さまようブログ -11ページ目

フローズンプラネット

http://www.nhk.or.jp/ocean/frozenplanet/ 

 やはり映像の力はすばらしい。万言を尽くすよりも、「氷河の動きを4年分連続撮影しました」とか、「グリーンランド氷床の上の無数の水路や池を上空から撮影しました」とか、その映像の説得力たるや・・・。もちろん万言を尽くすのも重要なんですけどね。
 再放送もあります、ぜひご覧下さいませ。

地球温暖化バッシング


化学同人

 
 気候学者が受けてきた「政治的な」攻撃に対する証言の本です。非常に考えさせられる本です。懐疑論を信じている人にこそ読んでほしい本かもしれません。
 ・・・こういう非生産的な対処を科学者が強いられている間も温暖化は進み続けます。北極海の海氷データなど見ると焦燥感すら感じます。


NSIDC HPより。観測史上最小になった2007年を大きく上回るスピードで融解が進んでいる。


日本の温室効果ガス排出量急増

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS18014_Q2A720C1MM0000/

 原子力発電所の停止により火力発電がフル稼働している以上、温室効果ガスの排出量が増えるのは当たり前です。試算の結果、温室効果ガスの排出量は、2011年度は2010年度に比べ3.6%増の13億300万t、2012年度は2011年度に比べ6.2%増の13億8400万tになると試算されました。
 「京都議定書の基準年となる1990年に対し6%の排出削減を行う」という国際公約は、森林吸収分や排出取引を加味しても厳しい状況になってきました。というか、原子力発電の再稼動がさらに増加しない限りはまず不可能、ということになるでしょう。原子力発電所1基分の電力を火力発電で賄うとすると、天然ガスを用いても約300万t、石炭の場合は約450万tの二酸化炭素排出量増加を招くことになります。
 鳩山政権の打ち出した25%削減は絶望的と言わざるを得ないでしょう(実際、25%削減という目標は撤回されたようですが・・・)。

 と考えていると、こんなニュースが。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120720/k10013740201000.html 
 うーん・・・。25%削減を宣言したご本人(しかも首相経験者)が、そんなこと無かったかのように「代案なしの反原発」を主張するというのはどうなんだろう、と思わざるをえないですねえ、さすがに。

猛暑と温暖化

 日本も梅雨明けして猛暑ですが、アメリカは日本以上の猛暑と干ばつに襲われています。
http://rocketnews24.com/2012/07/12/228959/ 
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120717/k10013656231000.html

 そんな折、「地球温暖化を信じるアメリカ人が70%に増加」というニュースがありました。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M7DRC16KLVS201.html 
 その時々の気象条件によって地球温暖化を信じる人の割合が大きく変動するのはこれまでも普通にあったことで、このあたり「忘却からの帰還」のHPで詳しく紹介されています。
http://transact.seesaa.net/article/194982156.html 

 科学者が万言を尽くすよりも、「今日は暑い」「今年は暑い」といった単なる個人の経験のほうが、個々人の認識を大きく動かすというのは、なんというか歯がゆさを覚えてしまうのは事実ですね。仕方ないことではあると思うのですが。

今年も北極海航路は開通する見込み

 onkimoさんのブログに触発されて、久しぶりの更新は北極海についてです。

 北極海の海氷が急激に減少していることは過去に何度か書いてきました(これこれ)。その後もこの傾向は変わらず、今年も海氷面積・海氷体積ともに過去最低を更新したりそれに迫る値になりそうです。



 図1:北極海海氷の面積(上図)および体積(下図)の推移。面積はNSIDC、体積はPIOMASのHPより。

 さて、北極海の海氷の減少は、地政学的に重要な意味を持っています。これまで船が航行できなかった北極海が、夏から秋に限られるとは言え航行可能になるのです。
 日本からヨーロッパに船で貨物を運ぶ場合、これまではスエズ運河経由が最短経路でした。しかし、最短とはいえ、例えば横浜-ロンドン間の航行距離は約2万kmに達します(しかも、お世辞にも治安がいいとは言えないルート)。これが北極海航路(北東航路)になると、航行距離は約1万3千kmにまで縮小されます。このインパクトは計り知れません。



図2:北極海航路のうち北東航路(赤)と、スエズ運河航路(青)。wikipediaより。北西航路は北極海のアラスカ沖からバフィン湾にかけてを通る。


 2006年、おそらく有史以降初めて、北東航路が開通しました。そして2008年、北東航路・北西航路の両方が開通。2010・2011年も両方の航路が開通し、2012年も両航路が開通すると予想されています。もはや北極海航路がほぼ毎年開通することは確実でしょう。開通している期間もどんどん長くなっていきます。
 各国はこれを見越して北極海航路の調査や権益確保に向けて行動しています。ロシア・カナダ・アメリカ・スカンジナビア諸国など北極海に直接面する国は当然熱心ですし、中国も黙ってはいません。日本では国家もですが、北海道という地方自治体レベルでも動きが始まっています。北極海に眠る膨大な資源もあり、資源争奪戦の様相も示しつつあります。
 
 もはや気候変動とそれに伴う海氷減少は規定の事実であり、世界各国はその前提の下に国家戦略を組み立てていることが、端的に現れているのです。