ネーミング戦略に生かしたい音相理論
商品名は原則として、その商品らしい音を使って作らなければなりませんが、そこには種々の戦略を伴います。
新しい市場が生まれるような新商品の名付けを行うときは、将来生まれるだろう商品群の代名詞にもなるような名付けをすることが必要で、その照準を誤ると独立した市場の形成どころか、商品自体の存在すら危うくする恐れがあるからです。
また反対に、既存の商品がひしめく市場に同類の新商品を出すときは、その商品群が持つ傾向とかけ離れた音相で名付けることが有効な1つの戦略となるでしょう。
爽やかな響きで作られたネーミングが多い「シャンプー」市場の中に「ザブ」という名の商品があったとします。
「ザブ」という語を分析すると、「爽やかさ」の項がゼロ・ポイントであるように、暗く重たく淀んだ音でできていて、シャンプーのイメージがまるで浮かばないことばです。
この名がもし、シャンプー市場の創生期に出ていたら、人々はこの商品をシャンプーという機能を持つ商品と認識するまでに相当な時間がかかったことでしょう。だが、「爽やか」な音相が氾濫しているシャンプー市場に現れた「ザブ」は、その音響的な特殊感が個性をつくり、記憶効果をあげることにもなっているのです。
このようなネーミング戦略を立てるにあたっては、ことばの音のイメージを解明した音相理論とその分析技術が重要な役割を果たすことになるのです。
また音相理論は、企業内でのブランド体系の確立や、維持管理をめぐる課題の解消に大きく役立ちます。
その1つに未使用商標のリストラ対策があげられます。
企業では将来生れる商品のため、多数の未使用商標を社内に保有していますが、商標権を維持するため国に支払う継続料(税金)は毎年膨大な額に上っています。だがどの企業でも、それは権利を保持するための必要経費と考えられておりますが、その中には何十年保存していても、ネーミングとして使用に耐えないものが少なからずあることです。
そこで、遊休中の商標名を商品コンセプトごとに再評価して、不要のものを他部門へ回したり、企業外へ譲渡などの対策が必要ですが、それを行うには、商標名を客観的に評価できる音相分析の参加があって始めてなし得る作業です。
(木通)