キノの旅 第11話 「大人の国」 感想 大人の定義 | ながめせしまに@無為

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※ネタバレ含みますのでご注意ください


第11話 「大人の国」

 

 

 

思ってたんと・・・ちなう・・・ へこむわ  (少女キノは可愛かった)

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エピソード別の満足度

 

×××度し難い  ××不快  ×退屈/あまり好みではない  ▽微妙/何かが足りない △まずまず楽しかった
▲なかなか楽しかった  ○楽しかった ◎凄く楽しかった ◎◎大満足 ☆名作回 ☆☆傑作回 ☆☆☆神回

 

 第1話 「人を殺すことができる国」

 第2話 「コロシアム」

 第3話 「迷惑な国」

 第4話 「船の国」

 第5話 「嘘つき達の国」

 第6話 「雲の中で」

 第7話 「歴史のある国」 

 第8話 「電波の国」

 第9話 「いろいろな国」

 第10話 「優しい国」

 第11話 「大人の国」

 

大人の国→優しい国の順番で優しい国を見てみたかったでござーる。

 

 

 

感想

 

 アニメ化をする上で事前に取ったアンケートで前回の優しい国が人気投票1位、今回の大人の国が人気投票2位。これが1位と2位というのは正直なところ違和感が拭えない。

 

ただ、前回コメントを頂いて前作のアニメシリーズでは大人の国→優しい国という流れで放送されたらしいのだけど、諸々考えてみると大人の国→優しい国という構成はキノがサクラにどのような気持ちを投影していたのかが分かりやすく、そうした心情描写を踏まえたうえで優しい国を見ていたら印象が変わっただろうという点は大いに頷けるものがある。

 

前作シリーズをまだ見ていないので判断を確定はできないが、構成としては大人の国→優しい国のほうが優しい国を見て、キノの繊細な感情の揺れが伝わって良かったのではないかと感じる。

 

 

 さっそく今回の本編を振り返る。

サブタイトル「大人の国」は漠然としすぎていてどんな国なのかさえ予想できなかったが、とはいえ人気投票でも上位だしそれなりに期待して視聴したのだが、結果からいうとやや期待外れといった感が否めない。 

 

キノの旅では気分が悪くなるようなストーリーもあるけれど、たとえ内容が気分が悪いものでも皮肉よりのオチで考えさせるなど、単純に気分が悪いだけで終わるような話ではない。それゆえエンタメとして十分に成立しているのだが、今回はキノの過去編という事もあるのか、「大人」というテーマよりも、キノのドラマ部分に少し感情移入が強くなり、結果としてただただ悲しいという気分が強く残るエピソードだった。そしてキノが少し薄気味悪いようにさえ見えた(´・ω・`)

 

 これまでもイカれてるなぁと思う国はあったが、大人の国も相当イカれてると感じる国だった。単純な酷さだけでいえば他にも酷い国はあるのだが、嫌悪感ではこれまでのエピソードの中でも屈指の国かなと思う。自由な選択肢がない事、何かの手術で強制的に矯正される怖さ、そこに住む人々の思考停止と同調圧力といったものがとても不気味に感じる国だった。

 

手術というからには暗示的な洗脳といったものではなく、脳に直接メスを入れるような類のものだろうか。その時点でかなり拒否感と嫌悪感が強い(T▽T;)オソロシイ 大人達は既に手術を受けてるせいか、何も疑問に思う様子もなく積極的にこの国のシステム維持に努めている。子供も小さい頃よりそういうものだと教育を受けてるせいか、キノでさえオリジナルキノに会うまではそういうものだと受け入れていた様子を見せている。

 

自分の子供でさえ躊躇なく手にかけようとしたキノの両親の様子は本当に不気味で、強烈な嫌悪感を伴うものだったが、本能といったものさえあの国は手術でどうにかしてしまうのかと思うとただただ恐ろしい。

 

大人!?の国

 大人の国と呼ばれるこの国だが、手術で嫌なことも嫌とは思わずに仕事することができるようになる。果たして彼らは本当に大人と呼べるのだろうか。今回はオリジナルキノとキノの問答に見られるように、大人とは何かを考えるテーマになっていた。

 

大人とは何かを定義するのは難しいことだが、内面的な成長により、様々なストレスにも対応し折り合いをつけることができる事が一つの大人の形とするなら、彼らはそれを拒否し手術という措置によってストレスから逃げてしまったというようにも思える。

 

とすれば、彼等は内面的な成長をしておらず、心は12歳のままでストップしてしまっているとも考えられる。大人の国と呼ばれているが中身は全国民が子供のまま成長していない国ともいえる実態で、こうした点で皮肉が効いてるエピソードと思える。

 

 

オリジナルキノとキノ

 一方、今回のドラマ部分について振り返ると、なかなかに心を削られるエピソードだった。

キノの元々の名前は花の名前で、文字ると馬鹿にされるもの。結構なヒントだがなかなか思いつかない。真っ先に浮かんだのはサクラだが特に侮蔑を含んだものにはならない。ローズ(ロース)、蓮華(チンゲ)、薔薇(バカ)、ひまわり(おまる)・・・知ってる花の種類が少ないことに気づいてしまった( ̄ー ̄; 原作では答え出てるのかな・・。

 

オリジナルキノは、キノの話を聞いてこの国の異常さを察する。ただ、シズのように積極的にこの国の在り方について干渉する様子がないのは、キノと少し似たような節は感じる。それでもキノに比べてオリジナルキノのほうは幾分人情味が強いのか、それが命取りになってしまった。結果的に命を落とすことになってしまったが、オリジナルキノがキノを守ろうとして瞬発的に身体が動いたのは今回のエピソードでは唯一救いを感じる部分であった。

 

それだけに、命を救われたほうのキノのその後の様子は少し不気味なものがあった。両親から殺されそうになるというとんでもない状況に頭が真っ白になっていたのかもしれないが、感情の揺れがほとんどなく、オリジナルキノに救われたことや命拾いしたことへの安堵や感謝といったものが見られない。

 

それどころか、頬に血がついてる状況でキノと呼ばれて笑顔を見せている様子は不気味だった。音楽や絵の雰囲気ではいい感じのシーンのように演出されているのだが、状況のちぐはぐさが理解しがたいものがあり、いまいち世界観に入り込めなかった。

 

 とにもかくにも、キノはこの一件で一人立ちして旅をすることになるようだが、この時点ではただの可愛い少女だったことから、師匠に鍛えられるのはこのすぐ後なのだろうと想像がつく。自分で考え自分の力で生き、自身の行動に責任を負うという意味では、大人の国を出たキノのほうがよほど大人になっているのではないだろうか。

 

サクラとキノ

そしてキノはかつての自分を優しい国のサクラに重ねたいたのではないだろうかと窺える。境遇的にも宿屋の一人娘で花の名前を持つ少女。しかし、キノの過去とは違いサクラは自身の夢を自分の国で実現しようと健気な様子を見せている。そんなサクラにキノは自分と両親がもしこの国に生まれていたら今とは違った未来もあったのかなと思っていたのかもしれない。キノはきっとそんなサクラの夢の実現を誰よりも願った一人だったのではないだろうか。それだけに・・・。

 

その他

そいえば、三日ルールというのもどうやらオリジナルキノのルールをキノが踏襲したものだったようだ。相棒のエルメスも名付けはキノだが、もともとはオリジナルキノの友人の名前からとったものらしい。オリジナルキノが以前に乗っていたモトラドの名前だろうか。

 

 

 

 

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