A Flood of Music -15ページ目

今日の一曲!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ「Yup! Yup! Yup!」~ₙC₅解体-1~

 

 
 

前置き

 

 先月からある目的のために期間限定で怒涛の更新を続けている途中ですが、今回から暫くは連続でその流れから逸脱した記事をアップします(9日ぶり3度目)。過去の2度は理由こそ違っても急場凌ぎの側面が強かったけれど、今般のはある時点から一定程度の想定をしていたイレギュラーです。

 

 というのも、目的に伴って掲げていた明確な数値目標のうち自分でコントロール可能なほうの必要数が残り9となった今、13日以内にこれを0にするには従前の隔日更新では間に合わないので、何処かのタイミングで連日更新に切り替えないといけないことは分かっていました。しかし完全なる新記事での更新は隔日ペースが限界であるため、例によって過去記事の再利用をご寛恕ください。

 

 以前の2度に関しては、タイトルだけではトピックの詳細が読み切れない複数の記事から共通するテーマの基に関連記述を集約させて網羅的な閲覧に資するよう努める意義があったものの、此度の連続更新に於いては反対に一つの記事を解体して複数記事を作成する初の試みを行います。

 

 

 バラすのは上掲リンクカード記事「ラブライブ!シリーズのₙC₅」です。ₙC₅とは自作のプレイリストからアーティストないし作品毎に5曲を選んでレビューする企画で、昨年の2月~5月にかけて更新を続けていました。目下第11弾まで存在する一連エントリーのうち当該記事が最も検索サイトからの流入が芳しくないので、曲毎に「今日の一曲!」のフォーマットに起こし直します。

 

 と言っても直近の記事のように歌詞・メロディ・アレンジ別に項を分けることはせず、レビュー対象の項に元記事からのセルフ転載を行い;必要に応じて文面や体裁には多少手を加えた後に、収録先の項に新規の言及を行うので一応は改めて読み物として楽しめるようにしました。

 

 

レビュー対象:「Yup! Yup! Yup!」(2023)

 

 

 ということで今回取り上げる楽曲は、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの「Yup! Yup! Yup!」です。初期の全体曲のひとつで、公式ファンブック『Link!Like!ラブライブ!104期スタートBOOK』(2024)内に掲載の1stライブレポの中には、「コールの楽しさや6人たちがギュッとくっつくようなかわいい振りつけで、客席のテンションが一段と上がりました」(p.92)と、明るくてキュートな本曲に対する好リアクションのほどが窺えます。

 

 

 そんな本曲の魅力を個人的にはフロウの心地好さに聴出しており、全体を通じてリズム重視のメロディラインが印象的です。顕著なのはAメロの前半部で、1番と2番で全く異なる音運びになっているところにラップ的な要素があります。

 

 とりわけ2番のそれは何処を切り取ってもツボで、先行する"今なら"が1番との違いを早々にマークし、果たして期待通りに新たなフロウが慈のあざと可愛いボイスで刻まれ、そのふわふわとしたラインが文字通り"反動"で俄に快活さを得て、畳み掛けの"I wanna"に煽られた先で元気いっぱいの瑠璃乃が"欲張りだけど 全部全部 宝物"を歌う。この一連に展開される緩急と物語性が、聴く者に新鮮さと幼馴染の結び付きを感じさせます。

 

 "反動"と"全部全部 宝物"が歌詞を見ないと日本語に聞こえない歌い方なのも好きで、本来はモーラで考えるところをシラブルにするのも上質なフロウ形成に一役買っているとの理解です。

 

 

 その他のセクションでもみらぱの二人が絡むとリズムがなお生き生きとしていて、サビの"咲きたい 大期待/Let me, let me"および"錆ない パンチライン/Like it, like it"でのキャッチーなライミングや、"最高だね 最高 最高だね!"および"負けないデス 負け 負けないデス!"のスクラッチっぽいリピートを適例に取れます。

 

 ハッピー且つアッパーな"高まる気持ち 嘘つかない"の部分にラブライブらしさを強く感じられるラスサビ前のプレコーラスは、楽想がテクニカルなのも特徴でCメロ+サビ後半という変わったコンビネーションです。見方を変えれば2番のサビは前半と後半に分かたれていて、その間にCメロがインサートされているとも言えます。2番サビが前半のみでCメロに入る或いはサビ後半をプレコーラスに使う、それぞれはそこまで珍しくない気がしますが合わさると新鮮です。

 

 

収録先:『夏めきペイン』(2023)

 

 

 本曲の収録先は蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ名義での1stアルバム『夏めきペイン』です。各ユニット(スリーズブーケ・DOLLCHESTRA・みらくらぱーく!)に2曲+全体曲4曲の都合10曲が収められています。

 

 前置きにリンクした自作のプレイストに照らすとラブライブ!シリーズは60*3=180曲の例外的な大編成で、本盤からは上位60曲までに「Dear my future」「Yup! Yup! Yup!」「青春の輪郭」を、上位120曲までに「明日の空の僕たちへ」「ココン東西」「残陽」「パラレルダンサー」を登録しており、7/10がリストインしている現状に鑑みると名盤認定待ったなしです。

 

 

 スリブの「Dear~」はトラックだけを取り立てるとビートやリフにヒップホップらしい性質が窺えるのに、実際は切なく感動的なミッドバラードという洗練されたサウンドプロダクションで耳にも心にも深く残ります。

 

 ドルケの「青春~」はクラップの似合う爽やかで疾走感溢れるナンバーで、意外とロックなオケがピアノとストリングスのお蔭か豊かな音像に包まれており、荒々しさと嫋やかさの矛盾が止揚されている良曲です。

 

 みらぱの「ココン~」はゲームモチーフの異世界転生を現実に重ねたユニークな歌詞世界が今風で、苦境をパワープレイで突破していくような趣だからか基本はポップだけれどメロディやフロウにいい意味で暑苦しさを感じます。

 

 

 全員曲の「明日~」については主旋律の流麗さを高く評価しており、良さは聴けば解ると感性に丸投げしたいくらいには只管エモいです。別けても"待ってるのだろう"に於ける進行が涙腺にきます。

 

 再びスリブの「残陽」は終始ギターがお洒落なナンバーで、ゆったりと踊れるカッティングも残照に涙するように歌うソロも素晴らしいです。

 

 再びドルケの「パラレル~」はシンセがパワフルに響くダンサブルな楽曲で、サビの跳ね感に身を任せれば何処までも楽しくなれます。