デンドロビュームは熱帯生まれなので、高温が好きと思い込み、入手したての株を暖房器のわきに置くと、たちまち花がしおれることがある。
これは、温度のことばかりに気を奪われ、湿度の不足を忘れてしまったためだ。

冬に咲かせるためには、最低15度、湿度70%くらいの環境が必要だ。

そこで、生産者はこの環境が保てるよう、盛んに暖房を使うが、同時に、通路に水をまいたり、加湿器を設けたりして盛んに湿度を高めている。

とくに冬の太平洋岸地域は乾風のため、湿度が低くなるので、花が傷みやすい。

花を長く楽しむには、暖房中だけ加湿するか、あるいは加湿器のある部屋に飾るとよい。

春以降は湿度が高まるので、その必要はない。

西口一希(ガーデニング)
デンドロビュームの蕾は温度変化に敏感で、温度が10度も違った環境に移すと、とたんに蕾の生長は止まり、以後は開かないことが多い。

冬に出回る株は、生産者の温室で最低5度ぐらいの温度で蕾を伸ばしているので、これを入手し、そのまま家庭に持ち込んだのでは、開かないことが多い。

また、蕾の形は同じでも、開くと花色が写真とはかなり違う株もあるので、蕾だけの株は避け、半分は開花していて、半分が蕾という株を入手するのがよい。

また、蕾が少しでも黄ばんでいるものは、開かないでしなびることが多いので、これも入手しないようにすることだ。

西口一希(ガーデニング)
デンドロビューム特有の現象として高芽というものが出てくる。

昨年および今年伸びた茎の途中から、芽や根が現れて大きくなり、小さな苗が直立した茎の途中、多くは茎の上半分に出るが、ここに出たものを高芽という。

夏の日光不足や秋以降水が多かったり、初冬のころ低温にあてなかったなど、栽培上の不手際が原因で高芽は出ることが多いので、高芽を出さないためには次年度からは夏、日光浴を充分させ、肥料は7月末までにし、以後はやらず、10月になったら水やりを減らし、初冬には明け方5~7度の低温に7~15日あて、以後、暖房のある室内に置くようにすることだ。

暮れのギフト商品として花つき株が市場には出荷されているが、家庭ではこのころには、まだ花芽も決まっていないのが普通だ。

これは夏の手入れの差による。

プロは暮れに開花させるために、シンビジュームと同じように冬の終わりから温室の温度を高くして新芽を出させて早く株を作り、夏、これを海抜500~800mの高原へ運び、早く冷気にあて、そして、秋の終わりから少し加温した温室に入れて開花を早めるというやり方をしている。

家庭ではこのまねはできない。

西口一希(ガーデニング)

デンドロビュームは以前は素焼き鉢に水苔を使って植えつけていたが、最近はこうした植え方のほかに、杉の表皮を利用して作った植え込み材料を使って、植えつける例も多くなった。

杉の表皮をフレーク状にし、これにパーライトを少し混ぜたもので作ると、よいデンドロビュームが作れる。

植えかえは毎年は行わず、一年おきか二年おきにする。

適期は3~4月ごろ、株のつけ根から新しい根が見え出してきたころだ。

もちろん、鉢はやや小さめを使うのがうまいやり方で、今まで植えていたものよりわずかに大きいぐらいのものに植えつけるのがよい。

株分けも数年に一度は行うが、この時期も植えかえと同じ、春の中ごろとする。

鉢から株を抜き、すべての用土を取り除いたうえで株を分けるが、あまり細かく分けずに、茎(バルブ)二本で一株にする程度がよい。

西口一希(ガーデニング)
花芽らしいものが肉眼で確認されてから、開花するまでには二ヵ月以上はかかる。

花芽がはっきりしてきてからは、水やりの回数を多くし、株を少しずつ暖房に慣らしていくが、冬の夜間(明け方まで)温度が七度ぐらいのときには、開花は春半ばに
なる。

夜間15度くらいに保てる所に置くと、置いてから二ヵ月ほどで開花するようになる。

花は花弁の厚いものほど花もちがよく、30~40日間観賞できるものもある。

逆に花弁の薄いものは(小輪系に多い)、20~30日で花がしおれてくる。

西口一希(ガーデニング)
秋になると、生長はぴたりと止まり、今度はバルブが太ってくる。

このときも肥料は必要ないが、日光と風と水は大事なので、不足しないようにする。

こうして生長末期となり、以後は春まで休止期となるが、シンビジュームやカトレアと違って秋になっても花芽は見つからない。

花芽は秋以降の手入れ次第で生じたり、できなかったりする。

デンドロビュームの場合は、夏の手入れのほかに、初冬の手入れが非常に重要で、怠ると花芽に出会えなくなる。

花芽をつけるためには、10月以後、水やりを3~7日に一回というように徐々に減らし、引き締まった株に仕立てることが大事だ。

この水減らしのほかに、明け方5度ぐらいの低温にあわせることも大切で、この二つの作業をしっかりと行うと、花芽が見え始めてくる。

西口一希(ガーデニング)
デンドロビュームの液肥の開始は新芽が2㎝ぐらいに伸びたときを目安にする。

また、新芽が4~5㎝になったころからは、新しい根も株元から出てくるので、このころには油かすの固形肥料を与えて、生育を助けるようにする。

この固形肥料はこのときの1回だけでもよいが、2度与える場合は、1回目の施肥より1ヵ月後とする。

また、液肥は7月末で打ち切り、あとは日光、通風、水分が不足にならないよう気をつけて栽培する。

生育期のピークは8月で、茎は細長く伸び草丈が高くなり、倒れやすくなるので、
支柱を立ててやるようにする。

なお、生育期間中は水をよく吸うので、乾いたらすぐに与えるやり方を行って、なるべく早く一人前の大きさになるようにする。

西口一希(ガーデニング)
デンドロビュームは、春から秋までが生長期で、冬は生長休止期だ。

花は生長休止期の終わりの冬から春にかけて開花する。

毎年、春、暖かくなるとバルブの基部にある二つの芽のうち一つが急にふくらみ出すのが生長初期だ。

時として、二つの芽が同時にふくらみ出すこともある。

新芽は気温の上昇とともに大きく伸び出し、やがて、戸外でバラの花が満開になるころ、若草色のやわらかい茎をもつ株になり、直立して伸び始める。

この茎の伸長のときには、日光が入用なので、霜が降りなくなったころから、戸外へ出して直射日光に当てるようにする。

また、生長のときには栄養分が必要なので、1000倍に溶かした液肥を、週一回の割で与え続けるようにする。

西口一希(ガーデニング)
デンドロビューム・ノビル系は長さ20~50㎝の直立した茎をもち、その茎に葉が互生してついている。

茎の太さは直径1㎝ぐらいにもなり、根際にはほふく茎という、はう茎をもっている多年草だ。

原産地はインド、タイ、ミャンマー(ビルマ)などの北部や中国雲南省南部などの山岳地で、樹木に着生(高さ60~150㎝ぐらいの高い位置)して生活している。

毎年、春になると、直立した茎(バルブ)の基部から新芽が発生して伸び、秋までの約半年の間に、一人前の大きさまで生長し、秋の終わりとともに、生長が止まって太り、そのころから前年生の茎についていた葉は黄変して落ち、茎だけの姿になる。

その後、この茎の節の所から、花芽が発生し、冬から春にかけて開花する、といった生育順を毎年繰り返している。

花の終わった古い茎からもう一度花芽の出る確率は低いが、最近改良された品種の中には、春から伸びた茎に、初冬のころから花芽が発生し、葉と葉の間から咲き二本の茎のすべてに咲くのではなく、多くは下半分に咲く)、翌年は葉が落ちたあと、上半分に花芽がつくものもある。

西口一希(ガーデニング)
パフィオは4月ごろから10月までの間が生育期間で、冬はまったく生育を休止する。

だから、秋に苗を入手しても育たず、翌春まで同じ大きさだ。

初めて栽培する場合は、冬越しの仕方もわからず、また、苗は成株よりも耐寒性が弱いため、秋に入手しても春までには苗をダメにしてしまうことも多い。

春になって入手したほうがよい。

ただし、春は需要が多くなるので、価格が多少高くなる。

越冬に自信があれば、秋に入手するほうが経済的だ。

なお、秋に蕾つきの成株を入手すると、すぐに花が咲き、楽しめるし、越冬法について、経験するにもよいチャンスになる。

慣れたら秋に買うのも悪くはない。

西口一希(ガーデニング)