同じく非課税の“保険薬価の現実”
第10回/18回
そこで同じく“非課税”である“保険薬価”について調べました。なぜならば、薬価は“国家が値付け”しているから。
厚労省の役人は、私が消費税のことを調べているなんて知らないから親切に教えてくれました。そこで例に出したのが“薬価の明細”(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/12/dl/s1203-8a.pdf)でした。PDFの8/19を開いてください、“ビルフィニドン”という新薬の薬価の明細が見られます。該当部分を引用すると、
製品総原価 446.40円
営業利益 148.80円
流通経費 49.00円
消費税 32.20円
算定薬価 676.40円
まず気がつくのは“消費税=32.2円”というのが見えます。そしてこの“32.2円”というのは、“製品総原価+営業利益+流通経費(つまり、製薬メーカー+流通までの価格=調剤薬局の仕入の本体価格)”の5%となっております。確かにここまでは財務省の役人の言うとおり。
ここで更に厚労省の役人に聞いたのですが、薬価というのは、調剤薬局の仕入値であるのと同時に、売価でもある、とのこと。つまり、調剤薬局は薬を販売しても一銭も利益は無いとのこと。(もちろん、薬を調剤する等の作業に点数があり、こちらで利益を上げる仕組み。)
国民は上記676.4円で薬を買うわけですが(実際は健康保険により、1-3割が患者負担)、薬価に限って言えば、売価の5%フルである32.2円の消費税を負担させられているのです。非課税なのに・・・・
局長通達の問題点
第9回/18回
“局長通達”の言わんとするところは、“住宅大家は、非課税となったら消費税を預かれないから、仕入税額控除が出来ない。よって、仕入税額控除相当額は「家賃のコスト」として家賃(税抜き)に上乗せしなさい。”ということですね。
そこで私が役人に指摘した問題点とは・・・・
1.免税事業者である住宅大家がどうやって“仕入税額控除相当額”を計算するのか?消費税の申告義務がない免税事業者に対して、その事務を強制するのは消費税の本筋にそぐわない。(青色申告で複式簿記を記帳していれば、簡単に出来るが、それとこれとは別問題である。)
2.国民は非課税の仕組みなど誰も知らない。唯一の“解説文である消費税のあらまし”にも、局長通達の内容は一言も触れられていない。ほぼ全国民が“非課税=税抜き価格で購入できる”、と理解している。そのような状況で、税抜き価格10万円の家賃に1,500円(税率3%)を上乗せできるはずがない。免税事業者である大家にはそのような知識を持つ義務も無いし、説明を受ける店子様も絶対理解しない。
3.建物建設を考えれば、この“局長通達が机上の空論”であることは明白。
<建物=2.4億円、120室/年 家賃収入1200万円、つまり1室当たりの家賃は10万円(税抜き)ということ>
2億円の建物に対しては、1200万円(現行5%)の消費税が掛かかります。消費税には所得税/法人税の減価償却のように“耐用年数”という考え方はなく、全て“1年償却”、仕入に関わる消費税1200万円はその年の家賃に上乗せせよ、というのが局長通達の2-1)。つまり“家賃を20万円(2400万円/120室)にせよ”ということ。ありえない机上の空論。
100歩譲って、“大家がリスクを負い、20年で当該1200万円を回収”するとなると、
1200万円÷20年=60万円、これを家賃収入1200万円に上乗せし、120室で割ると・・・・
家賃は105,000円となる。これに、通常経費の仕入税額控除相当額を賦課すれば、家賃は105,000円以上となる。
これは現行本則税率を乗じた105,000円より高くなる。
逆進性の解消を目的とした非課税は、大家が自分でリスクを負っても、税抜き価格に賦課したら本則税率の負担額より高くなる・・・・・こんな理不尽が通るか!
上記に対して、財務省の役人が言った言葉は・・・
“「値付け=家賃の決定権」は経営の問題、国家が介入すべきことではない。”と。要は議論しない、ということ。
大家はなぜ消費税の還付が受けられないか?
第8回/18回
それではこの通達について解説しましょう。
第4・5・6回で、“消費税の仕組み”についてお話しました。ちょっと復習しますと、
(預)かり消費税 - (仕)入税額控除額 = 納税/還付額
でしたね。普通は “預>仕”となるので“納税”しますが、赤字決算等で“預<仕”となった場合には、“還付される”と申しました。
ところがそもそも我々大家は、店子様から消費税を預かっておりません。つまり、常に“預<仕”となるのです。この場合、“課税事業者”であれば、一般的には“還付”を受けますが、我々は“免税事業者”なので還付の申告さえ出来ません。もちろん、“届けを出して課税事業者になる”手段はありますが、その場合でも、住宅家賃の売上しかなければ、“課税売上割合=ゼロ”となり、やはり還付は受けられません。
つまり、仕入に掛かった消費税=仕入税額控除相当額 を回収する術がないのです。
それではどうすればいいのか? その答えの一つが第7回でご紹介した“局長通達”なのです。
つまり、課税の状態で103,000円(家賃+消費税)を、税抜きの100,000円に下げてしまっては大家は“自腹を切る”ことになるので、101,500円にしなさい(不動産業のみなし仕入率=50%)、ということです。もちろん、大家さん毎に“仕入率”は異なりますから、極端な話当時の税率でいえば、“103,000円の家賃は、100,001円~102,999円(1円単位)にしなければならなかった”ということです。
どうでしょうか?これが消費税・非課税の仕組みなのです。
私はこれを財務省の役人から直接TELで聞いたとき、振るえが来たと同時に、即次ぎの問題点を指摘しました。
<続く>


