20億歳の微生物 | 鬼川の日誌

20億歳の微生物

  20億歳の微生物 

 

 

 

  南アフリカの地下に広がる20億年前の地層の岩石の中から、生きている

 とみられる微生物を採取することに東京大学の研究チームが成功した。

  (DNAを含んだ細胞が見つかり、細胞内からは生きた生物が作り出す

 たんぱく質も検出された。)

 

  近年、分析技術の向上によって地下には大量の微生物が生きていること

 が明らかになり、その量は地上や海の中の生物の総量を上回るとみられて

 いて、地下が生命誕生の場の新たな候補として注目されるようになって

 きていた。

 

  こうした地下の生態系を支えるメカニズムの1つに「蛇紋岩化反応」と

 呼ばれる岩と水との反応で、岩からは水素やメタンなどが生成され、それ

 らをエサにすることで岩の中の微生物は長期間にわたって生き続けること

 が知られてきた。

 

  南アフリカの地下の岩石はこの蛇紋岩化反応が起こりやすいと言われる

 「かんらん石」と呼ばれる鉱物が豊富に含まれていることから、20億年前

 当時にすみついた微生物がいまも生き続け、しかもほとんど進化せずに

 当時の姿をとどめ、地球に誕生した初期の生物の特徴を色濃く残している

 可能性が高いという。

 

  今回見つかった微生物は生きているとみられるため、DNAやゲノムを

 解析することが可能であり、研究チームは「生命の起源」の謎を解明する

 糸口になるかもしれないと期待している。

  (7月18日、『NHKニュース』)

 

  *

  実は1970年代後半に深海の熱水噴出口や高温の温泉(アメリカのイエ

 ローストーン国立公園の間欠泉)など、100度Cを超える高温でしか生き

 られない「古細菌」が発見され、もしかするとこうした環境や地下その

 もので、(40億年前の地球環境を考えれば)地球の生命は生まれたのかも

 しれないとなってきた。

 

  もう一つは石油の起源への疑問から始まったらしい。石油は生物の遺骸

 が地下に埋まり変成を遂げて出来たという説が主流派である。ところが

 石油層には必ずヘリウムが伴うとかイリジウムが異常に多いとか、生物

 起源説では説明し難い数々のパラドックスがあるそうだし、誰も生物から

 石油を作った人はいない。

 

  石油の主成分である炭化水素(一番簡単なのがメタン)は、木星などの

 惑星や宇宙の至る所にあり、地球の内部に含まれていて少しも不思議では

 ない。こうした地中の炭化水素が岩石の隙間を縫って少しずつ上昇し逃げ

 て行く過程で生まれるのが石油や天然ガスだと主張したのが、旧ソ連の

 科学者たちとトーマス・ゴールドという学者だった。

 

  石油の生物起源説は、生物の遺物である生体高分子が石油にたくさん

 含まれているからであるが、ゴールドは地下の岩石の隙間には炭化水素を

 食物として多量の微生物が生きており、これが炭化水素を食べ、その遺

 骸が大量に石油に混じり込んだと考えたのである。

 

  実際ゴールドは生物起源説では石油などありえないはずの花崗岩地帯を

 ボーリングして、地下6キロメートルから石油とバクテリアを発見して

 見せた。その後地下の微生物の量は地表の生物の総量を上回るかもしれ

 ないと計算されたそうである。

 

  これからゴールドは原始地球の高温、無酸素の状態から考えて、地下に

 住む超高熱細菌こそ地球生命の起源後の姿ではないかと主張する。

  (さらにゴールドはだとすれば太陽系のどの惑星でも、地下には地球と

 似た条件があるはずで、原始的な地下微生物が生息しているかもしれない

 とする。)

 

  (『未知なる地底高熱生物圏ー生命起源説をぬりかえる』

      トーマス・ゴールド著 大月書店 ’00 )

 

  *

  今回、南アフリカの岩石の中から20億歳といっていい生きている細菌が

 発見されたことは、このゴールドの説をさらに裏付けるものとなるに違い

 ない。

  とりわけDNAの分析が進めば、20億歳の原始的生命の実像が解き明か

 され、生命の起源の謎に一歩近づくことになるかもしれない。