病気や高齢の家族とどう付き合うか(セミナー内容 | いっぺん死んでこい〜女医NOBUKOのブログ〜

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生き方も死に方も自分で決めるんだよ?
女医が語る、生き方・死に方・日常のあれこれ

私が去年2月からチャレンジしてきた10分セミナー
先月の英語版までマイナーチェンジはあるものの
大筋は変わってない

今のところ「セミナー」として喋る予定はないけど、いつも言ってる事なのでここに貼っておくー

去年8月はブルブル震えてた、マジで
大人数でのセミナーというよりは
少人数でキャッチボールしながらやりたいなー


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長時間にわたる心臓の手術を終えた、あなたのお父さん。「好きなもの食べられないなら死んだほうがマシ」と、病院食を頑として食べない。あなたならお父さんになんて言いますか?
世の中には正論があふれています。親はこうあるべき・学校は行くべき・健康長寿を目指しましょうetc でもそうすればみんな幸せになれるのでしょうか?私?「正論なんて糞食らえ」です。

医師になって23年が経ちました。いろんな仕事をして来た中で、ここ8年は訪問診療の仕事をしています。訪問診療って知ってますか?癌の末期や認知症などで通院ができなくなった患者さんの家や老人ホームに、私が診察に行くんです。診察したり薬出したり、看取りもします。
だけど、仕事のメインは実はおしゃべりです。この8年でのべ1000人以上の患者さんとその家族とお喋りしてきました。病院から自宅へ戻って来て、ホッとしてその日のうちに亡くなってしまう方もいるので、特に初診では本人と家族とたくさん話をするようにしています。病状よりもむしろ、好きな食べ物、やりたいこと、心配なことetc そういった事を知るほうが、実は距離がぐんと近づきます。そして可能な限り、やりたい事にOKを出しています。え?いいんですか?ってご家族から言われることも結構あるけど、いいんです。
今までダメだと言われてきたことでもです。なぜOK出すか?それをこれからお話しします。

高齢や病気の家族に対して、こんな事で困っていませんか?あんまり食べてくれない・薬を嫌がる・億劫がって歩こうとしない。。。たくさんの人がこういった事で悩んでいます。でも実は、これを解決する簡単な方法があります。それは「聞く事」です。

私の友人のお父さんが肺がんになって数年前に手術を受けました。でも再発して次は抗がん剤治療。副作用で食べられなくなってみるみる痩せてきた。明日は2回目の抗がん剤の日。家族で意見が割れる。長女は「頑張って食べて治療続けよう!」って励ます。私の友人である次女は、私がいつも「本人に聞きなさい」って言ってるから、お父さんに聞いてみました。「お父さんはどうしたいの?」
「しんどいから治療やめたい」お父さんの言葉に長女は思わず「なんで!?そんなこと言わないで頑張ろうよお父さん!なんでやめたいなんて言うの!」と叫びました。
でも治療をやめて副作用が消えてきたら、お父さんに食欲と笑顔が戻って来た。最初はお父さんの決断を受け入れられなかった長女も、徐々に気づいてきました。「お父さんの人生なんだ」。数ヶ月後、お父さんは亡くなったけど、家族全員が納得して死を受け入れることができた。
誰かの決断をすぐには受け入れられなくても、時が解決することがたくさんあります。なので、聞いて受け止めてあげる事ってとっても大事なんです。

もう1例は、私の患者さんです。半年の間に3回も入院治療が必要なくらい、段々病状が進んできた慢性心不全の79歳男性Tさん。手術を受ける決断をしました。手術は成功したけど、病院食を食べない。先生もほとほと困ってもとの老人ホームへ返すことにしました。でもやっぱり食べない。娘さんからも「先生から食べるように言ってください!」って頼まれました。食欲がないのか、不味くて食べられないのか、何か他に理由があるのか、聞いてみました。そしたら「美味しいものが食べたい、好きなものが食べたい」って言ったんです。さらに突っ込んだら「死んでもいいから好きなものが食べたい」と。娘さんも思わず笑ってました。「じゃあそうしよう!」って私が言ったら本人びっくりしてました笑 「死んでもいいから食べたい」それが本音でした。心臓病の人には塩分制限した味気のない食事を出すんです。普通食を出したら、「美味しい!」ってニコニコ食べてました。好きなものを食べて数ヶ月後に亡くなりました。。。としたい所ですが、実は元気にしています。死んだら食べられませんもんね、上手に調節しているようです。
そんな姿を見て、娘さんも今では本人の好きにさせることが正解で、あの時食べて欲しかったのは、父親を失いたくないという、自分の恐れからの気持ちだったことに気づきました。

高齢や病気の家族とどうやってつきあうのが正しいか?それは「本人の気持ちを聞く」事で答えが出ます。なぜ聞かなきゃいけないんでしょう?
「好きなことしていいですよ」って患者さんに言うと、多くの方が「家族に迷惑をかけたくないから」「家族がなんて言うか。。」とやりたいことを躊躇する人が本当に多い。
「迷惑をかけたくない」ほとんどの方がそう思って、家族に本音を言いません。だからこそこちらから聞いてあげて欲しいんです。
初対面の人に私の仕事を説明すると、家族を見送った時の事を私に話をしに来る方がいます。「あの時はどうするべきだったんだろうか」「あの時父が何を考えていたんだろうってずっと考えてしまう」とか。長年引っかかっている人が結構います。
先ほどお話しした2家族のように、本人の気持ちを聞いて知ってた家族は後悔が少ない。まずは知るだけでいいから、是非聞いてあげて欲しいんです。

私たちはよく「あなたのために」と口を出しがちです。でもちょっと考えてみてください、それって本当にその人のためですか?
そして多くの人は、目の前のトラブルと思えるものをなんとかしようとします。子育て、健康、病気etc 世間で言う「正しさ」に合わせがちです。

なんだか上手くいかないなあ、と思った時は、是非聞いてみてください。
相手には「どうしたい?」自分には「それって誰のため?」

自分の気持ちに気づくと、相手の気持ちも受け入れられるようになります。
ご静聴ありがとうございました。


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おわり!



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