山口組の分裂は二度目とだ。一度目は後継者問題で主流派と反主流派の争いであった。主流派に反旗を翻して飛び出して一和会が結成され、その後は山一戦争と呼ばれる構想が続いた。その結果山口組は膨れ上がり、一和会は消滅し、暴力団は山口組が制覇を握った。山口組に非ずんば極道を語るなかれくらいの覇権を握って、裏社会に君臨した。
国内最大の指定暴力団山口組となり、総本部は神戸である。その山口組が再び分裂した。元々山口組主流派であるはずの山健組を中心とした神戸グループともいえる13団体が「神戸山口組」の看板を掲げ独立宣言したと報じられたときは、暴力団世界の新たな勢力図が描かれるのだと、単純に驚き、そして、血なまぐさい構想が始まると、殆どの人は思っただろう。
独立宣言はすなわち宣戦布告である。「山口組」と「神戸山口組」の構想は、その名称からして山口組の内部抗争的なものであり、シリアの政府軍と反政府軍的な対立と思えば、理解しやすいが、国家の政府軍と反政府軍とは、やはり、明らかな違いがあるだろう。
山一戦争と呼ばれる抗争では多くの死傷者を出した。今回の「山口組」と「神戸山口組」の山山抗争は、山一抗争以上に激しいものとなり、規模も全国的になり、代理抗争が方々で起きるだろうと、その筋の専門家は予想する。山一抗争時と違うのは、指定暴力団という国が認めた暴力団への当局の対応と、その他の暴力組織との対応の差である。警察としては、「神戸山口組」の指定暴力団への指定が喫緊の課題だという。
山口組は規模も全国規模で覇権を握るが、その歴史も古く100周年を迎えた。「山口組」分裂は、その
100周年記念と関係あるのかないのかはわからないが、元々神戸を中心にした反主流派にとって、神戸以外の地から来た現在の主流派は認めがたいものがあったのではと、単純な想像をする。この世界のことは分からないにしても、他の世界も同じようなものであり、政治の世界なら、自民党主流派が元社会党とか元民社党とか、元民主党とかから来た誰かだったら、自民党の本流を歩いてきた人は納得しがたいものがあるのと同じかもしれない。納得し難い思いのメンバーがそろって飛び出して新党結成ということだ。ただ、違うのは、血なまぐさい抗争という暴力団的抗争とは違う政治信念に則っての知的な抗争になるということである。そして、その判断は選挙を通して国民にゆだねられるが、「山口組」と、「神戸山口組」の抗争は、血で血で争う、いわば殺し合いの末に、勝敗に関係なく、国家権力によって押し付けられると
いうことである。
さて、当局は黙ってはいない。山口組と当局の争いは長く、様々な山口組壊滅作戦があったという。「頂上作戦」とか、「刑法の教唆」とか、国の法律を変えたり作ったりさせた山口組だ。今回は分裂で誕生した「神戸山口組」の暴力団対策法に基づき指定暴力団として対策を強化する。指定暴力団の「対立」となった。
そして、4月7日現在、発砲事件や車などの突込みなどの抗争は12都道府県21件もあり、今も増え続けているのだろう。今回の抗争の特徴として、ダンプカーなどによる事務所などへの突込みがあるが、まだ、死者は確認されてないという。
指定暴力団への道は、
1. 暴力団の威力を用いた資金獲得活動
2. 犯歴を持つ構成員の割合
3. ピラミッド型の組織
の三条件のクリアだ。
こんな条件など、次第に勢力を増す「神戸山口組」は、難なくクリアーだ。
そして、警察は「特定抗争指定暴力団」の指定をするらしい。
なら、どうなるか。
警戒区域内での組員の事務所に出入りし禁止。
五人以上の集団の禁止などがあるらしい。
さて、改めて整理すると、
日本国内最大の指定暴力団「山口組」が分裂した。
2015年8月、直系組長13人が離脱し、「神戸山口組」の看板を上げた。
直接の理由は、現組長の組運営への不満だ。
単純に言うと名古屋出身の組長の名古屋寄りの組運営への反旗ということになる。
また、高額な上納金への不満もあるとか。
さらに、上納金が80万円から115万円への値上げだ。積立金の10万円があり、直系組長の負担は毎月125万円で、舎弟は20~30万円高いとか。さらに盆などの負担金もあるとか。他にもいろいろ負担金があるらしいが、それ以上詳しい細かい負担は、報道などではわからない。
今日も、今も、全国の主だった繁華街で、組事務所と思われる建物へのダンプの突込みや、組事務所への特攻隊的な強襲があるかも知れない。繁華街だけでなく、住宅地や学校の近くでも、抗争事件が起きているから、一般市民にとっては甚だ迷惑な話である。県条例や市町村の条例で対応できるのは少なく、組事務所への撤去運動なども危険が伴うから厄介だ。警察が四六時中警戒するわけもない地方都市の抗争事件は厄介である。通学路付近の抗争が特に危険である。射事件などが頻発すれば、流れ弾の危険も増す。