
今日の一曲!冨田恵一「SANA SAMBA」~『こどものおもちゃ サウンドトラック』より~
レビュー対象:「SANA SAMBA」(1996)
今回の「今日の一曲!」はいつもと趣向とフォーマットを変え、劇伴を一曲だけ紹介します。対象は90年代少女漫画原作のTVアニメ『こどものおもちゃ』から、主人公・紗南の名を冠し作中で最も印象的と言っても過言ではない「SANA SAMBA」です。冒頭の人物紹介パートと次回予告裏での使用が定番。
前々回にアップした上掲リンクカードの記事はディスクガイド本『90年代アニメ&声優ソングガイド』に基き、自分にとり思い出深い20曲について簡単に紹介するものでした。その中に同アニメの2ndOP曲・篠原ともえ「ウルトラ リラックス」(1997)を取り立てていたため、BGMにも白羽の矢を立てようと考えた次第です。
この「白羽の矢」には元来のネガティブな意味合いを僅かに含ませていまして、直近の数日間は元よりブログを書く時間が殆ど取れないと分かっていたので、なるべく短時間で充分な言及が出来るものをと勘案した結果である点をご寛恕願います。とはいえ上掲記事および7月1日付記事のように過去記事を再利用した急場凌ぎでないのはせめてものこだわりです。
メロディ&アレンジ(作編曲:冨田恵一)
紗南サンバのストレートなタイトル通り、快活でお調子者な彼女らしさがサンバのリズムで楽しく表現されています。主題が紡がれる前半でそのキャッチーなメロディを存分に聴かせてから、クイーカやアゴゴなどサンバらしい楽器による賑やかなサウンドが表層に来る後半で躍らせる二部構成です。
収録先:『こどものおもちゃ サウンドトラック Vol.1』(1996)
本曲は『こどものおもちゃ サウンドトラック Vol.1』に収録されています。サントラは第3弾まで存在し、その何れも手掛けたのは冨田恵一さんです。恥ずかしながら本記事を執筆するまではこどちゃの音楽担当が同氏であると意識しておらず、これを知れただけでも個人的にはもう意義深くすらあります。
当ブログでは過去に坂本真綾「ムーンライト(または"きみが眠るための音楽")」(2011)をピックした際にお名前を出しているほか、冨田ラボ feat. 椎名林檎名義の「やさしい哲学」(2013)のレビューではその手腕を絶賛していました。ディスコグラフィーを見ると他にもちらほらと馴染み深いアーティストへの楽曲提供やプロデュース業があり、折に触れてその音楽を聴いていたんだなと僕の中で思った以上にプレゼンスがあったみたいです。
【追記:2025.7.16】 その中から夢みるアドレセンス「大人やらせてよ」(2016)を新たにレビューしました。子供と大人で対比を意識。 【追記ここまで】
話をサントラVol.1に戻して、当該の「SANA SAMBA」は勿論そのアレンジバージョンの「DON'T CRY FOR ME」(少し前の記事で「共通のメインテーマを都度イメージを変え披露する劇伴ではお馴染みの手法」と書いた類のもの)や、秋人のテーマとしてこれまた印象深い「RASTA HAYAMA」、1st OP曲・TOKIO「19時のニュース」(1996)の平歌部分を基にインスト化した「NEWS 19 VERSION 1」および「〃2」と、フックになるような劇伴が多く収められています。
『こどものおもちゃ サウンドトラック Vol.2』(1997)では、先の「DON'T~」と「RASTA~」を掛け合わせてメイン二人の心情や関係性の変化にフォーカスした「HARMONY OF SANA & HAYAMA」や、作中に登場する電子トイキーボード「Nopia(ノピア)」での演奏を通じてホビアニの側面が窺える「NOPIA」および「〃 SANA HIGHLIGHT」など、アニメの内容に深入りした劇伴で彩られているのが特徴です。ちなみに原作の小花美穂さんはアメブロのユーザーで、「こどものおもちゃ ノピア」で検索すると娘さんがノピアで遊んでいる様子についてふれた記事がヒットします。
冨田ワークスではないので番外編として紹介しますが、Vol.2に収録のアニメ挿入歌のひとつで少六隊が歌う「VITAMIN LOVE」はかなりおすすめです。作中年代を基準にしてもややレトロと言っていい、80年代後半アイドルソングのエッセンスが凝縮されています。
なお、ネット上では「小六隊」の表記も散見されるので第34話の録画を確認したところ、何度も出てくる文字表記は全て「少六隊」でした。最初に玲が「今人気絶頂の女の子アイドルばかりの小学六年生トリオだから」と言っているだけに混同も已む無しですかね。それにしても歌唱シーンは気合が感じられる納得の仕上がりで、アニメ界隈では現在でも『【推しの子】』の(新生)B小町が熱いですし、3人組アイドルの作動画が映えるのは時代が変わっても変わらないと結びます。