本日は仕事術 プログラミング学習についてをお届けします。
非IT系企業において、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を強化するためにデジタル人材を育成しようと考えている人に参考になる仕事術です。
情報システム部門以外の人員を再教育してデジタル人材として戦力化しようということを考えている人事部門や予算管理部門の人に読んでもらえたらと思います。
企業におけるDX推進のためのデジタル人材向けプログラミング学習で、よいカリキュラムで学習すれば基本的なPC操作ができる人材であればプログラムをするところまでは短期間に到達できるはずです。ただし、概念的なことばかり扱っていたのでは勉強が業務に役立つのか実感できないので学習意欲が上がりません。現場で使えることが何よりも大切です。
プログラミング学習のステップは、プログラミングをするための環境(開発環境)を構築する、サンプルプログラムを動かしてみる、サンプルプログラムを改良してみる、プログラムに用意された関数のリファレンスやライブラリを応用してプログラムを作れる、業務を自らプログラミングしたプログラムで改善できるという段階を踏みます。現場をよく知っている人がデジタル技術を使えるようになると今よりも良くなるという成功体験を積むことが大切です。サンプルプログラムを改良できるところまでできれば、他の人のプログラムコードを読むことができ、プログラムの改修もできるので初級プログラマとして働くこともできるレベルになってきていると言えます。
成功体験の例としてはインターネット上に、小型ボードコンピュータのRaspberry Pi (ラズベリーパイ)で設備稼働情報を「見える化」して、Webやアプリに表示させるIoTの事例がたくさんあります。Webページに詳細な事例と動画やプログラムのコードまで掲載してくれているところがあります。企業内ではプログラミング、電気回路、電子工作がそれぞれ得意な人とチームでDXを進めるといいと思います。これからは稼働状況を機械のところまで見に行ってExcelで集計することはもうありません。異常ステータスを検知してスマホの通知に表示させて保守員を呼んだり、稼働時間と異常の間隔の記録を蓄積して保守計画に役立てたりと業務を改善できます。工場にセンサーを追加して様々なデータを計測して、業務改善に役立てることができると、次に工場を新設するときにはどんなセンサーをあらかじめ搭載しておけばよいか、データをどのように活用すればよいのかという知見を得られるのでDXの最終形に近づけることでしょう。
設備を持たない業種であれば、データドリブンな経営として売上データやマーケティングデータ、WEB解析データなど、データに基づいて判断・アクションするために、データを蓄積、分析するためにプログラミングを活かせます。
いずれの業種においてもプラットフォームにはオープンなアーキテクチャを採用して、様々なプログラミング言語を使えるようにすることで自由度が高まります。内製化するとその企業内のみでしか通用しない技術を使いたがることがありますが、そうしてしまうと優秀なデジタル人材は成長できない環境に嫌気して出て行ってしまいます。他所よりも高い報酬を出し続けることは企業の利益追求を考えると無理があるので、同等の報酬でも技術的に成長できる環境を提供することが大切です。電子工作用の材料・シングルボードコンピューターの調達、プログラミングをする端末(PC)・サーバの性能であったり、ディスプレイ、キーボード、マウス、デスクやチェアのような物理的な環境の良さが大切です。プログラミングに行き詰まる原因はさまざまですが、環境構築で行き詰まる比率が少なくありません。教材や学習内容の不満からモチベーションが低下して、わからないことを解消できずに挫折してしまうことが多いようです。
余剰の端末やサーバを初心者に活用させるのはトラブル、挫折の原因です。教材の手順の通りに操作しても動作しない不具合を生じやすいのは機材が古く故障していたり、OSサポート切れだったりすることがあります。基本的な環境はしっかり整えた方がよいです。
業務でアマゾン(AWS)、グーグルなどのクラウドサービスを自由に使えるか、簡単な承認手続きで使えるようになっていることも重要です。プログラミングの勉強のために申請して使わせてくれるような企業文化を持っているならともかく、計画を作って費用と利益見込みを算出したうえで予算を獲得するのに1年以上かかるようなところでは若者は働きたがりません。元気な時期に待たされるような感覚になります。予算獲得では有償ソフトウェアのライセンス、社外研修などについても同様です。こうした手続きも生まれた時からネットショッピングやコンビニがある生活慣れた若者に合うようにデジタル化する必要があります。DXで何から手を付けたら良いかわからないという経営者向けの営業トークがありますが、私はDXは社内制度からと言いたいです。デジタルを正規(本流)とするという考え方です。プログラミングして設備をIoT化してもその結果を社員が取りまとめて会議で経営者に報告するのではDXはまだ途上です。DXするからにはデジタルで完結するように仕事の報告と成果もデジタルで実施してほしいです。
実装の面でITの世界の変化が速くて、実践的であればあるほどカリキュラムが陳腐化しやすいです。これから新しくDXをやるのにその研修で学習する内容が古いなと違和感を感じます。IT特性のもともと高い人であればこの会社は遅れていると感じるはずです。これは特にデジタル人材として強化しようとする際に注意した方がよい視点です。独学でプログラミングを学んできた私にとっては学習教材を使ったカリキュラムでは物足りなく感じることもありましたが、情報処理技術者試験の合格体験から体系的にきちんと学ぶ大切さも理解しています。
プログラミングの最先端の情報を得るためには持続的に興味が欠かせないです。そのプログラム言語の公式サイト、コミュニティからの情報収集を継続的に行っていくのはもちろん、周辺領域にも広げてキャッチアップしていきます。
ここからは話は義務教育のプログラミング学習について広げます。今年から実施されている新指導要領では情報の授業でプログラミングが社会でどう活用されているかについて学ぶ取り組みが行われるようになりました。情報Ⅰは高校の必修教科であり、大学受験の試験科目にもなるので、これから数年後に入社してくる人は日常生活でもデジタルネイティブで情報科の授業も受けているので、クラウドやAIについての前提知識をもってきます。プログラミング学習の業務研修では仕事に直結した充実した内容が望まれます。
参考リンク:
・新小学校学習指導要領におけるプログラミング教育 [文部科学省]
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1375607.htm
教育指導事例としてScratch、micro:bit、IchigoJamなどを使用した事例も紹介されています。
・プログラミング教育ポータル
https://miraino-manabi.mext.go.jp/
プログラミング言語「Scratch」を使った学習コンテンツがあります。
・小学校プログラミング教育における民間企業による指導案等の提供について
https://miraino-manabi.mext.go.jp/content/518
小学校社会科見学向けに日産自動車株式会社追浜工場で、日産のプログラミング教室と工場見学を一緒に体験する特別ツアー、グーグルの「AI とプログラミングで身近な課題を解決しよう」指導案、株式会社NTTドコモのダンボールと電子部品で構成されたロボット『embot(エムボット)』を使ったプログラミング教材で「プログラミングと未来の暮らし」を想像できる指導案、株式会社しくみデザインや株式会社ディー・エヌ・エーによる「自分の住むまちの魅力を発信する案内アプリを作ろう」指導案、株式会社Preferred Networksの最先端のお片付けロボットを紹介する動画や、Preferred Networks提供のScratchプログラムによる「自動化の進展とそれに伴う自分たちの生活の変化を考えよう」の指導案の紹介があります。
・高校向け情報
https://miraino-manabi.mext.go.jp/content/497
令和4年度から実施される新高等学校学習指導要領にて必履修科目「情報Ⅰ」が新設されて、プログラミングのほか、ネットワーク(情報セキュリティを含む)やデータベースの基礎等について学習します。
また、「情報Ⅰ」に加え、選択科目「情報Ⅱ」を開設し、「情報Ⅰ」において培った基礎の上に、情報システムや多様なデータを適切かつ効果的に活用し、あるいはコンテンツを創造する力を育成するカリキュラムです。
仕事術 プログラミング学習についてでした。