最近の政治の場では、税と社会保障の一体改革というテーマが多く取りあげられている。そもそも社会保障とは何なのか。一般的には年金、医療保険、介護保険、子育て支援なんかを総称していうものなのだろう。

 日本の社会保障の制度が行き詰っていることは、誰の目にも明らかです。その原因に関しては、後々に詳しく言及していきたが、この問題を考えるときに、なぜ誰もが数字の面から議論をしていかないのか不思議である。

 そもそも、年金も保険も純然たる数字の問題である。そこに変な感情的な要因を絡めるから、問題がややこしくなる。

 年金も個人と国(制度)、医療保険も個人と国(制度)との間の問題と考えればすっきりとする。本来は年金にしても、医療保険にしても、それぞれの個人がリスクを軽減するための制度として存在しているのであって、そこに所得の再分配やら世代間の助け合いやらの問題を持ち込むから、よろしくないのである。そのような福祉的な意味合いの政策は、あくまでも別段の議論として構築していく方がよい。


 だいいち、考えてもみよう。あなたが自動車保険や火災保険に加入する場合、あなたの所得にとって保険料率は変化するだろうか。当然のことながら、貧乏だからといって保険料が安くなったり、金持ちだからといって保険料が高くなったりはしないだろう。

 単純に事故を起こしやすいか、火災が起きやすいかという、純粋に統計的な計算によって保険料ははじかれるものだ。

 だから50歳代の自動車保険料は、免許を取り立ての若者の保険料よりも割安に設定されている。これも純粋に統計的なデータにより計算されて結果である。


 このように数字の観点から一度社会保障制度全般に関して整理したうえで、低所得者層へのセーフティーネットという福祉的な政策を加えればよいのである。

 ただ増税をして(国民負担率を上げて)、それによって現在の社会保障制度をごまかしごまかしながら存続させよういう、現在の政治のあり方はいずれは限界に到達するし、何よりも「正直者が馬鹿をみる」ような悪い社会を創ってしまう恐れがある。