メッセンジャー | SFショートショート集

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SFショート作品それぞれのエピソードに関連性はありません。未来社会に対するブラックユーモア、警告と解釈していただいたりと、読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。長編小説にも挑戦しています。その他のテーマもよろしく!!

本編は「クリスタのメッセージ」・・・続編です。

 

「あなた方の核廃絶に向けての提言を待っていました」

シャリーの返信はとても簡潔だった。

「強制からは何も生まれません。地球人自らの決断を望んでいました。銀河連邦は核廃絶を全面的に後押しします。そのための協力を惜しまないでしょう」

 

 その後・・・

 

 地球上の核保有者たち、特に核を放棄できないと主張する独裁者達に向けたメッセンジャーとしてスーパーツインズの二人が、そしてラクサム人たちも一役買ってサポートすることが決まった。理由は、スーパーツインズはヒューム人の”血の継承者”であり、ラクサム人たちは実際の宇宙人として、宇宙的視野を前提としたメッセージを発信するのにふさわしいと判断したからである。

 

 グローバルネットワークを使って全世界の核保有者たちにアクセスすることで、メッセージを発信する用意を整えていた。予め全世界のメディアを通じて、彼らに重要なメッセージを発信することを伝えていた。

 

 最初にカーラとメグがグローバルネットワークに入った。

「これからお話しすることは、地球の将来に向けて非常に重要なメッセージが含まれています。どうか最後までご視聴ください」

 

 つづけて、メグが

 「狭い地球という星の中だけで権力を行使する意味はもはやなくなりました。ヒュームの子孫が住む星であることが判明して以来、私たちの及びもつかない数々のテクノロジーが、惑星ヒュームから地球人に紹介されてきました。その一つが私たちです。私たちが着用しているテクノスーツはヒュームの、いやこの銀河宇宙の科学の粋を集めて作られています。最初に、私たちが何故このスーツを着ることになったかという経緯をお話ししなければなりません」

 

 つづけてカーラが

「それは・・・地球上に無数の核兵器が配備されている現状を見たヒュームの政府が、子孫の住む星を案じて提供されたものなのです。この銀河系宇宙には地球以外には核兵器を持つ星はわずかしかありません。遠い過去に核の脅威にさらされ悲劇を生んだ経験を持つ種族がいました。実は惑星ヒュームもその一つでした。彼らはその経験を踏まえ、核兵器の介入しない銀河通商連合を作り上げたのです。さらに、核兵器を無効化する銀河宇宙の最新テクノジーが開発されました。銀河連合の宇宙艦隊は、発射された核ミサイルを感知するとすぐさま核の転送準備に入り、時空の裂け目めがけて入った瞬間に起爆させ、私たちのいる時空には何の影響も残さない・・・というテクノロジーです。私たちスーパーツインズも、サイコパワーを駆使して同じ結果を導くことができます。テクノスーツにはヒュームの子孫が持っているサイコパワーを活性化させ、それをテクノロジーが補完して増大させる働きがあるのです。これは、皆さんもご存じのように既に実証済みです。例のリビア危機で私たちは発射された核兵器を安全に処理しました。こうした対応策に加えて、核保有の星は銀河通商連合への加盟が認められていないことによる経済的孤立化を余儀なくさせています。このように、核保有にはメリットがないことを、 地球上の核保有者たちに理解していただくことが何よりも重要だと思っています」

 

 

 次にラクサム人のクリスタが、グローバルネットワークに入りスピーチした。

「先のNPT再検討会議のサイドイベントでもお話ししましたが、私は惑星ラクサムの被爆2世です。被爆者の悲劇は筆舌に尽くしがたい経験でした。 被爆2世だと明かすと、冷遇され、迫害を受け続け、星々を転々とした挙句にマリコフという核兵器の拡散をもくろむ復讐の鬼に拾われてしまいました。迫害を受け続けた一部のラクサム人たちがいつしかマリコフのもとに集まってきたんだ。核によって人生を狂わされてしまったマリコフは、憎むべきは核のはずなのに、その核を使って彼らを無意識に迫害してきた無垢の民たちに対して復讐の女神として蘇ったわけです」

 

 ここでスピーチはサラが引き継いだ。

「でも、あたしたちは地球のスーパーツインズたちのおかげで立ち直ることができた。だからと言って、この銀河系宇宙においては、マリコフの脅威は去ったわけではない。核は持ってるだけで、その脅威とつけはいつしか自分に返ってくるんだ。メリットは何一つない。この銀河では、ヒュームとの交易だけではたかが知れてるよ。銀河宇宙は広大で莫大な資源が山ほどある。核保有は経済的孤立を招くだけ。遠い将来を見据えて考えてみな。核保有がもたらす損益は計り知れないよ。今こそ地球は一つになる時だよ。でも、間違えないでほしい。共通の敵がいる、という理由だけで団結することは間違っている。共通の敵で団結したグループは長続きしない。あたしたちラクサム人の被爆者が見ていたのは共通の敵、つまり核兵器だったんだ。見ていたのは、共通の敵であり互いを見ていなかった。自分のことしか考えていない、目先の自分の利益が最優先、マリコフに洗脳された、信頼に基づかない関係では本当の意味で一つにはなれなかった。このことを踏まえて、どうかあたしたちの話を真摯に受け止めてほしい」

 

 

 このグローバルネットワークでの呼びかけによって、地球上の核保有者たちの意識が少しづつ変わっていった。やがて、核放棄を宣言する者もちらほら現れてきたことは大きな収穫であった。彼らの多く、特に独裁者と呼ばれている者たちは、自らの身体をサイボーグ化している。つまり、事実上の不死を手に入れているのであるが、宇宙的観点に照らし合わせると、核保有のメリットが見えてこなくなったというわけだ。将来的に、銀河宇宙という広大な経済領域を視野に入れると、核兵器は地球の経済的孤立を招くと気づいたのである。だが、それでもマリコフに同調しようとするものも現れてくるだろうことは十分考えられる。そこは、銀河宇宙艦隊とサリームが防波堤の役割を果たすことになるだろう。

 

 これが、核廃絶に向けての第一歩であった。

 

 

…続く