縁~えにし  (7) | 超自己満足的自己表現

縁~えにし  (7)

(7)選択



ついに夜になって元服のお式が始まろうとしていたのね・・・。続々参列者が紫宸殿に集まってきて、私は最後のほうに入ってきたの・・・。上座には後二条院の横にもうひとつお席があって、誰が座るんだろうって思ったら、紫宸殿中が騒がしくなって私の本当のお父様後宇治院が入ってきて後二条院の横に座ったのね・・・。育てのお父様は正四位だから群臣の中央くらいに座っておられたけど、私とお母様は後宇治院の側に座ったの。みんな着座したのを確認して、誰だかわかんないけど、偉い人が私の宣旨(院政中だから院宣だけど・・・。)について読み上げるの。


「院宣 後宇治院三の宮小夜子姫を本日より三品内親王とする。」


私は後宇治院の元皇后の子だから皇族位の上から三番目の位と内親王の称号を賜ったんだけど、何がなんだかわからないし、周りの人たちは不思議そうにざわついていたわ。後宇治院様は私に真横に座るように言われたから立ち上がって座りなおしたの。そうしたら院様は私の頭を撫でて微笑まれたの。


「今日からあなたは正式な私の娘だよ・・・。」


私は黙ったままで院様の顔を見つめていたんだけど・・・。なんとかそのあと帝の元服式が始まって、さっきとは一変、厳粛なムードになったのよ・・。帝は禁色の衣装を身に着けて、長い童髪を切りそろえて大人の髪を結って冠をつけられたお姿はますます後宇治院によく似ておられて御式を見て私は感動してしまった・・・。お母様もやはり親なのね・・・。とても喜んで御式を見ていたわ。


いつの間にか私は後宇治院様にもたれかかって私は眠っていたの。やっぱり朝早かったし、ずっと重い衣装で一日いたでしょ。お式は夜行われるしね・・・。あとから聞いたんだけど、後宇治院様が眠っている私をお母様のお泊りになる桐壷まで運んでいただいたらしいの・・・。その夜、眠っている私の横で八年ぶりにお母様と後宇治院様が今後の私についてゆっくりお話になったそうだけど、とりあえずこの私の意見を尊重しようということになったらしいの。その日の夜、後宇治院様は後二条院様と二条院にて色々お話し合いになったそうよ。


朝早く私は目覚めたのね。横に寝ているはずのお母様は昨夜全然眠れなかった様子で、目覚めた私の顔を見て微笑んだの。


「今日は二条院にいってあなたのことを話すことになっているの。和気のお父様も同席するわ。」

「院のお父様は?」

「昨日二条院にお泊りだから、二条院におられるわ・・・。」


私は朝餉を食べてお母様と一緒に二条院に行くことになったの。お母様は車の中でずっと溜め息をついて私を見つめているの。


「あなたのお父様はあなたをどうするおつもりかしらね・・・。小夜、きちんとあなたの気持ちを伝えるのですよ。あなたのお父様は信用できない方だから・・・。」

「どうして?とてもいい方だと思うけど?」


お母さまは苦笑してそれ以上のことは言わなかったけれど、きっと話したくないことがいっぱいなのかなってなんとなく思ったの・・・。ほんとにお母様はいろいろな事がありすぎの方だから、きっと話したくないことがいっぱいなんだと思うのよ。


二条院につくとすでにみんな揃っていたの。後二条院様は側にいる侍従まで遠ざけて、私達だけにしたの。身内以外がいなくなったのを確信したら、後二条院様は私にお聞きになったの。


「小夜、小夜はどうしたいのかな?本当のお父上のいる宇治で過ごすのか、それともこのまま下賀茂で過ごすのか・・・。小夜はどちらに行きたい?」

「そうだよ、小夜姫。父はあなたを無理に宇治に連れて行こうと思わない。まずはどうして内親王院宣をしたかわかるかな?」


私はあまりよくわからなかったから首を横に振ったのね。そしたら和気のお父様が言ったの。


「小夜、いいかい。父様はお前を捨てたのではない。お前のことを考えて承諾したのだよ。父様の家柄ではもういくらがんばっても、これ以上は出世しないよ。このままだったらいいところにお嫁にいけない。いいところに行けたとしても、側室だよ。お前には幸せになって欲しいから、内親王院宣に承諾したのだよ・・・。決してお前を嫌いになったわけではないから安心しなさい。だからこれからどちらのお邸で過ごすのかはお前が決めていいんだよ。無理強いなどしないから・・・。」


私は和気のお父様も好きだし、後宇治院のお父様も好き。本当に悩んだんだけど、いい事を思いついて、後二条院様に聞いたのね。


「ねえ後二条院様、私の考えを聞いてくれる?」

「何?いいよ。どうしたいんだね?」

「とてもずるい考えなんだけど・・・。あのね、小夜どちらの家の子にもなるの。」

「どちらにも?」

「うん。小夜ね、たくさん家族が増えて嬉しいの。だって下賀茂のおうちは和気のお父様と、お母様とお兄様と、小夜が住んでいるだけでしょ。小夜にはお爺様がいないから寂しかったんだ。お優しい後二条院様がお爺様なんてとっても嬉しいの。あとね、お父様が二人もいるって素敵じゃない?帝のお兄様や東宮のお兄様・・・。小夜にたくさんの家族が増えたんだもん。だから小夜はどちらのおうちの子にもなるの。そうしたら誰も寂しくなることないし、悲しまないと思うの。」


みんな私のほうを不思議そうに見ていたわ。どういうことかはっきりわからないみたいね・・・。


「だからね、小夜は半月交代で下賀茂と宇治を行ったり来たりするの。そうすればどちらの子にもなれるでしょ。もちろん私がどこかにお嫁入りするまでの話よ。」

「なるほどね・・・。小夜、よく考えたね。さすが私の孫だ。」


後二条院様は私の頭を撫でで微笑まれたの。だって宇治を選んだら和気のお父様とお母様はとっても悲しがることになるでしょ。で、下賀茂に行ったら今度は後宇治院のお父様がお寂しい思いをされるのですもの。交代で行ったり来たりすればいいんじゃないかなって思ったの。変かな???


「本当にいいの?小夜・・・。母様のいる下賀茂にもいてくれるのね・・・。」

「うん。小夜、下賀茂大好きだもん。そして宇治も好きだよ。宇治のお父様、色々案内してね。」

「ああ、宇治にきたときには色々案内するよ。」


お母様は嬉しそうな顔をして涙を流しながら、和気のお父様と見つめ合っていたの。宇治のお父様もすっごく嬉しそうな顔をして、私を見つめてた。


私はこの日から下賀茂と宇治の子になったの。下賀茂ではね、和気のお父様やお母様と薬草園を散歩したり、お父様と鴨川の辺で遊んだりしたの。宇治ではね安子様や宇治のお父様に習字やお歌、琴、香など、色々内親王として必要なことを教わったりしたの。もちろん宇治のお父様と宇治を散策したり川を眺めたりしてたりもしてたわ。


ほんとにどちらの子になってよかったの。もちろんお爺様の後二条院様のところによく遊びにも行ったの。東宮のお兄様のところにも。私は帝のお兄様の妹だからよく節会なんかにも呼ばれたりもしているの。後二条院様と後宇治院様も和解して、今じゃホントに仲のいい親子に戻ったし・・・。私がみんなの縁を結んだのかな?ホントにみんな幸せに暮らしています。


え?私?あれから四年後の十三歳の時に無事に裳着を済ませて、その年の豊明節会で知りあった三歳年上でお爺様の弟宮であられる兵部卿宮様のご次男従五位下侍従であり四品親王輝仁様と婚約したの。もちろん結婚はまだまだ先だけど、まめに文を下さるいい方なのよね。本当に今充実した毎日を送っています。私、幸せになります!

番外編 縁~えにし   完





一応ひと区切り・・・。

どうなんでしょう・・・。

次は現代版を・・・。

主人公はここに出てきた後二条院と、亡き後二条院贈皇太后綾乃なんです^^;

まあ現代版なもんで、設定は無茶苦茶なんですが・・・。フィクションなのでご勘弁を・・・。一応恋愛ものを・・・。


また気が向いたら平安版の番外編を・・・。いらないか・・・。