椚田のブログ  -93ページ目

ちひろとちとせ

うずくまるかなぶんソッと持ち上げし指に抗議の力つたわり

市立図書館に勤める友人が、担当する歌壇に少しでも投稿を集めたいとのことで、毎年一回、こんなシロウト短歌を送っている。基本のキの字も知らないので、好きな鳥や虫のことを五七五七七にはめ込むだけ。ところが、そうそうたる作品群とともに立派な本に載せて送られてくるので、その恥ずかしいことったら…

この夏はいくつか虫に縁があって、子どもの頃、図鑑を見てあこがれた脱皮したばかりのセミを見たり。
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こいつはなかなかの寝坊助で、一般的な通勤時間帯に青く透き透った羽根を乾かしていた。

あと、明治神宮から飛んできたのだろう。会社近くの歩道で、踏まれるのは時間の問題だったこいつ。
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抗議の力どころか、掴んだとたん、ミュイ~ンと声出しやがった。キモッ!
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カミキリムシの一種なのだろうが、結構さわるのに根性要った。ひとまず安全な場所に鎮座いただく。


さて。
西の旅空でも秋の虫がさかんに鳴いている。もうこの頃では、非日常感が薄らぐばかりか、国道はどこを走っても同じ風景。判で押したようようにデカい看板が立ち並び、ふっと遠くに来ていることを忘れてしまう瞬間がある。

あって当たり前の、なんやかやの負荷を、音楽に軽減してもらっているのはいつもの通り。今回ヘビーローテーションしているのは鬼束ちひろと元ちとせ(敬称略)であるが、ハマるに至った経緯が似ている。

鬼に関しては、テレビで観た「月光」にかなりのインパクトを受けてファーストアルバムを買ったのだけれど、なぜかちょこっと聴いて放置。
数年後、やはり引っかかるものがあったのか、今度はベスト盤を購入。しかしこれも一、二回聴いてそれっきり。
ところが2008年某日、車の中である曲に突然撃ち抜かれ、魂をワシ掴みにされてしまったのである。
もうどれだけ叩かれようが姿が変わろうが、彼女を味方する。

元ちとせの場合は、間隔がさらに長い。
「ワダツミの木」の衝撃は今でも忘れられないほどだったが、それだけに、この一曲で彼女のすべてを分かったような気になってしまった。
アルバムを聴いても「全部同じような歌に聞こえる」などと、的外れもはなはだしい感想すら持ったものだ。
遅まきながらこの夏、目覚めた。十年の歳月を要したが、今は再会できた喜びに浸っている。正直、彼女の歌声がない生活は考えられないほどで、ちょっとした中毒と言える。

というわけで、南国出身という以外、まるで共通点のないヴィーナスとうたしゃ(それと、もちろん歌姫)に癒されながら、ロングドライブにいそしむ日々なのである。














亀山ダム 9/7

泡だらけのシャロー。スモラバを泳がせては落とすことを繰り返す。次の動作に移ったとき、もう乗っていた。「来ました」ろしーたさんに声を掛ける。二度目の突っ込みであっけなくラインテンションがゼロに。恐る恐る竿先で聞くと、ジグの重みがない。

信じられないまたやってしまった。

バスさん、ごめんなさい…



ド下手くその話はここまで。

今回、初めてのエレキ操船で初めての湖を釣ることとなったろしーたさんだが、フライトから二時間も経てば、そんなことはまったく感じられなくなった。ボートコントロールはもとより、他船との間合い、ヘラ師の回避等についても、私があえてなにかを言う必要はなかった。

ろしーたさんはシャロークランクを軸に据えた釣りを展開、これはおそらく、総キャスト数の90%以上を占めていたと思われる。
バックハンドも駆使してレスターファインから放たれる弾道は正確に木立を縫い、加えて根掛かり等トラブルの回避が驚くほど巧み。
本当にここぞ、というピンを目にしたときのみピッチングロッドに持ち替えておられたが、その少ない機会で実際カバーからバスを引きずり出したのはさすが。残念ながらバレてしまったが、特筆すべきは、その後この釣り方にまるで執着しなかったことである。

あるブロガーさんが「巻き続けられる人間は案外いない」と評した通り、ろしーたさんの釣りは強靭だ。ローテーションは最小限であり、結果、信じたルアーを長時間水中へとどめることにつなげている。
亀山では、訪れる人すべてにスーパービッグの夢が与えられるが、それを現実として勝ち取れるのはこういうアングラーなのではないだろうか。

私は半分壊れていたのか、自分でも考えられないほど根掛かりを頻発させ、ろしーたさんをわずらわせた。

終了まで30分、最終エリアでキャストに集中するろしーたさん。そんなタイミングで、またしても根掛かり。ポール回収器が余裕で届くのに、取れない。じれた私は早々にラインを切り、ストップフィッシングを宣言した。あとは釣りに専念してください、と。
すぐさま「最後まで一緒に釣りましょうよ」という言葉が返ってきた。

この日、バス釣りの楽しみ方を教わったのは、間違いなく私の方だった。










FREE HUGS

あまり見込みのない商談のため、私鉄二線が乗り入れる中規模ターミナルで下車した。駅に面した横断歩道を大勢の人が行き交う。

通りを横切った先に、ひとりたたずむ若い女性が目についた。ハート型のボードを頭上にかざし、揺らしている。そこには「FREE HUGS」と書かれていた。抱擁無料ということか。過ぎゆく人々のチラ見にも、なんら臆するところがない。

手ごたえに乏しい商談を終え引き返すと、まだ女性は立っていた。キャップにTシャツというカジュアルないでたち。私は好奇心を抑えられず、彼女に話しかけた。

フリーハグとは、街角で見知らぬ人と抱き合うことによって、なにか良きものを生み出そうという運動。あるアメリカ人が始めて世界中に広まったようだが、私はこの日までまったくその知識を持たなかった。彼女は、あまたある偶発的な出会いを、能動的に、そして意味あるものにしたいとの思いからこの活動を始めたという。また、数をこなすことにも重きを置いており、すでに数千ハグをこなしている彼氏からの影響も少なくないようだ。

「いかがですか?」両腕を広げる彼女。

「ええ、是非とも」

むぎゅー!

鮮烈な体験だった。このときの感覚を表現するのはなかなか難しいが、いちばん近いのは平和という言葉かもしれない。


さて。


来週、ろしーたさんhttp://ameblo.jp/tasy1970/ との三度目の釣行が実現する。

少し前に飲んだとき、氏はボートフィッシングに関する思いをいくつかほのめかされた。釣りの技術はもとより、実生活とのバランスにおいても、すでにスタイルを確立されたベテランさんだ。新たな領域への興味もハードルも、両方分かるつもりの私は、なにもできない代わりに一度、存分にエレキを踏んでもらいたいと考えた。

このところクランキングに取り組んでおられるろしーたさんを、長門にお招きしたいのはやまやまだ。しかし、お互い気兼ねなくスタンディングで釣るなら、亀山の14フィートレンタル船に限る。

不定期ながら亀山に通い始めて十数年になるが、いまだ苦手でしようがない。もしかしたら育休前の最後の釣行になるかもしれないろしーたさんの、ガイドなんて勤まるわけもないのだ。

なので、丸投げすることにした。エリア選定から、なにからなにまで、好きにやってください、と。

この無責任な提案を、ろしーたさんは快く受け入れてくださった。

私はバックシートから、また違った亀山を見ることができるのではないかとほくそえんでいる。