HSCシンポジウムにまつわるエトセトラその③は、参加者様からの質問に対する回答についてです。
前回の記事
その①
その②
思いだしながら思いついたまま書いているので時系列がバラバラですみません。
「ボクはダメな人間だ」
「ボクなんかいない方がいい」
自己否定が強く、その思いをぶつけてくる子どもさんへの関わり方、声のかけ方についての質問でした。
周りから見てもどうしてそこまで思いつめているのかわからないし、全然そんなことはないし、そんな風に誰も思っていないのに、その子は自分自身に対するネガティブな感情が激しすぎる。
この事例についての回答で、もう少し話したかったことがあったのですが、時間が足りなくて…。
でもこれを話さないと私の言いたかったことは全然完結していない、この続きがもしかしたら一番大事なことだったのでは?と帰ってからモヤモヤしていました。
長くなりますが、今ここで補足させていただきます。
「叱咤激励、正論が子どもを追い詰めたり、心を閉ざしてしまうことがある」
長沼先生はここまで自己肯定感が傷ついている子への関わり方、声のかけ方の難しさをご自身の経験から話されました。
私は
「何か理由があるからそう感じているのであって、その子にとってはそれが正しいことで、周りが『そんなことないよ』と言っても『何も知らないからそんなこと言うんだ』と気休めに言われているように感じる。まずは『そんな風に思っているの?それは辛いよね』とその気持ちをただ共感し『どうしてそんな風に感じるの?』と理由を聞き出してみることが大切なんじゃないか。そうやって思いを吐き出していく内に、自分の中で気持ちの整理ができていくと思う。だから周りは気持ちを受け止めることしかできないんじゃないか」
と答えました。
明橋先生は
「何故そういうことを言ってくるのか?というその子の気持ちを考えた時、誰かに『そんなことないよ。誰もそんな風に思ってなんかいないよ』と言ってほしい、自分には価値がないという気持ちを誰かに否定してほしい、ということがあるから、言われた人はその子にきちんとそう伝えてあげることが大切だ」と答えられました。
ここでこの事例については話が終わってしまったので、明橋先生と私の意見は、一見真逆のように皆さんには受け取られたかもしれませんが、私の中では長沼先生の意見も明橋先生の意見も私の意見も、全部同じところで繋がっていたのです。
HSCの子は物事を深く考える。
「何故?」にこだわる。
自分の辛い気持ちにも「何故?」が必ずある。
周りからの「そんなことないよ」の言葉に対しても「何故?」がついてくる。
だから、自分に歩んできた道、おかれている環境を理解してもらった上で、自分も納得できる理由での「そんなことないよ」じゃないと「何も知らないくせに」となってしまう、と思ったのです。
辛い出来事であれば「こんなことでそこまで苦しむの?」
幸せな出来事であれば「こんなことでそこまで感動できるの?」
プラス、マイナス、どちらの出来事に対しても感情の受け方が大きい。
だから、周りから見たら「なんでそんなことでそこまで…」と思われることがあります。
またHSCの子は些細な変化に敏感に気づくことから、人のちょっとした言葉のニュアンスや表情から「嫌われているんじゃないか」と感じることも…
そこへ「過剰に刺激を受けやすい」という特性も絡まると…
取り巻く環境の良し悪しで、気持ちが幸にも不幸にも転がっていくのではと思います。
HSCの4つの特性DOES
「HSCの子育てハッピーアドバイス 明橋大二著 太田知子イラスト」より
この
D=深く考える
O=過剰に刺激を受けやすい
E=共感力が高く、感情の反応が強い
S=些細な刺激を察知する
というHSCの特性を理解していれば、吐き出してきた思いをまずは否定せずに受け止める、気持ちに共感する、ということも自然にできるような気がします。
その上で、この子は何故そんなにも思い詰めているのか?そんな風に思わせているものは何か?背景を知る。
この子の周りで実際に起こっている出来事(事実) は何だろう?
→「どうしてそんな風に思うの?何があったの?」
その出来事からこの子の中でどんな考え(思考のクセ)が浮かんだのだろう?
→「それをあなたはどんな風に考えたの?」
そこからどんな気持ち(感情)になったのだろう?
→「その時どう思ったの?」
「身体や心にどんな反応があった?」
そうやって、事実、思考、感情を言葉にして吐き出して、グルグルと抜け出せない苦しい気持ちを、一度整理してもらう。
言葉にすると自分でも気づいていないことに気づけたりもするからです。
「事実」は誰にも変えられないけれど、そこから浮かんでくる「思考」や「感情」は人それぞれ違う。
だから、自分が深刻に悩んでいることも、周りの人から見たら「なんでそんな事でそこまで思い詰めるのだろう」と、出来事に対しての受け止め方に差が出るのだと思います。
そして、その「思考」や「感情」というのは、自分の頭や心の中で起こっているだけだから、自分で変える事ができる。
そのことに気づいた時…
ここで誰かに「本当にそうかな?」「そんな事ないんじゃないかな?」と導いてもらえたら、今まで思い詰めていた気持ちが違う方向、明るい方向に向かうかもしれない。
ここで初めて
「そんな事ないよ」
「誰もあなたの事そんな風に思っていないよ」
「あなたはそのままでいいんだよ」
この言葉が素直に心に響いてくる気がする。
そう思ったのです。
自分には価値がある、生きていていいんだ、ということを漠然とじゃなく誰かに証明してもらいたい、この子はそれを求めているのだと思いました。
ただ、長沼先生も難しいと言われていたように、こんなにまで自己肯定感が傷ついている子が、周りの人に心を開いて気持ちを吐き出したり、元気になるのにはとても時間がかかると思います。
サポートする大人は相当な忍耐、覚悟が要ると思いました。
でもこの事例では、この子は思いを周りの人に吐き出しているので、SOSは出せている、信頼関係は築けている、この子にとって安心できる場所はちゃんとここにあるので良かったと感じました。
これがあの後続けて言いたかったことです。
あの時の質問者の方、読んでくれていたら嬉しいなぁー。
私が言いたかったことを全部話していると、一日あっても足りないかも。
質問されて咄嗟に人前で話すのは苦手だけれど、こうやってひとりでゆっくり落とし込んで書いていく作業は、自分の思いも整理できるので好きです。
シンポジウムのエトセトラ…まだまだ続きますが、お付き合いくださると嬉しいです。
その④