鬼川の日誌
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生命のデフォルト(基本仕様) 1

​​​​​​   生命のデフォルト=基本仕様  

              (アリマキ的人生、SRY遺伝子、続き)   

                    (19年記、補記)


  子宮の奥で受精が成立した瞬間から、受精卵のプログラムはスタートし、

 一瞬の立ち止まりもない不可逆な進行を開始する。この段階では受精卵の

 染色体型がXXなのか、XYなのかは判別できないし、どちらかに関わら

 ずプログラムは生命の基本仕様にしたがって展開する。

  受精卵は分裂して倍々に増え瞬く間に膨大な数となり、球状の細胞塊、

 ボールのような中空のがらんどう構造をとる。やがてボールの皮(細胞で

 埋められた)の一部が内側に陥入し(原腸)、反対側に達して開口しミクロ

 なチクワができる。

  最初に陥入した部分が肛門となる。(反対側は口となるわけだ。)

 

  *(原理的にいって消化管は私たちの身体の中心を突き抜ける中空の穴

  である。私たちの遠い遠い祖先は、現在のミミズやナメクジのような

  存在だったのだから。ナメクジウオがそれだと言われている。)

  この後チクワに皺が寄ったり、くびれが出来たり、突起が伸びたりして、

 前後と左右が区別される。徐々に生き物らしい形をとる。そして受精後6

 週間ほどが経過するとその生き物は1センチほどの大きさになる。不釣合

 いに大きな頭に、目や耳と思しき小さなくぼみや突起ができる。

  * 人も生命の基本仕様は女である

  小さなトカゲのように見えるこの生き物は次の1週間に急速にヒトらし

 くなる。頭が丸くなりそれを支える首ができる。手足が伸びる。体長は

 2センチちかくになる。尾が消えておなか、お尻、太ももがはっきりする。

  この時点では染色体型がXXであろうとXYであろうと、太ももの間に

 は割れ目がある。すべての胎児は約7週目までは同じ道を行く。生命の

 基本仕様は女なのである。この後基本仕様に何ら干渉がなければ、割れ目

 は立派な女性の生殖器となる。

  もしこの子が男の子になろうと思うなら、何はともあれ割れ目を閉じ合

 わせなければならない。これが肛門から上に向かっての一筋の縫い跡で俗に

 「蟻の門渡り」と呼ばれている。これこそが生命の基本仕様にカスタマイズ

 がかけられたことを示す痕跡なのであり、それを行ったのがSRY遺伝子

 である。

  約7週目の頃Y染色体があれば、特別なタンパク質の働きでSRY遺伝子

 のスイッチがオンになり、それにしたがって次々と流れ降る小滝のように

 (カスケード)特別なタンパク質が作られ様々な遺伝子のスイッチがオンに

 なる。
  
  それらは女性生殖器を形成するもととなる組織を壊す指令を出す。

 そして作りかえ=カスタマイズが、割れ目の閉じ合わせ作業が行われる。

  また男性ホルモン(テストステロン)が生産され放出される

 これによって原始生殖細胞(卵細胞になるはずだった)が精巣となり下降

 して、縫い合わされた袋状の場所(陰嚢)に納まり睾丸となる。

  その後は睾丸からテストステロンが放出され続ける。
 
  もちろん完全に縫い合わせると尿も精子も外へ放出することが出来ない

 から尿と精子が通過できる細い空洞を残しながら割れ目は閉じられていく。
  さらにどのように女性器から男性器が作られていくかは実に興味深い話

 ではあるが、残念ながらここでは割愛する。
 ( 第六章、ミュラー博士とウォルフ博士・・ミュラー管とウォルフ菅 )

  「男性は、生命の基本仕様である女性を作りかえて出来上がったもので

 ある。だから、ところどころに急場しのぎの、不細工な仕上がり具合に

 なっているところがある。」


  要するにSRY遺伝子の働きで、女性としての基本仕様が途中からカスタ

 マイズされて男性が作られていく、つまり文字通りイブからアダムが作られ

 るのであり、その逆ではないのである。

  (続く)
 
   

 

 

SRY遺伝子 2

  SRY遺伝子   (続き)

 

 

 

 * SRY遺伝子の発見

  父と母由来の二つの相同の染色体の間で、部分的に交換が起こり、情報が
 混合されシャッフルされる。
  しかしX染色体とY染色体は性決定のメカニズムにおいては一対になって
 ふるまうが、大きさが極端に異なり、内包されている情報も互いに対応して
 いない。だからXとYの間には遺伝情報の機能的な交換はない。

  しかしごく稀にミステイクは起こりうる。
 男性の場合、46本の染色体は二分されて22+Xと22+Yと二つの
 精子に振り分けられる。
  そのときたまたまY染色体を綴じている糸がほつれて、その一部のページ
 がX染色体の(あるいは他の染色体)間に紛れ込んでしまう、「落丁」ある
 いは「乱丁」とでも呼ぶべき事故が発生しうるのだ。

  そのちぎれて本来の場所ではないところに紛れ込んだ情報が、男を男たら
 しめるために必要な一番最初の重要情報だとすればどうなるか?

  このどこかにYのほんの一部を潜ませている精子は分類上は22+Xで
 ある。この精子は卵子(22+X)と受精して、遺伝子型は44+XX
 つまり女性であるはずである。

  にもかかわらず、紛れ込んだY染色体の一部から、男性化の命令が発せら
 れやがてその個体は外形的には睾丸とペニスを有する男の姿をとることに
 なる。
  これがXXmale(女性型男性)である。(両性具有。)

  これとは逆のパターン。
  Y染色体の男を男たらしめる重要情報が書き込まれた部分の落丁が発生し
 うる。そのようなY染色体を振り分けられた精子の遺伝子型はなお22+Y
 であり、受精すれば44+XYつまり男性型の染色体を持つ。しかしY染色
 体上には男性化の指令が欠落している。

  Y染色体から男性化の最初の命令が発せられなければ、この個体は本来の
 プログラム=デフォルトの発生を行う。生命の基本仕様は女性で、仮にXY
 の遺伝子型でも女性となる。
  これがXYfemale(男性型女性)である。
  (これも両性具有の一形式。)

  そしてこの自然のミステイクとしてのXX型maleの中に紛れ込んで
 いるYの断章を探し出し、またXYfemaleのYの内部から落丁して
 しまったページを割り出し、そのページを原典と照合すれば、男を男たら
 しめている命令の実体を見つけることが出来ると探索した分子生物学者たち
 がいたのである。

  この男を男たらしめる遺伝子探しは分子生物学者たちの第一発見者とし
 ての栄誉をかけた熾烈な競争の中で成し遂げられた。

  (福岡ハカセはこうした学者同士の熾烈な争いの人間くさい側面を浮き彫
 りにしてくれるが、これが実に面白い。これは読んでもらうしかない。)

  それがSRY遺伝子である。
  (Y染色体の中の性Sex決定領域Regionという意味である。)

  この性決定(男性化)遺伝子に必要な条件

 1 Y染色体上にのみ存在し、他の染色体上に類似の遺伝子は存在しない。
 2 すべてのXX型男性の症例において、その遺伝子が乗り移ってきている。
 3 すべてのXY型女性の症例において、その遺伝子が落丁している。
 4 その遺伝子は、他の遺伝子のスイッチのオン・オフに関わる上位の遺伝
   子であり、その証拠としてDNAに結合しうる特徴的な構造をコード
   している。(少々専門的で?)
 5 男性への分化を果たす細胞(たとえば精巣)で、その遺伝子は活動
   (スイッチ・オン)している。
 6 Y染色体が男性を決定している他の生物でも、類似の遺伝子がY染色体
   上に存在する。

  そしてさらに必要にして十分な7番目の条件として「SRY遺伝子さえ
 あればXX型染色体を持つ受精卵を男性化できる」という証明がマウスを
 使ってなされたのである。

  ** ミステイク

  生命の誕生に関わるこうした自然のミステイクがありうるということ、
 現にXYfemaleやXXmaleが存在しているということ、このことがいわゆる
 「性同一性障害」と即同じことではないようだし、LGBTの人たちとどの
 ように関係しているのかは不勉強で分からない。
  が、遺伝子上は男なのに外見が女であったり、遺伝子上は女なのに男で
 あったりしうるということを私たちは知ることが出来る。

  「男のくせに」とか「女なのに」とかはこの場合通用しないことを知る
 べきなのだろう。このことを知るだけでも私たちの無知、偏見から一歩を
 踏み出すことが出来るはずだ。

   (SRY遺伝子 了 次章に続く)
  
  * デフォルトといえばギリシャのデフォルト=債務不履行が大問題と

  なったことがある。
   パソコン用語でデフォルトといえば初期設定のプログラムを意味する。
  生命のデフォルトは基本仕様プログラムのことで後者になる。
  次に生命のデフォルトについて福岡ハカセの記述を追ってみる。
  

SRY(Sex Region Y)遺伝子 1

​​​​​​  SRY(Sex Region Y)遺伝子 

        (アリマキ的人生、続き)  (18年記、再記)

                              

  アリマキのオスを哀れと思うなかれ。ヒトであってもその基本的なオスの

 役割は変わらないのである。

  * ヒトの染色体についてオサライ

  「私たちヒトは父から23巻、母からも23巻の書物をもらい受ける。

 各巻はそれぞれ大きさとページ数が異なる。しかし父由来の書籍と母由来の

 書籍の各巻は互いに相同である。つまり父の第1巻と母の第1巻は同じ

 ボリュームであり、内容もほぼ同じである。第2巻、第3巻と以下同様に

 対応関係が続く。」

  精子および卵子によって運ばれた23巻ずつふたそろえの百科事典は

 受精卵の中で合一され、全46巻の一大叢書となる。受精卵が分裂して二つ

 に分かれるとき、46巻の叢書は(写本が作られ)、46x2セットとなり、

 分裂したそれぞれの細胞へと分配される。
 
  私たちの身体のすべての細胞は、脳でも心臓でも膵臓でも、その細胞核の

 内部に同一内容の全46巻の百科事典をもつことになる。ヒトは6兆個もの

 細胞から成り立っているといわれるのだから、これは想像を絶する。

 (46巻*6兆個)

  唯一の例外が精子と卵子である。

  それぞれを作り出すもととなる細胞があり、それには全46巻の百科事典

 が並んでいる。この細胞が二分裂して精子もしくは卵子を作り出す

  このとき46巻は倍加されず、46巻を二つに分けて23巻ずつにする

 もともと46巻は父と母から来た23巻ずつのセットであったから、元の

 状態にもどすことになる。

  ただし今作られる精子または卵子の1セット(23巻)は父と母から

 もらったそのままの23巻ではない。父と母がくれた23巻ずつの百科事典

 は混ぜ合わされシャッフルされている。だがこのシャッフルはでたらめに起

 こるのではない。


  事典には第1巻、第2巻、第3巻と名称がつけられており、同じ巻の同じ

 章にはほぼ同じ内容が書かれている。しかし文章ごとにほんの少しずつ異

 なる表現、異なる描写が含まれている。

  シャッフルは父の第1巻と母の第1巻との間のそれぞれ対応する章の間で

 細胞分裂ごとに交換が起こるのである。ここで文体の微妙な差が混合され

 交流が生じる。この情報交換こそが私たちに多様性と変化の可能性をもたら

 しているのである。

  だからあなたはあなたの父または母と似ているけれどそっくり同じという

 わけではなく、あなたの子どもも、あなたとあなたのパートナーと似ている

 ようで似ていないのである。

 同じ父母の兄弟姉妹でも全く同じ組み合わせは二度と起こらない

  「一方、百科事典全体から見ると構成自体にそれほど大きな変更は起こら

 ない。だからこそ私たちの種としての基本形が保たれているのだ。ミクロを

 変えつつマクロを保っているのである。」

  * Y染色体

  女性の場合もとになる細胞が二分裂して二つの卵子が作られるとき、

 全46巻は、均等な23巻ずつに分けられてそれぞれの卵子に分配される。

  しかし男性の場合精子のもとになる細胞が二分裂して二つの精子になる

 とき同じく46巻が23巻ずつに分けられるのだが、この2セットは均等

 ではない。

  46巻のうち最後の1巻だけはなぜか際立って小さなものなのだ。
  これがオスをオスたらしめているいわゆるY染色体である。
  だから二つの精子の一方には23巻、他方には22巻と小さな1巻

 (Y染色体)となる。

  このY染色体に対応して、小さくない第23染色体(性染色体)を

 X染色体と呼ぶ。
  卵子の場合は22+Xが二つ。
  精子の場合は22+Xと22+Y。
  そしてこの組み合わせから、

 ヒトは44+XX(女性)か44+XY(男性)となる。(全46巻)

  *** 誤植?
  (この本の「第七章 アリマキ的人生」 の中で「ヒトの体細胞は、

 23本の常染色体(性染色体以外の染色体)をそれぞれ2組ずつと、

 性染色体XX(メス)かXY(オス)を持つ。精子はこれが半分に分配され、

 23+Xと23+Yの精子が半々に作られる。

  メスの卵子は、XXが均等に分配されるので、23+Xの1通りとなる。」

 (p179)とされている。
  これは明らかに勘違いか誤植であろう。これでは ヒトの染色体は全

 48本となってしまう。)


  本屋に立ち寄ったらこの本があり、蔵書にしてもいいかと購入しこの部

 分をチェックしてみたら直されていなかった。08年初版第1刷のままだ

 から、増刷するほどは売れてないのかな?ハカセも新しい本を次々に出して

 いるから昔の本をチェックしている暇はないのかも。(18年の話)

  この情報がハカセの元に届かないというのもおかしな話だな?

  ***
  
  X染色体はY染色体の5倍くらいの大きさを持つ。男性のみなもとYは

 遺伝子レベルで見ると、極めて頼りないちっぽけな存在なのである。
  それでも書物で言えば1ページ1000字で数万以上のページからなって

 いる。

  このY染色体を受け取ったものがオスとなるのだが、オスとなる変化の

 動因は書物全体に書き込まれた内容が総合的に作用して初めて現れるので

 はなく書物の限られた場所に書かれたいわば鍵のようなものが変化の契機

 を作り出すらしいということが分かってきた。

 

  (続く)

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