害虫 【後編】 | ワールズエンド・ツアー

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田中ビリー、完全自作自演。

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害虫 【後編】


 夜明けを待つ前に絶えるか、夜明けの途端に絶えるのか。
 私はどうだろう。徒花であれまるで咲かぬわけでもなかった、だが、美しく思える類の花ではない。私が咲くことができたのは、男たちが夜に息を潜めながら観るブラウン管のなかだけだった。
 人は花を自身になぞらえる。なんと傲慢なことよ。咲く前に倒れる花がほとんどであると知らないのか。
 花が自らの頂点を知り、その後の着地点まで想像しているとでも思うのか。
 価値を口にするものが何ひとつ価値を手にすることがなく、自然を口にするものが何ひとつ自然でさえなく。

 テーブルに散らばったトランプを眺める。
私は花として生きた時間、どのろくでなしに抱かれたかったのか。
 愛などとは口が裂けても言わない。私は制度の外に生きようとした人間だ、愛とはそもそも存在するわけではない、制度が生んだ幻想でしかない。
 私は制度の内側で手枷足枷に気づかないふりをして朝を告げた家畜とは違う、愛なんて必要さえなかった。徒花とて花は花であろうとしたのだ。

 いま、私は神を創造した人を不愉快に思う。
 弱さは良い。醜さも仕方がない。疎ましさですら生き物である証左ではある。
 しかし、だ。
 それを見下ろす何者がいるなどと、なぜ、ホラをホラと見抜くことをしなかったのか。なぜ野生から離れようとしたのか。

 私は思う。
 それが誰かの目に触れぬとも、賞賛など受けぬとも、時間や季節の移りを示さぬとしても。夜に咲いてしまった花があることなど、存在さえなかったとされることを。
 私はそのことを知ってしまったのだ。

 唇に紅を引き、爪に花を添える。鏡のなかの私は咲いていたころの、男たちをひざまづかせた暴君であった私の残響を残してはいる。残してはいるがそれが過ぎたことであると誰よりも私自身がそれを知っている。
 美しく着飾れば着飾るほど、鮮やかな色彩だけが私から遊離している。花であった季節は過ぎたのだ、悲しいが認めざるを得ない。いつまでも咲くことはないのだ、言い逃れさえ滑稽だ、滑稽でありながら私は既に過ぎた季節の自分しか記憶に持たない。

 テーブルの下で裏返しになったカードを踵に踏みにじる。こいつらに狂わされた時間のことを振り返る。そしてふと思った。
「狂わされただけではない。私も狂わせたのだ」
 害虫はどちらも同じだった。













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