関水渚さん演じるお田鶴の方のもう一つの伏線。「瀬名姫の祖父を暗殺した」過去 | ナツレのツレヅレなる何か

関水渚さん演じるお田鶴の方のもう一つの伏線。「瀬名姫の祖父を暗殺した」過去

『どうする家康』では、瀬名姫の幼なじみとして登場し、家康とも親しい飯尾連龍(いのおつらたつ)を夫にもつにもかかわらず、どちらにもなびかず自らの信念を貫く『お田鶴の方』。そんな芯の強い女性を関水渚さんが好演されています。

なお、ドラマオリジナルのキャラクターではなく、実在したおんな城主です。

あまり知られていない人物だと思いますので伏線となりそうなエピソードともどもご紹介。

 

お田鶴の方(おたづのかた)、椿姫(つばきひめ)

引間(引馬・曳馬)城主・飯尾連龍(いのおつらたつ)の室。

父は二俣城主・松井宗恒(まついむねつね)とされるが、ほかに花澤城主・大原資良(おおはらすけよし)、上ノ郷城主・鵜殿長持(うどのながもち)など諸説ある。

永禄8年(1565)12月20日、夫の飯尾連龍が家康に通じたとして駿河で今川氏真に成敗される(科註拾塵抄)。この際、夫と共に一戦に及び共に討たれたとも(武徳編年集成)、その後は引間城のおんな城主として家康と戦ったともいう(遠江風土記・武家事紀)。

田鶴の方 TAZUnoKATA 椿姫 TSUBAKI-HIME

■おんな城主お田鶴の方

永禄8年(1565)12月20日、今川氏真によって飯尾連龍が殺された後、お田鶴の方は重臣江間氏らとともに当主の不在の引間城に籠城しました。そして、今川家への忠誠を訴えるとともに、松平家康へも和睦を求める使者を送りました(武家事紀)。 しかし、今川氏真は頼みにならず、やがて引間城は松平家康による遠州攻略の対象となりました。

 永禄11年(1568)12月、おんな城主として引間城に依り抗戦をつづけたお田鶴の方でしたが、ついに松平家康の軍勢に圧倒されてしまいます。最期は侍女18人と共に敵陣に突入し、壮絶な討死を遂げました。

引間城は12月18日ないし24日に開城し落ちました。

家康は彼女のために塚と祠(ほこら)を築き、瀬名姫(築山殿)はその周囲に百本以上の椿の木を植えその死を悼んだといいます。

※ここから椿姫(つばきひめ)の名前がつき、その祠は戦争で焼失しましたが再建され、現在も椿姫観音堂として祀られています。

 

〈どうする家康でのお田鶴の方〉

飯尾連龍は家康と協調路線をとっており、最期は今川氏真により殺害されています。経緯から考えれば、引間城はその後、家老の江間氏を中心に家康に従うようになったとみるのが自然な流れです(武徳編年集成)。しかし、夫を殺され女城主となったお田鶴の方は今川方として家康と戦ったとされ、矛盾が生じていました。そのため、お田鶴の方が戦ったのは今川氏真の誤りや、別の時代の記録と混同されたものではないかと考えられています。

そこを『どうする家康』では、飯尾連龍とお田鶴の方では立場が対立する構図とし、それまでのお田鶴の方の怪しい動きを伏線として上手く回収してみせました。

鵜殿長照の兄妹説がストーリーにうまく取り入れられた歴史解釈もお見事で、素直に喝采をおくりたいと思いました。

 

■じつは瀬名姫の祖父を毒殺している過去・・・

さて、『どうする家康』でどう展開するか不明ですが、実はお田鶴さまには、瀬名姫の祖父を毒殺した過去もあるのです。

瀬名姫の母親(関口氏広室)は、一般的には今川義元の妹とされています。しかし井伊直平(いいなおひら)の娘を養女とし、義元の妹として関口氏広へ嫁がせたとする系図があるのです(井伊年譜・寛政重修諸家譜・井家粗覧・系図簒要)。

ちなみに、井伊直平は三河井伊谷(いいのや)の惣領で、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」で柴崎コウさんが演じた主人公 井伊直虎(いいなおとら)の曽祖父にあたる人物です。

 

その、井伊直平は永禄6年9月18日にお田鶴の方によって毒殺されました。

社山城の天野左衛門尉を攻めるよう命じられた井伊直平は、途中でお田鶴の方の接待を受けます。しかし、接待後に具合が悪くなり、有玉旗屋で落馬し、そのまま死亡。死因はお茶に仕込まれた毒であるとされています(井伊家伝記)。

今川氏からの命令や、飯尾氏の縁者である天野氏討伐を阻止するためといわれますが毒殺された理由は不明です。

注目すべきは、主犯が飯尾連龍ではなく、お田鶴の方と名指しされている点です。この事からお田鶴の方は、この地域でかなり名の通った人物であったことがうかがえます。

 

<どうする家康の伏線?>

『どうする家康』で描かれたお田鶴の方は、瀬名姫と親しい幼なじみであり、夫は松平派。離合集散が常の戦国時代であれば、兄妹ともに何ら助けてくれない主家を見限っても後ろ指は差されません。しかし、実家の恨みがあるとは言え、瀬名姫の手を最期まで取れなかった理由。それは、この過去の暗殺事件が隠された伏線だったのかもしれません。

 

実在の人物にドラマで新たな命を吹き込まれた姿を楽しめるのが歴史モノの醍醐味です。

その意味でこちらに想像の余地を残してくれるこのお田鶴の方の描かれ方は心底楽しませてもらえました。

ドラマも鵜殿長照さんとあわせ、登場シーンをダイジェストにして『おんな城主 お田鶴の方』として見直したくなる魅力がありました。

 

にほんブログ村 歴史ブログ 戦国時代へ にほんブログ村 イラストブログ 人物イラストへ

 

 

 

 

 

 

 

<ネタ元(参考文献など)>