第十二弾「夏の終わり。最後のアサード」
直前まで何が起こるかわからない!恐るべし、南米。
……けれど、全然悪いことばかりじゃないんです!ルールが違うだけなんだ、という気がします。考えられないほどスムーズに話が進んでしまう、素敵なことも多くありました。
ビブリオテカの本番の直後のことです。来てくれていた師匠ラミーロ・ガジョに、明日か明後日しか時間がないんだけれど、もう一回レッスン受けられませんか?と、無茶苦茶なお願いをしたところ……今スケジュールを持ってきていないけれど、明日はレッスンできる時間があるから、正午ごろ電話してくれ、と言ってくれたのです!
ということで、いきなり帰国2日前(3/17)の夕方に、レッスンを受けられることになり、バタバタと準備。
細かい話になりますが、先日と併せて、タンゴを代表するスタイルのうち、大好きなプグリエーセとディ・サルリを習うことができました!あまりに貴重な体験でした。
このときに、ブエノスにいる中村樹里さんに借りた譜面を使わせていただきました。本当にありがとうございました!
樹里さんは、エスクエラ・デ・タンゴ(ブエノスアイレス市が設立しているタンゴの学校)に留学中のヴァイオリニスト。リハーサルでラ・カサ・デル・タンゴ(下の写真)に行った時、丁度エスクエラの練習が終わったところで、偶然お会いしただけ、でした!(ただし、他のみなさんは大体お友達でしたが)
その上、じゃあサックリ電話して……とは、話が進みません。†ロクトリオというところに、まず行きます。そこで電話して、もし出てもらえなかったら、……しばらく後でまたロクトリオへ笑 というのは……固定電話から、直接携帯に電話が出来なかったからです。もちろん、そのためのサービスもあるのですが、すぐには分からなかったのです。
†ロクトリオは、ネットカフェのような、電話をかけるところのような、ブエノス市街いたるところにある、日本にはない業態のお店です。
とにもかくにも、みなさんのおかげで素敵なレッスンが受けられた後には、最後のアサードが待っていました。
会場への足は、帰国2日前にして、初めてのコレクティーボ(バス)!
ラミーロ師匠が、小銭1.35ペソが揃うようしてくれていたにも関わらず(きっちり小銭がないと乗れません)、お金を入れてもチケットが発券されません。ま、お金入れたんだし、いいんですよね?
かなり混んでいて、最初はまったく座れませんでした。いやー、凄い乗り物です、これは。前後左右だけでなく、上下にブンブン揺さぶられまくります!手すりに捕まっていても、体が本当にクルクル回る笑
次のバス停のアナウンスも何もないので、地名に聞き覚えがない郊外だと、今どこにいるのか、目的地がどのくらい先なのか、なかなかわからない。
降りたい時は、日本と同じでブザーを押すのですが、なぜか出口のところに1つしかない笑 でもちょっと遅れて気がついてボタンを押したら、運転手さんがすぐにおろしてくれました。
バス自体のシステムはあまりに不親切なのですが、その分運転手さんは親切で、こういうバランスが、アルゼンチンらしいのかもしれません!
降りてしばらくの間、地面がまだ揺れてました笑 ジェットコースターより激しい後味でした!
アサード会場は、フローレンシア・ルイス(アルゼンチン音響派のシンガーソングライター。日本盤のCDも出ています)邸でした!
こんなに素敵な中庭がある邸宅の三階部分に大きなテラスが。
そして、これまた立派でおしゃれなアサード装置があるのです。ちょっとビックリしたのは、アサード係(写真オレンジのシャツの人)がいました!つまり、肉を焼くためだけに来てくれた人です。彼には、最後にみんなから暖かい拍手が贈られました~……でも切ないよねえ![]()
オーブンの下段が炭、上が肉です。隣国ウルグアイでは薪で焼くのだとか。
このアサードは盛大で、西村教授、『旅の指差し会話帳・アルゼンチン』(ヒマさえあれば読んでいて、使いまくりでした……)の著者としても知られる谷本雅世さん、師匠ラミーロはじめアルゼンチン人ミュージシャン諸氏、多くの人が集いました!
ブエノスでは、我々が日本に帰った後、デング熱がついに上陸して、みんな戦々恐々としていたそうですが、なんとこれからインフルエンザの季節(冬)がやってきます……。どうか、みなさんが元気で、無事でありますように!
こうして、いよいよ帰るだけになってきたのですが、その前に……
つづく
第十一弾「ブエノスアイレスに挑戦する日」
最後の本番があった3/16。16時(いつも集合時間が遅いので、すごく早い感じが)にビブリオテカ・ナショナル(国立図書館)へ!
入り口(←)で、老婦人に話しかけられました。僕がスペイン語を分からないとみるや、さっと英語に切り替えて。
今日演奏する人たち?日本からわざわざ来たの?とか色々質問されます。最後に、聴きに行くわ、楽しみにしてるわよ!みたいなことを言われてにっこり。……じーん。
ホールまで行くと、この日一緒に演奏するコー・サンジさん(韓国から、ブエノスアイレスに留学中!)がもういらっしゃいました。あれれ、なんでかなー?笑
和やかだったのは最初だけ。
サウンドチェックがもう大変!この作業は、いつも難儀するイメージがありますが、さらにアルゼンチンらしい大変さが。機材が40年前のなんだ、とかで頼りにならない上に、ホールがまったく響かない。泥沼でもがく感じで、消耗~
何もかもが斜めで、特にステージ上まで水平でなかったり、他にも、とにかく大変なところでした。
さあ、そんな中で、コンサートスタート!
タンゴの本場ブエノスアイレスで、ほとんど会田さんと青木さんのオリジナルかオリジナル・アレンジを演奏する、大胆なプログラム。これが大好評でした!!
楽屋がなかったので、終演後、せまーい舞台袖の廊下にわらわら人が集まって、むちゃくちゃ大騒ぎでした!
メンバー紹介を兼ねて、写真の説明を。
左から、バンドネオンコー・サンジさん、同じくバンドネオン鈴木崇朗(たかとき)くん、微妙に挟まっているのが自分、ピアノ青木菜穂子さん、アメリータ、ヴァイオリン会田桃子さん、ヴォーカルSayacaさん、ベース東谷健司さん
アストル・ピアソラの2番目の奥さんで、『ロコへのバラード』をはじめとする数々のピアソラの傑作を初演し、共にその音楽を作り上げてきた伝説の歌い手です。
ちなみに、ブエノス到着の日に、コンサートでその歌を聴く機会に恵まれ、その世界に心の底からノックアウトされたことが、その後様々なことを考えるきっかけになりました。その方に、この時にお会いできるというのは、何かこう、環が閉じるような、不思議な感覚に襲われます。
終演後、メンバーと、アメリカから来ていたハーモニカのジョー・パワーズさん(左の写真に写ってませんが、最後の回にまた登場します!)と、Sayacaさんがホームステイしているお宅で、パーティー!
デリバリーで、エンパナーダを注文して。後で、お寿司と焼き鳥もオーダーできました!見かけは少し違和感があるのに、焼き鳥もちゃんと焼き鳥の味!
それにしても、豪奢な庭であります。なぜか鮮やかなピンク色のアジサイが咲いておりました。残暑の時期なんですけどね。ちょっと寒かった。
……書いているうちに、いつも一日の最後にパーティーをしていた気がして、楽しくなってきました笑 お店で飲むのも楽しいけれど、パーティーしたいなー!
つづく
第十弾「牛。迫力の味」
この夜は、最後の本番前夜で、みんなでディナーでございます。Sayacaさん、会田桃子さん、青木菜穂子さん、鈴木崇朗くん、東谷健司さん。全員集合~!場所は、昼間Sayacaさんに偶然出会っちゃった、レコレータ。
呼び込みがすごい。以前の、梅田は阪急東通商店街みたいでっせ。
結局、料理の種類とかを考えて、一番はげしく呼び込んでいたお店に入ってしまいました。
これが大正解!
まずはこのオシャレさ加減に度肝を抜かれます。→
シャンデリアが……つまりこれは、壁や天井まで行き届いてシックだったと言いたい。
この中の上品でしっとりとした具合と、外の呼び込みの激しさのアンバランスさが、素敵?
料理は、サラダから。塩、オイル、酢が運ばれてきて、味付けは自分でします。どこのお店でも同じです。ただ、お店にやってもらうことも出来るとか。
さて、しかしテーマは肉ですよ!1皿目↓は、内臓系。もうおなじみになってきていたチョリソ、モルシージャ(黒いのがそうです)、チンチュリン(牛小腸?)、リニョン(牛腎臓)、それから大好きになってしまったモジェハ(牛胸腺)!アルゼンチンだからって、どこで食べてもおいしいってものではないという話ですが、
2皿目、これ牛のリブの肉。何しろ、分厚い。多分厚みで6センチ以上はあったように思います。そして、写真に写らないのがあまりに悔しいのですが、色が美しい。中がふわーっと桃色に染まっております。
前にも書きましたけど、この肉にはホトホト参りました。
うますぎるッ!!
肉とは思えない、強い旨味。味のタイプは肉そのものだけど、ハムのような濃い旨みがあり、ほのかな甘み(これは脂の旨味?)とで、複雑な味わいになって、口の中に広がっていくではありませんか!そして、柔らかいけど柔らか過ぎず、程よい弾力が気持ちいい。
つづく




