『Orwell: 2+2=5』(2025)@ Finsbury Park PH
Finsbury Park Picturehouseでハイチ出身のラウル・ペック監督のドキュメンタリー映画『Orwell: 2+2=5』(2025)を観た。『動物農場』及び『1984』で名高い英国人作家ジョージ・オーウェルの伝記映画。彼の生涯と作品を通じて、全体主義や権威主義*の危険性と現代への警鐘を描く。副題の「2+2=5」とは『1984』の中で独裁政権が人々に「2+2=5」であると信じ込ませることで、個人の理性や客観的な事実(2+2=4)よりも「党の言うことこそが真実である」という絶対的な服従を強いる状況を表す。ナレーションつまりジョージ・オーウェル役は英俳優ダミアン・ルイス。さて、あらすじは… ジョージ・オーウェルは20世紀で最も先見の明のある作家の一人であり、その小説『1984年』や『動物農場』は、身も凍るような権威主義的な未来を予見していた。高評価を得ているラウル・ペック監督(『アイ・アム・ノット・ユア・ネグロ』)は、映像クリップ、オーウェルの日記の朗読、映画への言及、そして現代の映像を織り交ぜることで、作家の人物像を描くだけでなく、彼の作品がいかにして予言的なものとなったかについて、新たな視点を提供している。(配給会社Neonのサイトから翻訳) ストリーミングと違い逃げ場がない映画館で2時間この映画を見続けるのは辛かった。映画自体は批判性が高く面白いのだが、現代のニュースが引用として挟まれるため、「こんな酷い世界に住んでいるのか」と絶望的な気分に陥り目を背けたくなるから。予告編でも分かる通り世界各国の政治家(トランプ、プーチン、ネタニヤフ他)が登場し、戦争で破壊されたウクライナやガザの街を目の当たりにするので、今の国々がオーウェルが描いた全体主義の国にかなり似通っていることに気付かされる。自分もメンタルがやられないよう普段こうした動画は無意識に避けているのだろう。 オーウェルの小説を原作とする映画からクリップを引用し、現代政治の有り様をニュース映像と重ね合わせる手法は、直接的だが誰にでも分かり易く評価できる。その割にIMDb 6.8の評価は低い理由を調べたところ、ガーディアン誌によれば初期オーウェルの反ユダヤ主義がのちにどう変化したのか、また、1949年に彼が「隠れ共産主義者」とみなした38人の著名人の名前をイギリス当局に渡していたことで、一部左派には彼が発表した社会主義批判の小説以上に嫌われていたことが映画で表現されていないと言う(Bradshaw, 2026)。** 「オーウェルという複雑な人物を一方的な側面からの見方で表現するのは如何なものか」との批判だ。 古代中国秦王朝の焚書坑儒から、書物を焼くようになったら自由への統制の始まりであること、また文明の破壊であることは頭では分かっているけれど、実際にアメリカで本を焼いている映像を目にするのは話が別。日本で図書館に置く本を規制するのもその第一歩。効率やコスパを追い求める先に待つ世界は全体主義か、と暗澹たる気持ちになった。それでも「お花畑に住んでいるのではない」あるいは「今の世界はディストピア」と強烈に意識させられる点でこの映画はオススメ。*権威主義と全体主義の違いは以下の通りー権威主義:政治的に従順であれば、私的な生活や思想の自由は比較的認められる(政治的自由の制限)。全体主義:私的な生活、思想、心の中までも国家のイデオロギーに染めることを強制する(生活全般の統制)。**Bradshaw, P. (2026) 'Orwell: 2+2=5 review – documentary portrait doesn’t wholly add up', The Guradian.26 March.Available at:https://www.theguardian.com/film/2026/mar/26/orwell-225-review-documentary-portrait-doesnt-wholly-add-upOrwell: 2+2=5 review – documentary portrait doesn’t wholly add upRaoul Peck’s film about the Nineteen Eighty-Four novelist makes a compelling case for its continuing relevance but could ask more searching questions about its authorwww.theguardian.com日本語版の予告編はまだ見当たらないので英語版