鬼川の日誌 -26ページ目

虐殺システム

  イスラエル軍の非道(A Iシステム)

 

 

  イスラエルとハマスとの間接交渉は結局破綻した。イスラエル軍は交渉

 最中の6日から始めた「限定的」とするラファでの戦闘を拡大するばかり

 でなく、13日には北部でも空爆、地上作戦を再び始めた。

  ラファの検問所のイスラエル軍の制圧で、支援物資が入らずガザ住民の

 飢餓が深刻化している。

  ガザ側の死者は3万5千人を越え、瓦礫に埋まっている人は1万人以上

 といわれている。

 

  バイデンはラファ「本格侵攻」の場合は武器を供与しないなどと表明

 するだけでこれを止めることは出来ないでいる。米国内でのパレスチナ人

 虐殺に対する抗議行動を気にしたアリバイ作り以上ではない。

 

 

  * 民間人(女性、子供たち)の犠牲が増える仕組み

 

  ガザ住民の犠牲者のうち約7割を女性と子供たちが占める。このイスラ

 エル軍のガザ攻撃がとりわけ非道なのには理由がある。

 

  イスラエル軍は高解像度のカメラを搭載した巨大な監視気球でガザ住民

 の動きを一日中監視、記録している。

 

  イスラエル軍は「ラベンダー」と「パパはどこ?」という二つのA Iシス

 テムを使っている(これにはガザ全住民のデータを入れている)。

 

  「ラベンダー」は標的を選ぶシステムで、3万7千人のハマス戦闘員(と

 思われる)を抽出、このデータを基に、「行動の相似性や交流関係、通話

 歴などを点数化し、上位を戦闘員(標的)」にする。

  これはもちろんA Iによる推定だ。誤差は考慮に入らない。

 

  「パパはどこ?」(ふざけた名をつけている)は行動監視システムで、

 この行動監視システムに「標的」が登録され、標的が「帰宅した時点で

 爆撃のゴーサインが出る仕組み」になっている。「自宅を爆撃対象にした

 のは捕捉が確実なためだ。当然、家族は巻き添えになる。」

 

  イスラエル軍はこの巻き添えを戦闘員一人につき15人から20人と許可

 しているのである。ハマスの大物の場合は100人以上巻き添えになっても

 構わないとする。

  (ネタニヤフや極右派はパレスチナ人を人間とは思ってない。)

 

  さらにこの爆撃には「戦費削減のため、誘導装置のない精度の低い大型

 爆弾を使」い建物全体を破壊する。当然周辺住民の犠牲も増える。これは

 当たり前のこととして織り込んでいるというとんでもないものだ。

  こんな非道なパレスチナ民間人の虐殺を許していいわけがない。

 

 

  *引用は(『東京新聞』5、14  『視点』田原牧)

 

  

 

大詰め

  休戦はなるのか?

 

 

  5月7日でガザで戦闘が開始されてから7ヶ月も経つ。ガザ地区の死者

 は3万4千人を越えている。

  4月になり戦闘の終結を匂わせる「持続可能な平穏の回復」という曖昧

 な文言が入ったイスラエルの休戦案が提示された。早速アメリカはこれは

 イスラエルの大幅な譲歩で、応じないハマスが悪いという国際世論を作ろ

 うと画策した。

 

  イスラエルによるパレスチナ人虐殺に抗議する学生デモが全米に広がり、

 秋の大統領選に向け若者やアラブ人、イスラム教徒らの支持離れに苦慮す

 るバイデンのイスラエルに対する圧力があったと思われる。

 

  6日エジプト、カタールによる3段階の休戦案の受け入れをハマスが表

 明した。これには「軍事・敵対行為の恒久的な停止」「イスラエル軍のガザ

 完全撤収」との表記が盛り込まれている。

 

  しかしネタニヤフはこれをイスラエルの「要求とかけ離れている」とし

 て応じる可能性は低い。7日イスラエル軍はガザ南部ラファの東部を空爆

 し、限定的な地上作戦を開始、エジプトとの境界にあるラファ検問所を制

 圧しハマスへの圧力を強めた。これで国連のガザへの援助が遮断された。

 

  イスラエル国内ではハマスの奇襲の責任を取りネタニヤフは辞任すべき

 との世論が62%に上りネタニヤフ退陣の圧力が強まっているが、戦闘終結

 合意が(極右派の離脱)戦時内閣の崩壊=即退陣に繋がるのでネタニヤフ

 はあくまで戦闘を続ける以外にない。合意のいかんに関わらずラファへの

 侵攻は止めないと繰り返してきたし、今回の東部での「限定的」作戦の開

 始となった。

 

  しかしイスラエルもエジプトへの交渉団の派遣は続けていて最後の駆け

 引きが続いている。これまでも繰り返し交渉は崩壊してきた。

  何らかの合意がなるか決裂しラファへの侵攻が拡大されるか分からない

 が、ガザ市民虐殺が収まることを願うばかりだ。

 

 

 

ガザ間接交渉

  パレスチナ人虐殺が止まらない

 

  

 

  4月23日までにガザ南部ハンユニスのナセル病院敷地内で虐殺され埋め

 られたパレスチナ人の遺体が310人も見つかった。北部の病院敷地内でも

 多数の虐殺遺体が見つかっている。このナセル病院の遺体は28日までに

 計392体掘り起こされた。普通ならこれだけでもイスラエルの暴虐に対し

 て国際的な糾弾が巻き起こっても不思議ではないはずのものだ。

 

  ところが今やガザでの死者は3万5千人近くになり、数百人の虐殺遺体の

 発見では少しも驚かれなくなってしまっている。酷い話だ。

  百万人単位のパレスチナ人が飢餓に追い詰められている状態は悪化する

 ばかり。子供たちが飢え、衛生状態の極端な悪化で病気で死んでいる。

 

  こうした中ハマスとイスラエルの間接交渉が続けられているが、米国側

 はイスラエルが「寛大な提案」をしているのにハマスがこれを拒否してる

 ため和平合意がならない、という構図を作ろうとしているようだ。

 

  しかし他方ネタニヤフは「戦闘休止の合意の有無に関わらず」ガザ南部

 ラファに侵攻しハマスを壊滅すると述べているのである。ネタニヤフは

 極右派と停戦、人質の解放を求める市民の声のバランスを取っているつも

 りだが、政権基盤がそれだけ綱渡り状態に追い込まれていることは間違い

 ないようだ。

 

  ネタニヤフはハマスとの間接交渉に対して揺さぶりをかけているわけで

 もあるが、間接交渉の一方で依然としてラファに対する空爆は止む事は

 なく多数の市民が殺され続けている。これではハマスの反発は必至である。

  間接交渉の行く方は暗い。

 

  *

  米国内ではニューヨークのコロンビア大学をはじめとした全米各地の

 大学などでイスラエルのガザでの虐殺に抗議するデモが広がっている。

 既に逮捕者は千人を越えたそうだ。

 

  パレスチナ人虐殺に対する抗議はイスラエル寄りのバイデンに対する

 批判となりいよいよ秋の大統領選挙への影響が必至となりつつある。

  ミシガン州などイスラム教徒が多く勝敗に直結する激戦州などでは

 「アラブ系とイスラム教徒が次の大統領を決める」事になりそうだという。

 彼らはトランプは論外だがバイデンを支持しない。

 

  ニューヨークはかつてから「ジューヨーク」といわれるようにユダヤ系

 の力が強く、コロンビア大学の学生の抗議、キャンパス占拠などに対して

 の弾圧が直接的な警察力によるものだけではなく、大学側へのユダヤ社会

 (資本やロビー)からの締め付け、圧力という形で厳しいのが極めて特徴的

 である。米国社会の有り様に直結している。バイデンもユダヤロビーの力

 に屈してイスラエルを支持せざるを得ないのである。

 

  *

  アラブ人やイスラム教徒も多い移民社会米国ならではの抗議行動とも

 言えなくはないが、しかし日本の学生たちのこのガザ戦争に対する反応は

 情けないほど対照的にほとんどない。今や労働運動は完全に御用組合に

 牛耳られ(メーデーで安倍や岸田を来賓に迎える体たらく)、大幅賃上げ

 は中小にはまるで行き渡らず、学生たちも社会問題に何一つ声を上げる

 こともなく全社会的な抗議活動はほとんど見られない。

  まさにここにこそ日本社会の活力のなさが端的に現れている。

  多様な声はどこにも聞こえない。

 

  経済的にも日本社会の衰退を如実に示すものとして恐ろしいほどの円安

 (日本売り)が進んでいる。一時160円を越えた円安は日銀の断続的な介入

 で155円前後まで戻したがすぐに円安方向に振れている。大体155円などと

 いうのが少し前まではびっくりするような水準だったはずなのだ。

 

  FRBがアメリカの金利が当分の間下がることはないと発表したし、他方

 日銀は利上げに踏み切れない以上また円安が進むことは避けられない。

  どう見ても今の日銀総裁は円安を容認しているとしか見えない。

 

  この悲惨な日本社会の状態は政治、経済、軍事、全ての面にわたる対米

 従属社会の完成(アベノミクス)の結果に他ならない。

  岸田はそれを受け継ぐだけで手も足も出ない。何をどうするかの志向も

 ないだけではなく、何かをする力ももはやない。

  目前には円安による空前の物価高。庶民は追い詰められるだけだ。

 

  (補)

  米国の大学は高い学費を元手にイスラエルに投資し利益をあげている。

 結局自分たちの学費がパレスチナ人の虐殺に手を貸している、この構図に

 対しても学生たちは抗議しイスラエルとの断絶を要求している。