前代未聞の恐竜特番・・・?! | SFショートショート集

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SFショート作品それぞれのエピソードに関連性はありません。未来社会に対するブラックユーモア、警告と解釈していただいたりと、読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。長編小説にも挑戦しています。その他のテーマもよろしく!!

本編は「博物館の珍事」…続編です。

 

前代未聞の恐竜特番・・・?!


 

そして・・・ついに、


 

プロデューサーとの交渉が進む中で、デイノニクスのテレビ出演が決まった。後日、特別なセットが博物館内に設置されることになった。急ごしらえのセットは3Dプリンターで作られた。


 

撮影中、デイノニクスたちは意外な激センスを発揮し始める。


 

1匹がまるでカメラを見ているようにポーズをとると、別の1匹がスタッフの指示に合わせて「ハイタッチ!」を披露したり、軽快に床を転げまわり、完全に人間の言葉を理解しているように見えた。当のデイノニクスたちも番組の撮影であることを理解しているように振舞っていたが、時々とんでもない、あるいは正反対の行動を見せていた。

犬の芸のように、「お座り」をやらせると、こてんと倒れてしまったり、「お手」をやらせると片足立ちを披露した。また、音楽に合わせて起用にリズムをとるひょうきんな姿が圧巻だった。これにはスタッフと観客の大笑いを誘っていた。


 

まるでゆるキャラである。


 

視聴者からの反応も画面内に随時提示されていた。


 

『本物の恐竜とは思えない・・・

中に人間が入ってる?・・・

ロボットじゃないの?・・・

ペットにほしい!・・・

いっしょに連れて歩きたい!・・・

絶対中にオジサン入ってる!・・・

番犬ならぬ番恐竜?にはならないか~泥棒と仲良くなってしまいそう・・・

何処で買えるんですか?・・・

肉食?草食?それとも雑食?・・・

子どもの遊び相手に丁度いいかも・・・いや、大人の遊び相手にもなるぞ!・・・

うちのイベントにも来てほしい!・・・

貸し出しはできますか?・・・

問い合わせ先教えて?・・・』


 

さらに、デイノニクスたちが、博物館の恐竜の化石や剥製に興味を示していたのは間違いなかったが、


 

博物館内の恐竜ロボットとのご対面コーナーでは、


 

ティラノサウルスの本物そっくりに動き出すロボットを彼らの前に披露し、その様子をカメラがとらえようとしていた。



 

ティラノサウルスは、約7,000万 – 約6,600万年前(中生代白亜紀末期マーストリヒチアン)の北アメリカ大陸に生息していた肉食恐竜。大型獣脚類の1属である。最大全長は約13メートル、最大体重は約9トンと、現在まで報告されている獣脚類の中で史上最大級の体格を誇る種の一つだ。中生代最後の地質区分とされるマーストリヒチアン最末期の約400万年間にかけて北米ララミディア大陸に生息していた。しかし、その生態には未解明な部分も多く、新説の多様さも相まって議論が絶えない恐竜でもある。


 

そのティラノサウルスのロボットを前にしたデイノニクスたちの反応を撮影しようというのだ。


 

スタッフがデイノニクスをティラノサウルスのロボットがいるフロアに導いた。もちろんティラノサウルスがロボットであることを当人たちは知らない。

全長10メートルを超えるティラノサウルスを前にした4匹のデイノニクスたちは、最初、剥製だと思っていたようだ。だが、突然頭を振り唸り声を発して動き出したティラノサウルスに驚愕してそれぞれに散らばってしまった。

1匹はなんと、振り向きざまに撮影スタッフにぶつかりカメラを倒してしまった。もう1匹は観客の後ろに身を隠すようにもぐりこんでしまった。さらにもう1匹はティラノサウルスから距離を置くと振り向き、なにやら果敢に威嚇するような鳴き声を発していた。4匹目は・・・なんとティラノサウルスの足元にもぐりこんでいた。そしてティラノサウルスの足に噛みつこうとしていたのだ。


 

その後、4匹のデイノニクスたちはティラノサウルスのいるフロアから逃げ出してしまった。


 

これを見ていた視聴者からは

『・・・動物虐待だ、やめろ!・・・かわいそう・・・いじめだぞ!・・・』

・・・とばかりに批判が殺到した。


 

撮影スタッフはカメラを壊されてしまった上に批判が殺到したため、急遽番組内容の転換を余儀なくされたのは言うまでもなかった。


 

そこで番組はいったんCMに入り、スタッフカメラマンはデイノニクスたちを追いかけた。しかし、彼らが向かった先が悪かった。


 


 

・・・ティラノサウルス以外の様々な恐竜たちのロボットがうごめいているフロアだったのだ。


 

4匹のデイノニクスたちは動き回るロボット恐竜を本物と間違えて果敢に攻撃を仕掛けていた。首筋に噛みついたり、足を蹴り上げて威嚇したり、さらには尻尾にしがみついたまま離さなかった。だが、そんなことはロボット恐竜は意に介さない状態で平然と動き続けていた。


 

と・・・突然、ロボット恐竜の動きが止まった。


 

やっとの思いで館内スタッフがロボット恐竜を止めたのである。


 

遠巻きに見ていた子どもたちがやって来てデイノニクスたちにしがみついた。

「怖かった?もう大丈夫だよ・・・」


 

デイノニクスたちにも子どもたちの優しさは伝わったようである。おとなしくなって子どもたちに従い、カメラマンの前に集合していた。


 

番組スタッフたちは冷や汗をかきながら、そしてMCが・・・


 

「子どもたちと恐竜たちの熱い友情が生まれたようです・・・」


 


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