2025年、日本。
監督/脚本/企画:深田晃司
出演:齊藤京子、倉悠貴、仲村悠菜、小川未祐、今村美月、桜ひなの、唐田えりか、津田健次郎
人気急上昇中のアイドルグループ「ハッピー☆ファンファーレ」でセンターを務める山岡真衣は、中学時代の同級生・間山敬と偶然再会し、恋に落ちる。アイドルとして背負う「恋愛禁止ルール」と、抑えきれない自身の感情との間で葛藤する真衣。しかし、ある事件をきっかけに、彼女は衝動的に敬のもとへと駆け寄る。
その8カ月後、事態は一変。所属事務所から「恋愛禁止条項違反」で訴えられた真衣は、事務所社長の吉田光一、チーフマネージャーの矢吹早耶らによって、法廷で厳しく追及されることとなる。(早稲田松竹の「note」より) 全国公開されていた時はタイミングを逸して観られなかった本作を早稲田松竹レイトショーにて鑑賞。
何だろう、この終わった後の無感情は。
決してつまらなかったわけではなく、むしろ退屈するところが一つもなく、もっともっと主人公・真衣の人生を見ていたかった。それなのに感想らしき感想が残らない。
それでも観た後にしばらく頭から離れない作品になっているという不思議な体験。
これはもしかしたらアイドルに沼ったことがないから抱く感情なのかもしれない。
アイドルが裏で彼氏彼女を作ってこっそり恋愛していても特に嫌悪感や怒りの感情を持たないから、この映画があんまり心に響かなかったのかなぁ。
もしかしたらアイドルにガチ恋してしまうファンの人たちの感想は真反対のものになっているのかも。
そしてもう一つ、心をあまり動かされなかった理由として大きいのは、登場人物の誰にも共感できないことだと思う。
チェキ会でファンに「大好きだよー」と言っておきながら裏では別のファンと付き合っていてデートのカモフラージュを他のメンバーに悪びれもせず頼んでくる意識の低い菜々香にも、そんな菜々香に常に寄り添いつつも結果的には自身も恋愛に走ってファンや事務所やメンバーを裏切ってしまう真衣にも共感できないし、その真衣と駆け落ち状態になる敬も大道芸人の割にパントマイムが上手くなくて将来性がないし稼ぎもないのに1人のアイドルの人生を棒に振らせてしまうという罪深さがあって共感に値しない。
真衣はスターダムへの階段を駆け上がっていって、アイドルとして夢を叶える1歩2歩手前まで来たところで大きく踏み外す。この軽率な行動を本人は確かに後悔していたのに、それでもどうしてめげずに闘い続ける道を選んだんだろう。
それにしてもアイドルとしての成功を目の前に、それを全て捨てて甲斐性のない大道芸人の元へ走ってしまう選択に真衣が固執したのはどうにも腑に落ちない。
腑に落ちないといえば敬が真衣のためだけにとっておきのイリュージョンを見せるシーンもそう。
あんなどう考えてもあり得ない空中浮遊を目の当たりにしたら、真衣はもっと声を上げたりして驚いてもおかしくないはずなのに、全く冷静に見ているというのはどうなんだろう。
あれが恋愛特有の相手が素敵に見えてしまったという"盛った"演出なんだとしたら、それはそれで説明不足で伝わりきっていない気がする。
作品的には、アイドルの裏側を描きたかったのか、真衣と敬との恋愛模様を見せたかったのか、それとも裁判を通じてアイドルの人権を考えさせたかったのか、ちょっと中途半端だったかな。
特にキービジュアルにもなっている裁判については法廷闘争のような描写はほとんど登場せず、民事訴訟の行方もすぐに原告の事務所側から和解が提案されるなど、物足りなさが際立つ。
この点は明確に恋愛"裁判"なるものを観たいという観客のニーズとは乖離してしまっていた。
だけど、つい最近まで現役トップアイドルだった齊藤京子さんの地下アイドル役は当然ハマっていたし観られて良かった。
そしてハピファン(劇中に登場する「ハッピー☆ファンファーレ」というアイドルグループ)の楽曲はレベルが高かった。
後で調べたらSpotifyに劇中歌3曲がフルバージョンでアップされていて、そうしたところも芸が細かい。
この作品はそうした細部の描き方がとても丁寧で、アイドルの舞台裏やマネージメント業などディテールがしっかりと作り込まれている印象。
それゆえストレスなく自然に鑑賞することができたんだと思う。
しかしこうした"虫の目"に強いこだわりが感じられる一方で、"鳥の目"になって大枠で見た時にはどこか中途半端さや物足りなさが残ってしまう点が惜しく思えた。
yh
