東シナ海流76 最後の秘境ガジャ島 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

日本列島最後の秘境と呼ばれるガジャ島に向けて客を運ぶ遠征航海が決まった。

高速渡船「朝凪」を2日間チャーターしたのは国内で最も古い釣り雑誌「週刊釣りサンデー」の小西社長一行だ。

機関長はまむしの頭、大量の氷と餌の冷凍ムロアジ、それに食料と水を積み込み屋久島一湊港を出港した。

 

屋久島から奄美の間は黒潮本流が通り、沖縄本島の珊瑚礁の海とは比べ物にならないくらい波が荒い。

屋久島以南で奄美まで点在する火山島はトカラ列島と呼ばれた。

トカラは広い海原トハラから出た言葉、つまり広大な海原の火を噴く島々だ。

活火山が噴火すれば船から空を飛ぶ大きな岩が見える。

台風にも耐える避難港は一つしかなく船は滅多に通らない、つまり救助が絶望的な海域だ。

島民は平均数十人で国内の最高僻地。

 

波が尋常ではないから普通の港の構造ではもたない。

中ノ島、諏訪瀬島、悪石島、口之島、平島、宝島、小宝島、無人島のガジャ島、小ガジャ・・ニヨンという岩だらけの難所で船の墓場もある。

宝島はキャプテンキッドが宝を隠したと言われ、本のモデルにもなり、世界中から宝探しが押し寄せた伝説の島だ。

 

ガジャ島は臥蛇島と書き、島を沖から眺めると蛇が伏せたような形をしている、

島の周囲は約9kmで、大半が高さ50mから100mの断崖となっており、平坦地はほとんど無く中央の山の高さは500m近い。

戦前はカツオ漁が栄え人口は100人を超えていたが、1970年に全島民が離村、無人島になっている、

 

最後の秘境と呼ばれるだけあって、トカラ列島の中では最も大魚の宝庫で、礒からは50キロを超える大型クエ、ハタ類、ヒラアジ、マグロも釣れる。

礒から竿を出せば竿の真下が水深40mを超える場所もあり、岸からカジキの群れが飛ぶのが見える。

ウツボも20キロを超える丸太サイズ、まあ何が釣れるかわからないのだから、仕掛けも当然通常ではなく「化け物サイズ」用になってしまう。 エサは30~40cmの魚丸ごと一匹掛けだ。

 

今回の狙いは40キロを超えるヒラアジで、通称カッポレ。

力強く走り回る回遊魚で、礒の釣り人が左右に振り回される様子からこの名がついた「釣り人用語」だ。

足場の悪い磯で力も持久力もフットワークも運動神経も必要な幻の魚。

体力を使い果たして疲れ果てても、釣り上げれば本望だろうな。

 

上陸した礒の目の前には50mの水深から海上の高さ50mの尖った岩が突き出し、「ガジャの立神」と呼ばれている。

海底からは全長百mのロケットのような岩で、わずかな窪みに3人しか揚がれず身動きが取れないので左右に走り回るカッポレやマグロは手に負えないだろう。

 

この礒も立神もガジャ島の突き出た岬にあり、潮流は川のようだが、黒潮本流のど真ん中だから当然と言えば当然。

目の前でマグロやカジキの群れが飛び跳ねればときめくが、手に負えないのだから知らんぷりするしかない。

 

諏訪之瀬島もそうだったが、岸から目の前数百mの場所でカツオ一本釣り漁船が操業、カツオを次々に釣りあげるのを見ることが出来る。 この立神のすぐ近くでもたまに見かける。

カツオの漁場は黒潮本流、鹿児島や奄美から見ればはるか沖の黒潮だが、この島は沖まで行かずとも磯の目の前が年中本流。

陸地で弁当食べながら、目の前でカツオ一本釣りの操業が見られる島はそう幾つもないだろうな。

 

磯釣り客を渡す礒はすべて潜水調査、海底の状況を伝えるように心がけていた。 とにかく情報のない場所ばかりなのだから自分で潜って確かめるしかない。 20m以内なら素潜りで十分だが、それ以上はスキューバ潜水になる。

 

船長でダイバーは数多いが、漁労まではともかく、磯釣り、さらに海洋学全般、気象学、海洋生物学、流体力学、船舶設計までとなれば聞いたことがない。

ここまでやれば海と船と生物を総合的に理解することに役立つ。

船乗りにはやれない野人独特の操船法もそこから生まれた。

 

潮流が緩んだ時、この立神の海底に潜水したが、海底までは行けなかった。 透明度は30m以上で40mから海底を見渡したが、周囲は数百mに落ち込む傾斜になっている。

音響測深機で水深も地質も魚影もわかるが詳細は潜るのが一番だ。

 

黒潮を旅して来た6mの巨大鮫がいきなり目の前に現れても不思議ではないが、振り向いてそこにいらっしゃったら誰でも髪毛も鼻毛も逆立つ。 船の便もないし、この危険な海に1人で潜水する人は誰もいない。

 

高速の中型漁船を持つ屋久島の漁師は、巨大魚が大漁とわかっていても、片道6時間、燃費はかかるし波は荒いし、釣ってもサメに横取りされて頭しか上がって来ないほどサメの宝庫。

リスクが高いので行く人はほとんどいなかった。

 

釣りの途中、小西さんから依頼されスキューバ潜水した。

エサのムロアジが枯渇、エサにするから1キロ程度のグレを数匹突いて来てほしいと言う。

 

撒き餌持参で海底20mの海底に座り込み寄って来たグレを捕獲。 サメ対策の炭酸ガス銃も持参。

エサの確保か・・自分がエサになるか微妙な時間だな。 

しかし、カッポレ釣りのエサが1キロのメジナ一匹掛けとは・・

 

数か月をかけて遠征計画を立て、皆この秘境の大物釣りに情熱を燃やしていた。

 

 

 

ガジャ島の立神岩  不定期航路 離島遠征渡船 朝凪

26歳

 

諏訪之瀬島 ヤマハ私設飛行場  カンパチ

24歳

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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