『しあわせは食べて寝て待て①』

水凪トリさんのマンガ。

主人公はサトコ38歳。一生付き合わなければならない難病の診断を下され、キャリアも、結婚も、マンション購入もあきらめることになった。難病と言っても、障害年金が出るほどでもない。かといって、フルタイム労働するほどの体力もない。これからどうすれば…。

そんな折、引っ越したボロい団地の大家・鈴さんとその「息子」司に薬膳の知識を教わり、思い通りに動かない心と体を大切に手入れしながら、できたりできなかったりする自分との付き合いかたを学んでいくサトコ。

薬膳の知識や、季節ごとの食生活のディテールがわかりやすく、日常生活にも取り入れやすいし、たまに誰かのふとした言葉や行動が、それこそ薬膳のようにじんわりと、サトコの人生に効いてくる感じに、何度も胸が熱くなった。

で、私、思ったんですよね。きっとサトコも、本人は忘れちゃってても、そんなつもりじゃなくても、ふとした言葉や行動で、誰かを励ましたことがあったんじゃないかなぁ。たとえば、ほんとは会社でつらいことがあったけど梅雨のせいにしてごまかしてる人がいて、ふとサトコがアドリブで淹れたジャスミン茶が、一瞬だけその人の心と体をほぐすみたいなこと。こういうのって巡り巡るものだから、いま、それが返ってきたんだよね。

そして団地のご近所さんのゆるいつながりも素敵！あれを見ていると、人間、できるときもできないときもあるんだから、自分ができないときは、誰かのできるを借りればいいじゃない、と思えてくる。私も誰かができないときに、「あったかいジャスミン茶を淹れてあげる」くらいできる余裕がいつもある人生をおくりたい。