コロナ読書シリーズ。

フランス文学者で知の巨人・内田樹さんと、神戸大学教授で感染症専門家・岩田健太郎さんの対談本。

まず、緊急事態の名のもとに、はみ出すことが許されない風潮が強まりまくった現代の日本で、こんなに空気読まない人たちがいるのかという安心感!(笑)

以下、おもしろかったところをメモ。

・コロナは場所によって緊急性や大変さに差があり、さらに現場と政府の認識にも温度差があり、医療崩壊ギリギリでもちこたえたことを政府の成功体験として簡単に済ませてはいけない

・これまでの、「医療はインフラではなく商品」という新自由主義の原理では、コロナに太刀打ちできない

・景気のいいときには気にならなかったのに、景気が悪くなった途端に自分より得してる人がいないか探し始めるマインドがある。分配方法よりもパイそのものを創意工夫で大きくしていくべき

・みんなが同じところで同じことをやるという行動パターンは、コロナ感染が広がる原因になりうる。ということは、同調圧力を無視して人と違うことをやり続けると、感染リスクは減る。人と違うことに耐える、そして誰かが人と違うことをやっても許すこと。

・ディベートとは、自説を譲らず相手を言い負かすことではなく、お互いの意見をすり合わせ、ともに包括できるようなよりスケールの大きな仮説にたどり着くこと。

・ひとつの簡単な正解で思考停止するより、頭を抱え、苦しみ続けるほうが、知性的にも倫理的にも生産的。

・限られた環境でみんなが生き延びようと思うなら、他人と合わせるのではなく、他人と「ズレる」ことが大事。

・人獣共通感染症は、人間が経済成長を求めて環境破壊するのをやめない限り、止まらない。

・コロナは人間チェッカー。コロナの話題さえすれば、その人がどんな人物がわかる。

こういう時事問題を扱う本の宿命として、出版される頃にはもう古くなってる情報もあるんだけど、コロナ禍における末端の医療現場からの実感とか、世界の見方のヒントとかが満載でものすごく面白かった。とくに内田樹さん、この方の書いたものは追っていこうと思う。

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●5年前に発売したデビュー作が文庫化されました!よろしくお願いいたします。