友人の同僚である医師がメンバーになっているハイドン・チャンバー・オーケストラ(HCO)のコンサートがあった。会場は教会で場所はハイゲートというロンドン北部、昔住んでいたホロウェーからそう遠くないふつうの郊外住宅地だ。
曲目はメンデルスゾーンが2曲で序曲 「フィンガルの洞窟」、バイオリンコンチェルト、ベートーベンの交響曲2番。
HCO自体はアマチュアだが共演する指揮者やソリストはプロかプロの卵が多い。
今回は有名な曲ばかりで、指揮者ロビン・オニール(Robin O'Neill)、バイオリン奏者ジャック・リーベック
(Jack Liebeck)もプロ。HCOメンバーも相当練習を頑張ったのではないか。

ロンドンの教会ではよくコンサートが開かれる。年末に友人が出演したメサイヤコンサートも教会だった。
主催者側が注意深く選んでいるのかもしれないが、教会は音響効果がすぐれている。
特にクラシック音楽や合唱曲はもとも教会で発展したものだから相性が良い。身廊(真ん中の天井が高い部分)はもとより、側廊(身廊に沿って両側にある天井が低い部分)でも、音はそれほど悪くない。
そういえば、日本で建築学科の学部時代に西洋建築史の授業で「教会というのはもともと十字型の平面から空間構成が成り立っていて、側廊は後から付け足されたものだ」と聞いた。
今回のコンサートも十字型のクロスした部分の横方向に少人数のオケが着席した。
教会側も慣れたもので、コンサート用特別ライトもセットされ、普段は布教グッズ(?)を販売するのであろう、キオスクのような木製のボックスもきょうはワインバーに早変わり。
教会の席はベンチ式なので、フレキシブルに聴衆の人数調整ができるのも、利点だ。
かつて御茶ノ水のカザルスホールに行ったとき、上階もそこでの席もホールを取り囲むように配置されていて、不思議だったが、何のことはない、教会の構造を取り入れたのだ。しかし、一方、日本の教会は建築家が「頑張って」デザインしているので、はたしてコンサートに向いているかどうかは疑問。クリスチャン人口も1%に満たないとネット上では言われており、教会も英国みたいにあちこちにあるわけではないし、同じようなコンサートは開催しにくいかもしれない。

ところで、演奏の方は最初の2曲が良かった。特にメンデルスゾーンのバイオリンコンチェルトは若手バイオリニストのジャック・リーベック君が
乗っていたので、演奏後に指揮者がハグした際には「良くやった」感が溢れていた。アマチュアオケでの演奏会とはいえ、数百人の聴衆を前に、難曲のコンチェルトを弾くのはやっぱり気持ちいいのだろうなあ、と思った。ここで盛り上がってしまったので、最後のベートーベンが少し割を食ったかもしれない。でも、10ポンドでこの演奏会だったら、やっぱり来て良かった!