先週、

6月18日にオンエアされた

《古楽の楽しみ》で

「シェークスピアと音楽」と題して

シェイクスピアの作品に基づく

同時代の作曲家たちの作品が

紹介されたということは

以前にも書いた通りです。

 

その際、ベースとなった

フィリップ・ピケット指揮

ミュージシャンズ・オブ・ザ・グローブの

演奏を収めたCD

《シェイクスピアの音楽》を紹介した際

同盤に未収録の4曲については

そのうち入手できることを期待する

と書きましたけど

その後、入手できまして

それがこちら。

 

Songs to My Lady:

English Songs & Lute Pieces

エスウッド&ヒュープシャー《Songs to My Lady》

(harmonia mundi France

 QUI-903012、1991)

 

ハルモニア・ムンディ・フランスの

レーベル内レーベルが Quintana で

ハンガリーのブダペストにあった

Quint Records が

企画したシリーズのようです。

 

のち1994年になって

ハルモニア・ムンディから

廉価版で再発されており

《古楽の楽しみ》のサイトに

表示されていた企画番号

(harmonia mundi: HMA1903012)は

そちらの廉価版のものになるわけですが

日本流通盤が出たのかどうか

については不詳です。

 

演奏は

カウンターテナーのポール・エスウッドと

リュートのユルゲン・ヒュープシャーで

録音は1990年11月に

ブダペストにあるユニテリアン教会にて

行なわれました。

 

 

ジャケ裏は以下の通りですが

 

エスウッド&ヒュープシャー《Songs to My Lady》ケース裏

 

CDタイトルと演奏者の間に

書かれているのは

曲名ではなく

6つのセクションです。

 

順に

 淑女に捧げる歌

 リュートの変奏付きアリア(ダウランド)

 涙の歌

 希望の歌

 ギター伴奏付き伝承歌

 英国のオルフェウス(パーセル)

という意味になりましょうか。

 

 

《古楽の楽しみ》の特集では

ギター伴奏付き伝承歌から

〈バーバラ・アレン〉

〈オークとトネリコ〉

〈3羽のカラス〉

〈グリーンスリーヴス〉が

かけられたようです。

 

《古楽の楽しみ》の公式サイトでは

いずれも作者不詳となってましたが

〈3羽のカラス〉のみ

トマス・レイヴンズクロフトによって

採集され記譜したものだと

本盤のライナーには記されてます。

(放送ではどう紹介されたのか

 までは分かりません)

 

 

全体としては

トマス・モーリー(1557-1602)

トマス・フォード(1580-1648)

ウィリアム・バード(1540-1623)

ジョン・ダウランド(1563-1626)

トバイアス・ヒューム(c.1569-1645)

トマス・レイヴンズクロフト(1590-1633)という

エリザベス1世治世下(1558-1603)から

ジェームズ1世治世下(1603-1625)を経て

チャールズ1世治世下(1625-1649)までの

イギリスの作曲家による歌曲

リュート独奏曲および作者不詳の伝承歌に

ヘンリー・パーセル(1559-1695)の歌曲を

3曲加えて構成されています。

 

曲数がダントツに多いのは

ダウランドで

全24曲中12曲を占めており

〈流れよ、わが涙〉も

エスウッドのソロ

ヒュープシャーの伴奏

という形で歌われています。

 

 

本盤のライナー小冊子には

収録曲名と歌詞

演奏者のプロフィールが

載っているだけで

どのようなコンセプトで編まれたのか

ということは、いっさい

書かれていません。

 

そのため

6つのセクションに分けた理由とか

他の作曲家とは時代が離れた

パーセルが演奏されている理由などは

想像するしかなく。

 

ルネサンス時代の音楽を受け継ぎ

集大成したのがパーセル

という位置付けなのかなあ

と思ってみるばかりです。

 

 

リュート奏者のヒュープシャーは

名前に聞き覚えがなく

タワーレコード・オンラインで

検索してみても

現状、ヒットする盤がありません。

 

ドイツのケルンと

バーゼル・スコラ・カントルムで学んだ

と紹介されていますけど

ケルンとしか書かれておらず

ヨーロッパで最も古いリュート科を持つ

(と以下で坂本龍右が書いている)

 

 

ケルン音楽舞踊大学のことか

と想像するばかり。

 

紹介文には

the rare lutenists の一人

と書かれていて

時代を偲ばせますね。

 

 

今回の盤のケース裏を見たら

ルネサンス・リュートおよび

バロック・リュート

そしてバロック・ギターを

使い分けていることが分かるので

なかなかやるなお主

とか偉そうに思ったり。( ̄▽ ̄)

 

単に luth とだけ書かれているのは

バロック・リュートだと思いますが

製作者が Junji Nishimura(西村順治)

という日本人であることにも

びっくりでした。

 

 

カウンターテナーのエスウッドは

調べてみたところ

ニコラウス・アーノンクールと

グスタフ・レオンハルトによる

バッハのカンタータ全集の録音に

参加しているのみならず

プロ・カンティオーネ・アンティクヮ

というイギリスの合唱団の

創設メンバーの1人だと知って

今さらながら、驚いています。

 

ちなみに

前回の記事でふれた

アルフレッド・デラーの

盟友でもあったようです。

 

 

かつては歌ものを

あまり聞かなかったから

記憶にありませんでしたが

その歌声は

確実に耳にしているはず。

 

そう思って聴き直すと

感慨深いものがあるとはいえ

ソロ独唱としては今ひとつ

という印象が拭えない

というのが正直なところでした。

 

 

とはいえ

さまざまに残されている

ダウランドやパーセルの演奏の

ひとつのヴァージョンが聴けたことは

聴けるとは思っていなかっただけに

ちょっと嬉しかったです。

 

 

前回の記事で

デラーから

アンドレアス・ショルまでの

30年間のうちに

カウンターテナー歌手が

〈流れよ、わが涙〉を

歌っているだろうと

書きましたけど

本盤はその30年間の中の1枚

ということになりますね。

以前、

ルネサンス時代のイギリスにおける

リュート奏者の名手として声名を馳せた

ジョン・ダウランドのリュート歌曲

(リュート伴奏を伴う歌曲)の

〈流れよ、わが涙〉を紹介した際

 

 

「有名な曲だけあって

 YouTube にもたくさん

 アップされています」と

書きました。

 

アップされているのは

必ずしもソプラノとバスの

二重唱ばかりではなく。

 

いろいろあるなあ

と思って見ていたら

カウンターテナーによる独唱が

いくつか目にとまりました。

 

 

カウンターテナーによる独唱

という演奏の嚆矢は

おそらくは、イギリスの

アルフレッド・デラーではないか

と思われますけど

それが1969年ごろのこと。

 

そのあとに続くのは

ドイツのアンドレアス・ショルが

1996年にリリースしたCDで

歌ったものではないか

と思います。

 

デラーからショルまで

約30年の間に

カウンターテナー歌手が

誰も歌わなかった

ということは、もちろん

なかったでしょうけど

まあ、この2人が双璧だろう

というのが衆目の一致するところ

ではないでしょうかね。

 


YouTube にはどちらも

アップされているみたいですけど

いまだに入手できていない

CDで聴くことに

こだわりたいので

ここで貼り付けることは

見送ることにします。

 

CDを入手できたら

そのとき記念に貼る

ということにさせてください。m(_ _)m

 

 

それはともかく

デラーが登場してから

カウンターテナーが復興し

多くの歌い手が登場しましたが

現在のところ

最も存在感があって

引っ張りだこなのは

フランスのフィリップ・ジャルスキー

ではないかと思われます。

 

そのジャルスキーが歌う

〈流れよ、わが涙〉のライブ映像が

YouTube にアップされてましたので

備忘も兼ねて、貼り付けておきます。

 

 

演奏は2019年3月10日。

 

こちらは

カウンターテナー独唱

という以外にも

クラシック・ギター奏者

ティボー・ガルシアが

伴奏を務めるなど

オーセンティックな演奏からは

いろいろと外れています。

 

でも、さすがに

ジャルスキーだけあって

引き込まれますし

伴奏も

クラシックギターだからでしょうか

リュートに比べても遜色がなく

むしろリュートよりも音の輪郭が

くっきりしている感じ。

 

 

そう思っていたら

トーマス・ダンフォードによる

バロック・リュートの伴奏で

イギリスのカウンターテナー

イェスティン・デイヴィスが歌う

画像を見つけました。

 

 

こちらは2013年7月5日の演奏で

ジャルスキーの6年前となります。

 

細かいことをいえば
ルネサンス・リュートではなく

バロック・リュートではありますが

音が小さくて

繊細であることは共通しており

ギターに比べると

明らかに雰囲気が違いますね。

 

イェスティン・デイヴィスを

自分が聴くのは

今回が初めてではないか

と思いますけど

ジャルスキーよりも

嫋々とした感じかなあ。

 

 

どちらがいいかは

お好み次第。

 

古楽原理主義者としては

デイヴィス&ダンフォードに

軍配を上げるべきかと思いますが

現代を生きる人間の耳からすると

輪郭がクッキリとしている

ジャルスキー&ガルシアも

捨てがたい。

 

これはルッキズムで

邪道かもしれませんが

イケメン度からすると

ジャルスキー&ガルシアかな

とも思うのでした(笑)

 

それにしてもジャルスキー

髪に白いものが混じって

もういい年なんだなあ

と、しみじみしたことも

付け加えておきます。

これも昨日のこと。

 

姫藪蘭が見かけた保育園の所から

さらに登っていって

団地に差し掛かった時

たくさんの実が

まさに鈴生りであることに

気づきました。

 

エゴノキの未熟果(その1)

(2025年6月22日撮影)

 

このあたりで先月の初め

花が咲いているのを見かけており

 

エゴノキの花

(2025年5月7日撮影。以下、花の写真は同じ)

 

庭木図鑑 植木ぺディアの

「今咲いている花木」で確認し

蘞の木[エゴノキ]ではないか

と当たりをつけていて

 

エゴノキの花(アップ)

 

まだ満開ではないようだったので

今度、通りかかった時に確認できれば

と思っていたのでした。

 

ところが

次に通りかかった時には

花が散ってしまっていてなのか

確認することができず

あれは何だったのかしらん

と気になっていたんですけど

今回、鈴生りの実を見て

やっぱり蘞の木だったんだ

と改めて思った次第です。

 

エゴノキの未熟果(その2)

 

蘞の木の「蘞」は

「エグい」と読ませる字のようで

庭木図鑑 植木ぺディアによれば

果実を噛むとエグい味がすることから

この字を当てられたのだとか。

 

山雀[やまがら]や

雉鳩[きじばと]などの鳥は

食べるそうで

山田隆彦監修『樹木図鑑』

(池田書店、2021)に

御神籤を引く山雀に与える餌はこれ

という豆知識が載ってました。

 

 

花期は5〜6月ごろで

果実が熟すのは9〜10月ごろ

だそうですから

今、見られるのは未熟果。

 

で、未熟な果実の果皮には

有毒物質が含まれているそうです。

 

この団地の植栽では以前

白い夾竹桃を見かけており

意外とヤバめのものが多い。( ̄▽ ̄)

 

 

和名の別名には

轆轤木[ロクロギ、ロクロノキ]

萵苣木[チシャノキ]ないし

知佐木[チサノキ]

石鹸木[セッケンノキ]

というのがあるようです。

 

萵苣木あるいは知佐木は

枝に垂れ下がった実を

動物の乳房に見立てて

「乳成り」と言っていたのが

転訛したという説もあると

「AIによる概要」で教えられました。

 

石鹸木というのは

未熟な果実の果皮に含まれる

エゴサポニンという成分が

石鹸の働きをすることに

由来するようです。

 

実際に試してみたブログ記事もあり。

 

 

別名には他に

「売子木」というのがあり

「キシャノキ」と読むそうですが

「チシャノキ」や「チサノキ」の

転訛だと思われます。

 

宮崎県にある難読地名で

当地に萵苣木・知佐木が

生息していたからではないか

という説もあると

紹介している記事もありましたけど

それに「売子木」という字を当てた

理由まで説明してくれないとなあ。

 

 

和名の別名として

「野茉莉」というのもあります。

 

中国名に由来するそうですけど

「野茉莉」と書いて

「エゴノキ」と読ませる場合と

そのまま「ノマツリ」と読む場合が

あるようですね。

 

 

英名は

Japanese snowbell だそうで

花の形を踏まえたんでしょう。

 

エゴノキの花(サイド)

 

前掲の

山田隆彦監修『樹木図鑑』には

スノードロップツリー

というのも出てました。

 

 

学名は Styrax japonicus といい

属名の Styrax は

「AIによる概要」によれば

ギリシャ語で「安息香」を意味する

storax に由来するそうです。

 

樹脂は香料として利用されるのだとか。

 

種小名の japonicus は

「日本の」ということを意味する

ということは見当がつきます。

 

日本固有種ということを知ると

ちょっと嬉しくなりますね。