことばに合わせることはできないのです。そのため日常会話の中で「センサ、コンピュータ」などと言う人はどこにもいないのです。
 テレビなどのアナウンサーが台本に書かれた文字どおりに、長音をカットしてぎこちなく読んでいるのをよく見ますが、アナウンスを職業とする人なら、書きことばと話しことばの本質の違いぐらいは知っておいてほしいものです。
(木通)

「日本語の音相」をお頒(わ)けします。

 「日本語の音相」(木通隆行著、小学館スクウェア刊)はすでに絶版となっていますが、ご希望の方に当研究所からお頒(わ)けいたします。
 (価額1部3800円、送料、代金引換え料、送金為替料は当方で負担)
 音相システム研究所のお問い合わせフォーム へ郵便番号、住所、氏名、電話番号、冊数、配達ご希望時間などをご連絡ください。

*図書の内容は→こちらへ



【読者の感想】


◎ 音相理論の凄さに感動 
 「日本語の音相」と「ネーミングの極意」、息もつかずに読みました。前人未踏の「ことばのイメージ研究」。その全貌が私ながらに理解でき、音相理論の凄さと奥の深さに感動しました。
 50年のご研究とか、確かにそれぐらいかけなければ纏められない大研究だったと思います。それをお一人で基礎から立ち上げられたとのこと、さらなる驚きを禁じ得ません。
 このような書物こそ、日本語や日本文化を愛する人の必読の書だと私は思います。どうか、ますますのご研鑽とご活躍をお祈りいたします。
(t.tsuchiya)


◎ 詩歌の音楽性を解明した画期的快著 
 先生の「音相」理論は、これまで不毛だった日本の伝統的詩歌の音楽性の重要性を解明するための画期的な研究成果と存じます。
 俳句の実作者としても、深く琴線に触れるものがありました。短歌や俳句では、音数律についての言語学的理論はある程度の進歩を認めますが、音韻的効果については、折口信夫の『言語情調論』などはありますがまだまだ不十分にして、未だに「調べ」という曖昧な概念に甘んじているのが現状です。先生の「音相」は、まさにそのあたりの本義を闡明するものと考えます。取り急ぎ、お礼まで。
「俳句スクエア」代表・五島篁風 (医師)

ネーミング戦略に生かしたい音相理論

 商品名は原則として、その商品らしい音を使って作らなければなりませんが、そこには種々の戦略を伴います。
 新しい市場が生まれるような新商品の名付けを行うときは、将来生まれるだろう商品群の代名詞にもなるような名付けをすることが必要で、その照準を誤ると独立した市場の形成どころか、商品自体の存在すら危うくする恐れがあるからです。
 また反対に、既存の商品がひしめく市場に同類の新商品を出すときは、その商品群が持つ傾向とかけ離れた音相で名付けることが有効な1つの戦略となるでしょう。


 爽やかな響きで作られたネーミングが多い「シャンプー」市場の中に「ザブ」という名の商品があったとします。
 「ザブ」という語を分析すると、「爽やかさ」の項がゼロ・ポイントであるように、暗く重たく淀んだ音でできていて、シャンプーのイメージがまるで浮かばないことばです。
 この名がもし、シャンプー市場の創生期に出ていたら、人々はこの商品をシャンプーという機能を持つ商品と認識するまでに相当な時間がかかったことでしょう。だが、「爽やか」な音相が氾濫しているシャンプー市場に現れた「ザブ」は、その音響的な特殊感が個性をつくり、記憶効果をあげることにもなっているのです。
 このようなネーミング戦略を立てるにあたっては、ことばの音のイメージを解明した音相理論とその分析技術が重要な役割を果たすことになるのです。

 また音相理論は、企業内でのブランド体系の確立や、維持管理をめぐる課題の解消に大きく役立ちます。
 その1つに未使用商標のリストラ対策があげられます。
 企業では将来生れる商品のため、多数の未使用商標を社内に保有していますが、商標権を維持するため国に支払う継続料(税金)は毎年膨大な額に上っています。だがどの企業でも、それは権利を保持するための必要経費と考えられておりますが、その中には何十年保存していても、ネーミングとして使用に耐えないものが少なからずあることです。
 そこで、遊休中の商標名を商品コンセプトごとに再評価して、不要のものを他部門へ回したり、企業外へ譲渡などの対策が必要ですが、それを行うには、商標名を客観的に評価できる音相分析の参加があって始めてなし得る作業です。
(木通)

Q&A

Q.
「ふらふら」「ニコニコ」などの「擬音語」を分析すると、はっきりしたイメージの捉えられない語が多くでるのはなぜですか。(栃木。M&T)


A.
 擬音語(擬声語と擬態語)はことばで表現できないイメージを表現することばです。
 そういう例を、著名な俳句の中から拾ってみましょう。


 水筒の ろろんと鳴りて 霧の中(福田蓼汀)
 へろへろと ワンタンすする クリスマス
 水枕 がばりと寒い 海がある


 どれもみな、ことばにならないものを言語的に表現した「ことば」といってよいでしょう。
 擬音語にはこのような深い奥行きや幅の広さを持つことばが多いため、はっきりした具体性のある表情の出ないものが多いのです。
(木通)

「コンサドーレ」って、なーに

‥‥人智をこえた音相理論の解析力
 
 「コンサドーレ」という名前をご存知ですか。これに「札幌」をつけると「なんだサッカーチームか」と気がづく方も多いでしょう。

 この語はフランス語のように聞こえますが、外国語ではありません。

 北海道生まれの人を言う「道産子(ドサンコ)」を逆さ読みして「ーレ」をつけたことばです。

 すなわち何の意味もない語ですが、この語の音を無心に聞いて、あなたはどんなイメージを持たれるでしょうか。

 「西欧風」「上品な感じ」「派手な感じ」…など、人によていろいろでしょうが、1人で考えればせいぜい3~4個ぐらいが限度でしょうし、中には個人の好みや主観が入った客観性のない語も含まれているはずです。

 だが音相分析を行うと、体験版で見られるように「静的、安定感、充実感」をはじめ、客観性の高い19の表情語がウエイト順にでていますし、情緒欄からは「クラシック、情緒的、神秘的、大らかさ」など10の情緒語が出ています。

 音相分析で捉えた表情は、人の感性や知識では到底捉えられない、客観性の高い表情や情緒を取り出すことができるのです。

 大衆の音響感覚が高度に発達した現在では、音相分析を抜きにして、ネーミングの良否は判断できない時代になっているのです。                 
(木通)

名車の名前を比較する

‥‥「ロールスロイス」と「ベントレー」
 
 「ロールスロイス」は、古くからイギリスの「王室御用達」「貴族のクルマ」などと言われている名車です。

 音相を分析すると、表情語の上位に「安定感、信頼感、爽やか、清らかさ、充実感、高級感、優雅さ、高尚さ」などが並び、高級感や優美さを作る音を多く含んだことばであることがわかります。

 また情緒欄では、それらを裏付けるように、「クラシック、神秘的、情緒的、夢幻性、孤高感」などが並び、コンセプト・バリュー欄では中高年令層好みの音であることを捉えています。

 また、音の数が多いため存在感(堂々とした感じ)や高尚さが表現されているし、流音(R,L音)の多用によって生まれる「流れる感じ」、「動く感じ」が、クルマらしい隠し味になっているのも見逃がせません。
 
 私はネーミングの最高傑作はと聞かれたとき、必ずいつも中の1つにこの語を上げておりますが、どこから見てもネーミングの不朽の名作といってよいと思います。

 次にロールスロイスに続く高級車として、イギリスが売り出した「ベントレー」を見てみましょう。

 このクルマも、金持ち階級が乗る高級車で、表情解析欄の上位にはロールスロイスとほとんど同様「安定感、信頼感、高級感、充実感、高尚さ、優雅さ、静的、暖かさ」などがあり、情緒解析欄も「人肌の温もり感、情緒的、クラシック感、神秘感、夢幻性、孤高感」などロールスロイスと同じようなものを捉えており、いずれ劣らぬ優れたネーミングであることがわかります。

 だがこれら両語の音相の違いを見てみると、ベントレーは音(拍)の数が2拍少なく、逆接拍が5:1と大幅に少ないことがわかります。

 このことは、ベントレーはロールスロイスがもつ存在感や優雅さを幾分抑え、その分だけロールスロイスの持たない「モダンさ」や「明るさ」や「スピード感」を表現しようとした意図がはっきり読み取れるのです。

 このように、外国語を日本語のカタカナ文字に直して分析しても、イギリス人の制作者たちの間にある微妙な狙いの違いを、音相分析は明白に捉えることができるのです。
(木通)

「分析表の実物と評価欄」の例語を増やしました

 別欄で掲示してある「音相分析表と評価欄」 には、分析実例として「オリンピック」を載せておりましたが、評価に至るまでの過程や内容などをご理解いただくため、今月から例語の数を5~6語に増やしました。

 例語は時々入れ替えますが、誰でもわかるようなやさしいものから、高度な評価技術をともなうものまで取り入れたうえ、所長木通のコメントと評価をつけることにしました。どうぞご期待ください。
(木通)

音相の悪い語は外国語でも嫌われる 

 日本人は「外国好み」「新しもの好き」などといわれていますが、そんな日本人でも、音の良くないことばは断固敬遠するという頑固さももっています。 

 嫌われているそんなことばを上げてみましょう。

 ヘクトパスカル(気象用語)
 ビッグエッグ(東京ドームの愛称)
 DIY(日曜大工)   
 ヴィックスヴェポラッブ(風邪薬) 
 WOWOW(放送局)      
 マイスターシュテュック(万年筆)
 デユオ(乳酸飲料)       
 ナタデココ(食品)
 ティー (紅茶)         
 ベースボール(野球)
 インターデスイプリナリ(学際)
 フイッシング(釣り)
 ウオーター(水)        
 リップ・スティック(口紅)
 エグジット (出口)      
 ソサエティ (学会)………

 どの語も使えばそれだけ便利だし欧風ムードも出ることばなのに、日常語の中では敬遠され、口に出して言うことを好みません。

 その理由はただ1つ、どれもが日本人の好みに合わない「音相」をもっているからです。
(木通)