局長通達の問題点
第9回/18回
“局長通達”の言わんとするところは、“住宅大家は、非課税となったら消費税を預かれないから、仕入税額控除が出来ない。よって、仕入税額控除相当額は「家賃のコスト」として家賃(税抜き)に上乗せしなさい。”ということですね。
そこで私が役人に指摘した問題点とは・・・・
1.免税事業者である住宅大家がどうやって“仕入税額控除相当額”を計算するのか?消費税の申告義務がない免税事業者に対して、その事務を強制するのは消費税の本筋にそぐわない。(青色申告で複式簿記を記帳していれば、簡単に出来るが、それとこれとは別問題である。)
2.国民は非課税の仕組みなど誰も知らない。唯一の“解説文である消費税のあらまし”にも、局長通達の内容は一言も触れられていない。ほぼ全国民が“非課税=税抜き価格で購入できる”、と理解している。そのような状況で、税抜き価格10万円の家賃に1,500円(税率3%)を上乗せできるはずがない。免税事業者である大家にはそのような知識を持つ義務も無いし、説明を受ける店子様も絶対理解しない。
3.建物建設を考えれば、この“局長通達が机上の空論”であることは明白。
<建物=2.4億円、120室/年 家賃収入1200万円、つまり1室当たりの家賃は10万円(税抜き)ということ>
2億円の建物に対しては、1200万円(現行5%)の消費税が掛かかります。消費税には所得税/法人税の減価償却のように“耐用年数”という考え方はなく、全て“1年償却”、仕入に関わる消費税1200万円はその年の家賃に上乗せせよ、というのが局長通達の2-1)。つまり“家賃を20万円(2400万円/120室)にせよ”ということ。ありえない机上の空論。
100歩譲って、“大家がリスクを負い、20年で当該1200万円を回収”するとなると、
1200万円÷20年=60万円、これを家賃収入1200万円に上乗せし、120室で割ると・・・・
家賃は105,000円となる。これに、通常経費の仕入税額控除相当額を賦課すれば、家賃は105,000円以上となる。
これは現行本則税率を乗じた105,000円より高くなる。
逆進性の解消を目的とした非課税は、大家が自分でリスクを負っても、税抜き価格に賦課したら本則税率の負担額より高くなる・・・・・こんな理不尽が通るか!
上記に対して、財務省の役人が言った言葉は・・・
“「値付け=家賃の決定権」は経営の問題、国家が介入すべきことではない。”と。要は議論しない、ということ。