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One of 泡沫書評ブログ

世の中にいったいいくつの書評ブログがあるのでしょうか。
すでに多くの方が書いているにもかかわらず、なぜ書評を続けるのか。
それは、クダラナイ内容でも、自分の言葉で書くことに意味があると思うからです。


四丁目の夕日 (扶桑社文庫)/扶桑社
¥600
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久々にホンマモンのヤバイ漫画を発見してしまった。これはヤバイ。読み終わった後にも気持ち悪さが消えない、久々のホンモノだ。最悪の読後感である。

正直こんなものを読むのはまだしも、描くのはどうかしているだろう。ホンモノの狂気と言うのはこれじゃないかという気がしてくる。気持ちが萎えるのであんまり細かく読んでいないが、それでもわかるほど細部にきっちり絶望が描かれていて、ホントに作者の正気を疑うよ、これは。正気で描いてるなら天才だ。

わたしは馳星周を高く評価し、救いようのない社会の闇を描く暗黒小説としての『不夜城』を好んで再読しているが、あの作品を何度も読むのは要するにエンターテイメントだからである。馳星周がノワールと称してはいるが、結局はカタルシスを与えてくれるエンターテイメントだからである。

ところがこの作品には救いがまったくない。最後がハッピーエンドだなどという解釈があるようだが、馬鹿も休み休み言えと言いたい。というかよく出版できたな。

読んだ感じ、なんとなくサブカルの王道っぽくて、そういう人たちが好んで読みそうな作品であるが、本当なら絵柄を見ただけで拒否反応を示すような「素行のいい」人にこそ読んでもらいたいような気がする。とにかく正気で居られないほどの名作であることは間違いない。

フロム・ダスク・ティル・ドーン [DVD]/ハーベイ・カイテル,ジョージ・クルーニー,クエンティン・タランティーノ
¥1,500
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『分裂勘違い君劇場』で有名なふろむだ先生のハンドルネーム(?)は、いわずと知れたfromdusktildawnだが、そのタイトルずばりで映画があった。こっち方面はとんと疎いのでまったく内容を知らなかったのだが、そのおかげでたいへん楽しむことができた。こういうのはネタバレすると面白さが半減するので、ここでも敢えて触れない。興味が出た向きも、DVDのパッケージは見ないで借りることをオススメする。

今の基準だとやや古い映像でアクションもしょぼく、ぶっちゃけB級映画かと思ったが、よくよく考えたらもう20年くらい前の映画なのだから仕方が無いといえよう(上映は1996年)。後半少しダレるが全体としては良作の部類だとおもう。
約束の地で (集英社文庫)/集英社
¥580
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著者の馳星周が、『少林サッカー』で著名な周星馳(チャウ・シンチー)氏のファンであり、ペンネームをそこから取ったというのは有名な話であるが、本名の「坂東齢人」が、レーニンにあやかって名付けられたのは案外知られていない。(まあ、今はWikipediaがあるので、この手のトリビアはまず最初に語られるネタだろうがw)

又聞きのさらに又聞きのためほとんど信憑性は無いことをまずお断りしておくが、わたしが大学時代に聞いた話では、かれの父親は熱心な共産党の支持者であり、北海道という土地柄もあって、そういう思想的なところでの葛藤がずいぶんあったらしい。こうした大人たちが、多感な齢人少年に与えた影響はいかほどであっただろうか。

オムニバス形式の短編5編が収められた本作は、『不夜城』や『ダーク・ムーン』、『マンゴー・レイン』のような、血しぶきをあげる描写は少ない。そうではなくて、北海道の田舎を舞台に日本的な絶望をこれでもかというほど描き出していて、田舎の出であるわたしにとっては余計にリアルに感じられる。正直言って読むのがしんどい作品であった。劉健一に感じた「ブラックなカタルシス」は得られない、別の意味で救いようのない話であった。ただただ寂しい、哀しい読後感である。

解説の志水辰夫氏の評がすばらしいので、まずそちらをご一読いただくというのも一興かもしれない。
外事警察 (幻冬舎文庫)/幻冬舎
¥800
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おそらく麻生ファンは重度のミリオタ、それも「危機管理」「クライシス・マネジメント」とか「エスピオナージ」とか、そういうワードに反応するちょっと危ない人が多いのではないか。きっとかれらは佐々淳行氏の著作にも目を通し、もしかしたら毎日の帰宅路をこまめにかえたり、携帯電話で重要な話をしないようにしたり、盗聴に気を配ったりしているのかもしれない。

正直言って麻生氏の本は一般受けするような内容ではないと思う。出世作となった『宣戦布告』などは、映画化されたにもかかわらず、認知度はかなり低いのではないか。だが本作はもともと映像化を前提(?)とした作品のようで、むしろそちらから火がついた作品のようだ。 はっきり言って、こういう作風が話題になるのは世も末だろうという気がする。

一般に想像される麻生氏のファンはいかにも次のようなことを言いそうなひとたちだ。

「平和ボケした日本には本当の危機管理体制がない、いつテロルが起きてもおかしくない。それにスパイ天国だ。この腐った日本の危機管理体制は、一度”ショック療法”でもないと目が覚めないのだ!」

まあ一面では事実ではあるが、だからと言って一足飛びに日本の国防を憂うのはちょっと待っていただきたい。その前にまず自分の仕事をしよう。国のことは、国の機関の人がきちんと考えてくれているよ。というか、これが小説ということを忘れちゃいかんよw

負け犬の遠吠え (講談社文庫)/酒井 順子
¥600
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当ブログは最近更新もアクセス数少なく閑古鳥が鳴いている状況であるが、それでも毎日少しだけチラホラとアクセスがある。これは大変にありがたいことだが、その殆どは世捨て人もしくは海外ニート関連のキーワードから流れてくるもののようだ。皆、ああいった先達を惜しんでネットの海をさまよっておられるのであろう。たどり着いた先がこんなところで本当に申し訳ありません。(わたしはただのニート気質が抜けきらないだけの凡サラリーマンです。)

そんなことからふと思ったのだが、最近はそっち系のオピニオンリーダが不在なのかもしれない。かつてのオピニオンリーダであるelm200さんは閾値を完全に突き抜けてしまい、常人の理解の及ぶところから遠く離れてしまった。phaさんなどももはやニートといえないくらい精力的に働いている(?)ようである。ニート界隈の言論壇も数年前とは大きく様変わりしてしまい、今は「日本が合わない人は、積極的に国外を志向しアジアでサバイブしよう!」というような、どちらかというとポジティブな処世術を説くムーブメントが主流という感がある。それ自体は喜ばしいことかもしれないが、やはりわたしなどの元祖草食系()ダメリーマンは一抹の寂しさを禁じえない。自分の目線でしっくりくる救いを説いてくれる人はもういないのであろうか。

本書もそういう意味では、肩透かしの好例かもしれぬ。タイトルに『負け犬の遠吠え』とあるから、これは女性版だめ人間のためのセラピー本かと思いきや、さにあらず。これは都市型の勝ち組女性が、その充足された人生において一点だけアンビバレンツな感情を持たずにはいられない「結婚」とか「出産」とか「子供」といったキーワードを相対化しようとしているだけの本であり、凡人にとってはまったく役に立たない。それどころか、むしろその仮想敵として設定しているセレブリティの生活レベルがあまりに高いために、逆にわたしのような人間は存在すら想定されていないのではないかとムカつきすら覚えるほどだ。

本書は初出が2003年らしいから、まだギリギリ景気がよかったころの話であろう。勝ち組とか負け犬とか言っていられたのは、まだ社会に余裕があった証拠ではないだろうか。恋愛や結婚、出生率、収入などにまつわるあらゆる社会問題は暗澹とするものばかりで、どれも解決の糸口がみつからないという状況だろう。著者が想定している「負け」の重みの違いが非常にこたえる読後感であった。

刑務所なう。/堀江 貴文
¥1,050
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ふざけたタイトルと表紙だが、版元はなんと文芸春秋社。内容は結構盛りだくさんであり、テキストの量はかなりのものだ。紙質を犠牲にしてのこの価格に抑えているのであろう。わたしは信者なので安いと感じたが、さて、一般にはどう思われるものだろうか。

ホリエモンはご存知のように一連の「ライブドア事件」により証券取引法違反の罪に問われ、約2年6ヶ月の実刑(!)を言い渡され昨年の6月に東京拘置所に収監された。現在は「飯が旨い」と評判の長野刑務所にいるらしいが、本書は東京から長野への移送を含めた、かれが収監されてからの約6ヶ月間の間につづった日記が収録されている。

おそらく本書を読んだホリエモン信者は皆、一様に同じことを考えるであろう。

「この人、刑務所にいても俺より時事に詳しい・・・」

このネット時代に、検閲のタイムラグのある塀の中で情報収集しているだけのホリエモンのほうが一歩先を行っているのだ。もちろんわたしが鈍すぎるというのもあるだろうが、それを差し引いてもやはりかれはスゴイと思う。塀の中でもワーカホリックなのである。まったくもって信じられない。

そしてこれが一番びっくりなのだが、とてもポジティブなのである。もちろん実際は凹んでいるのだろうし、読まれることを想定した日記なのだから多少はお化粧しているだろうが、それにしても愚痴っぽさがほとんどない。とにかく与えられた制約条件の中で楽しみを見つけ、直球勝負で何でもこなすホリエモンの姿には、あまりこういう言い方は好きではないが「勇気をもらった」気がする。人間、どこにいても心の持ちようで地獄にも天国にもなるといういい見本だろう。

2年後、禊を終えたホリエモンは一皮も二皮も向けて帰ってくるだろう。オリンパスの事件があったおかげで、よりいっそうホリエモンの正義は一部の人に強く印象付けられているのではないだろうか。また、ホリエモン自身も「刑に服した」という大義名分が立ち、完全に過去を清算した状態で新たなスタートを切ることができる。世間的にはまさにニュートラルな状態で再スタートを切ることができるだろう。といっても、かれ自身はおそらくもう表立って事業をするようなことはなく、例のロケット事業に注力するのだと思われるが、2006年以来、閉塞感の漂うこの国の産業界はオピニオンリーダーを求めている。それだけで終わるとはとても思えない。リクルートの江副さんよろしく、もう一度その類稀な才能を発揮して日本を引っ掻き回して欲しいとおもう。
人生も商売も、出る杭うたれてなんぼやで。 (幻冬舎アウトロー文庫)/吉田 潤喜
¥560
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ディスカヴァー21のほうで新刊が出ており、例によってfinalventさんが紹介していた。それを読んでじゃあ・・・と思ったのだが、さいきんは金が無いのでこちらにしておいた。コストパフォーマンスで文庫の右に出るものは無い。

色々調べてみると、どうやら吉田氏のホームページでもこの本のダイジェストとも言うべき略歴をみることができるようだ。勝手な想像だが、おそらくディスカヴァーの新刊も似たような内容ではないだろうか。ということで、吉田氏のことを知りたければ、たぶん本書を読めば十分だろう(と、流行のステマじゃなくて、推測だけでディスカヴァーの営業妨害をするなどw)。


ところで、こういう偉大な人は例外なく「わしのようなオチコボレですら人生何とかなった」というような発言をする。まあ、それはおそらく実感なのだろう。わたしのような凡人には想像もつかないような困難や毀誉褒貶、浮き沈みを経て今の彼らがあるのだから、なにやら理解できないような境地に達しているのだろうということは想像できる。

こうした成功者の弁に対し、よく言われるのは「生存バイアス」という評価だ。生存バイアスとは、母数が1万人いたとしたら成功するのはわずか2、3人。その2、3人が成功を語り、残りの9998人は黙して語らないというあれだ。しかし、わたしは違うと思う。何が違うかというと、吉田氏のような人はそもそもオチコボレでも凡人でもないということだ。かれのような人は、遅かれ早かれ成功していただろう。因果が逆なのである。

凡人に向けてのメッセージのつもりなのだろうが、受け取る側は神妙にならざるを得ない。やはり、事業を興すような人はとんでもない器をお持ちであり、われわれのような一山いくらの人間は、こうした偉人のつくった道にへばりついて生きていくしかないのだろう。雇用を作ってくれる人は返す返すもありがたいと感じ入った次第である。支離滅裂ですが眠いので校正ナシ!
本当はどうなの? これからのインド (中経の文庫)/白水 和憲
¥600
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これは純粋に勉強のために買った本。なので、書評ではなく、忘れないように内容のメモをとっておくことにする。

第一章:経済
第二章:ビジネス
第三章:政治
第四章:外交
第五章:社会・文化
第六章:インドのこれから

第一章:
・インド最大の商業都市といえばムンバイ。

・インド国内でいち早くIT産業を集積させたのは以下の3つの都市:
  バンガロール(カルナタカ州)
  チェンナイ(タミル・ナドゥ州)
  ハイデラバード

・2007年3月期のインド・ソフトウェア企業売上ランキング
  1位:1,494億ルピー/タタ・コンサルタンシー・サービス(TCS)
  2位:1,368億ルピー/ウィプロ
  3位:1,315億ルピー/インフォシス・テクノロジーズ
  4位:   629億ルピー/サティヤム・コンピュータ・サービス
  5位:   377億ルピー/HCLテクノロジー
  6位:   275億ルピー/テック・マヒンドラ
 ※1ルピー≒1.62円(2012年2月21日現在の為替レート)

・ベスト10のうち、バンガロールに拠点をもつのはウィプロ、インフォシス、エムファシス、HPグローバルソフトの4社。

・インド工科大学(India Institute of Technology)は米国MITと並んで非常にブランド力のある大学で、競争率40倍とも60倍とも。

・主要4都市(デリー、ムンバイ、チェンナイ、コルカタ)を結ぶ「黄金の四辺形」

・デリー・ムンバイ間産業大動脈(DMIC)=高速貨物鉄道の敷設、およびその周辺に工業団地、空港、港湾を開発する日印共同プロジェクト(2006年12月に両国で合意)

・タタ、ビルラなどの旧財閥に加え、新興財閥「リライアンス」の台頭(ファウンダー:ディルバイ・H・アンバニ/1932年グジャラート生)。インディラ・ガンディー、ラジブ・ガンディーの強い後押しを受けて成長し、2001年にタタグループを抜いて1位に上り詰めた。しかし創業者ディルバイの死後、二人の息子(兄ムケシュ、弟アニル)が資産分割を巡って争い、グループが分裂。

・盛んにM&Aが行われる。
 ・2006年
  タタ・スチール(鉄鋼)/英蘭鉄鋼大手コーラスグループを買収(127億8000万ドル)
  スズロン・エナジー(風力発電)/ベルギーのEVEホールディングスを買収(5億2580万ドル)
  ドクター・レディス(製薬)/独ベータ・ファーム買収(5700億ドル)※これは多分typo 正しくは5億7000万ドル

 ・2007年
  タタ・スチール(鉄鋼)/ベトナム・スチールの株式65%取得(21億ドル)
  タタ・パワー/インドネシア鉱山会社PTカルティム・プリマ・コール、PTアルティム・インドネシアを買収(11億ドル)
  インディアン・ホテル(タタグループ系)/米カンプトン・プレイス・ホテル買収(6000万ドル)

 ・2008年
  タタ・モーターズ(自動車)/英ランドローバー、ジャガー買収(23億ドル)
  ヒンダルコ・インダストリーズ(アルミ大手)/米ノベリスを買収(57億ドル)
  ユナイテッド・ブリュワーズ(酒造)/ホワイト&マッケイ買収(11億7660万ドル)

・・・とここまで書いて疲れたので、続きは明日以降、分割して上げることにする。たぶん章毎に1エントリになると思う。

どうでもいいが、かれこれ社畜暦○年のわたしにとって、この本の章立ては非常に納得のいくものであると感じた。おそらく学生時代であれば、この本をこのように編集するであろう:

第一章:歴史
第二章:宗教
第三章:社会・文化
第四章:政治
第五章:外交・軍事
第六章:おわりに

生活がかかってると人間って変わるんだなぁ・・・。

孤独と不安のレッスン (だいわ文庫)/鴻上 尚史
¥680
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最初にお断りしておく。いい本です。ただし、条件付で。

本書を手に取った動機は、この不安の絶えない人生というクソゲーをなんとかゲームオーバにならないよう、日々迫りくる不安感をどう飼い慣らしていけばよいのか? その参考事例を知りたいと思ったからであった。レビューを拝見するに、なかなか評判もよさそうなのでアマゾンでポチったのだが、残念ながらその目的は必ずしも果たせなかったようだ。いや、この本が悪いといっているわけではない。こうした問題はすべからく個人的なものであり、お手軽なハウツー本で普遍的に解答が得られるような問題ではない。各個人がそれぞれ個別に自分の中の魔物と対峙し、なんとか道を見つけていかねばならぬ類の問題だ。それはわかっている。それは十分にわかった上で、何かきっかけはないものかと手がかりを探したのだが、ついにそれは見つからなかった。

これは要するに、レベル感の問題であろう。鴻上氏の主張はどれもしごくもっともだし、書かれている内容については大筋で賛意を示したいと思っている。中にははっとさせられる記述もあるが、いかんせんわたしがもとめる救いはここには書かれていない。誤解を承知で生意気なことを言わせてもらえば、こんなの、根暗な人間ならとっくに知っていることばかりである。いまさらレッスンをしようといわれても、「え?これが?」という反応をするより他ない。

たとえるなら、普段から毎日満員電車に乗って会社に行ってるのに、「社会性を身につけるために、ちょっとは我慢して満員電車に乗ってみよう」というような感じだろうか。いや、たとえ話が下手くそだった。要するに、普段から普通にやっていることを「やってみよう」と諭されているような感覚ということがいいたいわけである。言われたほうは「えっ?」という反応をするのも仕方ないであろう。

そもそも冒頭の記述からして「?」がたくさんつく。たとえば、導入部には次のように書かれている。

あなたは、いろんなことを考えます。でも、たったひとつ、疑問に思わないことがあります。
 それは、「どうして一人じゃいけないんだろう?」ということです。
(中略)
「どうして、一人で昼食を取ったらみじめなんだろう?」「どうして、一人で帰ったら恥ずかしいんだろう?」「どうして、一人でお酒を飲んだらいけないんだろう?」「どうして友達がたくさんいないといけないんだろう?」
 もっと大胆な疑問もあります。
「どうして、いろんな人から定期的にメールが来ないと恥ずかしいんだろう?」「どうして携帯電話が一週間、鳴らなかったらおかしいんだろう?」「どうして親友がいないといけないんだろう?」

 この疑問にたどりつけば、あなたは、一番大切な問いにやがてたどりつくでしょう。一番大切な疑問、それは、「自分が何をしたいんだろう?」ということです。

そもそもこんな疑問を持ったことがない人には、これを「孤独のレッスン」と言われても困るだろう。一人でいることが恥ずかしい? よくわからない感覚である。だがわたしがそう思わないのと同じように、世の中にはそう感じる人も当然いるのであろう。前述したように、これはレベル感の問題であると思う。

わたしはここに書かれているようなことは考えたことも無く、むしろ、自意識との対峙に疲れ果てて、それでも湧き上がる自意識の前に、落としどころをうまくみつけることができず、自縄自縛に陥るタイプであった。したがって、本書で鴻上氏が説く説法はどれも、まあ普通そうだろうな、と思えるような常識的なことばかりに思えた。

つまり対象としている読者像がまったくずれているわけだ。それを示す非常に面白いエピソードが後半に収められているので、少し長いが紹介して終わりにしたいと思う。鴻上氏は東京の某有名私大で長年、演劇の講義をされているらしいが、折に触れて実家住まいの学生たちに一人暮らしを勧めているらしい。そうすると、実家暮らしの学生(たいていは女子学生)から、次のような反応が返ってくるらしい。

「どうして、実家を出なければいけないんですか?」

それに対して、鴻上氏は次のように答える。

「大学生にもなって、実家に住んでいるってことは、うかうかしてると、就職してもそのままってことになるでしょう。とすると、家を出る時は、結婚のときが初めてってことになるよね。実際、そういう人は多いし。で、結婚だから夫(や妻)と一緒に暮らし始めるだろう。結果的に、人生の中で1回も、一人暮らしを経験しないまま、年を重ねることになるんだ。それはつまり、1回も『孤独と不安のレッスン』をしない人生を送るってことなんだ」

そうすると、女子学生は困惑した様子で、

「それは、いけないことなんですか?」

とまあ、こんな具合だ。正直これ以上論評するのは、なんだかいたいけな少女を苛めているたちの悪いおじさんのような気持ちになってきたので、つづきは本書で確認していただきたいと思う。言葉は悪いが、こんなことすら考えたことの無い人には、「ぬるま湯でヌルヌル生きてきやがって、ペッ」というような、ひどく非生産的なことを考えてしまうので大変反省しております。

と、いうことで、さんざクサしてしまったようだが、基本的にはいい本です。気づきは必ずあるでしょう。ただし、やはり対象読者は前述の「都内在住のぼんやりした箱入り女子学生」のような人であることは否めません。
備忘録的に、最近見たDVD/ブルーレイをご紹介。ネタバレしているので、未見の方はご注意ください。

[リミット] コレクターズ・エディション [DVD]/ライアン・レイノルズ

¥3,990
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密室物?というのだろうか。登場人物はある密室(というか箱)で目を覚まし、あるのは携帯電話と、ジッポーのライタだけ。果たして彼はこの箱から脱出することができるのだろうか? 閉所恐怖症の人は見ているだけで気分が悪くなるだろう。割とよくできていると思うが、個人的には好みじゃなかった。まあ、面白いと思います。
評価:★★★☆☆(星3つ)

世界侵略:ロサンゼルス決戦 [Blu-ray]/アーロン・エッカート,ミシェル・ロドリゲス,ラモン・ロドリゲス
¥3,990
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『ダークナイト』のアーロン・エッカートがタフな軍曹を演じるエイリアンとの戦争物。やったことはないが、流行のThird Person Shooterというゲーム(?)に近い世界観なんじゃないだろうか。敵が人間じゃないので比較的いろんなことを気にせず観れる。これも結構面白かったが、少し尺が長い気がする。あと、あんまり明るい話でもない。
評価:★★★☆☆(星3つ)

アメリカン・ヒストリーX [DVD]/エドワード・ノートン,エドワード・ファーロング
¥2,625
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『ターミネーター』で一世を風靡したエドワード・ファーロング氏が出演していると聞いて。90年代?いおけるアメリカの人種差別問題に取り組んだ意欲作。骨太の社会派映画といえるだろうか。黒人とヒスパニック系、そして白人たちが憎しみあい、差別し、それでも主人公たちは色々な経験を重ね、差別をなくそうと奮闘するが・・・
主演のエドワード・ノートンがかっこよすぎる。これは名作の部類だろう。面白い。
評価:★★★★☆(星4つ)

エイリアンVS.プレデター [DVD]/サナ・レイサン,ランス・ヘンリクセン,ラウル・ボヴァ
¥1,490
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金曜ロードショーでやっていたのを見逃したのでわざわざ借りてきて観た。これはもうギャグだろうw じつはわたくし、『エイリアン』シリーズは観たことがない。そのせいか、ついプレデターを応援してしまう。プレデターはやっぱジャングルでないと、造型がちゃちいのがバレて興ざめですね。
評価:★★☆☆☆(星2つ) まあ、これはネタとして観ないと(^^;


トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン [DVD]/シャイア・ラブーフ,ジョシュ・デュアメル,ジョン・タトゥーロ
¥4,179
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新作で借りて観たはずなのだが、内容を結構忘れてしまった。ヒロインが変わっていたような気がする。サムは相変わらずヘタレだし、オプティマスがチートすぎる。ただ映像は綺麗だ。うちのアナログブラウン管TVは未だにPS3をコンポジットケーブルで繋いでいるので、本来の映像じゃないのかもしれないが・・・
評価:★★★☆☆(星3つ)


バイオハザードIV アフターライフ [DVD]/ミラ・ジョヴォヴィッチ,アリ・ラーター,ウェントワース・ミラー
¥1,480
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ゲームのファンとしては、映画版を許せるのは『2』までだと断言したい。一応『3』も観たので『4』も義務感から観たのだが、これはいけてない。ウェスカーは小太りだし、クリスもクレアもなんだかよくわからないし、ゲームのシーンを無理やり差し込んでるし、これは駄目だろう。『5』が出るらしいが、まあ、正直どっちでもいい。
評価:★★☆☆☆(星2つ)