
「ボールパークに連れてって」
息せききらして漕ぐペダル、寒さに淋しく鳴るチェーン、
逃げやしないと言い合いながら、勇み足とはやる胸、
夏の風を憶えてる、スタジアムはすぐそこだって、
高鳴りながら競い合うよう自転車がゆく、閉じたまぶたに浮かぶあの日が、
芝のミドリと水飛沫、白いボールを追いかける、
憧れたのは韋駄天ばかり、爪の先を軸にして、
舞うよう跳ねる本能の、誰より自由に解放されて、
沸き立つ声を突き抜けた、
燃える夕陽が染めるころ、細く長い影と影、
重なり合った大人と子供、あの日のようには走らない、
夢のなかにいるような、激しい熱をいまだ持つ、
少年たちは胸のなか、長い髪のあのコはどこへ、
強くも弱くも儚くもなく、時間ばかり積み重ね、
孤独を闇と思うなら、あの日の僕はもういない、
浅い眠りのなかに見た、まばゆい光に目覚めたはずの、
夏の子供は写真のなかに、
土にまみれて走った子供、彼はすでに記憶のなかに、
振り返るすらなくなって、それでも歌えるウタがある、
追憶ばかりに足をとられて、なにが欲しいかさえ忘れ、
ボールパークはフィルムのなかで、行き先さえもなく眠るスパイク、
フェンス向こうにいたあのコ、柔らか笑みは輪郭だけに、
あのころの少年は、いまもここに生きている、
目を閉じればよみがえる、最高なぶん最低だった、
夏の日の子供たち、風の隙間を縫って走った、
白いボールに名前を書いた、いまでもすべて憶えてる、
彼らはいまも土に汚れた笑顔のままで、
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