ベジフルインフォネット94号 種苗法改正について | 日本野菜ソムリエ協会認定 「野菜ソムリエコミュニティ新潟」

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テレビも新聞も新型コロナウイルス一色ですが、

女優の柴咲コウさんが

 

「自家採取禁止。このままでは日本の農家さんが窮地に立たされてしまいます。

これは、他人事ではありません。自分たちの食卓に直結することです」

 

とツイートして注目を集めていました。

どうやら種苗法改正案に反対する内容のようで、その後このツイートは削除されました。
今回はこの種苗法改正案について考えてみます。

 

 

 

種苗法改正何が問題なのか

種苗法改正案で大きな問題点は

①日本の種子の海外流出を防止するために国内農家の自家採取(自家増殖)を

原則禁止とすることで、国内農家の種子への権利が制限される。
②国内農家の種子への権利が制限されることは、

農業・農作物の多様性と持続可能な農業を阻害する。

 

様々な資料に目を通すと以上の2点が問題であり、賛成派と反対派の論点になっているようです。

 

種苗法とは?
種苗法は、品種登録制度と指定種苗制度の二つからなり、

前者は新品種を育成した地方自治体や企業、個人に対し、知的財産権の育成権を付与し、

これを保護することで新品種育成の振興を図ることを目的とする制度です。

後者は生産者が良質な種苗を入手できるよう種苗の流通段階における規制などを設けており、

種苗の流通の適正化に重要な役割を果たしています。

1961年に欧米で締結された「植物の新品種の保護に関する国際条約」(以下、UPOV条約)に

日本が加盟するために、それまでの農産種苗法を全面改訂し

1978年に制定されたのが現在の種苗法です。

 

 

種苗法改正案の内容

①日本の優良品種が海外に流出することを防止するために品種登録時に輸出可能な

国・地域を指定し、違反者には刑事罰を科し、損害賠償の対象となる。

②農家が登録品種の自家増殖は育成権者の許諾を必要とする許諾制となる。

 

以上2点が主な改正点であるが、当然ながら問題点とも一致する。

また登録品種とは何かという疑問も出てくるのである。

 

 

【現在の種苗法を条文ごとに詳細に解説した参考書で750頁にも及ぶものです。】

 

 

問題点のまとめ
一番の問題点は「自家採取の禁止」ということではないでしょうか。

現在は種を購入すれば、育てた農産物から種を採り繰り返し利用することは自由です。
改正後は「登録品種」に限り、自家採取の許諾を得ることが必要となります。

違反すれば罰則もあり、許諾を得る段階でロイヤリティの支払義務も生じます。

 

(注)日本の農産物品種には一般品種と登録品種があり、多くは一般品種といわれています。
一般品種には、①在来種、②品種登録されたことがない品種、③品種登録期間が切れた品種

のことをいいます。

 

二番目には「海外への流出防止」ということです。

そもそも改正の理由が日本の登録品種が無断で海外に持ち出され栽培されることを

防止することにありました。登録品種の自家採取を許諾制にすることでデータを把握し、

追跡できるようなシステムにしたい訳です。

 

三番目は「種苗事業の民営化」ということではないでしょうか。

農産物の品種改良や新品種開発・育成は、これまで県の農業試験場など

自治体により多くは運営されてきました。

特に米・大豆・芋などの主要農産物や果物は自治体の研究機関などが

開発・育成して農家に安く供給してきました。
民営化されれば、完全な営利事業ですから種そのものの価格が上がったりしてしまいます。
正確に確認はしていませんが、大豆については8割が登録品種のようです。

だとしたら自家採取により生産している農家は大きな影響を受けます。

作物によっても影響はかなり違うように思えます。


改正に賛成するグループは農水省や種苗会社、

反対するのは農家や農協、「日本の種子を守る会」などの団体です。

 

賛成グループには農業を企業経営化したい人たちも複雑に絡まっているように思えます。
また、一般的国民の意見として、食料というライフラインを国から民間に委ねることへの懸念から

反対する人たちもおり、今回話題になったツィートもそのあたりから出てきているように思います。

 

種子法(主要農作物種子法)が、2018年3月末で廃止されました。

種子法は1952年、食糧難にあえぐ戦後日本の食料安全保障を支えてきた法律で

米、麦、大豆といった基礎食料について、

良質な種子の安定的生産と普及を国の役割と義務付けたものです。

この結果、ブランド米といわれるような「コシヒカリ」などが全国で誕生したわけです。

 

今回の種苗法改正は種子法の廃止とも関連しているのでしょうか。

いずれにしても、さまざまなことが複雑に絡まっているようです。

私たちの食料に関わる大きな問題でもあり、

生産者さんにとっても存亡にかかわる大きな問題だと思います。

真剣に考える必要があるかと思います。

 

 

(種苗法改正に関する農水省のホームページ)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/shubyoho.html


(野菜ソムリエプロ 木村純一)