〓山本モナさんが、フジテレビの情報ニュース番組 「サキヨミ」 のメインキャスターに決まったんだそうで。まことにめでたいハナシでございます。TBS で降板させられて、フジで復活する、というあたり、局の体質を物語っていてユカイですね
〓だいたい、アッシに関していうなら、TVキャスターが不倫していようと、路上でキスしていようと、仕事の能力があるのなら、 “Et alors?” なんですが、世間はそうもいかないんでしょう。
〓ところでですね、なんというか、有名人の名前というのは、初めて聞いたときに、
「本名か? むむ~、“造花” っぽい名前だな」
と感じることがあります。 そんな例をいくつか挙げてみましょうか。
【 加藤ローサ 】
〓たとえば、
加藤ローサさん
ね。本名だそうです。お父さんがイタリア人なので、「お父さんの母親」、つまり、イタリアのおばあちゃんの名前をもらったそうです。
隔世で名前を受け継ぐ
というのは、イタリアやギリシャあたりに古くから伝わる習慣です。
〓イタリア語では、ラテン語の母音間の s が有声化して [ z ] になった地域と、有声化せず [ s ] のまま残った地域があります。
〓イタリア標準語は、ローマのコトバではなく、フィレンツェやピサといった都市を抱えるトスカーナ地方のコトバです。この地方は、ルネッサンス期にメディチ家とともに栄え、文学・学術など文化的にも中心的な役割を果たしたために、そのコトバが規範的とみなされるに至りました。
〓ローマのコトバは、「トスカーナ方言」 のすぐ南の 「ロマネスク方言」 ですが、両者のちがいはさほど大きくないようです。
〓ラテン語の母音間の s の有声化は、ちょうど、トスカーナを境にして、北部で起こった現象であり、南部では起こりませんでした。
〓トスカーナは、その境界線上ということで、
casa [ ' カーサ ] 「家」
naso [ ' ナーソ ] 「鼻」
inglese [ イング ' れーセ ] 「イギリス人」
のように有声化しなかった語と、
viso [ ' ヴィーゾ ] 「顔」
rosa [ ' ローザ ] 「バラ」
francese [ フラン ' チェーゼ ] 「フランス人」
のように有声化した語が同居しています。北からの変化と、南のような不変化性のはざまにあったために、ややこしいことになったんですね。
〓ナポリ方言は、トスカーナより遙かに南であり、s の有声化は起こらなかったようです。ゆえに、
rosa [ 'rɔ:za ] [ ' ローザ ] トスカーナ方言 (標準イタリア語)
rosa [ 'rɔsə ] [ ' ロサ ] ナポリ方言
〓蛇足です。
〓中国でも、日本のアイドル・俳優・女優の人気が高いのは、毎度、申し上げているとおりです。中国語は漢字しか使えないので、ひらがな・カタカナの名前は漢字に置き換えられます。「ほしのあき」 さんのように、本名が漢字の場合は、これを使って、
星野亚希 (星野亜希)
※ちなみに、“中国雅虎” Yahoo! China の検索件数 270,004件 (!)
のように表記します。
〓本来、漢字表記のないローサさんは、どう書くのか調べてみると、
加藤罗莎 (加藤羅莎) jiāténg luóshā [ チアとン るオしゃー ]
※ “中国雅虎” での検索結果 11,400件。
※ 中国語に R があるのに、R を L で移すのはヘンだと思うかもしれません。しかし、中国語の R は、
[ ʐ ] という 「ジャジジュジェジョ」 の系統の子音なのです。
でした。
【 沢尻エリカ 】
〓また、
沢尻エリカさん
なんて名前もね。こちらも本名なんですね。花の名前から採ったそうです。ツツジ科エリカ属という、ヨーロッパ・アフリカ・カフカースに分布する花の仲間があります。
〓日本で有名なのは、南アフリカ原産の 「ジャノメエリカ」 (蛇の目エリカ) です。小さなピンクの花をたくさんつける可憐な花です。「雄シベの葯 (やく=先端部)」 が黒いので、「蛇の目」 の名があります。
〓「エリカ属」 を指す学名 Erica は、ラテン語の
Erica [ エ ' リーカ ] ヒース
に由来します。これは英語で言うところの heath [ ' ヒーす ]、heather [ ' ヘざァ ] 「ヒース」 を指す語で、「ヒース」 がエリカ属に属することから選ばれた属名です。ジャノメエリカの学名は、
Erica canaliculata [ エ ' リーカ カナーりク ' らータ ] =「溝の入ったヒース」
〓学名は、古くなった茎に 「細い溝」 が入ることを言ったそうで、「蛇の目」 に比べると面白味はありません。英語での一般名は Christmas heather です。 花期が、「秋から春」 という変わった花で、とりわけ、12月から1月に最盛期を迎えるので、「クリスマスのヒース」 と呼びます。
〓彼女の名前は、この花のイメージなんでしょう。お母さんは 「アルジェリア系フランス人」。この件については、ジダンについて書いたときに少しふれました。
http://ameblo.jp/nirenoya/entry-10074009815.html
〓有名なところでは、このあいだ、ひさしぶりに特番のあったマジシャン 「セロ」 のお母さんが、やはり、「モロッコ系フランス人」 です。ほぼ同じ民族的背景の人たちです。
〓ところでですね、ヨーロッパでよく使われる女子名にも Erica があり、これは、上に書いたところの 「ヒース」 を意味するラテン語の Erica とは、まったく別物です。
〓古ノルド語 (スカンジナヴィアの言語) に、
Eiríkr [ エイ ' リークル ] 「エイリークル」 (男子名)
↑
ey [ ' エイ ] 永遠に、つねに。
+
ríkr [ ' リークル ] 偉大な、強力な。
という男子名がありました。
〓この名前が、英語でいうところの Eric 「エリック」 です。この名前は、英語圏・ドイツ語圏・スカンジナヴィア、および、ゲルマン系のフランク族に支配されたことのあるフランスで、現代でも使われます。
Eric [ ' エリック ] 英語
Éric [ エ ' リッキ ] フランス語
Erich [ ' エーリッヒ ] ドイツ語
Erik スウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語、フィンランド語
Eirik ノルウェー語、スウェーデン語
Erick デンマーク語
Eric スウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語 (英語、仏語からの借用形)
Erich スウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語 (ドイツ語からの借用形)
Eiríkur アイスランド語
Jórekur アイスランド語
Erkki [ ' エルッキ ] フィンランド語
Erke サーミ語
〓このうち、「エリック」 の音を持つ男子名に -a をつけて派生したのが 「エリカ」 の系統の名前です。
Erica [ ' エリカ ] 英語
Érica [ エリ ' キャ ] フランス語
Erika [ ' エーリカ ] ドイツ語 (英語、フランス語からの借用名)
Erica スウェーデン語、デンマーク語
Erika スウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語、フィンランド語
〓つまり、「永遠に強力な女」 という意味なんすね
〓ちなみに、中国語では、「沢尻エリカ」 さんの名前の書き方が複数あります。多いのは次の2つ。
泽尻绘里香 (沢尻絵里香) zékāo huìlĭxiāng [ ツーかオ ホイりーシアン ] 231,012件
泽尻英龙华 (沢尻英龍華) zékāo yīnglónghuá [ ツーかオ インろンフアー ] 42,700件
【 黒木メイサ 】
黒木メイサさん
ですね。やっと突き当たりました。「芸名」 です。本名は 「島袋さつき」。沖縄出身です。もと SPEED (スピード) の 「島袋寛子」 (しまぶくろ ひろこ) さんも同じ苗字ですね。沖縄特有の苗字です。ウチナーグチでは、本来、「シマブク」 と読みます。
〓「黒木メイサ」 という芸名は、所属事務所の社長が 「パッと見でつけた」 ということで、“謂われ” などは伝えられていません。「黒木」 は、「黒木瞳」 さんのイメージでしょうか。だとすると、「五木寛之──命名の孫」 という感じになりますね。
〓「メイサ」 という名前は、日本人女性のカタカナ名前によくある、
ヨーロッパにありそうで、探すと見つからない名前
のタイプです。つまり、ヨーロッパっぽいんだけど、「そんな名前ないよ!」 ってヤツです。じゃあ、全然ない名前なのかというと、そうでもない。アラビア語の女子名です。
ميسى maysā [ マイサー ] 美しくてスラリとした若い女性
〓マグレブ (モロッコ、チュニジア、アルジェリア) では、おそらく、「メイサー」 と発音します。もっとも、この名前の語根 (根源の意味) は、
ميس m-y-s 自慢気に体を揺すりながら歩く
というもので、「誇らしげに歩く若い女性」 の姿をイメージした名前なんでしょう。
〓オリオン座 λ星に 「メイサ」 meissa の名がありますが、まさに同じものです。
〓ところで、ネットで検索してみると、アラビア語圏でこの名前が頻用されているようすはありません。
〓どういうわけか、フランスのマグレブ出身者に多い名前です。その影響で、アラブ系でないフランス人も使うことがあるようです。また、英国にまで、若干、波及しているようすがうかがえます。
〓フランスでの綴りと発音は、
Meïssa, Meyssa [ メイ ' サ ] メイサ
です。
〓やはり、中国語で言ってみましょう。
黑木明纱 (黒木明紗) hēimù míngshā [ ヘイムー ミンしゃー ] 29,302件
黑木美纱 (黒木美紗) hēimù měishā [ ヘイムー メイしゃー ] 2,010件
【 山本モナ 】
〓今日の真打の登場です。もうTVバラエティでは、すっかり、おなじみの顔です。こういう状況をどう表現するかで、その人の道徳観がわかるような気がします。
転んでも、ただ起きない
わざわい転じて福となす
火事の焼け太り
禍福はあざなえる縄のごとし
人間万事、塞翁が馬
〓さて、どれでしょう。
【 山本モナ 】
1976年 (昭和51年)、広島県尾道市生まれ。
父親はノルウェー人航海士。
1982年 (昭和57年)、日本国籍を取得。
1998年、朝日放送 (大阪) 入社。
2005年6月、朝日放送を退社。フリーとして上京。
オフィス北野に所属。
2006年9月、TBS 「筑紫哲也 NEWS23」 の
キャスターに抜擢される。
その直後に、例の 「フライデー」 の件発生。
10月2日より、番組出演を見合わせる。
10月23日付で、番組を降板。
2007年1月1日、「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」 で復帰。
かぶり物などの洗礼ありで司会をつとめる。
以後、ふっきれたようにバラエティに出まくる。自虐ネタもあり。
♪バカ わたしのバカ♪
〓と、まあ、こういうぐあいです。御当人のブログのほうは、
2006年9月24日 の次が
2007年1月14日
http://
で、約4ヶ月あいています。
〓ええと、こうクドクド書きましたのは、何か 「コト」 があったときに、「名前」 というのは、“受け取る側” の心証を左右するんではないか、と思ったからです。さあ、どうでがしょう。「山本モナ」 という名前が印象を左右しなかったでしょうか?
〓6歳で、日本国籍を取得するまでの名前は、
モナ・ヘグダール
だったそうです。原綴 (げんてい) については、どこにも資料がないんですが、「モナ」 は “Mona” でよいとして、「ヘグダール」 という姓には、ノルウェー語でも4通りの綴りがあります。
Hegdal
Heggdal
Hegdahl
Heggdahl
発音 = [ 'hægda:l ] [ ' ヘグダーる ]
〓いずれの綴りも同じ程度の頻度で使われており、ノルウェーでは珍しい姓ではありません。語源から言うと、Heggdahl が元の意味を伝えている綴りです。
hegg [ 'hæg ] 「エゾノウワミズザクラ」
+
dal [ 'da:l ] 「谷」 (旧綴 dahl )
↓
Hegdal 「エゾノウワミズザクラの谷」
〓これは地名です。「エゾノウワミズザクラ」 というのは、北半球の寒冷地に自生するサクラで、日本では北海道で見られます。学名は、リンネによる命名で
Prunus padus [ プ ' ルーヌス ' パドゥス ]
〓 prunus は “スモモの木”、Padus は、イタリア北部を流れる、イタリア最長の川 “Po” 「ポー川」 の古名 (ラテン語名) です。ポー川の岸辺にこの木が見られることに由来すると言います。
〓「エゾノウワミズザクラ」 のイタリア語における一般名 common name は、
ciliegio a grappoli [ チり ' エーヂョ アグ ' ラッポり ] 「房状になる桜の木」
ですが、イタリア語版の Wikipedia によると、
pado [ ' パード ]
の名前もあるようです。この単語は、伊和辞典では見つけることができないので、北イタリアの方言なのでしょう。
〓現代語に pado という語彙があるとすると、北イタリアの俗ラテン語では、
padus [ ' パドゥス ] 「エゾノウワミズザクラ」
だった可能性があります。 つまり、ポー川と同じ名前の桜だったのです。
〓漢字では、和名を 「蝦夷の上溝桜」 と書きますが、「ウワミゾ」 のまちがいではありません。本土には、「ウワミズザクラ」 という野生種の桜があり、これを転用したわけですが、そもそも、
本土の 「ウワミズザクラ」 は、「ウワミゾザクラ」 (上溝桜) が訛ったもの
です。
〓「ウワミズザクラ」 の古名を 「ハハカ」 と言い、“波波迦” (宛て字) の表記で 『古事記』 にもあらわれます。なんでも、この木の材の表面 (上面) に溝を彫って占いに用いたそうで、そこから 「うわみぞ」 の名があります。
〓とっとっと、また、話があさってに行ってしもた。
〓とにかく、「ヘグダール」 というノルウェー姓は、「エゾノウワミズザクラの谷」 という名前の土地の出身者が名乗ったものです。
〓では、今度は、「モナ」 という名前のほうに取りかかります。
〓お父さんがノルウェー人。さもあらん、さもあらん。Mona [ ' モナ ] というのは、北欧では、古くから使われている一般的な女子名です。スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、いずれでも、ごく普通の名前です。
〓もとは、
Monica [ ' モニカ ] スウェーデン、ノルウェー、デンマーク
Monika [ ' モニカ ] 同上3ヶ国、+フィンランド
という名前の 「略称」 ないし 「愛称」 です。
〓「モナ」 とか 「モニカ」 というと、日本人には、「ナンか、きのう今日の流行りのチャラチャラした名前ぢゃないの」 というイメージがあるんではなかろか。たぶん、吉川晃司 (きっかわ こうじ) さんの
『モニカ』
あたりが強烈な印象を与えたんじゃないかしら。あるいは、桜田淳子さんの
『サンタモニカの風』
とか……
〓しかしですね、「モニカ」 という名前は、「カトリック」、「ギリシャ正教」 ともに聖人として認めている古い古い時代の女性に由来するんです。
――――――――――──────────――――――――――
聖モニカ (8月27日) と聖アウグスチヌス司教 (8月28日)
聖モニカ (332~387) わが子の回心のために昼も夜もあつく祈るキリスト教的母親の典型。三人の子があり、アウグスチヌスは次男である。未信者の夫に嫁いだが、苦難にも負けず信仰を貫いて、夫や姑、放蕩にふけっていた息子をも回心へと導いた。
聖アウグスチヌス (354~430) 若い頃放蕩にふけっていたが、生来頭がよく、回心の後には 「告白録」 をはじめ膨大な著作を残した。彼の説いたキリスト教の諸真理は、教会の内外に今日まで大きな影響を及ぼしている。
(↓のページより拝借しました)
http://
──────────――――――――――――――――――――
〓聖モニカの夫は、パトリクスという異教徒で、家庭内暴力、いわゆる DVの常習者だったそうです。この夫と放蕩息子に辛抱強く堪え、死のまぎわに夫をキリスト教に改宗させ、息子も改心させた、というのが、キリスト教徒の婦人の鑑とされているそうです。 (少し皮肉 )
〓 Monica という名前の語源は明らかでなく、アルジェリアの出身者であることから、ベルベル語とかフェニキア語 (=ポエニ語。カルタゴの言語) に由来する名前ではないか、と言われます。
〓不思議なことに、ロシア正教では、教会暦に Моника Monika の名がなく、聖人として扱われていないようです。実際、「モーニカ」 という名前のロシア人は見たことがありません。
〓しかし、西欧~東欧では広く普及している名前です。
Monique [ モ ' ニック ] フランス
Monica [ ' モーニカ ] イタリア、ルーマニア
Mónica [ ' モーニカ ] スペイン、ポルトガル
Mônica [ ' モんニカ ] ブラジル
Μόνικα Monika [ ' モーニカ ] ギリシャ
Monika [ モ ' ニカ ] ポーランド
Monika [ ' モニカ ] チェコ、スロヴァキア
Mónika [ ' モーニカ ] ハンガリー
Monika, Monica [ ' モーニカ ] ドイツ
(愛称 Mona [ ' モーナ ])
Monica, Monika [ ' モーニカ ] オランダ
〓問題なのは 「英語圏」 です。どういうもんですか、英国の名前の体系というのは、大陸ヨーロッパとはかなり異なった様相を呈することが多いのです。Monica という名前は、英語圏では20世紀に入るまで使用されることが稀でした。米国に Santa Monica という地名がありますが、あれは、スペイン人が名付けたものです。かの地にスペイン人が到達したのが、聖モニカの祝日だったことに由来します。
〓 Mona という名前は、現在、英語圏でも使用されますが、その発生過程は、きわめて複雑です。そもそも、Monica という名前が使われていなかったわけですから、Mona という略称も存在しませんでした。
〓まず、Mona は、アイルランド (アイルランド・ゲール語) の女子名、
Muadhnait [ 'muənat ] [ ' ムアナット ] =「小さな高貴なもの」
muadh = 高貴な、 -nait = 指小辞
の英語形として現れました。19世紀後半にイングランドに広まり、そののちに世界の英語圏に波及しました。ただし、その過程で、レオナルド・ダ・ヴィンチの
Mona Lisa [ 'moʊnə 'li:sə, 'li:zə ] [ ' モウナ ' りーザ、 ' りーサ ] モナ・リザ
が明らかに影響していると言います。
〓もっとも、Mona Lisa の “Mona” は、名前ではなく、イタリア語の Madonna の短縮形です。-ad- が抜けて、Monna [ ' モンナ ] になったものです。
〓 ma donna 「我が淑女 (←女主人)」 が語源ということは、英語の my lady と同じく 「名前にするのはヘンテコ」 なことです。本来は、Monna と n は2つなんですが、イタリア語でも Mona Lisa とする表記が相当数見られることから、俗音では [ ' モーナ ] も使われるか、あるいは、方言の多様なイタリアということで、Madonna を Mona [ ' モーナ ] と略する地方があるかもしれません。
〓とりあえず、イングランドでは、このヘンが 「綯 (な) い交ぜ」 になって、19世紀後半から、
Mona [ 'moʊnə ] モウナ
という名前が成立したようです。
〓この名前を有名にしたのは、ナンと言っても、ボー・ディドリー Bo Diddley のロックンロール曲
“Mona” 『モナ』
であったかもしれません。
〓ボー・ディドリーは、チャック・ベリーやプレスリーと同時代の、「黎明期のロックンローラー」 です。どちらかというとブルース寄りで、「ジャングル・ビート」 Jungle Beat の発明者。“Mona” は、彼の1957年の曲です。同年のシングルの売り上げチャートでは、
“Hey! Bo Diddley / Mona” 29位
だったらしい。
〓話はキッパリ横道にそれますけん、ボー・ディドリーは、先だっての6月2日に亡くなったのです。
〓来日は、1988~2001年のあいだに4回。最初は、ストーンズのロン・ウッドとのワールドツアー。この音は、レコードでもCDでもリリースされてます。今、アマゾンで見ると新品がないので、廃盤なんでしょうか……
〓2度目は “ブルース・カーニバル”。今年は、知らせがないのだけれど、“ブルース・カーニバル” は中止なのかしらん
〓4度目はブルーノートでの公演で、アッシなんぞにはカンケーねかったですね……
〓3度目、1997年の日本単独ツアーを、アッシは、オン・エア・イースト ON AIR EAST で見やした。今、Shibuya O-East と言っているライヴハウスです。当時は、ちょいとしたブルースブームがあって、あの J-WAVE がブルースに肩入れしてたんですよ。信じられないけど……
〓東京では、2日間くらいやったと思うんだけど、オン・エア・イーストは立ち見でスシ詰め。当時、70歳になんなんとするボー・ディドリーのギタープレイは、手元にまったく衰えはなく、ご機嫌なジャングルビート (1990年代に流行った “ジャングル” とは関係ないよ) を聴かせてくれました。
〓ライヴの終盤に、当時、解散したばかりの “ボ・ガンボス” の 「どんと」 さんと 「Kyon」 (キョン) が飛び入り参加しました。“ボ・ガンボス” の 「ボ」 は “ボ・ディドリー” の 「ボ」。その3年後、「どんと」 さんは、わずか37歳で早世してしまいました。
〓ボー・ディドリーが “Mona” を発表した7年後の1964年、ローリング・ストーンズが4月に英国、5月に米国で、デビュー・アルバム
“The Rolling Stones”
をリリースしていますが、英国盤の4曲目にのみ、ボー・ディドリーの “Mona” のカバーが入っています。
〓この他にも、“Mona” という曲は、いくつかあります。
〓ビーチ・ボーイズ The Beach Boys、1977年のアルバム “Love You” に “Mona” という短い曲があり、また、ジェームス・テイラー James Taylor の1985年のアルバム “That's Why I'm Here” にも “Mona” があります。
〓なんか、そんなふうに歌に歌われやすい名前なんですね。
〓つぃなみに、中国では 「山本モナ」 さんは、ほとんど知られていません。ここが面白いところで、中国で有名になるのは、「グラビア」、「ドラマ」、「映画」、「歌」 のいずれかのチャンネルを通してなのです。だから、「アナウンサー」、「キャスター」、「TVバラエティのタレント」 は、まったくと言っていいほど知られていません。
〓一応、
山本梦娜 (山本夢娜) shānběn mèngnà [ しゃヌペヌ モンナー ] 26件
と表記されています。「梦娜」 というのは、モナさん用の表記というより、中国の企業名などで流行っている “雰囲気外国語” の表記の1つです。一応、Mona という女性の名前の転写ということらしい。
〓そんなこんなで、英語圏では出自がはっきりしないまま、“水っぽい感じ” で有名になっちゃった名前です。しかし、ヨーロッパの、特に北欧では、伝統的な名前なのです。