超自己満足的自己表現 -463ページ目

優しいキスは放課後に・・・ (3)これって???

(3)これって???




半月経ったらだいぶん学校生活にも慣れて、いろんなお友達が出来たの。もうそろそろ部活を決めようかなって思って色々な部活を渡り歩いてたの。堀川さんは吹奏楽部・・・。吹奏楽っていったら弐條さんもいるのよね・・・。堀川さんは一緒に入ってよっていってたけど、ピアノ以外した事がなかったから、気が引けてたのね・・・。弐條さん目当ての入部希望者が随分いるから、私が入ってもいっぱいすぎて弐條さんに近づけない・・・。


「源さん!ねえ入ってよ。部長は私のお兄様だから安心よ。私は中等部からやっているのよ。」


堀川さんはクラリネットをしている。やっぱり聞いていると上手いんだよね・・・。堀川さんのお兄様はサックス・・・。弐條さんは???


「綾乃ちゃんは何したいの?僕はフルートをしてるんだよ。」

「え?フルート?難しそうですね?」

「慣れたら簡単さ。楽譜読めるんでしょ。」

「はい・・・。」

「じゃあいいよな、響貴!綾乃ちゃんはうちにもらうから。」

「おい待てよ!フルートは一番希望者が多いんだよ!勝手に決めんなよ!」


弐條さんたちは笑いながら二人でじゃれあってたけど、気が付かないのかな・・・私に対する視線が痛い・・・。私はホントに冗談だと思ってみていたけど、ホントにホントだった。


「入部届けまだなんですけど?」

「いいじゃん。僕が出しておいてあげるから。」


次の日にはもう入部が決まってて、パパに相談してフルートを始めることになったの。パパは喜んでね、「中部方面音楽隊に入るか?」なんていってひとり喜んでいたけど・・・。何を買ったらいいかわかんないから、パパにお金をもらって弐條さんが楽器屋さんに付き合ってくれたの。もちろんSPつきで・・・。弐條さんの配慮かな・・・。微妙な間隔でSPが付いてるんだけど、一般の人にはわからないみたいね・・・。弐條さんにいいものを選んでもらって、その後お茶して帰ったのよね・・・。2回目のデートって思ったらいいのかな・・・。でもSPが付くデートって・・・洒落になんないよね・・・。もちろん家まで送ってもらったけど・・・。おばあちゃんは送ってもらったお礼に上がってもらいなさいっていったから初めて家に上がってもらったの。おばあちゃんはとても舞い上がってしまってね・・・。総理大臣のご子息が・・・って。うちには一応お手伝いさんがいるんだけど、その人にケーキと紅茶を出してもらって、応接室で話したの。


「いつも孫の綾乃が弐條さんの話ばかりしましてね。一度お会いしたいと思っていたのです。お会いできて光栄ですわ。」

「もうおばあちゃん!」


弐條さんは照れ笑いをしながら、お婆ちゃんの話を聞いていたのよね・・・。


「ホントにいい洋館ですね・・・。」

「はい。亡くなった主人の祖父が若い頃にドイツの設計士に頼んで設計してもらって建てたのです。重要文化財に指定されてしまって管理が大変なんですよ。」


ホントおばあちゃんはこの自慢の洋館の話になると話が止まらないのよね・・・。弐條さんの携帯がなるまで話してたわよ。


「すみません。僕は帰ります。今日父が神戸に久しぶりに帰ってくるのを忘れていたんです。父は明日大阪で公務があるので・・・。じゃあね綾乃ちゃん。」


そういうと家の前に止めてある車に乗って芦屋の家に戻って行ったの。


「とてもよさそうな人じゃない。もっとえらそうな子かなと思ったけど・・・。」

「すごくいい人よ。尊敬できるいい先輩よ。」

「まあいい人とお付き合いしているようだから安心ね。」

「えええ???ただの先輩だよ。色々気にはかけてくれるけど・・・。」

「そうかしらね・・・。将直はどう思うかしら?」


おばあちゃんは微笑みながら私の顔を見るのよね・・・。なんか勘違いしてないかしら・・・。そりゃ弐條さんはあたしの初恋だけど、弐條さんにとってあたしは女の子の一人だと思うし・・・。本当に優しいのは確かよ。


夕飯食べて部屋に戻って宿題をするためにかばんを開けたら手紙が入っていたの。


『何か相談ごととかあったら僕の携帯にメール頂戴よ。 弐條雅和』


きちんとメルアドと番号が書かれていたの。もちろんあたしの携帯に登録。手紙は机の奥に大事にしまったの。試しに寝る前にメールを入れてみたの。


『弐條さん おやすみなさい。 綾乃』


って入れたら即返ってきたよ・・・。『もう寝るの?おやすみ・・・。 雅和』ってね・・・さすが受験生だから遅くまで勉強してるんだね・・・。なんかホント恋人同士のようなメールしちゃった・・・。ホントに嬉しくなっちゃって夢にまで弐條さんが出てちゃったのよ・・・。そしたらまた寝坊しちゃって、急いで髪の毛くくって、朝ごはんも食べずに学校に走ったのよ・・・。あ~~~あ・・・きっとこんなの弐條さんが見たら幻滅だろうな・・・。もう学校に着いたらギリギリ間に合ったんだけど、朝ごはん食べてないからもうお腹ペコペコ~~~。授業中先生には怒られるしさ・・・今日はついていない・・・。お弁当も忘れちゃったし・・・。生徒手帳も~~~~。お昼休みはコンビニに行かないといけないな・・・。堀川さんにそのこといったら、苦笑してたわ・・・。


「綾乃さんって本当におっちょこちょいね・・・。いいわ。私のお弁当でよければ分けてあげるね。」

「ありがとう鈴華さん・・・。助かるわ・・・。」

「昨日弐條さんと買い物行ったんだって?お兄様に聞いたわ・・・。」

「フルート選びを手伝ってもらったのよ。SP付よ。」

「いいじゃない。そんなことしているのは綾乃さんだけよ。」

「そうなの?メルアドは?」

「私知らないよ。もしかして教えてもらっちゃったの?すご~~~い!」


え?親しい人みんなに教えてるんじゃないの?私だけ?これって・・・・?






優しいキスは放課後に・・・ (2)初デート?!

(2)初デート?!




 なんとか合格したわよ~~~~~~。あとから聞いたらギリギリって感じらしいけど???まあ入っちゃえばいいんだから・・・。


今日は初登校日。昨日入学式だったんだけど、本当にみんなセレブって言うような子ばっかりだから、緊張しちゃった。でも中には普通の高校生って感じの子もいるんだよね・・・。


「お姉ちゃん行くよ!」


あたしはいつ弐條さんに会えるかわかんないから念入りに長い髪の毛を、時間をかけて綺麗に結んで朝ごはん食べて・・・・。



「おや、綾乃。今日はとてもお洒落さんだね・・・。」



陸上自衛隊幹部の制服姿のパパは身支度をしながら微笑んでた。



「パパ、今日はゆっくりよね・・・。」

「今日は岡山まで視察に行かないといけないからね・・・。迎えの車を待っているのだよ。綾乃、早く行かないと遅刻だよ。」



時間を見るともう大変!今から歩いていったら遅刻じゃない!急いで用意していたら、ついでにパパが学校の前まで送ってくれる(送ってくれるのは幹部用の公用車で、運転手つきだけど・・・・)って言うから、お言葉に甘えて送ってもらうことにしたの。ちょうど車が来たみたいで、制服を着た清原さんが呼びに着てくれたのよね。



「清原君、この子の学校までついでに送ってやってくれないかな?」

「はい、いいのですか?公用車ですよ。」

「いいんだよ。前を通るだろ。」



幹部クラスの公用車は国産の黒の高級車クラウン・・・。見た目は普通のクラウンと変わらないんだけど、やはり運転手が制服着ている・・・。校門前に横付けされて清原さんがドアを開けてくれたんだけど、制服姿の清原さんがドアを開けるからみんなの注目の的!!みんな見てるよ~~~~。ああ恥ずかしい・・・。送ってもらわないほうがよかったかな・・・。



「綾乃、じゃあ行ってらっしゃい。」

「パパ行ってきます。清原さんありがとね。」

「いえ、行ってらっしゃいませ。お嬢様。」



清原さんは3年前に防衛大学校を出た幹部の人で、25歳の普通のお兄さんタイプ。防大を首席で卒業して将来を約束された人らしいけど、まったくそんな感じの人じゃなくって、今はパパの下で仕事をしているんだって。 パパはわざわざ窓を開けてあたしに手を振ってくれたんだけど、ホントに恥ずかしいってなんの・・・。あたしも一応パパの車が見えなくなるまで手を振ってた。



「お姉ちゃんずるい!私歩いてきたのにお姉ちゃんパパに送ってもらったなんて!」

「あたしをほって先に行くからよ。中等部はあっちでしょ!」

「じゃあね、お姉ちゃん。」



ホント妹の彩子ってあたしよりも大人びていてね・・・。いっつもパパったらあたしと彩子を比べるのよ・・・。なんか後ろが騒がしくなって振り返ったら、まあこれも国産車の最上級クラスの車が横付けされたのね・・・。パパがいつも乗っているセルシオよりもいい車。国産でも一番高いって聞いたわよ。すると後ろのドアを運転手に開けられて出てきたのは誰だと思う???なんと弐條さん。やっぱりいいとこのお坊ちゃんだったんだよね・・・。



「雅和様行ってらっしゃいませ。はいお鞄を・・・。」

「ありがとう。じゃいつもの時間に・・・。」



車から少し歩くともう女子生徒に囲まれちゃって、校門の前はすごい人だかり。毎日のことだろうけど、弐條さんは苦笑して歩き出したの。すると私と目が合って、弐條さんは私めがけて人ごみをかき分けて来たの。



「源さん、無事合格したんだね・・・。だから合格するって言ったでしょ。でもちょっと気になってたんだ。」



弐條さんは満面の笑みで私に話しかけてくれて、もう周りはパニックよ!!!



(なにあの子?見かけない子ね・・・。)

(さっき自衛隊の公用車で来た子でしょ。)

(弐條さんに話しかけられるなんて生意気よ。)


あたしに聞こえるような声で言うのは辞めてくれないかな・・・・。言うなら私、直にいってくれって感じ?だから女のそういうところって嫌いなんだよね・・・。



「雅和様!こんなところで何なさっているの?」

「ああ、桜ちゃん。ちょっと・・・。」



その桜って言う子は弐條さんの腕につかまって引っ張って行っちゃった。誰なのあの子は???同じ色のネクタイしてるから同級生よね・・・。



あたしはそのまま教室に入ったの。黒板に張ってある席表を見ながら席に座ったらなんと後ろ!なんてラッキーなんだろ・・・。前だったらどうしようなんて思って昨日眠れなかったんだ・・・。まあそれだけじゃないけど。すると前の子に声をかけられたの。



「はじめまして、私、堀川鈴華。よろしくね。」

「私源綾乃って言います。こちらこそ。」

「外部入学の人でしょ。見たことないから・・・。だいたい9割は中等部からのエスカレーターだしね・・・。見たわよ!自衛隊の公用車で送ってきてもらった人でしょ。」

「う、うん。遅刻しそうになって・・・。パパに送ってもらっちゃった・・・。恥ずかしい・・・。」

「で、お付の若い人は誰?とってもかっこいい人ね。」

「あ、清原さん?パパに部下の人。25歳の幹部の人よ。普通の人だけどなあ・・・。制服着ると何割り増しかかっこよくなるけど・・・。でも送ってもらうのは今日だけよ。家は歩いて20分のところだから歩きか自転車かな・・・。」



堀川さんはとっても話しやすくって、他の人と違って高飛車なところがないから、付き合いやすいな・・・。 今日は始まったばかりだから授業はなくって、午前中なのよ。でも部活のある堀川さんに誘われて学食に行ったの。学食といってもおしゃれなカフェみたいな感じで注文したら持ってきてくれるオーダー方式。生徒手帳のICカードを通すと料金が加算されて後日月毎に引き落としの方式をとっているの。



「ここのパスタいけるんだよ。だって神戸でも有名なホテルが運営しているからね。」

「ふ~ん。よく知ってるね・・・。堀川さんは・・・。」

「だって私のパパはここの学園長だもの。お爺様は理事長よ。」

「え~~~~~~~~~~!」



ホントに普通の子って思っていた子がやっぱりお嬢様だったなんて・・・。やっぱりここの学園はすごいわ・・・。



「おいしそうなもん食ってるね・・・。」



ある男子生徒が堀川さんのケーキを一口食べたの。



「お兄様!私が楽しみに取っておいたケーキ!!!」

「ごめんごめん・・・。腹へってておいしそうだったからね・・・。横空いてる?」

「空いてるわよ。相変わらずお兄様は私のもの食べるんだから。」

「可愛い妹が食べてるもんは何でもおいしそうに見えるんだよね~~~~。」



あたしは笑いを抑えるのに必死だったわ。



「相変わらず仲がいいね、響貴は。」

「おう!雅和も座れ座れ。」



なんと堀川さんのお兄様の後ろには弐條さんが立っていたの。私は胸がバックンバックンになったわよ。その上弐條さんは私の横の席についてウエイターさんを呼んでるの。



「源さん、なに食べてるの?僕もそれにしようかな?・・・ウエイターさん僕もこのこと同じものをひとつね。」



弐條さんは注文後微笑んで私を見て言ったのよ。



「また会ったね、源さん。」

「は、はい・・・。」

「朝はとんだ邪魔が入って君に言いそびれたんだけど・・・。」



あたしは弐條さんの微笑で胸がいっぱいになっておいしいランチが口に入らなくなったのよ~~~~。やっぱりかっこいいわ~~~~。



「あのね、例の冬休みのお礼がまだだったでしょ?あと源さんの合格祝いをしたくってね、今日付き合ってくれないかな?」

「え?は、はい!!よろこんで・・・。」

「よかった。断られるかなって冷や冷やしてたんだけど。」

「雅和を振るやつなんているのかよ。学園いちの人気者が・・・。」

「響貴、冗談言うなよ。僕、女の子を誘うのはこれが初めてなんだから・・・。」

「そうだよな・・・家や学校をでたらSPがうようよ付いてくるご身分だからな・・・。落ち着いてデートも出来ないよな・・・。」



なんでSPが付くんだろう・・・。不思議の思ったあたしは堀川さんにこっそり聞いてみたの。



「え~~~~知らなかったの?弐條さんのお父様は内閣総理大臣よ!!!!お爺様も元内閣総理大臣で、代々国会議員をしているご家庭なのに?お兄様はお父様のようになりたくないって言うから、ここの大学部の教育学部に在籍してるけど、弐條さんはお父様の後を継いで有名な大学を出た後、お父様の秘書になって政治の勉強するって聞いたわよ。」



私はびっくりしたわよ。海外生活が長いから日本の総理大臣なんて知らないわよ!(知ってて当たり前なんだけど)でもなんで神戸にいるわけ?普通だったら東京の有名な学校とかに行くんじゃないの???



「鈴華ちゃん、まだ決まったわけじゃないよ。僕は、本当は政治家なんてなりたくないんだ。周りの後援会の人達が勝手に言っている事。父さんが政治家だったから僕の家庭はバラバラになったんだよ。」

「まあ湿った話はこれくらいにしてさ、食べようぜ、雅和。」

「うんそうだね・・・。」



意味ありげなことを聞いてちょっと気になったけど、なるほど坊ちゃん中の坊ちゃんだわこの人は・・・。今時SPの付く高校生っていないよね? あたしは弐條さんと時間の約束をして校門で待っていたの。弐條さんは部活を休んでそのまま徒歩で神戸元町に行ったの。SPが付いていなかったら普通の高校生だよね・・・。 (普通じゃないか・・・)



元町は本当に港町の趣があって、大丸百貨店を中心におしゃれなお店がたくさんあるの。弐條さんも初めてのSP無しショッピングみたいでのびのびいろんなところを見ていたみたい。街を歩く人たちはかっこいい弐條さんを注目してたわね。



「何かほしいものある?僕の家は女の子がいないからどんなのが欲しいかな・・・。」



結局商店街の前にある露天で小さなビーズで出来た指輪を買ってもらったの。弐條さんはこんなんでいいの?って言ってたけど、とっても綺麗な指輪だったし、そんな高価なものいらないから、これで十分だったの。



「ちょっとお茶していこうか?」

「うん。」



ちょっと洒落たカフェに入って紅茶をご馳走になっちゃった。色々くだらない話をしていたんだけど、弐條さんはちょっと照れながら、私に言ったの。



「源さん、今日から君の事名前で呼んでいいかな?綾乃ちゃんって・・・。」



えええ!!!下の名前覚えてくれてたんだ!!!もちろんOKしたわよ。弐條さんもすっごく嬉しそうな顔をして私をずっと見つめてたのよね・・・。



「さ、帰ろうか・・・。綾乃ちゃんのおうち心配しているよきっと・・・。もう夕方だし・・・。」



カフェを出て少し歩くと、弐條さんとあたしの前を黒尽くめの男たちが立ちふさがったの・・・。



「あれ?見つかったか・・・。」

「雅和さま、勝手に学校をでられたら困ります。何かあればどうするのですか?」

「何でわかったんだよ、あ、そうか携帯のGPSか・・・。」



黒尽くめの男たちは弐條さんのSPらしくって、横付けされた弐條さんの車に押し込められたのよ。すると巡回中の警官がやってきて運転手と何か話している。駐禁で注意を受けていたらしいんだけど、運転手が身分証明書を見せると驚いて警官は逃げて行ったわよ。あたしは弐條さんの車でうちの真前まで送ってもらった。



「へ~~~いい家に住んでるんだね・・・。神戸らしい情緒のある洋館だ・・・。」

「弐條さんはどこに住んでいるんですか?」

「芦屋の山のほうだよ。また遊びにおいでよ。じゃあ明日。」



私は手を振って弐條さんの車が消えるまで家の門の前で見つめてたの。ちょうどパパが岡山から帰ってきたみたいで、あたしの横で車が止まったの。清原さんが助手席から出てきてパパの乗っている後部座席のドアを開けたの。



「お帰りパパ。」

「今帰ったのかい?綾乃。」

「うん、今ね・・・。」

「そうか・・・。清原君、明日は自分の車で行くから迎えはいらないよ。」

「はい、では私はこれで・・・。」



清原さんは助手席に乗って、総監部のある伊丹に戻っていったの。



「今日はいいことあったのかな?いつもの綾乃と違うけど?」

「そうかな・・・。いつものあたしと一緒だよ。」



パパとあたしは一緒に家に入ったの。早速私は部屋に入るとママの形見のオルゴールの中に今日買ってもらった指輪をなおしたの。





初デートですかい・・・。ホントありふれた内容ですみません。恐縮してます・・・。

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優しいキスは放課後に・・・ (1)出会いはドラマチックに???


主な人物設定

主人公:源 綾乃・・・・高校1年生の15歳

 弐條 雅和・・・高校3年生の18歳


    土御門 桜・・・高校1年生の超お嬢様、雅和の幼馴染

    堀川 鈴華・・・高校1年生 綾乃の同級生


    堀川 響貴・・・高校3年生、鈴華の兄、雅和の親友


(1)出会いはドラマチックに???



 あたし、源綾乃。パパの仕事の都合で港町神戸にやってきました。春から高校生になるんだけど、なんとパパが選んだ学校は幼稚園から大学、大学院まで一貫教育で通っている生徒たちはみな有名な会社の社長令嬢とか、国会議員のご子息とかセレブが通う超有名な学園、山の手学園なの!!!結構レベルが高い学校なのだけど・・・。あたし馬鹿だから入れないよなって思ったのよ。



 中三の冬休み、春にこっちに来るのがわかっていたから、パパと中等部に入る予定の妹と一緒に学園見学に来たの。この学園の入試はもう11月に終わっていたのだけど、あたしこれでも一応帰国子女だから、特別枠で試験をしてもらえるようになったの。試験は新年早々・・・。パパは仕事があるからって、パパは理事長さんと話をしたあとあたしたちを部下に預けて仕事に行っちゃったのよね・・・。


 パパの仕事?それはねなんと某国日本大使館の防衛駐在官(その中でも一番偉い人らしいけど・・・。普通パパの階級ではありえない・・・。特別に派遣されていたらしい・・・。)をしているのよ。仕事の内容はよくわかんないのだけど・・・。新年度から陸上自衛隊中部総監部に配属になって、なんだか急にえらく(幹部だよ。)なるみたい。パパは神戸の人だから、神戸のおばあちゃんのところに住むことになったの。もともとうちは古くからの家だから、神戸北野にあるおうちは洋館で結構広い。そこに試験が終わるまでお世話になるの。


「清原さん、あたしもうちょっと高等部を見たいから先に帰っていいよ。妹を頼んでいい?」

「しかし・・・。」

「ここはお婆ちゃんのおうちから近いじゃない。もう15歳だもの帰れるわよ。ここは日本。今住んでいるとこと違って安全よ・・・。」

「そうですか?では先に・・・。お父様がどういわれても私は知りませんよ・・・。


あたしは清原さんと妹を見送ると、高等部の中庭を歩いていたの。もう冬休みだから、部活をしている人以外はいない。やっぱりセレブが通う学校よね・・・。運動部はフェンシングとか乗馬とか、ホント高級そうな部が多いこと・・・。文化系は吹奏楽部に交響部、茶道部に琴・・・。日舞まであるわ・・・・。ここに入ったら気が引けて部活なんか出来ないわ・・・。


 校舎の上のほうの階に音楽室があるのかな?楽器を練習している音がするの・・・。すると急に強風が吹いてあたしの上にたくさんの紙が降ってきたの。あたしは一枚一枚拾い集めてみるとそれは楽譜。あたしは一応ピアノをしているから、だいたい読めるのだけど、ホントに難しい楽譜・・・。


「ちょっとそこの君!その楽譜!」


5階の窓から男子生徒が身を乗り出して私に声をかけたの。すると急に姿が消えて少し経つと、私の前に現れたの。その男子生徒は結構背が高くて、すきっとした顔立ち。ホントにどこかのご子息って感じで、微笑がとてもかっこいい!!!制服のブレザーがなんとも似合っていて、品があって・・・。あたしはその男子生徒を見つめたまま固まっていたの。


「拾ってくれてありがとう。大事な楽譜なんだ。どこの学校の子?見たことのない制服だね?あ、僕は2年の弐條雅和って言います。君は?」

「あ、あたし?源綾乃って言います。ロンドンの日本人学校中等部なの。春からこっちに来ることになって見学に・・・・で、でもまだ試験に合格していないから・・・。」


あたしは聞かれていないことまでぺらぺらと話しているのを見て、弐條さんは笑いをこらえながらあたしを見ていたのよね・・・。


「で、楽譜返してくれる?」


あたしは楽譜を弐條さんに返すと、真っ赤な顔をしてうつむいてしまったの。


「源さんだったかな?合格するといいね・・・。」

「でもあたし馬鹿だから無理かも・・・。」

「大丈夫だよ。君ならがんばれば合格するよきっと・・・。がんばってね。」


弐條さんはあたしに手を振って音楽室に戻っていったの。あたしは真っ赤な顔をしてずっと弐條さんの姿が消えるまで見ていたのよ。


(キャ~~~~~~~~これが初恋、それも一目惚れってことかしら????)


もちろんあたしはお婆ちゃんの家に戻ってから机に向かって一生懸命勉強したわよ。パパなんか日ごろ勉強なんて宿題以外しない私がしているものだから嵐になるんじゃないかと心配していたわよ。まあ妹は賢いから日ごろ勉強しなくったって受かるだろうけど???

がんばって合格してまた弐條さんに会うんだから!!!





ということで、始まりました現代版の番外編が・・・・。これはあるブログサイトで書き下ろしたものを加筆して発表しています。まあありふれた内容かもしれませんね^^;これからの設定が結構無茶苦茶なので勘弁ください。まあフィクションですからね・・・。お許しください。また実際のことと異なる場合が多々ありますが・・・。私の妄想ですから・・・。

突然ですが・・・番外編 発表について^^;

いつも面白くない長々した本編が終了し、番外編第2弾です。申し訳ありませんがもうちょっとお付き合いください^^;

本編の50章あたりに出てくる人物設定の番外編です。


設定はほぼ同じ。現代版なので、身分がちょっと無理やりやっています。学園恋愛物のつもりですが・・・。私は現代物を書いた事がないので心配ですが、高校時代のことを思い出しながら書いています。
さて概要を・・・

題名「優しいキスは放課後に・・・」

人物設定
《番外編》                  《原作》
源 綾乃  15歳高校1年生(主人公)→源 綾乃・・・右大将家のお姫様
弐條 雅和 17歳高校3年生     →雅和親王・・・二品親王中務卿宮、後の後二条院
堀川 鈴華 15歳高校1年生     →藤原鈴華・・・摂関家のお姫様
源 将直  陸上自衛隊に勤める綾乃のパパ →源 将直・・・右大将
弐條 常康 雅和のパパ、国家権力者?  →今上帝 常康・・・帝、後の宇治院
清原 義信 綾乃パパの部下自衛官幹部候補→右大将の従者

むちゃくちゃな設定ですが、本編に近い設定の職業についていただきました^^;兵庫県民の私には超地元のことを書いているのです・・・。舞台は現在の神戸・・・。実在する名称もでてきますが、フィクションですのでご了承ください。ホントに恥ずかしいくらい無茶な設定をしています・・・。もっとこの先もむちゃくちゃになると思います。
書き方は本編と違ったブログ風というんでしょうか・・・。この方が読みやすいかなって思います。私も書きやすいかな・・・。

ホントに何考えてんのか?

ホントに最近自分でも何考えてるのかわらない時がある。

そういうことってないですか?


無性にイラついたり、ぼおっとしたりして・・・。


欲求不満?


夫婦生活?あんまり良くないほうだと思うけど?

あたしは4人も子供いるしさ、旦那は40前・・・。どうでもいい年頃かも知んない・・・。

今年は大厄だしね^^;


最近車ぶつけられるし、最悪。まあきれいになって返ってきただけでもましかもしれないけど・・・。


ちょっと早い更年期障害かしらん?


毎日わけのわからん文章書いて、鬱憤晴らしかな?


まあどうでもいい毎日を過ごしています・・・。


追伸:相変わらずコメントトラバ拒否ですみません・・・。許可してしまうとイラつく内容のものが届きますので・・・。




縁~えにし  (7)

(7)選択



ついに夜になって元服のお式が始まろうとしていたのね・・・。続々参列者が紫宸殿に集まってきて、私は最後のほうに入ってきたの・・・。上座には後二条院の横にもうひとつお席があって、誰が座るんだろうって思ったら、紫宸殿中が騒がしくなって私の本当のお父様後宇治院が入ってきて後二条院の横に座ったのね・・・。育てのお父様は正四位だから群臣の中央くらいに座っておられたけど、私とお母様は後宇治院の側に座ったの。みんな着座したのを確認して、誰だかわかんないけど、偉い人が私の宣旨(院政中だから院宣だけど・・・。)について読み上げるの。


「院宣 後宇治院三の宮小夜子姫を本日より三品内親王とする。」


私は後宇治院の元皇后の子だから皇族位の上から三番目の位と内親王の称号を賜ったんだけど、何がなんだかわからないし、周りの人たちは不思議そうにざわついていたわ。後宇治院様は私に真横に座るように言われたから立ち上がって座りなおしたの。そうしたら院様は私の頭を撫でて微笑まれたの。


「今日からあなたは正式な私の娘だよ・・・。」


私は黙ったままで院様の顔を見つめていたんだけど・・・。なんとかそのあと帝の元服式が始まって、さっきとは一変、厳粛なムードになったのよ・・。帝は禁色の衣装を身に着けて、長い童髪を切りそろえて大人の髪を結って冠をつけられたお姿はますます後宇治院によく似ておられて御式を見て私は感動してしまった・・・。お母様もやはり親なのね・・・。とても喜んで御式を見ていたわ。


いつの間にか私は後宇治院様にもたれかかって私は眠っていたの。やっぱり朝早かったし、ずっと重い衣装で一日いたでしょ。お式は夜行われるしね・・・。あとから聞いたんだけど、後宇治院様が眠っている私をお母様のお泊りになる桐壷まで運んでいただいたらしいの・・・。その夜、眠っている私の横で八年ぶりにお母様と後宇治院様が今後の私についてゆっくりお話になったそうだけど、とりあえずこの私の意見を尊重しようということになったらしいの。その日の夜、後宇治院様は後二条院様と二条院にて色々お話し合いになったそうよ。


朝早く私は目覚めたのね。横に寝ているはずのお母様は昨夜全然眠れなかった様子で、目覚めた私の顔を見て微笑んだの。


「今日は二条院にいってあなたのことを話すことになっているの。和気のお父様も同席するわ。」

「院のお父様は?」

「昨日二条院にお泊りだから、二条院におられるわ・・・。」


私は朝餉を食べてお母様と一緒に二条院に行くことになったの。お母様は車の中でずっと溜め息をついて私を見つめているの。


「あなたのお父様はあなたをどうするおつもりかしらね・・・。小夜、きちんとあなたの気持ちを伝えるのですよ。あなたのお父様は信用できない方だから・・・。」

「どうして?とてもいい方だと思うけど?」


お母さまは苦笑してそれ以上のことは言わなかったけれど、きっと話したくないことがいっぱいなのかなってなんとなく思ったの・・・。ほんとにお母様はいろいろな事がありすぎの方だから、きっと話したくないことがいっぱいなんだと思うのよ。


二条院につくとすでにみんな揃っていたの。後二条院様は側にいる侍従まで遠ざけて、私達だけにしたの。身内以外がいなくなったのを確信したら、後二条院様は私にお聞きになったの。


「小夜、小夜はどうしたいのかな?本当のお父上のいる宇治で過ごすのか、それともこのまま下賀茂で過ごすのか・・・。小夜はどちらに行きたい?」

「そうだよ、小夜姫。父はあなたを無理に宇治に連れて行こうと思わない。まずはどうして内親王院宣をしたかわかるかな?」


私はあまりよくわからなかったから首を横に振ったのね。そしたら和気のお父様が言ったの。


「小夜、いいかい。父様はお前を捨てたのではない。お前のことを考えて承諾したのだよ。父様の家柄ではもういくらがんばっても、これ以上は出世しないよ。このままだったらいいところにお嫁にいけない。いいところに行けたとしても、側室だよ。お前には幸せになって欲しいから、内親王院宣に承諾したのだよ・・・。決してお前を嫌いになったわけではないから安心しなさい。だからこれからどちらのお邸で過ごすのかはお前が決めていいんだよ。無理強いなどしないから・・・。」


私は和気のお父様も好きだし、後宇治院のお父様も好き。本当に悩んだんだけど、いい事を思いついて、後二条院様に聞いたのね。


「ねえ後二条院様、私の考えを聞いてくれる?」

「何?いいよ。どうしたいんだね?」

「とてもずるい考えなんだけど・・・。あのね、小夜どちらの家の子にもなるの。」

「どちらにも?」

「うん。小夜ね、たくさん家族が増えて嬉しいの。だって下賀茂のおうちは和気のお父様と、お母様とお兄様と、小夜が住んでいるだけでしょ。小夜にはお爺様がいないから寂しかったんだ。お優しい後二条院様がお爺様なんてとっても嬉しいの。あとね、お父様が二人もいるって素敵じゃない?帝のお兄様や東宮のお兄様・・・。小夜にたくさんの家族が増えたんだもん。だから小夜はどちらのおうちの子にもなるの。そうしたら誰も寂しくなることないし、悲しまないと思うの。」


みんな私のほうを不思議そうに見ていたわ。どういうことかはっきりわからないみたいね・・・。


「だからね、小夜は半月交代で下賀茂と宇治を行ったり来たりするの。そうすればどちらの子にもなれるでしょ。もちろん私がどこかにお嫁入りするまでの話よ。」

「なるほどね・・・。小夜、よく考えたね。さすが私の孫だ。」


後二条院様は私の頭を撫でで微笑まれたの。だって宇治を選んだら和気のお父様とお母様はとっても悲しがることになるでしょ。で、下賀茂に行ったら今度は後宇治院のお父様がお寂しい思いをされるのですもの。交代で行ったり来たりすればいいんじゃないかなって思ったの。変かな???


「本当にいいの?小夜・・・。母様のいる下賀茂にもいてくれるのね・・・。」

「うん。小夜、下賀茂大好きだもん。そして宇治も好きだよ。宇治のお父様、色々案内してね。」

「ああ、宇治にきたときには色々案内するよ。」


お母様は嬉しそうな顔をして涙を流しながら、和気のお父様と見つめ合っていたの。宇治のお父様もすっごく嬉しそうな顔をして、私を見つめてた。


私はこの日から下賀茂と宇治の子になったの。下賀茂ではね、和気のお父様やお母様と薬草園を散歩したり、お父様と鴨川の辺で遊んだりしたの。宇治ではね安子様や宇治のお父様に習字やお歌、琴、香など、色々内親王として必要なことを教わったりしたの。もちろん宇治のお父様と宇治を散策したり川を眺めたりしてたりもしてたわ。


ほんとにどちらの子になってよかったの。もちろんお爺様の後二条院様のところによく遊びにも行ったの。東宮のお兄様のところにも。私は帝のお兄様の妹だからよく節会なんかにも呼ばれたりもしているの。後二条院様と後宇治院様も和解して、今じゃホントに仲のいい親子に戻ったし・・・。私がみんなの縁を結んだのかな?ホントにみんな幸せに暮らしています。


え?私?あれから四年後の十三歳の時に無事に裳着を済ませて、その年の豊明節会で知りあった三歳年上でお爺様の弟宮であられる兵部卿宮様のご次男従五位下侍従であり四品親王輝仁様と婚約したの。もちろん結婚はまだまだ先だけど、まめに文を下さるいい方なのよね。本当に今充実した毎日を送っています。私、幸せになります!

番外編 縁~えにし   完





一応ひと区切り・・・。

どうなんでしょう・・・。

次は現代版を・・・。

主人公はここに出てきた後二条院と、亡き後二条院贈皇太后綾乃なんです^^;

まあ現代版なもんで、設定は無茶苦茶なんですが・・・。フィクションなのでご勘弁を・・・。一応恋愛ものを・・・。


また気が向いたら平安版の番外編を・・・。いらないか・・・。

縁~えにし (6)

(6)真実



 年末で忙しいのと、蘭お姉さまの副臥&入内で大忙しの我が家・・・。相変わらずお父様はおうちにいないし・・・。忙しすぎてあのことなんて忘れてたわ。相変わらず、お父様は私のことをかわいがってくれるし、お母様もいつもどおり・・・。あれって夢かなんかなのかなって思うようになってきたのね・・・。夢であったらいいのになんて思ったこともあったっけ???


私はというと、きちんとお父様の言うとおり、習字とか黙ってやっていたのよ。でも最近のお父様の口癖は「お前は才能ないなあ・・・。」だもん。もちろんどうしてかなんてわかるでしょ。お父様の子じゃないから・・・。私、医学書を読むよりも物語や和歌集を読んでいるほうが楽しいのよ。この前東宮御所に遊びに行って、東宮様や東宮御所の女房たちに舞とか、お歌とか、お琴とか教えてもらったのね。そしたらみんな飲み込み早いって言ってくれて、嬉しかったなあ・・・。やっぱり私は和気家の人間じゃないんだって思ったの。でもお父様がだいすきだから、ちゃんと医学書なんか引っ張り出してきて読んでみたりするのね。そのおかげかわからないけれど、難しい漢字くらいは読めるようになったわ。


あっという間に年が明けちゃって、私はひとつ歳とって9歳なったの。9歳になったって言っても別に変わったことなんてないけどね・・・。でもお父様なんか、私の将来のことを考えるようになってこの前も女医の養成施設に入れるか悩んでいたのよね。お兄様はもう私の歳でこの施設に入っていたし・・・。元旦早々お父様ったら、出仕前に私の肩に手を置いて言うのね。


「どうしよう・・・。女医として学ばせるのであれば早いほうがいいが・・・いろんな医学生を見てきた父様が見てもお前の才能はこれっぽっちもない・・・。いやいや学ばせるよりも殿上人の姫らしいことをさせたほうがいいのではないかな・・・。でもお前は母様に似てじっとしていられない性質だから姫として部屋に籠もるなど・・・・。」


お父様は溜め息をつきながら出仕して行ったのね。お母様もお父様の言うことにうなずきながら私を見ていたの。


「お母様、小夜、お医師にならないから。小夜には才能がないし・・・。小夜はお姉さまの女童で出仕できないかな・・・。そうしたらいろんなこと勉強できるもん。」

「そうね・・・その方がいいかもしれないわね・・・。右大臣様にお文を書くわ・・・。きっと人手が足りないだろうから、喜ばれるかもしれないわね・・・。ちゃんとお行儀よくできるかしらね・・・。まああなたは東宮御所とか二条院によく出入りをしているから、心配ないと思うけど?」


早速お母様は右大臣様にお文を書いたの。そしたらすぐに返事を持ったお父様が帰ってきたのね。


「右大臣様から直々に小夜を蘭の女童として同行せよといわれたよ。どういうことだ?」

「お父様、小夜が行きたいとお母様に頼んだのよ。小夜はお医師にならないから。宮中で動き回ってお仕事するほうがいいもん。」

「んん・・・。それだけじゃない。後二条院様が小夜を帝の元服式に参列させよと仰せなのだ。詳しい事は当日話すと仰せで、訳がわからん・・・。急いで参内の準備を整えないと・・・。」


この日からお父様は私のことでさらにお忙しくなったのよね・・・。お衣装はすぐにたくさん用意できないから、始めのうちは右大臣様の中姫のお衣装をお下がりしてもらうことになったんだけど・・・。ホントにお母様に礼儀作法とかを突貫工事のように教え込まれて気が付いたらもう一月五日の朝・・・。さすがお母様は長年宮中で生活していたから良く知ってるわ・・・。知らない一面を見てしまったって思ったのよ。(やっぱり宮中では猫を被ってるんだね・・・・。家では結構性格大雑把なのにさ。)


私は一応今年新調してもらった女童装束を着せてもらって、きれいに髪も整えてもらってね、お母様のお部屋に行ったのよ。するとお母様ってやっぱりきれいよね・・・。とっても品のいい唐衣を着て、きれいにお化粧して・・・。三十七歳で六人子供を産んだようには見えないって・・・。ほんとに感心しちゃうよね・・・。やっぱりお父様がとってもお母様を愛しているからなのかな・・・。やっぱり女って愛が大切よね・・・。


まず後宮に入って、お姉さまのいる承香殿に挨拶に行ったの。やっぱりお母様は後宮に入ると、緊張しているのかお淑やかなのよね・・・。おうちでは結構走り回っているのに・・・。やはり熟女っていうのか、いい雰囲気があって、後宮の女官たちが振り返るのよ。やっぱり清涼殿あたりから承香殿西廂が見えるじゃない?その辺りにいたときに清涼殿のほうから視線を感じたのよね・・・。振り返ったら数人の公卿達がお母様を見ていたのよね・・・。私じゃないのは確かよ。だってまだお子ちゃまですもの。やはりお姉さまのいる承香殿は大忙しだったのよね。昨日こちらに入ったばかりだからかもしれないけれど、お姉さまは大変疲れた様子で座っておられたの。久しぶりにお姉さまにお会いしたんだけど、やっぱり綺麗よねって思ったの。お姉さまのお母様はとても綺麗な姫君だったってお父様は言ってたし、お父様も姿形のいいほうだもん。色白で、すっきりして、ちょっと違った感じのお顔つき(だって宋国と倭国の混血児なんだもの。)がいいように綺麗さを際立たせているのよね・・・。お姉さまは私の顔を見ると微笑んで、側に呼んでくださったのね。そして私を撫でてくれたの。


ちょうどその頃、紫宸殿で帝の元服による臨時の除目があって、紫宸殿の隣にある御殿だから、結構騒がしかったわ。除目が終わったのか、その足でお父様はこちらの御殿に来たの。お姉さまは大変喜んで満面の笑みでお父様をお迎えになったのよ。お父様は複雑な表情でお姉さまの前に座って除目についていったのよ。


「位階は変わっていないが配置換えがあってね・・・。私は宮内卿になったよ・・・。まあ典薬寮は宮内省の管轄だから配慮があっての事だけど・・・。後二条院に伺ったら、これで表立って医師の仕事も出来るでしょうと仰せになった。まあ私は事務的な仕事よりも医師として動き回っているほうが性に合うのだが・・・。」

「泰明、院は他に何か仰せではなかった?」

「彩子、ここではいえない・・・。今から弘徽殿で後二条院からお話があるから、小夜と一緒に行こう。」


お父様は何やら真剣な顔で、私とお母様を連れて弘徽殿にいったの。弘徽殿に入ったら元服式前の帝(実は初めて会うんだ・・・。)と、東宮様、そして後二条院様がお待ちになっていたの。帝はとてもお父様の後宇治院にそっくりで、驚いたけど・・・。帝は私を見るなり、おっしゃるの。


「この子が僕の妹小夜姫だね・・・。お父上やお爺様から聞いたよ。先日八年ぶりに父上と対面してね・・・。色々小夜姫のことは聞いたよ。本当に東宮によく似た姫だ・・・。」

「東宮様に?」


私は東宮様を見たの。東宮様は黙ったまま微笑まれていたの。お母様はなぜか焦った顔をして私を見るのよね。


「母上。」

「はい。」

「この子は本当に母上に似て可愛らしい。すました感じは父上に似ているのかな・・・。そう思わない?東宮。」

「そうですね兄上。」


お母様はさらに慌てて帝に申し上げたの。


「帝、小夜は和気殿の子ですわよ。なに冗談を・・・。」


やっぱり私は後宇治院様の姫なんだわ・・・。お父様は下を向いたまま黙っていたの。私はお母様に私の知っていることを言おうと思ったの。


「お母様、小夜は後宇治院様の姫なんでしょ。なんとなくわかったんだ・・・。隠さなくってもいい。」

「小夜・・・。」


すると後二条院様が話をしだしたの。


「小夜が悟ったのであれば話は早い。まさしく小夜はわが息子後宇治院の子だ。先日小夜に言われて息子に会ったのだが、あの者もそうではないかと言っていたのだ。そうだよね彩子殿。」


お母様はうなだれて頭を縦に振ったの。すると後二条院様はお母様に言ったの。


「先程和気殿にも申し入れ、内々的に承諾を得た。この子の将来を考え、先帝の内親王として院宣する。その方が嫁ぐときもよい家に嫁げるであろう。」


じゃあ私は養女に出されるってこと???そんなのやだ。後宇治院様はだいすきだけど、今のお父様お母様と離れたくないの。やっぱりお母様は悲しそうな顔をするのね・・・。私は悲しくなってせっかくのお衣装が濡れるくらい泣いちゃった。


「お父様!小夜は宇治に行かなきゃいけないの?下賀茂にいたいよ・・・。お父様の側にいたいの。」

「ありがとう小夜。これからのことはまたゆっくりと話そう・・・。とりあえず、今日元服式の前にお前の内親王院宣があるから、お前もお式に呼ばれたのだよ。泣かないでおくれ。父様も悲しくなるよ・・・。この院宣はお前の将来のことを思ってのことだよ。いいね・・・。」


そのあとお父様は何も言わないまま、じっと式が始まるのを待っていたわ。お母様はというと、やはりすごくショックだったようなの・・・。



縁~えにし  (5)

 

(5)縁結び



 私は後宇治院と共に院の車に乗って、私の家がある下賀茂に向かったの。下賀茂は平安京の北東のはずれにあるでしょ、結構時間がかかるのよね。お忍びとはいえ、先帝が都入りするって言うんで、車には結構護衛が付くのよ。車の中で、院は何か考え事をされていたんだけど、私がじっと見つめると慌てて苦笑されるのよね・・・。


「小夜姫どうかしたのですか?」

「あの、私のような身分でお伺いするのはとても恐れ多いのですが、どうして後二条院様と院は仲が悪いのですか?親子であられるのに・・・。」

「ん?んん・・・。私を嫌うのは父上だけではないのですよ。ほとんどの群臣が私を嫌っていると思う。小夜姫のお父上もそうだよ。本当に帝位についていた頃は皆にひどいことをしてしまっていた。特に父である後二条院、和気殿、そして特に小夜姫のお母上にね・・・。」


詳しく聞きたかったんだけど、後宇治院はそれ以来何もおっしゃらなくなってしまわれたから、私もそれ以上聞かなかったんだ。こんなにお優しい方なのにどうしてみんなが嫌うんだろう・・・。都に入ったころ、また後宇治院様は話し出されたの。今度はお父様の話・・・。


「本当に和気殿には命を助けていただいた恩があるのに・・・。」


後宇治院様はもともとお体が弱いところがあったらしいのよ。だからみんなに幼い頃から大変大事にされてお育ちになられたそう・・・。特に十歳の頃に最愛のお母様を亡くされて病気がちになったらしくって、どんな典薬寮のお医師様、侍医様が治療してもなかなか治らなくって、典薬寮にお医師として配属されたばかりの二十歳位の時のお父様がなぜか主治医に選ばれてね、色々民間療法とか何とかで見事に治したらしいのよ。お父様がいなかったらこの院様はこの世にいなかったかもしれないって院様は言っておられた。それなのに院様はお父様にとてもひどいことをしたんだって・・・・。そんなことするような人には見えないけど・・・。


「若気の至りではすまない自分勝手なことをしてしまったから皆に退位を迫られたのですよ・・・。もう私はあの時の私ではない・・・。それを皆わかってくれないのだよ。わかってくれるのは私の二歳年上の叔父上、源博雅殿のみ・・・。叔父上は暇を見つけては宇治まで足を延ばしてくれて、話などしてくれるのです。本当に助かります。」


私は考える暇なく、院様に言っていたの。


「後宇治院様はひどい人じゃない!私わかるもの!心の中はホントにあったかい人だって!私も後宇治院様の味方だよ!」


院様は驚いた表情を見せたあと、微笑んで私の頭を撫でられたの・・・。


「ありがとう・・・。本当にありがとう可愛い姫君・・・。私にこのような姫がいれば心強いのだけど・・・。」

「じゃあ院様!今からこの小夜と二条院に行きましょう!きっと後二条院様は話せばわかっていただけます!だって後二条院様は情深い優しい方だもの・・・。小夜が付いてるから!小夜は院様の味方だよ!」


院様はありがとうって微笑まれて私を抱きしめてくれたの。丁度二条大路の入ったところだったから、私は車を止めてもらって飛び降りて院様に言ったの。


「院様、ここで待ってて!小夜、二条院様にお会いしてくるから!いい?」

「小夜姫!勝手に入れないよ!」

「いいの!私後二条院様に可愛がられているからいつも入れてもらえるのよ!」


院様は車の御簾をめくって心配そうに見つめていたの。もちろん二条院は顔パス!にこって笑って「和気小夜で~~~す。」って言ったらすんなり入れてくれるんだ。もちろん後二条院様がそのように衛門の者に言ってくれているからなんだけど・・・。私は仲のいい後二条院の侍従さんに面会を頼んだのね。そしたら丁度公務が一段落したらしくってすんなり合わせて頂いたの。私は後二条院様の部屋に通されていつものように御簾の中に入れてもらって挨拶するんだよ。


「おや?小夜。お父上は先程客人が来るって言うから急いで帰ったよ。入れ違いだね・・・。」

「小夜は後二条院様に御用があってきたの。小夜ね昨日後宇治院様のお邸にお泊りしたのね。」


そういうと、後二条院様のお優しい顔が一変、険しい顔になられたの。ああ拙かったかなって思ったんだけど、やっぱり後宇治院様の誤解を解いて仲のよい親子に戻して差し上げようと思ったから意を決して言ったのね。


「あのね、小夜、後二条院様と後宇治院様が、仲が悪いって、親子なのにおかしいと思うの。昨日安子様に呼ばれて宇治院に遊びにいったの。夕刻、小夜ね、お庭で迷子になってないてたら、後宇治院様が探して助けてくださったのよ。この前初めて会った時も、小夜においしいお菓子をくれたり、楽しいお話を聞かせてくれたりしたの。まあそれだけじゃないんだけど、ホントにお優しい、まるでお父様みたい・・・・・。」



(んんんん?お父様???)


そうよ、後宇治院様の私を見る眼差しはまるでお父様のような優しい眼差しだった・・・。何か引っかかるのはこれだったんだって気づいたのよね。ただの優しい眼差しではなくって、温かくって見守ってくれているような優しい眼差し・・・。うちのお父様やお母様と同じじゃない!え~~~~~~!


「小夜、どうかしたの?」

「あのね、後二条院様!小夜ってお父様に似てるの?安子様はお父様に似ていないって言うのよ・・・。本当に小夜はお父様とお母様の子なのかな?」

「たぶんそうだろうね・・・。予定よりも二月いや三月早かったと聞いたが、そんなに早く生まれて育つのだろうか・・・。医学のことはよくわからないが、お祝いに行ったときは結構小夜は大きかったからおかしいなって思ったけれど・・・。」


何言ってんのよ!二月三月の早産で生きてる例って今まで見た医学書とかにも載っていなかったわよ!!!私って後宇治院様の姫ってこと???だから後宇治院様は養女のことを切り出したのかな・・・。


「とりあえず後二条院様!小夜のお願い聞いて!表に後宇治院様が待っているの!少しでもあってあげてよ!もう以前の院様じゃないと思う!だって小夜わかるもん!だって小夜、後宇治院様の姫かもしれないんだもん!!!!」


後二条院様は目を見開いて私の顔を見たのよ。そして後宇治院様と面会することをお許しになったの・・・。もちろん私は遅くなるからって、後宇治院様の車にひとり乗せられて、下賀茂のおうちに戻って行ったの。お二人はどんな話をしたかまではわからないけれど、おうちに帰った私は心配していたお父様に抱きしめられて、お父様のお部屋に連れて行かれたの・・・。

「遅かったじゃないか・・・。後宇治院様は一緒じゃないのか?」

「うん。二条院までは一緒だったの。小夜ねどうしても後二条院様と仲直りして欲しかったのよ。だから小夜、後二条院様にお会いして、お二人を引き合わせたのよ。お父様は後宇治院様を誤解しているわ。とっても優しいいい方よ。もう許してさし上げたらいいのに・・・。ねえ、お父様。小夜、後宇治院様のお気持ちがなんとなくわかるの。とってもお優しいけれど、寂しいの。若いときに色々してしまったっておっしゃっていたけど、それはきっとお寂しいからよ。だからお父様、これ以上後宇治院様を憎まないで・・・。」

「小夜・・・。」


気が付くとお母様がお父様の後ろに立っていたのよ。とても悲しい目をしていたの。今までお母様が見せた事のない悲しそうな目・・・。なぜ・・・?もしかして私がお父様の子じゃないかもしれないって気が付いたからかな・・・。


そのあと私は夕餉を食べて早く寝所に入ったの。でも厠に行きたくなってお父様の部屋の近くで聞いてしまったの。お父様とお母様の話を・・・。


「泰明・・・。小夜はもしかして気づいたのかしら・・・・。あなたの子じゃないってこと・・・。」


(え~~~~~~~。)


「かも知れないね・・・。あの子は結構勘のいい子だから。あそこまで後宇治院をかばうなんてね・・・。辻褄をあわすために、早産で生まれたと報告したが・・・。やはり無理があった・・・。」

「このまま放っておくべきかしら・・・。」

「ああ、そのほうがいいかも知れない・・・・。きっと本当のことを知るときがくるから・・・。でも、私はあの子を本当の娘と思っているのを忘れないで欲しい。彩子が蘭を自分の子のように可愛がって慈しんでくれたように・・・。いくら憎い後宇治院の姫だとしても・・・。私は彩子を再び和気家に迎えたとき決めたのだから・・・。彩子のおなかの子は私の子として育てようと・・・。だから私はこれから小夜がどう選択しようとも私の娘には変わらない。これからずっと・・・。」

「ええそうね・・・。」


私は真実を知ってしまったの。でも、不思議と冷静にいられたのはなぜだろう・・・。やはりこれが縁というものなのかな・・・。ああやっぱりそうだったって・・・。私はお父様のお部屋を遠ざかって自分の部屋の寝所に入って眠ったの。


縁~えにし(4)

(4)呼魂(ここん)



私は夢の中で声を聞いたの。とても不思議な感覚。この声を聞いて何か温かいものに包まれているような・・・。懐かしい・・・・そうとしか言いようがなかったの。夢から目覚めようとしているのか、その声ははっきりしてくるの。薄目で声のするほうを見つめると、安子様と後宇治院様がおられたの。御簾越しだったので、私が目覚めたことに気が付かないみたい。私は寝るふりをして話している内容を聞いたの。



「康仁様、小夜姫はほんとに可愛らしい姫君で・・・。」

「そうだね・・・。最愛の彩子殿に似ているだけではない・・・。安子は気が付いたかな・・・。」


(何?あと誰に似ているって言うのさ・・・。)


「まああの和気殿に似ていないのは確かですわね・・・。」


(和気殿って・・・お父様???)


「私が譲位したのは八年前の春だろ・・・。そして泰明殿に彩子殿を返したのも同じ頃。そして生まれたのは霜月末。おかしいと思わないかな・・・。」

「辻褄が合わないってことでしょうか?十月十日って言いますものね・・・。泰明殿が彩子様と密通していたというのであればわかりますが、それはちょっと考えられませんもの・・・。もちろん父院様も・・・。」

「んん・・・。後見になられていた父院でさえ彩子殿の御殿には殿上を許さなかったのだから、あの堅物な泰明殿が密通などありえない。」


(ど、どういうことよ!!!!!)


「たぶんあれは・・・。」


私はつい緊張のあまり物音を立ててしまったの。もちろん私に聞かれてはいけない内容だったらしくそれ以上は話さないで、院は部屋を出て行かれたのよね・・・・。私って馬鹿・・・。


安子様は驚いた様子をこれっぽっちも見せず、にこやかな表情で私のところに来たの。さすが教養高いかたよね・・・。なんて切り替えが早い・・・。


「まあ、小夜ちゃんお目覚めかしら・・・。もう夕刻だから泊まっていきなさいね・・・。先程和気本邸に文を届けさせたから・・・。」

「さっき・・・。」

「何かしら。」


私はなんだかさっきの話を聞くのが急に怖くなって聞くのを辞めたんだけど、安子様の品のある溢れんばかりの笑顔を見るとまあいいかなって思ったりしたのよね・・・。でも今日はどうして後宇治院様は私にお顔を御見せにならないのかしらね・・・。前回はお一人で長々話しておられたくらいの方だったのに・・・。


「あの・・・院様は?」

「お庭だと思うけれど・・・。最近物思いにふけられることが多くてね・・・。」


私はなんだか知らないけれど、居てもたってもいられなくなって、気が付くと庭に下りていたの。無我夢中で院のお姿を探していたのね。


「小夜ちゃん!大切なお衣装が!」


やはりいいおうちの邸の庭ってどうしてこんなに広いのかしら・・・。院を探しているうちに庭木が茂った訳のわからないところに出ちゃって、日も陰ってきたし、もう真っ暗・・・。いくら緑豊かな下賀茂に生まれ育った私だって、こんなに緑の生い茂った知らないお庭で迷って心細いって何の・・・。恐怖のあまり腰が抜けちゃって後から考えたら恥ずかしいんだけど、思いっきり泣き叫んでいたのよね。


「お父様!お母様!小夜おうちに帰りたいよ!」


その場にうずくまってしまって、大声で泣いていたの。小半時ぐらい経ったのかな。松明を持った人影が現れて私を抱きしめてくれたの・・・。


「お父様?」


きっとお父様が迎えに来てくれたんだって思って緊張の糸が切れたのか私はいつの間にか気を失っていたのよね。意識が朦朧としている間ずっと抱きしめられたままだったのか、とても温かい感じして、なんだか不思議と落ち着けたのよね・・・。そのまま温かい胸の中で眠ってしまったわけ・・・。


朝気が付いたら、なんと御帳台の中で寝ていたのよ!!!御帳台よ!!!横には・・・・。


「!きゃ~~~~~~~~~~!」


邸中どころか外にまで聞こえるような声で叫んでたわよ・・・。だってだって横には、い、院が・・・・。もちろん私も院も小袖姿よ!小袖姿っていったら下着なの!まだ裳着を済ませていないとはいえ、私も姫よ!いい歳した殿方と同じ布団の中で寝ていたんだから!!!!何このおっさん!いくら最愛か何かわからないけど、元皇后のお母様に似ている私と同じお布団で・・・。へんな趣味してるわ!このロリコン!!!私は座り込んで泣いたのよ!私の初枕(初夜のことね)がお母様の元旦那様だなんて・・・。洒落にもならないわ!!!私の悲鳴に驚いたのか、院も飛び起きて、周りにいろんな女房や院の従者とか家司とかが集まってきて大騒ぎになったのよね!院と目が合うと、私は無我夢中で院を叩きまくったわ!


「やだやだやだ!!!!」


院は何がなんだかわからない様子で、目を見開いて私を見てるのよね・・・。するとね安子様がすっ飛んできて平然微笑ながらと言うのね・・・。


「院、ですから昨夜お止めくださいと・・・。」

「小夜姫に誤解をされてしまったようだな・・・。ほんとに気の強いところは母君によく似て・・・。安子、引っかかれてしまったよ・・・。」


院は苦笑しながら引っかき傷を触ったのね。結構力任せに叩いたり引っかいたりしたもんだから頬にできた傷から血が出ていたの・・・。まあたいしたことなかったからすぐに血が止まったんだけど・・・・。


「ごめんなさい・・・。」

「こちらこそ驚かせてしまったようだね・・・。いくらこの私でも裳着前の姫を手籠めにするつもりはないよ。昔は若気の至りで色々やってしまったけれど・・・。」


院はね、私に頬にある古傷を見せて言ったのよね。


「これは小夜姫の母君につけられた傷でね・・・。まだ小さいあなたに言うのは控えるけれど、若気の至りで今上帝である良仁を懐妊させてしまったときの傷・・・。」


ちょっと待ってよ・・・無理やりってこと????よくそんなこと裳着前の私にいえるわよね!!!いろんな物語を読んだ私には今上帝とお兄様の歳の差がなんとなくわかったような気がするけど・・・。かの光源氏の君のように父帝(後二条院様のことね)の女御(大和女御と呼ばれていたお母様のこと)に手をつけたって事なのかな????


「昨日庭で小夜姫が泣いているのを見つけてね、かわいそうだと思って抱きしめてやったとたんに倒れたのだよ・・・。そのまま眠ってしまったから、可愛らしい姫の寝顔を眺めながら眠りたくなってね・・・。安子達には反対されたが・・・・。」


院は優しい笑顔で寒いだろうと側にある単をかけてくれてね。院は小袖のまま御帳台を出られて脇息にもたれかかって溜め息をつかれたの。女房は急いで院に上着を羽織らせて朝の支度をしているのよ。


「小夜姫は大きくなったらやはり女医になるのかな・・・。」


院は私に聞いてくるのよ。私はなるのが当たり前だと思っているから、他に何になるかなんて考えたことなかったわよ。(まあ私は姫だから、どっかにお嫁に行くかお婿さんをもらうかしかないけど・・・。)私は黙っていると院は変なことをおっしゃるのよ!


「小夜姫、うちの子になるつもりはない?小夜姫がいてくれたらこの邸もきっと楽しいだろうね・・・。」

「え?」


ここのおうちの養女になれって事???もちろんこのおうちは、古い由緒ある家系(都が飛鳥や斑鳩とかにあった時代以前?かな、昔は結構高位まで登りつめたらしい)だけがとりえのうちと違って、隠居されてるとはいえ皇族中の皇族のお家柄だから、うちと比べていい生活が出来るのは確かだけどね、私が出て行ってしまったらお父様やお母様はきっと寂しいと思うのよ。それでなくても蘭お姉さまが右大臣家の養女として出て行かれたときはお父様なんて何日も寝食ができなくって、お倒れになる寸前だったんだもの・・・。お父様に可愛がられている私が出て行ってしまったらきっと再起不能になるわねきっと・・・。


「小夜姫には弟や妹はいないの?」


と院は私に詳しく家族構成を聞かれるんだけど、もちろん私には妹も弟もいないわ・・・。お母様は私を産む時に大変難産で、三日三晩陣痛に苦しんで、やっと生まれても生死をさまよったほどだったって聞いたわ。お父様は大事な節会にも出席せずに、ずっとお母様に治療しながら寄り添って看病していたんだけど、私が生まれたあとも出仕しないでお父様の力を全部出し切って一生懸命治療と看病していたの。命は助かったけれど、お母様は私を産んでから子供の出来ない体になってしまったのよ。だから私には妹や弟はいないの。そんなこと公言できないからいえないけれど・・・。


「いません・・・。」

「そう・・・きっと和気殿は手放さないだろうね・・・。小夜姫がいたら生きる張り合いが出来ると思ったのだが・・・。」


院はとても悲しそうな表情で私を見つめたのね。そんな顔で見つめられたら・・・。ここ最近の帝と違ってホントに4年程しか帝位についていなかった方だからまだ若いしきっとお寂しいんだと思うけどね・・・。


話は変わるけど、やっぱ皇族の朝餉って豪華でいいわね・・・。この院は隠居されていても、亡くなられた祖父院から受け継いだご領地やお妃様がたが有力な貴族出であったから援助もあってこうして優雅な生活をしているのだろうけど・・・。それがなければただの帝位についたことのある宮様で終わっているんだろうな・・・。院とお妃様たちと一緒に食べた朝餉のおいしいこと・・・。珍しくおかわりまでしてしまったのよね・・・。安子様はたくさん食べる私を見て驚いておられたけど、院は微笑んでずっと私の事を見ておられたの。


「小夜姫、今日は私がお邸まで送ってあげよう・・・。」

「まあ!院。珍しいこと・・・。」


なんと院自ら滅多に宇治を出られないのに私を送ってくださるって・・・。あんなことしてしまったのにホントに恐縮・・・。


「誰か料紙と筆を・・・。誰か手の空いているものをこちらへ・・・。」


院は何かすらすらと立派な御料紙にお書きになって、お邸の従者のものに2通の文を託されたの。


「隆哉、先触れとして二条院と下賀茂の和気邸にこれを・・・。」

「御意。」


えええ!私をお送りになるついでに二条院にも寄るって事???確か後二条院様と後宇治院様の仲は超険悪だって聞いたのに???そういえばお父様は後宇治院様を苦手だって言ってたしな・・・。こんなにお優しくていいかたなのに・・・どうしてだろ・・・。朝餉を終えた私は安子様の女房が持ってきたお衣装に着替えたの。なんだか安子様のお兄様のとこの姫(安子様の姪ってことね)が着ていたらしいのよ。まあ言うお下がりってやつね・・・。


「よかったわ、ぴったりで・・・。昨日お庭で汚してしまったでしょ。うちには子供がいないからどうしようと思ったのだけど、お兄様のところに連絡して大姫が着ていたものを持ってきていただいたのよ。」

「またお返しに来ないと・・・。こんなにいいものだもの・・・。」


やはり安子様のお兄様も源氏長者のお家柄だけあって姫はいいもの着てるわ・・・。安子様ったらこのお衣装を返さなくていいわっておっしゃるのよ。ほんと太っ腹よね・・・。やはりいい絹使ってるから重いってなんの・・・。重そうにしている私を見て院は笑いをこらえておられたわ・・・。ホントに恥ずかしい・・・。そんなことをしているうちに隆哉って言う院の従者が早馬で戻ってきて1通の文を渡すのね・・・。そしたら院は溜め息をつかれて言ったの。


「また父上に面会を断られてしまったよ・・・。いつになったらお許しを得られるのだろう・・・。下賀茂の帰りにだめもとで寄ってみるかな・・・。」

「まあ・・・またですか?きっと父院様はお許しになられます。きっと・・・。」

「でも年明けはわが子良仁帝の元服。元服の祝いぐらい・・・。」


ホントに悲しそうな顔をして安子様と話しておられるからなんかあるんだろうなって思うのよね・・・。何で親子が何年もの間、仲良く出来ないのだろう・・・。なんだか私、後二条院と後宇治院の仲を取り持ってあげたくなっちゃったのよ。私っておせっかいかしら・・・。