2022年、日本。
監督:高橋伴明
脚本:梶原阿貴
出演:板谷由夏、大西礼芳、三浦貴大、松浦祐也、ルビー・モレノ、片岡礼子、土居志央梨、柄本佑、筒井真理子、根岸季衣、柄本明
「痛くない死に方」「禅 ZEN」などの高橋伴明監督が板谷由夏を主演に迎え、バス停で寝泊まりするホームレスにならざるを得なかった女性を主人公に、社会的孤立を描いたドラマ。
昼間はアトリエで自作アクセサリーを販売し、夜は焼き鳥屋で住み込みのパートとして働く北林三知子。しかし突然訪れたコロナ禍により、仕事も住む家も失ってしまう。新しい仕事は見つからず、ファミレスや漫画喫茶も閉まっている。行き場をなくした彼女がたどり着いたのは、街灯の下にポツリとたたずむバス停だった。誰にも弱みを見せられないままホームレスとなった三知子は、公園で古参ホームレスのバクダンと出会う。一方、三知子が働いていた焼き鳥屋の店長・寺島千晴は、コロナ禍の厳しい現実と従業員の板挟みになり、恋人であるマネージャー・大河原智のパワハラやセクハラにも悩まされていた。(映画.comより)===
早稲田松竹にて鑑賞。
二度と戻りたくないコロナ時代。渋谷区幡ヶ谷のバス停で寝泊まりしていたホームレスの女性が殺害された実在の事件を題材にした作品。
人間なんて誰しもひょんなきっかけで簡単に転落してしまう弱い生き物なのに。
三浦貴大さんが演じる居酒屋チェーンのマネージャー役がとんでもなくクズで嫌な役回りだったのと、"バクダン"と呼ばれて「腹腹時計」を今なお大切に保管している元極左活動家らしきホームレス役の柄本明さんが相変わらず唯一無二だったのが印象的。
アルタビジョンに映し出される菅総理
(当時)の「自助・共助・公助」を久々に聞いたけど、対象者を限定してばかりいる今の物価高対策はあの当時よりヒドいのかもしれないと思い知らされる。
"バクダン"が口にする「モリカケ桜、人が死んでるんだぞ。それをアイツは、『こんな人たちに負けるわけにはいかない』って国民に対して」という言葉を受けて主人公の三知子が返した「あの人がやってることはメチャクチャだけど、私が今こうなってるのは私自身の責任もある」というセリフは作り手の思想が色濃く反映されていて、ここが本作のハイライトだと思う。
それに続けて"バクダン"が言う「社会の底が抜けたんだよ」の一言。果たして今、その抜けた底は塞がったのか。
そしてネット上に拡散される情報に洗脳されたマヌケな引きこもり男。
街のごみ拾い活動をしているうちは平和なものの、ホームレスになった三知子が座っていたバス停のベンチに消毒液を振り撒きまくるところまでいくともう…。
シリアスなシチュエーションながら、ラストは想像の斜め上を行くとんでもないオチが待っていて、藤子・F・不二雄の短編SFのような読後感。
yh
