「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

中小企業診断士 桑岡伸治のブログです。このたび、「老後の安心生活」実現を目的に、不動産に関する様々な情報を提供するシリーズ投稿をはじめます。
はじめにプロローグをお読み下さい。
ひとりでも多くの方が、Happyになりますように!

「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」

不動産に関する正しい知識を身につけることで、老後安心して暮らせるだけの家賃収入を実現しましょう。住まいに関しては「資産になる家」について知りましょう。

はじめての方は「プロローグ」からお読みいただければと思います。

 「『老後の年金代わり』ならリートでよくね?」問題というのをご存じだろうか?おそらく初めて聞く方がほとんどではないか。なぜなら、私が勝手にそう呼んだだけなので。(笑)

 

 つまらない冗談はさておき、ワンルームマンション投資を勧めるセールストークの代表は「老後の年金代わり」ではないだろろうか。今回は、そのことについて検証してみたい。

 

 例えば、次のようなワンルームマンション。資料は、某不動産情報サイトに掲載されている物件のものだ。世田谷区の三軒茶屋、表面利回り約4.4%、1998年の建築なので、築後26年である。

その他の条件を下記に整理する。

所得税の節税になる!?

この物件を、フルローンで取得することができたとしたら収支は次のようになる。ワンルームマンション投資に融資する金融機関は限られるが、ここでは年利1.5%、20年返済の条件で2520万円の融資を受けられたと仮定する。

 年間のNOIは約71万円だが、元利返済後の手取り(CF:キャッシュ・フロー)は、マイナス75万円、そして、減価償却費98万円が費用計上できるので、不動産所得はマイナス64万円、最高所得税率が45%の高所得者なら、29万円が節税できる計算になる。

 支払利息の額が徐々に減ってくることや、管理や修繕に伴う支出がその年ごとに異なるので、若干変動があるが、概ねこの状態が20年間続く。

 

 そして21年目から、ローン完済のご褒美(笑)として、約71万円(実際にはその時の賃料等によるが)が手取り額となる(ただし、21年で減価償却費の計上は、ほぼ「終了~!」となるので、所得税はばっちり課税される)。

 

 45歳でこの物件を購入したとして20年、「65歳になれば収入も半減して所得税率も下がっている」と考えるなら、これも「老後の年金代わり」と言えなくもない?しかも、無借金のワンルームマンションが資産として残っているのだ…。

 ???ちょっと待った! 20年間、返済額に足りない不足分を給料から補ってきたのはどうなる?75万円×20年分で、約1500万円も穴埋めしてきたではないか!? 節税にはなったにしても。

 

 ということで、結局のところ、この投資の運命は、「20年後、つまり築45年を超えてしまったこのワンルームマンションが、いくらで売れるか」ということに委ねられるのだ。ざっくり言えば、1500万円で売れたら収支トントン、2000万円で売れたら500万円の利益…20年もかかって…。

こ ういうのを「骨折り損のくたびれ儲け」という。それはそうだ、あとで述べるように、実際の投資利回りは3%にも満たないのだから。

 

現金で買うなら、毎年71万円のお小遣い?

 65歳で定年退職した人が、退職金で購入するのなら、これまさに「年金代わり」。

家賃‐必要経費=約71万円(これをNOI:Net Operating Incomeといいますよ)のお小遣いと思えば、わるくなくなくない?

確かに、退職金を普通預金に預けたところで、利息は1%にも満たない。2523万円(この物件の総投資額)を銀行に預けるよりも、ワンルームマンションに投資して、毎年71万円が入るのなら、その方がよほど賢明ではないか…。

 

 と、思いたくもなるが、残念ながら答えはNOである。

 そもそも、売買金額2380万円に対する年間収入は105万6000円(8.8万円×12ヶ月)、表面利回り4.4%と、一見よさそうな利回りに見えるが、仲介手数料や各種税金等の取得経費を含めると、総投資額は間違いなく2500万円を超えてくる。一方、家賃から管理費、修繕積立金、固定資産税、火災保険料などの支出を差し引いたNOI(純収益)は、71万円/年ほどだ。つまり、利回りは3%にも届かない。

 

「リートでよくね!?」問題の検証

 さて、ようやくJ-リートに話は移る。

 

 ご存じの方も多いと思うが、J-リート(REIT: Real Estate Investment Trust)は、オフィスビルや商業施設、マンションなど様々な不動産に投資、運用して、その収益を配当として投資家に分配する不動産投資信託のことだ。

 現時点で、58銘柄が上場しており、予定配当利回りが4%を超えるものも少なくない。上場していることから、急に現金化したいときは、現物不動産投資よりもはるかに簡単に売却が可能だ。もちろん、価格はその時の市場状況により左右されるので、元本割れのリスクはあるが、不動産が裏付け資産になっているので、株式のように「倒産して株が紙くずに」ということにはならない。

 

 現金投資が原則だから、低利ローンによるレバレッジ効果は期待できない、現物不動産のように減価償却費の計上による節税はできない、といったデメリットもあるにはあるが、投資対象となっている不動産は、普通の個人投資家には手が出ないAクラス物件が中心だから、暴落や運用の失敗という可能性は低いといっていいだろう。

 

 そもそも、年金生活に入った高齢者は、節税に対する必要性は低下しているし、安定的な運用という意味でもワンルームマンションの比ではないだろう。

 ということで、検証結果は、「『老後の年金代わり』ならリートでよくね?」正解! となりました!

 

 

 今回は、趣向を変えて「不動産の勉強や情報収集に役立ちそうなサイト」をご紹介します。これ以外にも、膨大な数のサイトがあるので、ほんの一部ですが、参考にしていただければと思います。

 

 不動産情報ライブラリは、国土交通省が、それまで提供していた「土地総合情報システム」を令和6年3月末で廃止し、同年4月から不動産情報ライブラリとして、スタートした不動産…というより主に土地に関する情報提供サイトだ。

 こちらの広報にあるように「地価公示と都道府県地価調査、土地取引情報」に加え、学校や医療機関等の施設や、ハザードマップ情報等を同じ地図上に表示できるようになったことが特徴である。これにより、例えば「自宅が建っている土地の相場が、凡そどのくらいか」ということを、知ることができる。

 一方で、個別の不動産取引情報は、特定できないように加工されており、ピンポイントでの取引事例を把握できるわけではない。実際の不動産取引においては、「道路一本隔てただけで、大きく価格が違う」ということも少なくないわけで、不動産会社が提供する「価格査定(そこに至った根拠を含む)」に、取って代わる、もっと簡単にいえば「自宅がいくらで売れるかわかる」といった類のものではない。

 ピンポイントで価格を出してしまうと、個人情報保護との兼ね合いが難しくなるからやむを得ない点はあるのだが。

 

 また、「不動産関連情報を網羅的に地図上に表示」することにこだわった結果だと思うが、ひとつひとつの情報は中途半端で、結局、他のサイトで調べないと十分な情報は得られない。操作も若干まどろっこしいので、個人的にはストレスを感じる。

 一例をあげれば、都市計画情報は、用途地域や地区計画等ある程度の情報は得られるが、開発や建築に関する制限はそれ以外に多数あり、改めて自治体が提供する「都市計画情報」を見に行かないと、情報量としては全く不十分だ。

 私見としては、土地価格に関する情報提供に徹して、むしろ国税庁の「路線価」情報と連携した方が使い勝手がよいと感じる。

 「路線価」や路線価が無い場合の「評価倍率」を調べることができる。

 路線価は国税庁が相続税や贈与税の算出のために決めている土地の単価で、道路に割り振られている。路線価を基に、その路線(道路)に接する土地の「課税評価額」を導き出す。路線価が定められていない地域(倍率地域)では、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて課税評価額を算出するが、その倍率を「評価倍率」といい、同様にこのサイトから調べることができる。

 

 

 マイホームであれ、投資用物件であれ、不動産を買いたいと思う人にとっても、賃貸での引っ越し先を探したいと考えている人にとっても、一番の関心事は、実際に「売却中、賃貸募集中」の「物件情報」ではないだろうか。

 不動産仲介会社向けにはレインズ(REINS)という物件情報を登録、検索できるシステムがあるが、これは一般の方はアクセスできない。その点、アットホームについては、誰でもアクセス可能で、登録物件数もレインズに負けないくらい多い。保有物件を売却したいと考えている人にとっては、類似物件の売り出し価格を調べるといった使い方も可能である。運営は、民間企業のアットホーム株式会社。なお、不動産会社向けの情報サイトも別途運営している。

 

 株式会社ファーストロジック(2024年10月25日に「楽待株式会社」に名称変更予定)が運営する「不動産投資家向け物件情報サイト」。物件情報もさることながら、投資家の経験に基づくコラムや時宜を得た動画配信も楽しい。無料会員でも十分に楽しめるし勉強になる。「有料会員向限定」あまり増やさないでください、お願いします。(笑)

 

 健美家株式会社が運営する「投資家向け物件情報サイト」。同社は、2020年に株式会社LIFULLの子会社となっている。

 

 株式会社LIFULLは、一般向け住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」も運営しているが、田舎暮らし、地方移住等に関心がある人向けには、この「空き家バンク」が面白い。「実家が空き家になって…」という人にも参考になる。

 

 株式会社ジェクトワンが運営する「空き家活用」のための情報提供サイト。空き家所有者のお悩みに対し相談にのってもらえるかも…。

 各方面にほける調査、研究を行っているニッセイ基礎研究所は、不動産市場に関するマクロ分析についても定評がある。時々はチェックしておきたい。

 

 不動産専門チャンネルではないが、PIVOT株式会社が配信する動画の中には不動産に関連したものが結構ある。深く広く学ぶには、書籍が一番だと思うが、わかりやすいという面では動画配信にはかなわない。一流のゲストが分かりやすく解説してくれるのもありがたい。

 

 横浜で不動産会社を経営する山内真也さんのYouTubeチャンネル。アパート、マンションをはじめとする投資用不動産取引における注意点やトラブル事例などを分かりやすく紹介、解説している。投資家への注意喚起という点で、とても勉強になる。

 

 

 不動産投資、マイホームとは直接的にはつながらないかもしないが、建築史はじめ世界の家づくり、まちづくりに関する見聞を広めるには最適。建築を学んだことがない、全くの素人にも入門編として楽しめる。

 「減価償却」とは、建物等の価値を会計上減少させていく手続きをいいます。減価償却によって計上される費用が「減価償却費」です。価値の減少分を費用とみなしている訳です。土地については、減価償却はありません。

 建物、建物附属設備は、その構造や用途により「法定耐用年数と償却率」が定められていて、決められた計算方法によって「減価償却費」が算出されます。

 

 「減価償却費」は、現金支出を伴うことなく「費用」として計上し、「不動産収入」から差し引くことができます。その分、不動産所得が小さくなり、所得税や法人税が少なくなる効果があります(ただし、売却時の譲渡所得の計算においては、建物の未償却分が小さくなった分だけ譲渡益が増えてしまいます)。

 

 節税のため「減価償却費がより多くなる物件を取得したい」という買主は、少なくありません。そんなこともあって、不動産売買の取引では、「売買金額で合意したが、土地建物の比率でもめる」ということがしばしば起こります。

 

 売買金額(消費税込)1億円で合意し、土地建物の比率に下記AとBの二つの考え方があったとします。

売買代金の内訳

A

B

売買代金(税別)

9300万円

9500万円

土地代金

2300万円

4500万円

建物代金

7000万円

5000万円

消費税(10%)

700万円

500万円

売買代金(税込)

1億円

1億円

 

 建物の残存耐用年数(償却期間)が、仮に10年だとすると、1年あたりに計上できる減価償却費は、Aの場合は770万円、Bの場合は550万円となり、1年あたり220万円の差が生じます(税込経理方式を採用している場合)。

 実効税率が30%と仮定すると、Bの税負担がAよりも1年あたり66万円多いということになり、当然ながら買主は「Aがよい」、売主は「消費税別の売買価格が高いBの方がよい」となる訳です。

 

 土地建物の比率は、それぞれの「固定資産税評価額」の割合にすることが多いのですが、これも慣例的にそうすることが多いというだけで、あくまでも「売主と買主の合意により決定」するものです。

 

 解決策としては、「交渉の早い段階から売買代金の内訳についても確認する」のが一番です。

気の利いた営業マンなら、その辺りも最初から織り込んで、条件交渉してきます。こういう営業マンに出会うと「おぬしできるな!」という気持ちになります。(笑)

 「不動産投資でFireを目指す」という人がいる。Fireとは、家賃収入を始めとする投資から生じる運用益で生活できる状態になり、会社勤めを辞めることだ。

 そもそも「生まれながらにお金持ちの人」や、「事業で成功して資産家となった人」は別として、一般のサラリーマンが不動産投資によってFireすることは可能なのだろうか?

 

下図を見ていただきたい。

 

 例えば、1億円相当の不動産を保有し、年間のNOI(税引前純収益)が、資産評価額に対し5%のリターンだとすると、LTV(Loan To Value,負債比率)が、90%、50%、30%の場合におけるローン元利返済後の手取りキャッシュ・フローは、それぞれ127万円、293万円、376万円だ(返済期間は30年と設定)。

 参考までに、期間30年での減価償却費の額も記載したが、NOIの67%程度なので、支払利息を考慮しても不動産所得はプラス、したがって税引後の手取り金額は、これより少ないということになる。

 

 まあ、その辺りの細かい数字は無視するとしても、不動産収入だけで生活を成り立たせようとした場合、LTVが90%では(返済後のキャッシュは382万円なので)資産3億でも厳しいだろう。(「300万円でもやりくりできる」という人は、いるかもしれないが。)

 生活コストが高い都市部に暮らし、家族も抱える人なら、相当質素な生活を送ったとしても、「最低でも手取り収入として700万円以上は必要」だと考えれば、Fire可能となるのはローンを払い終わる、つまり「NOI=手取り金額」となる30年後ということになる。

 

 「いや、自分は何が何でも早期退職したいのだ。」と考える人は、とにかく「できる限りの借金をして資産規模を増やす」方向に行くのか、「頑張って働いて負債を減らす」のか、まあ、そのミックスということもあるかもしれないが、いずれにしても方向性は二つあるということだ。

 

 私は、不動産投資の目的を「安心」とりわけ、「老後の安心生活」においており、また、この目標設定であれば、「フツーのサラリーマン」が過大なリスクを負うことなく、実現可能であると主張している。私自身の例でいえば、できれば60歳、遅くとも65歳までに「真水(=ローン返済後の手取り)で500万円のキャッシュ・フロー」実現を目指してきたが、おかげさまで64歳の現在、それは実現できている。

 その経験から申し上げたいことは、次の3点である。

  1.  ハイ・レバレッジの資産拡大はリスクが大きい。
  2.  働きながら資産形成を目指す方が
  3.  キャピタルゲインを上手に取り込み、目標達成を前倒し

 

ハイ・レバレッジの資産拡大はリスクが大きい

 1の理由は、「負債額が大きいと、不測の事態に対応できない可能性が高くなる」ということである。「借入状況とキャッシュフロー」にある資産の保有状況でいえば、1億円の資産をLTV30%で保有した時のキャッシュ・フローは376万円、3億円の資産をLTV90%で保有した時のそれは、382万円で大差がない。

 もちろん、30年経って返済を終えれば、「前者は無借金の不動産が1億円、同じく後者は、3億円」もしくは、「前者は、手取り額(NOI)が500万円、後者のそれは1500万円」(NOIは現在と同額とした場合)ということであり、後者の方が3倍も収入が多いということになる。

 

 それでもどちらがよいかといえば、私なら圧倒的に前者である。その理由は他でもない「LTV90%はデフォルトリスクと背中合わせ」ということに尽きる。

 不動産投資は、投資期間が長い。その間、想定外のことは絶対に起きると考える方が自然だ。現在、かなりの確率で起こりそうなのが金利上昇である。借入額が大きければ、当然、その影響も大きい。日本の総人口は、2004年12月をピークに減り続けており、賃貸需要を支えてきた世帯数の増加も2030年には、減少に転じる。2030年といえば、ほんの数年先だ。加えて、空き家は増加し続けており、普通に考えれば、賃貸住宅市場の競争激化は避けられない。

 

 稼働率や賃料水準が下がり、そこに金利上昇による返済額の増加が重なるようなことが起こらないと、誰が断言できようか。さらに、現在のようなインフレが続けば、水光熱費をはじめとする保有コスト、修繕費等も上昇する。そんな時、借入額が大きいと返済に支障をきたし、物件売却を余儀なくされることさえ考えられる。

 

 そういう意味で(返済期間との兼ね合いもあるが)、LTVをある程度下げて毎年のキャッシュに余裕がある状態にしておくことが、リスク・マネジメントとしてとても重要といえる。

 

 もちろん、「多額の自己資金を用意して不動産を購入することは、現実的ではないこと」や「低金利を活用したレバレッジで運用効率を上げる」こと、それに、そもそもではあるが「自分の稼ぎではなく、家賃支払いという形で、他人が実質的にローンを返済してくれること」といった、不動産投資のメリットを生かしたいのも人情だ。

 

 だからこそ、「いざというときに対応できるか」ということを常に念頭に、「しかるべきスピード感でLTV50%程度の水準までもっていくこと」を目指してもらいたいと思う。※10年程度でLTV50%までになれば、かなり安心だし、次の展開も考えやすくなる。

 

働きながら資産形成を目指す方が「楽」

 「働いて収入を得ている」ということはとてもメリットが大きい。

 

 まず、「金融機関に対する信用力(より低利で借りられる)」。就労による対価を余裕資金としてを温存(早い話が貯金)しておくことで、「急な支出に対応し、ローンの滞納を回避」、さらに資金的なゆとりができれば、保有物件の残債の状況をみつつ、「買い換えや新規取得の頭金として活用」といったことが可能になる。

 

 そして、「働けるうち」は、「賃貸物件からの収入に依存する必要がない」、つまり、家賃から得た収入を、生活のために消費せず、財務内容の改善や資産拡大に振り向けることができる。

 定年退職後の第二の人生で、給与収入が減少した頃に、借入金の返済を終えるような計画にしておけば、少なくとも金銭面で不安な老後をおくることはなくなるだろう。

 「不動産投資編第6回~8回 『安心老後への道』」を参考にしていただけると、このあたりのイメージを掴んでいただけるのではないかと思う。

 

 余談だが、働いていると人間関係やトラブル等がつきものだが、「不動産からの収入がある」という安心感が、心のゆとりとなりストレスを軽減してくれる。結果として、仕事も長く続けられるという、私の説に皆さんはご賛同いただけるだろうか。(笑)

 

キャピタルゲインを上手に取り込み、目標達成を前倒し

 「不動産投資編第3回 リターンを分解してみれば」で述べた通り、インカムゲインだけで投資資金を回収するのは時間がかかる。それゆえ、「低利」融資を活用し、レバレッジをかけてリターン効率を高める訳だが、同時にリスクも高くなる。

 投資物件を売却し、利益確定することは、投資回収に係る期間を短縮し、効率的に資産を増やすための手法のひとつとなる。と同時に、ひとまず、ハイ・レバレッジによるリスクをリセットすることにもなる。

 

 「安心老後」実現のためには、「年齢と共にLTVを下げて行く」ことが、基本戦略。1億円の資産規模でも無借金なら年500万円の収入だ。何歳でどのような資産の保有の仕方をすれば、ご自身にとって好ましい状態なのか、その目標に向かって、キャピタルゲイン(売却益)を戦略的に活用していただければと思う。

 

 最後に、Fireというのはサラリーマンから「専業大家」に転身するということに他ならない。その多くの人が、自ら管理を行うなど「大家業かつ管理業」を勤しんでおり、完全な「ハッピーリタイアメント」の人は案外少ないのではないかと思う。

 「専業大家」を目指す位だから、結局「不動産のことが好き」な人に外ならず、何かしら不動産の仕事に関わっていたいのではないかというのが、私の見方だ。(笑)

最も身近な投資用不動産

 「不動産投資」と聞けば、最初に浮かぶのが「賃貸アパート」や「賃貸マンション」でしょう。学生時代に木賃アパートに下宿…というのは、昭和世代のイメージかもしれませんが、「アパートやマンション(アパマン)を借りて生活した経験が全くない」という人の方が「少数派」ではないかと思います。それだけ身近で、投資家にとっても分かりやすいのがアパマンです。

 

 高度経済成長期には、「住宅すごろく」という言葉がありました。「地方から出てきて就職し、社宅やアパート住まいを経て、分譲マンションをローンで購入、最後は郊外の分譲地に夢の一戸建」というのがサラリーマン憧れの住宅キャリアでした。ところが、ニュータウンと言われた団地や戸建て分譲地は、今や高齢者の町となり、空き家も目立つようになってしまいました。

 

 アパマン投資は、少子高齢社会となった日本の社会構造と密接につながっており、投資家にとっては、「分かりやすい」が「将来が不安」な投資対象でもあると言えます。現に賃貸管理の現場では、「高齢者の孤独死」は、珍しいことではなくなり、その処理を受託する「特殊清掃業」は成長産業といわれています。

 ところが、この環境変化をどうとらえるのかという点にかんしては、人によってばらつきがあるようです。不動産投資セミナーで語られる内容にそれが現れています。

 曰く、「単身世帯の増加を根拠に、単身者向けワンルームマンションに投資せよ」「地方の高利回り物件に勝るものなし」「ぼろ家投資こそ狙い目」と…。

 

 さあ、「アパマン」投資家は、失敗しないために何を考え、どう行動していけばよいのでしょうか。

 

競争が激しくなる

 アパマン経営に影響を及ぼすと考えられる「環境変化」を拾ってみたのが、次の図です。

 

 アパマン投資を取り巻くマクロトレンド

マクロトレンド

顕在化

少子・高齢・多死社会、核家族化、東京一極集中・不動産需要の地域格差、観光(インバウンド)、多拠点生活、ICT、地球温暖化

不確実要因

外国人(移住・定住)、都市計画、企業誘致、学校、コンパクトシティ

 

例えば、人口の最大ボリュームゾーンである団塊の世代は、いま、後期高齢者となり、この先お亡くなりになる人が増えることになります。

所有していた自宅は空き家になり、相続対策のために建築したアパートや、タワマンに代表される節税目的のマンションは、子供に引き継がれて行きます。不動産保有に消極的な子供は、(節税という)役割を終えたアパマンの売却を望み、その結果、大量のアパート・マンションが市場に供給されることになるでしょう。

そこに「人口減少」です。今までは、「世帯数の増加」が人口減少をカバーし、賃貸需要を支える役割を果たしてきましたが、この世帯数の増加も2030年の5773万世帯をピークに減少に転じます(国立社会保障・人口問題研究所による令和6年推計)。

どこをどうひっくり返してみても、この先の賃貸市場は「競争が激化する」と考えるのが自然ではないでしょうか。

 

変化対応で需要を見出す

この「人口減少」「世帯数減少」を背景にした競争激化に対し、アパマンオーナーにはどんな対応策が残されているでしょうか。「2030年までに売却、手じまい」「賃料値下げ」…、まあ、それも一つだと考えますが、積極的な取り組みとして「環境変化に対応した新たな価値を提供すること」が、基本戦略となるはずです。

 

コロナ禍の影響を受けたものの、インバウンド観光客の増加は、「民泊」という新たな需要をつくりだし、またコロナ禍によるライフスタイルの変化が、多拠点生活、ひいては地方の空き家再活用という需要も生み出しました。さらには、地球温暖化が引き起こす災害の数々は、賃貸住宅においても、環境負荷低減への対応を不可避のものとしています。

 

一方で、「就労歓迎、移民不可」という、いびつな入国管理制度の下で働く外国人に関しては、、明確な方向感が見えていません。熊本や宮城での半導体企業誘致が引き起こした、不動産市場へのインパクトは、まさに「現在進行形」ですが、大きな「賃貸需要の増減」を引き起こす、施設の移転や都市計画の見直しは、常に注意し続けなければなりません。

 

アパマン投資は、結局のところ「賃貸住宅経営であり、経営者として「テナント」「入居者」のニーズを的確に受け止め、あるいは新たなニーズを掘り起こし、価値提供することによって家賃という報酬をいただくビジネスです。ならば、不確実要因も含めたマクロトレンドの中に、これからの賃貸経営のヒントが隠れているはずです。

 

 競争激化への対策は?

変化対応

①付加価値提供による差別化

②ニッチ分野への特化

③短期出口戦略(変化前に利益確定)

 

事例紹介

 このような中で、私が取り組んだ外国人向けシェアハウスと戸建賃貸の事例をご紹介したいと思います。

 

 仙台市郊外にある一戸建住宅をリノベーションして、知り合いのフィリピン人(と、日本人も)が住むためのシェアハウスを用意しました。ポイントは、入居者全員を「知っている」ということです。

 

 日本で働く外国人にとっては、何かと生活上の不安がつきまといます。私は、貸主であると同時に彼らの相談相手でもあります。彼らは、私を信頼し、何か問題が生じると助言を求めてきます。

 仕事上の相談のこともありますし、シェアハウス内のちょっとした問題のときもあります。後者に関しては、最初は、私がルール作りをして説明していましたが、今は、住民同士の交流が進み、互いに話し合いながら、全員が心地よく過ごせるよう、自分たちでルールを改定し、私には同意を求めるだけになっています。

 

 東京で所有する戸建賃貸物件は、大手管理会社に長く管理をゆだねていましたが、あるトラブルがきっかけで、自ら管理するようにしました。

 管理といってもほとんどは設備の不具合、修繕です。以前は、「入居者と顔を合わせることが、煩わしいのではないか」と考えて、管理を委託していましたが、入居者と直接やり取りする方が、むしろ関係は良好で、しかも効率的です。

 もちろん、賃貸借契約前に入居予定者と顔合わせをし、連絡先を交換し、「何かあればすぐに連絡下さい。」と伝えた訳ですが、互いに挨拶したことで、理不尽なクレーム的なものは一切なく、SMSによるやり取りは、(管理会社という介在が無い分)スピーディーな対応が可能で、互いにストレスもありません。

 

 この経験から、学んだことは「大家と店子」関係への回帰が「貸家における価値を提供する」ということです。そうです、あの落語に登場する長屋の大家さんと、熊さん、八っつぁんの関係です。

 

 入居者は、長年「マンションはカギ1本で出かけれられる、煩わしい付き合いをしなくてもよい」と信じ込んできました。賃貸オーナーも「面倒なことは管理会社に任せるのがよい」という固定観念を持ち続けてきたのではないでしょうか。

 

 しかし、人は社会的な動物です。互いに「知っている」ということが、賃借人には「気持ちの上での安心感」を、オーナー側には、クレームやトラブルの防止(もちろんしっかり対応すればということですが)という、大きなメリットをもたらしてくれるのです。

 私のシェアハウス、貸家は一つの例にすぎませんし、「付加価値」の提供は、これに限ったことではありません。ただ、何の特色もない「one of them」の物件が行きつくところは「価格競争」ということだと思います。

 

外国人に注目中!!

 話がそれてしまいますが、私は、住宅弱者となりやすい外国人やシングルマザー、障がい者向け賃貸住宅に注目しています。今の自分の力量で、多くの展開はとても無理ですが、社会的な意義も大きく、チャンスがあれば取り組んでいきたい分野です。

そう考えるようになったのは、フィリピン人との交流を通じて得たものが大きく影響しています。

 

 皆さんは、「ジャパゆきさん」という言葉をご存じでしょうか。

 

 日本経済が絶好調だった83年頃の造語で、日本に出稼ぎにきて風俗営業等に従事した、貧しいフィリピン人等の女性のことを指す言葉です。私は、その言葉の中に「日本は先進国で、アジアの国々より上」という「上から目線」の意識が現れていたとみています。

 あれから40年が経ちましたが、その意識は今も「外国人の雇用と住まい」に受け継がれていると私は思います。

 「技能実習生」としての就労は、日本人が敬遠する農業や介護、建設等をはじめ、飲食、観光業界などに拡がっています。それらの中には、単に人手不足を補う「労働力」として、しかも低賃金であることを期待した雇用で、劣悪な住環境な住まいをあてがわれていることも珍しくないと聞けば、とても悲しい気持になっています。

 

 実際には、外国人の能力は日本人に劣るどころか、とっくに追い越していると考えるべきでしょう。例えば、急激な発展を遂げた中国は言うに及ばず、IT分野におけるインドやパキスタンは、その好例です。

 しかも、日本を除く多くのアジア人は、英語でのコミュニケーションに支障がありません。仙台のシェアハウスに入居するフィリピン人も、その一人、起業経験もあり経営の勉強を積んできた優秀な人財です。もちろん、教育機会に恵まれず、貧しい生活を送っている人たちが存在することも事実ですが、それは、彼らの能力の問題ではなく、政治的、経済的な状況が教育を受ける機会を奪っているということにすぎません。そして、同じ問題が日本においても存在します。

 

 つまり、どの国にもいろいろな才能、能力を持った人がいて、できるだけ楽をして稼ぎたい怠け者もいて、とても優秀な人もいる、「なーんだ、日本人も外国人も同じじゃん‼」ということなのです。

 

 では、1ドル160円まで進んだ円安の中で、迎える側の「日本のセールスポイント」はといえば、今や治安と、サブカルチャーに代表される文化や歴史が頼りとなりつつあります。いつまでも、上から目線では、日本が「選ばれない国」になっていくことは避けられないのではないでしょうか。

 

 「住まい」は「建物」というハードだけでは機能せず、「安全、安心、人との繋がり」といった、ソフトと一体となってはじめて機能するものだと思います。遠く故郷を離れてやってきた外国人にとっては、とりわけ大切な要素だと思います。

だから、私は「単なる貸家業」ではなく、彼らと「直接かかわりを持つこと」で、日本と日本人の良さを知ってもらい、いち早く溶け込んでもらえるような住宅を、そんな「住まい=居場所」を提供できたらと、夢を描いているところです。

 

 SNSに「マイホームのAI査定」の広告がでていたので、やってみた。

 

 AI査定といいながら、結局は不動産会社に情報が提供されて、4社からメール連絡があり、そのうち2社からは電話連絡もあった。早いところで約10分後、遅い会社でも2時間以内にはコンタクトがあり、その「働き方」の方が心配になるほど、スピーディーだった。

 

 で、査定額はというと、最低額はA社の5,464万円最高額はC社の7,536万円、中間がB社で6,712万円、そしてD社は「売却直前に査定しないと意味がない」と、拒否られた。(笑)

 

 ちなみに我が家は、いわゆる「狭小宅地に建つ小さな一戸建」だ。提供した情報は、「住所、土地・建物の面積、建築時期」で土地の形状や接道状況、建物のスペック等、多少金額に影響する要素もあるはずだが、それは考慮外となっている。ただ、それにしても最高、最低の価格差2,000万円以上。なんと25%以上の乖離は、何を物語る…??

 

 さて、査定結果を受け取って思ったこと…。

  1. AI査定といいつつ、実態は不動産会社への紹介ビジネスのための集客ツールと思われる。
  2. 査定のためのデータは、瞬時に収集できるため、「査定報告書」は、きわめて短時間で提供される。
  3. 収集したデータを読み解き「査定価格をいくらにするか」「売出価格やタイミング等の売却方法」については、営業マンの主観によって、かなりの差が出てくる。
  4. 査定報告書、提案書の体裁が美しく整えられており、掲載データも豊富で、AI含むデジタル化の発展が、営業マンの強力なバックアップツールになっていると思われる。
  5. 建物の査定額は、相変わらず「築年数主義」「木造は25年でほぼゼロ円説」が根強く生きている。

 

 私が、現役営業マンのときは、地価公示や路線価、取引事例、道路の種類や幅員等を調べて、地元の不動産業者にヒアリングして、査定報告書を作成していた。そして「査定はあくまで査定にすぎず」、実際の売却活動は、マーケットの反応を探りながら、買主候補と交渉しながら、価格の折り合いをつけていく…ということを説明するために、面談で説明することを基本としていた。

 最近の売主は、そういう「まどろっこしいこと」は嫌がるのかもしれない。

 

 AIを含むICTの発展は目覚ましい。そこに、豊富なデータベースが収集できるようになることで、査定の精度は、あっという間に向上し、スピードも増していくことだろう。

 

 たとえば、不動産情報調査会社の東京カンテイには、分譲マンションに関して、販売時のカタログ、パンフレットをはじめ、中古売買や賃貸に関する取引情報等の履歴が、データベースとして登録・保存されている。

 不動産会社は、この情報を活用しているため、所有者が「マンション名と部屋番号」を告げるだけで、専有面積、管理費・修繕積立金、間取り等、凡そ査定に必要と思われる情報を得ることができる。

 

 戸建住宅については、個別性が強いため、分譲マンションよりデータベース化が遅れていたが、デジタル化の進展により、物件の住所と登記情報の紐づけ等は、簡単にできるようになっており、近い将来分譲マンションと同様にデータベース化が進んでいくことだろう。

 事実、現在国土交通省は「不動産ID」の実用化に向けた協議をスタートしており、マイホームの情報が丸裸にされる日は近い。これが「納税強化ツール」にならないことを願いたいが。(笑)

 

 どうやら、「建物は経年によりゼロ円」という不動産仲介会社の常識は、今もまだ変わっていないようだ。しかし、実際の取引では、「リノベーション」で再生した物件に対し、消費者が相応の対価を支払うようになっており、欧米のように「建物の性能やスペック」を資産価値とみなすように、いずれはなっていくことだろう。

 

 それは、地球環境負荷軽減という意味でも、とても大きな意義をもつ。高経年住宅であっても、省エネルギーで健康的な暮らしが実現できる家、地場産業と結びつき再生可能な住宅を、「市場」においても高位に評価するようになってくれば、業界の見方も変わってくるはずだ。

 例えば、メンテナンスが行き届いた家とそうでない家、エコな家とそうでない家には、価格差があって当然だ。どうせ我が家が「裸」にされるのなら、そういう「住宅」にとって大切な要素を、買主が分かりやすく評価できるようにしてもらいたいものだ。

 AIの発展で、技術的には容易になりつつあり、あとは、消費者と業界の意識が変わって行けば、その日は近いと思う。

 おそらく気候変動の影響と思われる、近年の異常な豪雨災害、頻発する大地震、日本はありがたくない災害先進国だ。内閣府の資料によれば、東日本大震災により全壊した建物は12万8千棟、半壊した建物が24万棟、合計で37万に上る。

 

 これから土地や家を取得する人はもちろん、既にマイホームを保有している人も、その場所における災害リスクがどのようなものか知っておくことは、いざというときの対策を立てる上で、とても重要かつ有益である。そして、それは自治体のハザードマップによって、比較的簡単に調べることができるのである。

 

 例えば、下図「上段」は、「土石流の発生可能性」を示した指定図、「下段」は、玉川の氾濫による浸水想定である。

その他、津波、火山噴火による溶岩流や降灰、活断層等、様々な災害に対して情報提供がなされている。災害の種類次第では、住宅の構造耐力の議論など無意味なほど(「地盤」から根こそぎ流出してはひとたまりもない!)、甚大な被害をもたらすものもある。

すでに住宅地が形成されていても、安全と言えない場所も多数存在するのだ。

 

 

 ハザードマップ等の検索は、Webで簡単に可能だ。参考までに国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」のURLを記しておく。 https://disaportal.gsi.go.jp/

 

 

 家を建てるためには土地が無くてはなりません。親から相続したり借りたりして、建築場所が決まっている人はともかく、これから土地を買うという方には、「自分と家族が望む住まい建築が可能かどうかを判断する」という大きな仕事が待っています。

 

 一番確実なのは、「土地購入前設計士に依頼して参考となるプランを描いてもらうこと」ですが、コストがかかることもあり、頻繁に依頼することは難しいでしょう。施主自身が、最低でも、どのくらいのボリュームの家を建てられるか、ある程度のイメージができれば、忙しい家づくりのプロセスにおいて時間の節約になるのですが。

 

 土地を購入する場合、最終的には仲介会社等から「重要事項説明」として書面で説明を受ける内容です。ただ、重要事項説明は、契約行為の直前行われることも珍しくありません。「時すでに遅し」とならないようにしたいものです。

 

 その土地にかかる規制(建築できる建物の規制)は多岐にわたりますが、代表的なもの3つについて述べてみたいと思います。

 

市街化区域と市街化調整区域

 都道府県は、(略)一体の都市として総合的に整備し、開発し、及び保全する必要がある区域を都市計画区域として指定するものとする。(都市計画法第5条第1項)都市計画区域について(略)必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(を定めることができる。(同法第7条第1項)

 

 国土交通省の資料によれば、都市計画区域は日本の国土面積の約26%に相当する約1千万haで、そこに総人口の94%が居住している。

 都市計画区域のうち、市街化区域は約140万ha、市街化調整区域が約370万ha、どちらの指定もなされていない非線引都市計画区域が約490万haとなっている。市街化区域は、国土面積の約5%であるが、人口の約77%が住む。

 

 市街化調整区域は、「市街化を抑制すべき区域とされており、市街化調整区域内の土地を購入する人は、建物が建築できるかどうか、特段の注意が必要となる。周りに民家が建ち並んでいるからといって、新たな建物が建築できるとは限らない。農林水産業従事者以外の住宅は原則建築できず、またその他の建物も厳しく用途が制限されている

 

 市街化調整区域内の土地は、通常は、市街化区域内の土地よりかなり割安であるが、だからといってよく調べずに飛びついてはならない。規制の内容も複雑なので、必ず自治体の所管窓口に出向き制限の内容を確認する必要がある。

用途地域

 都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる地域、地区又は街区を定めることができる。一 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、(中略)、工業地域又は工業専用地域(以下「用途地域」と総称する。)(都市計画法第8条)

 

 「用途地域」という言葉は、耳にされることも多いと思う。この用途地域によって、建築できる建物の種類や規模について制限を受ける住宅は、工業専用地域を除き建築可能だが、用途地域により周辺環境は全く異なることになる(将来変わることもある)ので、選択を間違わないようにしたい。

 

 用途地域その他の各種制限については、Webで閲覧できるように公開している自治体が多い。「●●市、都市計画」というワードを検索エンジンに入力すると、かなりの確率で案内が表示される。

 

敷地と道路の関係

 建築物の敷地は、道路に二メートル以上接しなければならない。(建築基準法第43条第1項)

 

 買った土地の道路に接する長さが2m未満しかなければ「家は建てさせないぞ」ということだ。

 そんな土地あるのかと思うが、都会では珍しいことではない。建築基準法ができたのが昭和25年、それ以前からある建物は「人ひとりが通れればいい」とばかりに、狭い通路の奥に建っていることは何ら問題なかったのだから。

 

 こういう土地は「再建築不可物件」と言われ、価格が安いため好んで取得する人もいる。建替えではなく、リノベーションして貸し出すのだ。分かっていて買う分には問題ないが、知らずに購入した人は悲惨だ。

 

 高度成長期に数棟の現場を開発して建売分譲する、いわゆる「ミニ開発」が盛んにおこなわれた。私道部分は「道路位置指定」を受けたれっきとした道路だが、実際の造成の段階で、微妙に幅が狭くされて「実際の幅員が3.9mしかない」といった事例がある。(下図参照)

 奥のC・D宅地は、道路幅員が4mあればそれぞれ2mずつ接することになるが、実際に諮ってみると1.95mずつしかないといったケースだ。

 悲惨なのは所有者だ。まさかそんなことになっているとはつゆ知らず。いざ売却しようと不動産会社に相談したら、指摘されてはじめて知るということさえある。間違ってもこういう物件を「再建築不可」と知らずに買うことが無いようにしたい。

 

 道路の基本情報は、多くの自治体のWebサイトから検索可能となっているが、それだけでは情報として不足することも少なくない。具体的に、土地の購入を検討するときには、不動産仲介会社等から、「早めに」道路に関する情報の説明を受け、「接道」に不安がある場合には、建築士等の専門家に相談する方が望ましい。

 

 人口減少が進む日本においては、地域による格差が進む。

 東京都心部の価格上昇が続いているエリア(これは特に分譲マンションの高騰という形で表れている)、価格の変動幅は小さいが、取引が成立するエリア、そして、取引がまず成立しないエリアが存在する。

 これを「三極化」と呼ぶ人もいるが、いずれにしても、高度経済成長期や90年代バブルの時のように、日本全国の地価が上昇するということはない。

 

 簡単に言ってしまえば、不動産の価格は人気投票である。住みたい人、使いたい人がたくさんいれば、価格は上がるし、そうでなければ下がる。私のような田舎育ちの人間が、いくら故郷に郷愁を持とうと、住む人が減少することで、空き家が増え、家も畑も買い手がつかないままとなる。

 したがって、一般論としての「失敗しない土地選び」は、住宅地であれば「住まい手」、商業地であれば、「テナント」から見て魅力的な場所であることが、条件となる。現在は、ちょこっとググれば、人口に関する調査データは簡単に調べることができる。

 

 では、とにかく「人気エリア」で購入すれば良いかというと、別の視点からの見方も必要だ。人気エリアであっても、この先の状況次第では資産価値が下がってしまうことがあるからだ。

 

 世に言う限界集落といわれる村には、タダ同然で移住者誘致をしているところもある。タダ同然で取得した「これ以上下がりようがない物件」なのだから、損失を被ることもない。

 

 注意すべきはむしろ、都会での、つまりどちらかというと人気エリアでの取得だ。「人気エリアから不人気エリアに転じる可能性があること」そして「相場より割高な物件を買ってしまうリスクがあること」がその理由だ。

 

 前者においては、1980年代後半に、夢のマイホームともてはやされた、ニュータウンの物件が思い起こされる。

 90年代の不動産バブル崩壊によって、大きく価格を下げることになったのは、他の地域でも同様であったが、都心に近い物件、駅近の物件が、その後地価を回復していったのに対し、郊外でバス便のニュータウン物件の地価は下落したままだ。居住者も減少し、街の維持そのものが問題になっているところさえある。

 

 後者については、不動産会社とは異なり、情報量が限られる「一般の購入者」が、割高な物件だとは知らずに、購入してしまうケースがあることだ。バブル崩壊ほどの激変ではないかもしれないが、2割~3割も高いといった事例は、珍しくない。

 

 地方においては、「郊外への商業集積に伴い、古い駅前商店街のシャッター通り化が進行」「新たな道路の開通や学校などの施設移転で、それまでの中心市街地が急激に衰退」ということがそこここで起きている。

 

 経済環境の変化、生活スタイルの変化により、「人気エリア」から「不人気エリア」に所在することになってしまう物件、本来の価値に見合わない割高物件、いずれも「含み損」を抱えて、それは売却時に表面化することになる。

 

 不動産会社、営業マンは、基本的に「取引をまとめること」に懸命だ。別の言い方をすれば「物件の良し悪し関係なく」購入を勧めてくる。不動産会社まかせにすることなく、地域を取り巻く環境変化について、アンテナを張っておくことが重要だ。

 JR中央線のとある駅から徒歩7分程、古家付きの土地売買のお手伝いをしたときのことです。敷地面積もまずまずあって査定価格は1億円を超えます。当然、仲介業者としては、「少しでも高い金額で」と思う訳ですが、営業活動を始めてしばらくした頃に売主さんから「価格は1億円を超えないように」との連絡が入ります。

 

 その家は、売主さんが相続で取得した実家(空き家)で、「被相続人の居住用財産に係る特別控除の特例」の適用を受けるための要件の一つが「譲渡金額は1億円以下」だったのです。

 

 この特例の適用が受けられると「譲渡所得の金額から最高3,000万円の控除が受けられる」というもので、長期譲渡(所有期間5年以上)の場合でも、適用税率は所得税(復興特別所得税含む)、住民税合わせて、20.315%です。3000万円の控除があるかないかで、納める税額は、約610万円も違ってくるということになります。ですので、「1億200万円」とかで売却するよりも、1億円で売却したほうが「手残りが多い」ことになります。

 

 要件の詳細については、ここでは触れませんが、「空き家になったご実家を売却する予定」「売却査定金額が1億円前後」といった微妙な時には、特例の適用についてよく確認されることをお薦めします。大都市、地方中核都市に実家がある方は、該当するかもしれませんね。

 

 このケースではお客様からの申し出があって事なきを得ましたが、気づかないまま1億円超の価格で商談をまとめていたら、かえって不利益を与える結果になっていたでしょう。普段から「顧客利益を第一に」と考えている自分にとって、不勉強を恥じた出来事でした。