みなさんこんにちは。境界知能当事者ノミです。

今回は、
【感想】(第四章・後編)子ども虐待という第四の発達障害

についてのお話です。

 

 


このような方におすすめの記事です
・虐待サバイバーの方
・いわゆる毒親育ちの方
・自分自身に起こっている現象を知りたい方


 

 

本紹介についての記事はこちらです。
 

 

感想についての記事はこちらです。

第一章 発達障害としての子ども虐待


第二章 反応性愛着障害と子ども虐待(前編)(後編)

第三章 解離という現象と子ども虐待(前編)(後編)

 

第四章 高機能広汎性発達障害と子ども虐待(前編)(後編)

 

第五章 多動性行動障害と子ども虐待

第六章 子ども虐待の終着駅ー解離性同一性障害と複雑性PTSD

 

第七章 子ども虐待が脳に及ぼす影響

 

第八章 被虐待児へも包括的ケア1 心理アセスメント

 

第九章 被虐待児へのケア2 子ども自身へのケア

 

第一〇章 家族へのケア

 

第一一章 子育ての未来

 

 

 

 

第四章 高機能広汎性発達障害と子ども虐待(後編)

現れとしては似ているけれども…

子どもに発生している問題・現象は、先天的な要因か、後天的な要因かの見分けが難しいと書かれています。


つまり、社会性の発達の遅れという先天的な要因を持っている高汎性発達障害は、愛着形成の遅れが生じやすい面があるということ。

 

激しいネグレクトなど虐待環境に育ったというような後天的な要因でも、反応性愛着障害を呈し、その抑制型は他者への関心を示さないという高汎性発達障害(先天的な要因)に、非常に酷似した臨床像となる、ということです。

 

 

 

ルーマニア孤児の調査

マイケル・ラターが、ルーマニア孤児に関する調査をしました。
 

 

※マイケル・ラター(マイケル・ラッター、マイケル・ルター)(Michael Rutter)

児童精神科医。

キングス・カレッジ・ロンドンの名誉教授を務めたり、イギリス最大の精神病院・研修場所でもあるモーズレイ病院(Maudsley Hospital)で顧問を務めるなど、数多くの役職を持ち、精神ケアーへの多大な貢献をした。

「児童精神医学の父」とも呼ばれ、その活躍によりイギリス王室からナイトの称号が与えらた。(knighted)


以下、ルーマニアの孤児院に関する動画です。
 

 


こちらも分かりやすいです。


なぜルーマニアで孤児が発生したのかについての解説もあります。
 

 


2本目の動画で紹介されている動画です。


※ルーマニア孤児院で過ごした方のインタビューや、実際の映像も流れるので、視覚優位の方には辛いかもしれません。
 

 

 

当初、ルーマニア孤児院からイギリスへ養子に来た子ども達には、認知発達と身体発達の遅れがありました。

 

しかし、4歳時点では身体発達はほぼ回復しましたが、認知発達の面では、回復した子どもと発達の遅れが残る子どもがいるなど、はっきりと差が見られたようです。

(生後6ケ月以内に養子に来た子供は回復傾向があり、それ以降に来た児童は、4歳、6歳の時点でも認知発達の遅れがみられたとのことです。)

 

 

 

自閉症状を示す子ども達

大規模かつ系統的な調査により、ルーマニア孤児では自閉症症状を示す子ども達が見られました。
(4歳の時点で、自閉症スコアADI-Rという非常に鋭敏な指標を使っての調査。)


また、6歳の時点で再調査を行うと、自閉症症状を呈する子ども達のなかで、認知発達が改善した子どもたちがいました。

 

とてもざっくりと説明してしまいますが、以下の表やグラフのようになったようです。

 


高汎用性発達障害 表

広汎糖性発達障害 棒グラフ

 

高汎用性発達障害と診断できる児童は、以下となります。

  • 3名 知的障害を伴った自閉症
  • 7名 知的障害を伴わない自閉症
  • 1名 自閉症傾向あり(1歳8ケ月頃から急速に回復)
  • 10名 軽い自閉症傾向

 

3名は、6歳時点でも知的障害を伴う自閉症の状態を呈していましたが、症状が改善した児童18名は、非常に重度の反応性愛着障害だったと思われます。

 

 

 

愛着障害を示す子ども達

上記の高汎用性発達障害21名のうち、自閉症のある児童10名(知的障害を伴った自閉症3名、知的障害を伴わない自閉症7名)を除いた155名で、愛着障害があるかどうかを調査しました。

 

愛着障害 表愛着障害 円グラフ

 

 

また、愛着障害の症状は以下となります。

  1. 選択的愛着行動の欠如
  2. 楽しいとき、不安なとき、困ったときに養育者の顔を見ない
  3. 見ず知らずの人について行く
  4. 安全基地として養育者を求めない

 

内訳を考えると、以下のような表になります。

 

愛着障害 内訳 表愛着障害 内訳 円グラフ

 

 

認知発達の改善率は高い傾向が見られましたが、愛着障害の面では、早期に養子に来た子ども達でも、劇的な改善傾向はあまりみられませんでした。

 

 

愛着障害 改善率 棒グラフ重度の愛着障害 改善率 棒グラフ

 

 

反応性愛着障害(抑制型)と、広汎性発達障害の見分け方はあるのだろうか

本には、著者が診察した子ども達の生育状況が載っています。(表2)

 

離婚、身体的・精神的・性的虐待、ネグレクトなど、ほぼほぼ同じような環境を生き抜いてきた様子がうかがえます。
 

表3のように、発達障害と解離症状が重なっているなど、明確な線引きが難しい傾向も読み取れます。

 
つまり、
  • 反応性愛着障害の児童にも、精神遅滞や境界知能、何らかの発達障害がみられる。
  • 広汎性発達障害の児童も解離症状がある子どもがいた。

また、わずかな程度のネグレクトでは、抑制型反応性愛着障害が生じることはないようなので、高汎性発達障害との鑑別が難しいということは、まず起きないようです。
(難しいのは、虐待系発達障害の多動と注意欠陥衝動との鑑別です。第五章で紹介します)

反応性愛着障害と高機能高汎性発達障害との鑑別は、治療を行いながらフォローアップすれば判断ができるようです。
(1年程度の治療、投薬で改善傾向がみられるかどうかがポイント)

また、反応性愛着障害は抑制型から脱抑制型へ変化していくことが特徴です。
 
※抑制型
他者との安定した関係性が持てず、他者に対して無関心を示すことが多い。
ネグレクトの状態に置かれたときに多い。
自閉症圏の発達障害、特に高機能広汎性発達障害と酷似。
 
※脱抑制型
部分的な愛着関係の状態に取り残され、他者に対して無差別的に薄い愛情を示す。
ネグレクトに加え、身体的虐待、愛着者が一定でない場合に多く現れる。
注意欠陥多動性障害に酷似。
 
 
また、特徴的な鑑別方法として、反応性愛着障害の場合の方が、高汎性発達障害よりも対人的なひねくれが出現しやすい傾向があるようです。

10歳前後など、年齢が高い児童においては改善傾向・変化が乏しく、自閉症類似の症状がすでに固定化されている可能性があります。
 
 
 
 

高機能汎性発達障害を持つ親と子ども虐待

私の感想なのですが、「虐待の連鎖」というよりも、「遺伝子による虐待の連鎖」と言うほうが、しっくりるのかもしれない。と感じ、子ども虐待と家族平行治療を行う重要さについて、考えさせられました。


養育者自身も違和感を感じながらどうにか生き抜いてきましたが、子どもの問題行動がきっかけとなり、自身の特性に向き合っていく養育者の存在もあった。と、本では紹介されています。

また、養育者の特性によるパニック、キャパオーバーによって、子ども虐待だけでなく、代理ミュンヒハウゼン症候群が発生する場合もあるとのことです。
 
※ミュンヒハウゼン症候群
自分自身の体を傷つけて、ある感情や反応を得ようとすること。
養育者(本人)が自分の体を傷つけたり、病気を装いますが、子ども(他者)を傷つける場合は、代理ミュンハウゼン症候群と呼びます。
 
 
 

迫害を受けた子ども達

筆者が、高機能広汎性発達障害の触法令(法に触れる行為。法令違反のこと)について考えたきに、迫害体験が、ひとつの要因だと気付いたそうです。

迫害体験には2種類あり、1つは学校教育の中でのいじめ、もう1つが子ども虐待とのことで、高機能高汎性発達障害の9.7%(【感想】(第四章・前編)子ども虐待という第四の発達障害)に、子ども虐待が認められました。
 
学校にも、家庭にも居場所がない子ども達が、実際に存在しているという事実。
 
しかし、家族平行治療によって、新たな虐待や重大事件化を防ぐこどができたという例もいくつかあると、著者は語っています。
 
 

 

 


 

 

 

今回は、
【感想】(第四章・後編)子ども虐待という第四の発達障害

についてのお話しでした。

 

興味のある方は、ぜひ一度読んでいただければと思います。

 

 

 

それではまた!

 

 

 

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