東シナ海流66 離島遠征瀬渡し船「朝凪」 | 野人エッセイす

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トカラ列島の不定期航路・離島遠征瀬渡し事業が開始した。

船員法でもなく労働基準法の一般社員である野人が独断で船長をやることになったが、最初にやらなければならないのはあの復元力最悪のコロコロ船をなんとかすることだ。

 

船舶課のスタッフが硫黄島・屋久島間で走行テストしたら危なくて怖かったらしい。

まず、このままでは間違いなくあの船は転覆する。

 

安定させる為に甲板を破って船底キールに沿って400kgのコンクリートをバラストとして流し込んだと言う。人間8人分・・

不安定な船も非常識で異様だが、船底にコンクリートを流し込むなど聞いたこともないが、復元力安定の為の苦肉の策。

起き上がるダルマさんや、簡単に転覆しないクルーザーヨットの底の重りと同じ原理だ。

 

前よりも随分マシになり高波でもまっすぐ走れるようになったが、以前は波を受けるたびに船首が左右に振られ進路がフラフラ。

コンクリートバラストで船首側がやや重くなり喫水も深くなったので振られることはなくなったが、波切が悪く波に突っ込み波を被りやすくなった。

 

通常の船に比べればこれでも波に弱い超不安定の部類に入るだろうが、これが限界だからこれでやるしかない。

定員は船員3名、乗客12名、総定員15名の離島遠征瀬渡し船「朝凪」が誕生した。

 

行く先未定でトカラ列島を縦横無尽に走り回る不定期航路事業。

客は釣り客に限らず、チャーターすればそれから航海計画を立て、食料と氷を積み込み2泊3日程度はやれる。

出航基地は何処でも可、屋久島でも鹿児島でも枕崎でも回航する。

 

荒磯へ人を降ろす為に船首に「フォースビット」という足場が必要になる。

最も破損しやすく消耗品のようなものだが頑丈に改造、瀬渡し中の大波が引いた時に船首船底が岩場に乗り上げることもあるので船底キールを分厚いステンレス鋼で補強したが、まるで装甲船だ。

 

エンジンは小回りが利く2基がけが理想だが巨大なGM製のエンジンが一基。

二基あれば片方前進、片方を後進にすればその場で360度旋回出来るのだが仕方ない、操船は忙しくなる。

 

通常は水中排気で音は比較的に静かだが、これは空中排気で凄まじい爆音を響かせる。

トカラへ向けて出港、沖を走っても途中の集落からは爆音がよく聞こえるほどだ。

 

復元力は最悪だが速力は最大23ノット、およそ40キロ、クルーザー並みでこのクラスの当時の漁船にしては速い。

不定期航路事業、離島遠征高速瀬渡し船「朝凪」が誕生した。

 

屋久島近海の試運転・磯渡し試験から、1時間ほどかかる薩摩硫黄島を中心に礒渡しを始めた。

本土と違いすべての磯が外洋に面し、海が荒れるのが極端に早い。 風はなくともうねりが最初に到達、礒は波を被って真っ白になる。

 

諏訪之瀬島で新造艇・諏訪瀬丸を荒れるリーフから脱出させた時は、エンジン2基のクラッチを前後進に入れればその場回頭出来たが、一基はそうは行かず車と同じ切り返しが必要になる。

 

岩礁や暗礁だらけで潮流が速い磯へ船を近づけるのは大変、小型船なら楽なのだが風や潮の影響を受けながら15m近い船の小回りは技術を要する。

判断を誤れば座礁・浸水かプロペラ破損が待っている。

 

見慣れた漁港付近の磯なら範囲も限られ熟知出来るが、屋久島・硫黄島海域だけでも相当広いのに、屋久島から6時間のトカラ列島は十島村、つまり島が10もあり無人島も2カ所ある、この海域まで入れると手に負えるはずがない。

事前調査などやれるはずもなく、ぶっつけ本番、行った時に磯や海底・暗礁などを調べて記憶するしかない。

 

迷いはないがヤマハ基地の船乗りには未知の世界、戸惑いもあるだろう。 1年間、この船を沈めずに乗りこなすしかないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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