スコアカード提出の厳格性(ゴルフ規則3.3 b)

2024年7月7日

1 ゴルフ規則3.3bは,「ストロークプレーのスコアリング」として,かなり丁寧に解説しています。各ゴルフ倶楽部で行われているアマチュアの競技において参考となるよう考えてみました。

  プロゴルフのスコアリングでは,アテストルームが設けられ,委員会の担当者が同席して,間違いがないよう確認してからスコアカードの提出が行われているようです。しかし各ゴルフ倶楽部で行われているアマチュアの競技において,そのような手続きは難しいので,箱を設置してカードの投入をもってスコアカードの提出としているようです。

  プロゴルフのスコアリングですら間違いがあるくらいですから,アマチュア競技ではなお更です。そこで,アマチュア競技でも一定の時間内,あるいは,一定の場所の範囲内で,スコアカード提出後でも間違いの訂正を認めているゴルフ倶楽部があると聞いております。果たしてそのようなことがゴルフ規則上可能なのか,公正なのか,不平等とはならないのか検討してみます。

 

2 先に申しあげたとおり,多くのゴルフ倶楽部では箱へのスコアカードの投入をもって提出としているようです。

  ゴルフ規則3.3b⑵は,

・  マーカーが記入したホールのスコアは変えてはならない。ただしマーカーの同意,または委員会の承認がある場合を除く。

・  スコアカードのホールのスコアを証明し,速やかに委員会にスコアカードを提出しなければならない。その後はスコアカードを変更してはならない。

  と規定しております。その結果ゴルフ規則3.3b⑶は,プレーヤーが(各)ホールについて間違ったスコアのスコアカードを提出した場合

・  提出されたスコアが実際のスコアよりも多い。そのホールに対して提出された多いスコアが有効となる。

・  提出されたスコアが実際のスコアよりも少ない,またはスコアが提出されなかった。そのプレーヤーは失格となる。

  その他にいくつかの例外規定がありますが,間違いがあった場合の効果を明確,且つ厳格に規定しています。

  更に,ゴルフ規則3.3b⑷は,次のように規定しています。

・  スコアカードにハンディキャップを示すこと,またはスコアの加算をすることはプレーヤー(マーカー)の責任ではない。

 

3 以上のとおり,何ら疑問を差し挟む余地のない規定になっているのに,ゴルフ倶楽部のアマチュア競技でも,箱へのスコアカードを投入した後でも一定の時間内,あるいは一定の場所の範囲内で,間違いの訂正を認めている意図は何でしょうか。

⑴  一つは,プロゴルフの競技においてスコアリング時,アテストルームで委員会の担当者が同席し,間違いがないよう確認していることが影響していると思います。

⑵  二つ目は,アマチュア競技とはいえ,失格となったら参加者に気の毒であるということだと思います。

  まず,プロゴルフの競技で採用している方式は,ゴルファー,マーカーの不注意で失格者が続出したり順位が変更となったら,観戦者だけでなく,大会を主催している団体や後援者に対しても,大変失礼なことになるので,委員会が相当な設備,人員をもって臨んでいるから出来ることです。もちろん,プレーヤーもマーカーも疲れて,注意力が散漫になっているので手助けする意味も少しはあるでしょう。

  いくらプロゴルフの競技で採用している方式とはいっても,各ゴルフ倶楽部で行われているアマチュアの競技において,アテストルームを設置するとか,参加者全員がプレーを終了するまで競技委員が同席するというのは難しいでしょう。

  二つ目の,失格となったら参加者に気の毒であるという理由はもっともです。しかし,間違いが判明する前後の状況をよく考えてください。

①  箱へのスコアカード投入直後に間違いに気付く。

②  競技の順位が発表される掲示板を見て,ハンディキャップ,またはスコアを加算した合計が,プレーヤーの認識と食い違って気付く。

  などではないでしょうか。前記①の間違いも,②の間違いも,プレーヤーやマーカーが責任を取るべき十分な理由があります。

  前記①については,マーカーが記載した各ホールのスコアをプレーヤーが確認してそれでも間違ったのですから,プレーヤーは,過大な申告はそれを認め,過小な申告なら潔く失格の処分を受けるべきです。

  ましてや,前記②のように時間的,空間的な経過があった場合,すでにマーカーが帰宅している場合,プレーヤーと委員会だけで訂正できるのかという問題もあります。

  ゴルフ規則3.3b⑶は,プレーヤーが,各ホールについて間違ったスコアのカードを提出したときは,多いスコアなら有効となり,実際のスコアよりも少ないときは失格と,疑いを差し挟む余地がないほど明確に規定しています。

  以上は,各ホールのスコアだけのことで,ハンディキャップの間違い,またはスコアを加算した合計の間違いは,プレーヤーの責任ではなく,間違って申告されていても,委員会の権限で勝手に訂正できると解釈できます(ゴルフ規則3.3b⑷)。

 

4 いくらプロゴルフで採用しているからと言って,その設備も人員も足りないアマチュアの倶楽部競技で,一定の時間内,あるいは一定の場所の範囲内で,スコアカード提出後でも間違いの訂正を認めるというのは,ゴルフ規則上の問題があり,公正でもなく,競技者間の不平等さえ甚だしくなり,失格した人の気の毒さを上回る問題が発生します。やはり,アマチュアの倶楽部競技においては,多くの倶楽部で採用している箱を設置してカードの投入をもって,スコアカードの提出と看做す方法しかないでしょう。

  20年近く前になりますが,私が所属する倶楽部の競技において,私がスコアの加算を間違って提出してしまったのです。入浴中にマスター室の事務の方が,合計が合っていないと訊きに来て下さったので,私は大変恐縮し平謝りでした。合計が多かったのか,少なかったのかは覚えていませんが,私は合計が間違っていることだけしか頭に浮かびませんでした。その時,仮にスコアの加算を間違えても,各ホールのスコアを多くすることも,少なくすることも出来ないのに,なぜ風呂場まで訊きに来たのか,スコアの加算は委員会の権限ですから,私に訊く必要はなく委員会が勝手に訂正すれば良いのにと不思議に思っていました。

  私は以上のことがあってから5~6年経過して,もしかしたらと気付いたのです。すなわち,私が合計したスコアが正しい打数で,各ホールのスコアを合計した打数が,私が合計した打数より少なかった場合,どこかのホールで過少申告になっている可能性があるのではと。マスター室の事務の方はそのことを確認するために風呂場まで来たのかもしれないと。                                以上

「ホールに入る」の定義は破綻している

2024年7月7日

1 ゴルフ競技では,球がカップに入ったか否か重要です。ゴルフ規則は球が「ホールに入る(Holed)」と規定して厳格な定義とカップに入りかかった球について,その処置方法を定めていました。2018年以前の定義と2019年以後の定義を見てみましょう。

  2018年以前のゴルフ規則(以下旧ゴルフ規則という)では次のとおり定義されていました。

  ホールに入る(Holed) 球がホール内に止まり,球全体がホールのふちよりも下にあるとき,その球は「ホールに入った」という。

  2019年以後のゴルフ規則(以下近代化されたゴルフ規則という)では次のとおり定義しています。 ホールに入る 球がストローク後にホールの中に止まり,球全体がパッティンググリーン面より下にあるとき。

  旧ゴルフ規則近代化されたゴルフ規則に共通して「ホールに入る」の要素としていることを分解すると:

⑴   球がホールの中で停止していること。

⑵   球全体がパッティンググリーン面より下にあること。

⑶   球がホールの底に接している必要はない。

 

  ゴルフ競技歴が数年ある人ならご存じのとおり,旧ゴルフ規則17-3.のc.に次のとおり規定されていました。

「プレーヤーの球は次の物に当たってはならない。球がパッティンググリーン上でストロークされた場合で,ホールの中に立っていて人に付き添われていなかった旗竿」

  旧ゴルフ規則が適用されていたときは,プレーヤーの球が旗竿に当たる事例は,ホールインワンとかパッティンググリーンの外からストロークした球が旗竿に当たる位でした。また,稀にですが球が旗竿に寄りかかり,ホールの中に沈み込まないことがありました。そのような状況になった場合,「ホールに入る」の定義が,球全体がホールのふちよりも下にあるときと規定されていたので,旧ゴルフ規則は,プレーヤーの球が旗竿に寄りかかっている球について,その後の処置をどうすべきか,次のとおり厳格に規定していました。

  「プレーヤーの球がホールの中の旗竿に寄りかかって止まっていてホールに入っていない場合,プレ-ヤーかプレーヤーの許可した人が,その旗竿を動かすか取り除くことが出来る。その際に球がホールに落ち込んだ場合,プレーヤーの球は最後のストロークホールに入ったものとみなされる。ホールに落ち込まなかった場合(ホールから飛び出してしまった場合),球が動かされたとき,球は罰なしにホールの縁にプレースされなければならない(そしてストロークをする)。」

  旧ゴルフ規則の「ホールに入る」の定義を素直に読めば,以上の旧規則17-4. 旗竿に寄りかかっている球の処置の規定には十分な理由があると思います。

 

2 R&Aは,2019年に「近代化されたゴルフ規則」を作成するという触れ込みで大幅な規則改正を実施しました。その一つが規則13.2a「旗竿をホールに立てたままにする」の⑵の規定「球がホールに残してある旗竿に当たっても罰はない。」です。R&Aは,旗竿を取り除いても,旗竿を立てたままでもホールに入る確率に大差はなく,また同伴プレーヤー全員の球がパティンググリーンに乗らなくても用意の出来たプレーヤーから旗竿を立てたままパッティングストロークができるので,大幅なプレー進行の促進が可能となると考えたものと思います。

  その一方,旗竿をホールに立てたままパットをすると,球が旗竿とホールの内側に挟まりホールの底に落ちない場合が,旧ゴルフ規則によってプレーしていた時より格段に多く起こることも事実です。

  本来なら,球が旗竿に挟まりホールの底に落ちない場合,旧ゴルフ規則17-4.旗竿に寄りかかっている球と同じように,プレ-ヤーが,その旗竿を動かして球をホールに落ち込ますのも一方法ですが,いちいちそのような処置を求めていたら,プレー進行の促進のために考えた規則が台無しとなります。

  R&Aは,近代化されたゴルフ規則13.2cで,次のとおり規定したのです。

  「プレーヤーの球がホールに立てられたままの旗竿によりかかって止まっている場合: 球の一部がホールの中のパッティンググリーン面より下にある場合,球全体がその面より下になかったとしても,その球はホールに入ったものとして扱われる。(そのままの状態で球を拾い上げて良いということです)」

  R&Aは,前記の状況を球がホールの中の旗竿寄りかかって止まっている特別なケース(参照 定義 ホールに入る)と捉えたのです。しかし,これはホールに入る(Holed)という概念を大幅に変更するもので大改定と言えます。

  確かに,球の一部が,ホールの中のパッティンググリーン面より下にある状況であるなら,旗竿を動かせば球は99.99パーセントの確率でホールに入るでしょう。

 

3 2023年日本女子オープンゴルフ選手権3日目,パー3で球がホールの側面に突き刺さり,球の一部がパッティンググリーン面より上にあるという状況があったそうです。ほとんどの人は,ホールインワンと思ったでしょう。しかし,審判員の判定は,ホールの側面に食い込んだケースは,ホールに入ったことにはならないとのことでした。

  しかし,ホールインワンにはならない理由は,球がホールの側面に食い込んでホールの縁を広げたからだとしているのではないと思います。1メートルのパッティングストロークでもホールの縁は観念的には広げられていること明白です。球がホールの中の旗竿に寄りかかって止まっている場合ではないので,ゴルフ規則13.2cの適用がないというのでしょうか。それなら審判員の判定も一理ありそうです。

  しかし,近代化されたゴルフ規則13.2cは,「プレーヤーの球がホールに立てられたままの旗竿によりかかって止まっている場合,球の一部がホールの中のパッティンググリーン面より下にある場合,球全体がその面より下になかったとしても,その球はホールに入ったものとして扱われる。」と大改定したのです。

  世の中,起こり得る可能性のあることは起こるのです。もし,球がホールの側面に突き刺さり,ホールに立てられた旗竿がよろけて立てられていたため,球と旗竿が接触していて,且つ球の一部がパッティンググリーン面より上にあるという状況があった場合どう判定しますか。さすがのR&Aでも,前記の状況では,球がホールの中の旗竿寄りかかって止まっている特別なケースであることを否定できないでしょう。

  この旗竿に寄りかかって止まっている前記の状況は,近代化されたゴルフ規則13.2cに規定する球がホールの中の旗竿に寄りかかって止まっている特別なケース以外の何物でもないと思います。

  しかし,ホールインワンを認めない審判員は,したり顔でこう言うでしょう。

  「ゴルフ規則には,プレーヤーの球がホールに立てられたままの旗竿によりかかって止まっている場合と書いてあるでしょう。この状況は,プレーヤーの球に旗竿が寄りかかっているのです。」

  失礼しました。いくらホールインワンを認めない審判員でもそうは言わないでしょう。しかし,「ホールに入る 球がストローク後にホールの中に止まり,球全体がパッティンググリーン面より下にあるとき」という本来の定義を,近代化されたゴルフ規則13.2cの特別なケースを十分に吟味しないで新設したことによって,両立することが出来ないほど破壊してしまったのです。ゆえにかような馬鹿々々しい議論となるのです。

  2023年日本女子オープンゴルフ選手権の審判員は,ホールの側面に食い込んだケースは別で,ホールに入ったことにはならず,オフィシャルブックにも記載されていると述べていますが,たまたま,旗竿と球が接触していなかったので審判員の判断は正しかったのでしょう。

  私は確認していませんが,聞くところによると,オフィシャルブックには旗竿と球が接触していても,同じくホールに入ったことにはならないとあるそうです。近代化されたゴルフ規則のもとでは,当該オフィシャルブックの裁定は,明文化されたゴルフ規則13.2cの「球が旗竿に寄りかかって止まっている場合:………その球はホールに入ったものとして扱われる。」との規定に違反しています。ゴルフ規則より下位の規則であるオフィシャルブックの裁定がゴルフ規則に違反していないというなら,R&Aは誰もが納得するような論理的説明をすべきです。それがないから,審判員が混乱して「この状況は,プレーヤーの球に旗竿が寄りかかっているのだ」,あるいは「球がその勢いでホールの縁を広げてしまったからだ」と咄嗟に気が付いたような言い訳をせざるを得ないのです。

 

4 R&Aは,近代化されたゴルフ規則13.2cの特別なケースを規定したとき,ホールに入る(Holed)について,その定義と特別なケースの相関関係について,あらゆる状況を想定したうえで吟味していないのです。

  ゴルフ規則13.2cの特別なケースは,パッティンググリーン上からストロークした場合に,より多く生じる状態です。しかしながら,100ヤード,200ヤード先から高速で飛翔する球でも適用になります。そのような場合,球の一部がホールの中のパッティンググリーン面より下にある(球がホールの側面に突き刺さる)場合が当然考えられます。その時,球と旗竿が接触していれば,規則13.2cの特別なケースが適用され球をそのまま拾い上げることが出来て,球と旗竿が接触していなければ,ホールに入った(Holed)ことにならないということになります。

  球と旗竿が接触しているか否かという偶然性の高い事実をもってホールドしたか否かを判定することの妥当性について検討していないのです。R&Aは,13.2cの特別なケースを新たに規定すれば,大幅にプレーの進行を促進できると考えていただけだったのです。R&Aの規則委員が頭で想像していたことは,13.2cの特別なケースの発生は,パッティンググリーン上からストロークした場合だけだったとしか思えません。

  2007年頃プロゴルファー,ビジェイ・シンがバンカーをならした違反で過少申告となり失格し,R&Aは,慌てて旧ゴルフ規則13-4.例外3を追加したものの,極めて不完全な改訂であったため,その数年後にスチュアート・シンクが,同じような事例で過小申告となり失格となったのと同じです。規則全体に目が行き届くよう,多くの意見を聞かないと規則の改定などできません。

  「詳しくは本ブログ内の(私がゴルフ規則に興味を持った経緯)を参照してください。」

  R&AとUSGAは,ゴルフ規則の近代化の指針として,改訂はすべてのゴルファーの存在を念頭において評価されるべきである。プロフェッショナルだけではなく,初心者,倶楽部ゴルファーにとっても,世界中のすべてのレベルのプレーにおいて規則が理解し易く,適用し易いものとなるようにすると表明したことを思い出してください。

以上

 

ゴルフ規則目次と概要 競技委員・審判員用

 この「ゴルフ規則目次と概要 競技委員・審判員用」は,ストロークプレー個人競技に限定し,競技中にしばしば問題となる事例について,ゴルフ規則の該当箇所を素早く発見するために作成しました。用語の定義と参照すべき規則は詳細に記載する一方,起こり得る全ての事例を取り上げると該当規則に素早く到達できないので大胆に省きました。また,主語や目的語などを可能な限り省略し,表現もゴルフ規則そのままではありません。必ずゴルフ規則本文を参照して下さい。ゴルフ規則をかなり理解した方が対象です。ゴルフ規則をこれから勉強する方には全く役に立ちません。私の理解不足もあるので,常に訂正・改正をしております。最新の画像をダウンロードしてください。

 

最近訂正した箇所

* ゴルフ規則は,16.1c⑴を無罰の救済,16.1c⑵を罰ありの救済としているが,

  16.1c⑴は,完全な救済のニャレストポイントを起点として救済を受ける。無罰

  16.1c⑵は,後方線上の救済を受ける。1罰打

  と表記した。

*    異常なコース状態(例えばスプリンクラーヘッド)が,プレーヤーの気を散らす

  ほど近くにあるだけでは規則に基づく障害はない。(16.1c⑴)

 

 

 

インプレーの球と動かせる障害物の関係及び救済方法

(規則15.2a⑴,同⑵)

2024年4月15日

  球が動かせる障害物に接触したり,その近くに止まったりした場合で,一番よく見かけるのは,球がレーキに球が寄りかかって,辛うじてバンカーに落ちないで止まっている事例でしょう。またコース上に置いてあるショベル,箒や箕,あるいはタオルなどの上に球が乗る場合も稀にあります。

  球が動かせる障害物の近くに止まった場合と,球が動かせる障害物の中や上にある場合で救済方法が全く異なることに注意してください。

 

1 球がレーキに球が寄りかかっている場合は,レーキを取り除きます。そしてレーキを取り除いている間に球が動いたり,バンカーに落ちてしまった場合は,球が止まっていた元の箇所に罰なしでリプレースします(規則15.2a⑴)。

  同じような状況でも,ルースインペディメントを取り除いたことが球を動かす原因となった場合,1罰打を課されるのに(15.1b),動かせる障害物では無罰なのです。

  動かせる障害物を取り除いている間に球がバンカーに落ちてしまった場合などでは,元の球の箇所が分からなくなる場合もあります。その場合は元の球の箇所を推定しなければならないとされています(14.2c)。以上の状況は多くのプレーヤーが経験していると思います。

 

2 パッティンググリーン以外のコース上で,球が動かせる障害物の中や上にある場合の救済は前記1と違います。この場合は,まず球を拾い上げて,その動かせる障害物を取り除き,拾い上げた球を罰なしで次の救済エリアにドロップします(規則15.2a⑵)。ドロップですから,球を取り替えることが出来ます(14.3a)。

  ≫基点        :元の球が止まっていた場所の真下と推定する地点

  救済エリアのサイズ :基点から1クラブレングス

  ≫救済エリアの制限  :基点と同じコースエリアで,ホールに近づかない

 

3 パッティンググリーン上で,球が動かせる障害物の中や上にある場合の救済は,球を拾い上げて,その動かせる障害物を取り除き,球をリプレースするする手続き(14.2b)にしたがって,球がその動かせる障害物の中や上に止まっていた場所の真下と推定する箇所に,元の球か別の球をプレースします(規則15.2a⑶)。

  動かせる障害物の中や上に止まっていた球は,パッティンググリーン面に接していなかったので,ゴルフ規則は,リプレースではなくプレースと表記しています。

以上

 

 

 

規則13.1aの第2項批判(球はパッティンググリーン上にあるか

2024年1月12日

(追記)2024年3月28日

 私は,2019年1月1日付で「パッティンググリーン上に球があるとコースエリアのパッティンググリーンに球がある」という題でかなり長い解説をしました。そこでも申し上げましたが,規則制定の趣旨にどうしても納得のいかない箇所があるので,ここで再度検討したいと思います。

 

1 パッティンググリーンの縁は特別に作られたエリアが始まると見て分かる所によって定める」とされています(定義:パッティンググリーン)。

通常パッティンググリーンの縁には,フリンジといわれるパッティンググリーン面より長めで帯状に刈った芝があります。このフリンジは,コースエリアとしてはジェネラルエリアでしょう。

  一方で規則2.2cは,球があるコースエリアの決定として,

   「球は常に1つのコースエリアにだけあるものとして扱う:」とし,

   球の一部がジェネラルエリアと4つの特定のコースエリアのいずれかと両方にある場合,その球はその特定のコースエリアにあるものとして扱う。」と規定しております。

  つまり,ジェネラルエリアであるフリンジとパッティンググリーンの間にある球は,パッティンググリーンというコースエリアにあるということになります。

  各エリアを区切るのは線です。したがって,球が地面にある場合は上から見て,球が木の上にあるような場合は横から見て、いずれのエリアにあるか,あるいは2つのエリアの両方に掛かっているかを判断すべきと言っているのではないでしょうか。この両方にある場合」という文言を平易,且つ適切に解釈すれば当然と思います。

球は地面に置いた場合,通常地面との接点は球の直径より少ない面積となります。球がフリンジに乗っていて,パッティンググリーン面にオーバーハングしている場合がしばしばあります。その球はコースエリアとしてのパッティンググリーンにあるものとして扱うが(規則2.2c),球がパッティンググリーン面に触れていないから球がパッティンググリーン上にある場合には該当しません。従って,球を拾い上げることはできません。

 

2 次に,球がコースエリアとしてのパッティンググリーンにあるだけではなく,規則13.1aが規定する球がパッティンググリーン上にある場合について検討します。

 

⑴   13.1aの1段目は,「球の一部がパッティンググリーンに触れている」場合,球はパッティンググリーン上にあるというのはよく分かります。例えば,桑や泰山木のように大きな葉の上に球が乗った場合,それがパッティンググリーンの真ん中にあったとしても,球の一部すらパッティンググリーンに接触していませんからパッティンググリーン上の球ではありません。

⑵   それでは,13.1aの2段目に,「・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある」というのはどういう趣旨で規定されたのでしょうか。

私は,インプレーの球を拾い上げることができるか否か,すなわち,13.1bの「パッティンググリーン上の球は拾い上げてふくことができる」の適用を受けられる条件を規定したものと理解しています。

   もし私の解釈が間違っていなければ,規則制定者が13.1aの2段目に,(例えば,ルースインペディメントや障害物と括弧書きしたのはどういうつもりだったのでしょうか。

   障害物は,コース上の何処にあっても,動かせない障害物なら規則16.1a⑴によって,動かせる障害物なら規則15.2a⑵,15.2a⑶によって球を拾い上げることができます。例えばフリンジとパッティンググリーンに跨いて動かせる障害物であるタオルが落ちていたとします。その上に球が止まっていた場合,その球がフリンジ上にあろうとパッティンググリーン面側にあろうと15.2a⑵,15.2a⑶によって球の拾い上げができます。そして,球のあった所の真下がパッティンググリーンであればプレースによってパッティンググリーン上の球となり,あるいは球のあった所の真下がジェネラルエリアであれば真下を起点としてドロップすることによってジェネラルエリアの球となります。つまり,13.1aの2段目に(例えば,ルースインペディメントや障害物)と規定し,あたかもこの規定により球の拾い上げが認められた「ルースインペディメント」と同列に扱って「障害物」と規定したのは,必要ないだけでなく,間違いではないでしょうか。

 

⑶   つまり,13.1aの2段目に,例えば,として規定する重要なことは「(例えば,ルースインペディメント)」だけではないでしょうか。

   ルースインペディメントは障害物と異なり球がルースインペディメントの上に乗っていた場合,球が動いてしまう,あるいはライの改善となるので,パッティンググリーンを含め全てのコースエリアで拾い上げられません。13.1aの1段目が言うところの,「・球の一部パッティンググリーンに触れている」場合に該当しないからです。例えば,桑や泰山木のように大きな葉の上に球が乗った場合,パッティンググリーンの真ん中にあったとしても球の一部すらパッティンググリーンに接触していませんから,拾い上げることができず桑や泰山木の葉の上にある球をそのままストロークすることになります。もちろんそのままストロークしても構いません。

   それを救済するのが13.1aの2段目に,「・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある」との規定ではないでしょうか。この規定がなくても障害物であるタオルなら球を拾い上げ,その真下にプレースすることができます。しかし,この規定がなくては,球がパッティンググリーンの真ん中にあったとしても,ルースインペディメントである桑や泰山木の葉の上にある球を拾い上げることはできず,そのままストロークすることになります。

 

3 ジェネラルエリア等においては,ルースインペディメントの上に球があっても,ウッドやウエッジでそのままストロークするのは当然です。しかし,球がコースエリアとしてのパッティンググリーンにあるのに,パターで桑や泰山木の葉の上から球をストロークしなければならないというのは如何なものかということではないでしょうか。そこで「・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある」場合,「球はパッティンググリーン上にある」と看做し,その球は拾い上げることができるとしたものではないでしょうか。

  球がその上に乗った場合,救済方法のないルースインペディメントと,常に救済を受けられる障害物をごちゃまぜに規定したというのは,どういう意図があったのでしょうか。私には,規則制定者が思い付きで規定し,吟味を怠たったとしか思えません。それとも,私が,何か大きな点を見逃しているのかもしれません。どなたかコメントを頂けると幸いです。

  ついでながら,13.1aの2段目に従って,拾い上げた球をどう処理するかは別問題です。私は桑や泰山木の葉の上から拾い上げた球の真下がフリンジであるなら,規則15.2a⑶の球が動かせる障害物の中や上にある場合の処置を準用してドロップをすべきと思います。また,桑や泰山木の葉の上から拾い上げた球の真下がパッティンググリーンの縁の内側であるなら,パッティンググリーン上にプレースすべきと解釈します。                          以上

 

追記

  球がその上に乗った場合,救済方法のないルースインペディメントと,常に救済を受けられる障害物をごちゃまぜに規定した原因について,これではないかと思われる箇所が見つかったので皆さんも検討をしてください。

  13.1f⑴の規定を見てください。

  目的外グリーンによる障害の意味として,

  「・プレーヤーの球の一部が目的外グリーンに触れている場合,またはその球の一部が目的外グリーンの縁の内側にあって,物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある。」との規定があります。

  この規定は13.1aの2段目に,「・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって,物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある」と同じ規定です。ここに間違いの原因があるのではないでしょうか。

  13.1aの2段目の規定は,球を拾い上げることが出来るか否かの規定で,ルースインペディメントや障害物の上にある球をそのままストロークするか否かはプレーヤーの任意です。ところが,13.1f⑴の規定は,規定されている状態が生じたら13.1f⑵の規定によって,あるがままにプレーしてはならないとされているのです。つまり障害物の上に乗っている球をそのままプレーするかどうかは,たとえパッティンググリーン上であっても,通常プレーヤーの任意です。ところが,目的外グリーン上に限っては,障害物の上に乗っている球をそのままプレーしてはならないとしているのです。ですから13.1f⑴の規定は,「・プレーヤーの球の一部が目的外グリーンに触れている場合,またはその球の一部が目的外グリーンの縁の内側にあって,物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある。」と規定されていないとプレーを禁止したことにならないのです。

  13.1f⑴の規定は,プレーを禁止するための規定であるから当然,完全な救済のニヤレストポイントを起点として救済を受けなければならないとする規定です。ところが,13.1aの2段目の規定は,球の拾い上げを許すだけの規定なのです。ですから,球の拾い上げをしないで,ルースインペディメントや障害物(タオルなど)の上にある球をそのままストロークするのはプレーヤーの任意です。この規則を制定した担当者は,そのことに全く気付いていないと思います。

 

関連記事

規則13.1a(球がパッティンググリーン上にある場合)について

 

 

球がパッティンググリーン上にあるの意味 (規則13.1a)

2024年2月9日

 

 球がコースエリアとしてのパッティンググリーンにあるだけではなく,規則13.1aが規定する球がパッティンググリーン上にある場合について検討します。

 

1 13.1aの1段目は,「球の一部がパッティンググリーンに触れている」場合,球はパッティンググリーン上にあるというのはよく分かります。例えば,桑や泰山木のように大きな葉の上に球が乗った場合,それがパッティンググリーンの真ん中にあったとしても,球の一部すらパッティンググリーンに接触していませんからパッティンググリーン上の球ではありません。

  13.1aの2段目の「・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある」との規定については,「球はパッティンググリーン上にあるか(規則13.1aの第2項批判)」と題して批判しました。

 

2 今回は,13.1aの1段目,同2段目は,どのような規定にしたらより理解しやすいのか検討してみます。

  私は,13.1aの規定は,インプレーの球を拾い上げることができるか否か,すなわち,13.1bの「パッティンググリーン上の球は拾い上げてふくことができる」の適用を受けられる条件を規定したものと理解しています。

  ルースインペディメントは障害物と異なり球がルースインペディメントの上に乗っていた場合,球が動いてしまう,あるいはライの改善となるので,パッティンググリーンを含め,全てのコースエリアで罰打なしに拾い上げることはできません。13.1aの1段目が言うところの,「・球の一部パッティンググリーンに触れている」場合に該当しないからです。例えば,桑の葉のような大きな葉の上に球が乗った場合,球がパッティンググリーンの真ん中にあったとしても球とパッティンググリーンの間に桑の葉が挟まった状態では「・球の一部がパッティンググリーンに触れている」場合に該当しませんから,球を拾い上げることができず桑の葉の上にある球をそのままパッティングストロークをすることになります。

   それを救済するのが,13.1aの2段目に,「・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある」との規定ではないでしょうか。この規定がなくては,球がパッティンググリーンの真ん中にあったとしても,ルースインペディメントである桑の葉の上にある球を拾い上げることはできません。もちろん,障害物であるタオルやルースインペディメントである桑の葉の上にある球をそのままストロークできることは言うまでもありません。

 

3  球が,ルースインペディメントの上に乗った場合,罰なしの救済方法はないのです。そうであるなら,ゴルフ規則13.1aの1段目,同2段目は,次のとおり規定すべきではないでしょうか。

 

   規則13.1a   球がパッティンググリーン上にある場合

   次の場合,球はパッティンググリーン上にある

   ・球の一部が,パッティンググリーンに触れている。

   ・球の全部もしくは一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって,ルースインペディメントの上や中にある。

 

   下線部分について検討すると,

   球の全部としたのは,「球の一部が」との規定では,球の全部は含まない概念であると言った教条的な理解をする可能性があるから敢えて規定したものです。一段目の「球の一部がパッティンググリーンに触れている。」というのは平面に球体が触れているのですから,球の一部というのは当然です。二段目は,球がどこに触れているかではなく,球全体がパッティンググリーンとジェネラルエリアであるフリンジの間にあり,且つその球がルースインペディメントの上にある場合のことを規定しているのではないでしょうか。ですから,球全体がパッティンググリーンにある場合もこの規則が適用にならないとパッティンググリーン上の球になりませんから球の拾い上げが出来ません。

   ルースインペディメントの上や中とし,「障害物」を排除したのは,動かせる障害物は,規則15.2a⑶に球を拾い上げる根拠が規定されています。すなわち,障害物の上に球があるなら,球がパッティングエリアにあろうが,ジェネラルエリアにあろうが,その両方に掛かっていようが,球を拾い上げることができます。規則13.1aで動かせる障害物をルースインペディメントと同様に扱うのは,その根拠を曖昧にするだけでなく,誤りと考えます。

 

4 ついでながら,13.1aの2段目に従って,拾い上げた球をどう処理するかは別問題です。私は桑の葉の上から拾い上げた球の真下がフリンジであるなら,規則15.2a⑶の球が動かせる障害物の中や上にある場合の処置を準用してドロップをすべきと思います。また,桑の葉の上から拾い上げた球の真下がパッティンググリーンの縁の内側であるなら,パッティンググリーン上にプレースすべきと解釈します。

  桑の葉に乗っている球を一度パッティンググリーン上の球であると看做したのに,桑の葉に乗っている球の真下がフリンジの場合フリンジにドロップしなさいと言うのはおかしいとも思います。しかし,13.1aの2段目の規定は,球を拾い上げることを認めたにすぎず,パッティンググリーン上にプレースして良いとすることまでは認めていないと解釈します。すなわち動かせる障害物の規則15.2a⑶と同じように,球が止まっていた場所の真下と推定する箇所がフリンジならそこにドロップすべきと思います。

                          以上

 

関連記事

規則13.1aの第2項批判(球はパッティンググリーン上にあるか

 

 

 

「近代化されたゴルフ規則の研究」ブログ開設のお知らせ

2017年8月12日

 

 R&AとUSGAは,2019年1月1日をもって,近代化されたゴルフ規則が適用されると発表しました。現在は旧ゴルフ規則が適用されております。旧規則について,これ以上解説や批判をしても意味がないので,平成29年3月末日をもって,「ゴルフ規則 (ストロークプレー個人競技用メモ帳)」のブログを停止しました。

 そこで,「近代化されたゴルフ規則の研究」と題して,新たなブログを開設し2019年版のゴルフ規則等について批判を続けようと思います。近代化されたゴルフ規則が発表され次第作業を開始致します。   以上

 

 

アウトオブバウンズ・コースの境界・コースエリア

2018年12月26日

 

「近代化されたゴルフ規則」の製本されたものを,施行を間近にしてやっと手に入れることができました。全部を理解するのはとても無理ですので,近代化されたゴルフ規則(以下規則という)において改訂された,問題のありそうなテーマを順次取りあげて検討してみたいと思います。

 2018年までの旧ゴルフ規則(以下旧ゴルフ規則という)には,球がコースの何処にあるか判定する規則が極めて複雑でした。規則が新しくなっても,重要な事実であることに変わりません。

 以下規則の最初のテーマとして,規則2の「コースの境界とアウトオブバウンズ」と「定義されたコースエリア」の意味を検討したいと思います。

 

1 旧ゴルフ規則はコースについて,委員会が定めた境界の内側全域と定義していただけでした(旧ゴルフ規則定義15)。

新しい規則は,アウトオブバウンズとコースの境界を明確にしました。そして,コースを次のとおり定義しています(定義:コース)。

  委員会が設定した境界の縁の内側のすべてのプレーエリア:

   ・境界の縁の内側のすべてのエリアはインバウンズであり,コースの一部である。

   ・境界の縁の外側のすべてのエリアはアウトオブバウンズであり,コースの一部ではない。

   ・境界の縁は地面の上方と,地面の下方の両方に及ぶ。

三段目の「・境界の縁は地面の上方と,地面の下方の両方に及ぶ。」が意味するものは,この位置に規定されていることからして,インバウンズとアウトオブバウンズの境界だけについて規定しているものと思います。

 

2 規則は,以上の定義コースに続いて,5つのコースエリアを定義しています(定義:コースエリア)

   ・ジェネラルエリア。

   ・ティーイングエリア。

   ・ペナルティーエリア。

   ・バンカー。

   ・パッティンググリーン

  しかし,以上のコースエリアの定義には「・境界の縁は地面の上方と,地面の下方の両方に及ぶ。」という規定がありません。5つのコースエリアの境界の縁が地面の上方と,地面の下方の両方に及ぶか否かについては,該当する各規則に委ねる趣旨と思います。

 

3 次に,アウトオブバウンズもコースの各エリアを区切る線も,コース上に塗られた線で示されることがあります。そうなると,帯状の線の両端のいずれ側か,すなわち帯自体はいずれのエリアかという問題があります。

  規則は,アウトオブバウンズについて,

  「杭やフェンスによって定められる場合,境界線はその杭やフェンスポストのコース側を地表レベルで結んだ線によって定められ,………… 。」とし,

  「地面に塗られた線によって定められる場合,境界縁はその線のコース側の縁となり,その(帯状の)線自体はアウトオブバウンズである(定義:アウトオブバウンズ)。」としています。

  「止まっている球全体がコースの境界の縁の外にある場合にのみ,その球はアウトオブバウンズとなる(18.2a ⑵ )。」と明解に規定しております。

  ところが,ペナルティーエリアについて規則は「地面上に塗った線で定める場合,そのペナルティーエリアの縁は,その線の外側(コース側)の縁となり,線自体はそのペナルティーエリア内である。」と規定しております(定義:ペナルティーエリア)。そして規則17.1aは,球の一部がペナルティーエリアの縁や,ペナルティーエリアの日かの部分の上にある場合,その球はペナルティーエリアにあるとしています。救済を受ける場合注意しなければならない点です。

 

4 以上のとおり,アウトオブバウンズや各コースエリアの境界の縁は線ですから,当然球の一部が各エリアの両方に掛かっている場合が生じます。

  規則は,「球の一部がジェネラルエリアと特定のコースエリアの両方にある場合…………… 。」さらに,「球の一部が2つの特定のコースエリア(の両方)にある場合………… 。」と規定しております(2.2c)。

  この「両方にある場合」というのは,平易で且つ適切と思いますが次のような問題があります。

  球が地面にある場合は上から見て,あるいは,球が木の上にあるような場合は横から見ただけで、いずれのコースエリアにあるか,あるいは2つのコースエリアの両方に掛かっているかを判断して良いのでしょうか。

球は地面に置いた場合,地面との接点は球の直径より通常少ない面積となります。球が両方にある場合の頻度が高いジェネラルエリアと特定のコースエリアの境界の縁は,地面の上方と,地面の下方の両方に及ぶか否かということを問題にしなくて良いのでしょうか。

 

5 以上の問題をさて置けば,規則は球の所在について明解に規定しております。

 ⑴ 球の一部がジェネラルエリアと4つの特定のコースエリアの「両方にある場合」は,その球は特定のコースエリアにあるものとして扱うということです(2.2c)

 ⑵ さらに球の一部が2つの特定のコースエリアの「両方にある場合」は,その球は次の順番で特定のコースエリアにあるものとして扱うということです(2.2c)。

 ペナルティーエリアとバンカーは,ペナルティーエリアにあるものとして扱う。

② ペナルティーエリアとパッティンググリーンは,ペナルティーエリアにあるものとして扱う。

  バンカーとパッティンググリーンは,バンカーにあるものとして扱う

  お気づきと思いますが,2.2cは,「球の一部がジェネラルエリアと4つの特定のコースエリアのいずれかと」と規定しているにもかかわらず,ティーイングエリアがありません。

  規則は,ティーイングエリアとジェネラルエリアの両方に球がある場合は有り得るがティーイングエリアとペナルティーエリアなどの両方に球がある場合は通常有り得ないと考えて省いたのでしょうか。しかし,通常有り得なくても物理的にあり得る以上,読者はなぜティーイングエリアがないのか混乱します。R&A,USGAは余計なお世話をしてくれたのではないでしょうか。

  注意しなければならないのは,以上の規則は,球がアウトオブバウンズか,あるいは定義されたコースエリアのいずれにあるかということを明解にしただけということです。つまり,「球は常に1つのコースエリアにだけあるものとして扱う:(規則2.2c)」としているために,アウトオブバウンズや各コースエリアの境界の縁という観点から,球の所在を明確にしただけなのです。

 6 コースを構成する5つのコースエリアは,ジェネラルエリアと4つ特定のコースエリアがあるとし(2.2a),「特定の規則はジェネラルエリア以外の4つのコースエリアに特別に適用する:」としています(2.2b)。

4つ特定のコースエリアにどのような特定の規則が適用されるかというと,

   ・ティーイングエリアは,規則6.2

   ・ペナルティーエリアは,規則17

   ・バンカーは,規則12

   ・パッティンググリーンは,規則13

と規定されています(2.2b)。

  ここで注意しなければならないのは,「特定の規則は,4つのコースエリアに特別に適用する(2.2b)。」という文言です。これを不用意に読むと,前記2.2cは,「球があるコースエリアの決定」として明確にしているのですから,例えば,球が4つのコースエリアの内パッティンググリーンにあれば,当然規則13の認める,球をマークする,拾い上げる,ふくことなどが全て出来ると思います。しかし,それは大間違いなのです。

  球が,4つの特定のコースエリアにあるか否かと,4つの特定のコースエリアにおいて特定の規則が適用出来るか否かとは全く要件が違うのです。

 

7 例をあげてみましょう。

  規則13.1aは,次のとおり規定しています。

次の場合,球はパッティンググリーン上にある:

   ・球の一部がパッティンググリーンに触れている,または,

   ・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある。

   ・球の一部がパッティンググリーン上とほかのコースエリアの両方にある場合は2.2c参照。

とあります。よく見てください「次の場合,球はパッティンググリーン上にある:」と規定されているのです。すなわち,規則は,特定のコースエリアであるパッティンググリーンに球があるか否かと,パッティンググリーン上に球があるか否かを峻別しているのです。球は特定のコースエリアのパッティンググリーンにあるが,パッティンググリーン上にはないという状況がたくさんあるのです。

  規則13の認める,球をマークする,拾い上げる,ふくことができるのは,特定のコースエリアであるパッティンググリーンに球があるだけでは適用はなく,球がパッティンググリーン上にある場合にのみ適用されるのです。

 

8 規則13.1a の1段目,2段目の要件については後日検討します。ここでは,3段目についてのみ,皆様に検討をお願いするところです。私は明らかな誤りと思っております。是非コメントを頂きたいと思います。

3段目の「・球の一部がパッティンググリーン上と他のコースエリアの両方にある場合は,規則2.2c参照。」との規定についての疑問です。規則2.2cは,1段目が「・球の一部がジェネラルエリアと4つの特定のコースエリアのいずれかと両方にある場合,」。2段目が,「・球の一部が2つの特定のコースエリアにある場合,」について規定しています。つまり,「球は常に1つのコースエリアにだけあるものとして扱う:(規則2.2c)」としているために,球が5つのコースエリアの何処にあるかを確定させる規則です。

ところが,規則13.1a の3段目の規定は,「球の一部がパッティンググリーンと他のコースエリアの両方にある場合は,規則2.2 c参照。」としているのです。

If part of the ball is both on the putting green and in another area of the course, see Rule 2.2c. 〉

既に,規則13.1a の1段目,2段目の要件に該当するから,当然球は「パッティンググリーン上にある」と判断されているのです。そうであるなら,もう規則2.2cを参照する意味も必要も全くありません。英語版が間違っていて,翻訳者がそれに気付いていないものと思います。

3段目の規定はなくても当然の解釈です。多分親切のつもりで,球の一部がコースエリアとしてのパッティンググリーンにある場合,例えば,フリンジ上に球が接地しているが,パッティンググリーンには触れておらず,球がオーバーハングしている場合を想定してください。

   「球の一部がパッティンググリーンと,ほかのコースエリア(フリンジはジェネラルエリア)の両方にある場合に該当する。従って,その球(全部)が,コースエリアとしてのパッティンググリーンにあることを規則2.2cを参照して先に確定し,それから,その球がパッティンググリーン上にあるか否か判断しなさい。」

と規定すべきところを間違えたものと思います。

もし,規則が誤りであるなら,コースエリアとしてのパッティンググリーンとパッティンググリーン上という「上」が付くか否かで全く意味の違う用語としたことに誤りの原因があるとしか思えません。

事実,規則12.1には,「球の一部がバンカーと別のコースエリアの両方にある場合は規則2.2c参照。」と規定され,規則17.1aには,「球の一部がペナルティーエリアと別のコースエリアの両方にある場合は規則2.2c参照。」と正しく規定されています。

 

9 球がパッティンググリーン上にあるか否かだけでなく,球がバンカー内にあるか否かにおいても問題となります。さらに,球が修理地にあるかについても検討の余地があります。この規定方法は旧ゴルフ規則でもほぼ同じでした。改善することが出来なかったのは残念です。

R&A,USGAは,2017年3月1日「規則の近代化への新しい取り組みの概略:として,

・すべてのゴルファーによってより容易に理解され,適用され,

・より一貫性があり,シンプルで、公正なものであり,

・より直観的で学習し易いコンセプト,手続き,結果を用い,

・プレーヤーに「罰の罠」を作り出すかもしれない不必要なコンセプトや例外を避け

  と発表していました。

  以上のような規則制定の手法,すなわち,類似し,且つ混乱し易い用語を使用したことは,果たして規則の近代化への新しい取り組みの使命を全うしたといえるでしょうか。

  私は,最初のテーマとして,この問題を順次検討していきたいと思います。

   以上

 

パッティンググリーン上に球があると

コースエリアのパッティンググリーンに球がある

2019年1月1日

訂正2024年1月11日

 規則は,定義された5つのコースエリアがあるとし(2.2),ジェネラルエリアと4つの特定のコースエリアを明確に定義しました。今回は,コースエリアのパッティンググリーンに球がある場合と,パッティンググリーン上に球がある場合について検討したいと思います。

 

1 旧ゴルフ規則は,「球が一部でもパッティンググリーンに触れているときは,その球はパッティンググリーン上にある球である(旧ゴルフ規則定義45)。」としておりました。しかし,区域としてのパッティンググリーンについて詳細な定義はなく,更にその上下の限界については規定すらありませんした。

新しい規則は,パッティンググリーンについて詳細に定義し(定義:パッティンググリーン),コースエリアとしてのパッティンググリーンに球がある場合について明確に規定しました(2.2c)。

 

2 まず,規則2.2cが規定する,球がコースエリアとしてのパッティンググリーンにある場合について検討してみます。

 

 ⑴ 「パッティンググリーンの縁は特別に作られたエリアが始まると見て分かる所によって定める(定義:パッティンググリーン)。」とされています。

通常パッティンググリーンの縁には,フリンジといわれるパッティンググリーン面より長めで帯状に刈った芝があります。このフリンジは,コースエリアとしてはジェネラルエリアと解釈すべきでしょう。

 

 ⑵ 規則2.2cは,球があるコースエリアの決定として,

   「球は常に1つのコースエリアにだけあるものとして扱う:」とし,

   「球の一部がジェネラルエリアと4つの特定のコースエリアのいずれかと両方にある場合,その球はその特定のコースエリアにあるものとして扱う。」とし,

   「球の一部が2つの特定のコースエリアにある場合,球は次の順番で最初となる特定のエリアにあるものとして扱う:ペナルティエリア,バンカー,パッティンググリーン。」と規定しております。

  各エリアを区切るのは線です。したがって,球が地面にある場合は上から見て,球が木の上にあるような場合は横から見て、いずれのエリアにあるか,あるいは2つのエリアの両方に掛かっているかを判断すべきと言っているのではないでしょうか。この「両方にある場合」という文言を平易,且つ適切に解釈すれば当然と思います。

  以上の結論は,特定のコースエリアであるパッティンググリーンの縁は,地面の下方は兎も角,少なくとも上方に及ぶということを意味していると思います。

球は地面に置いた場合,通常地面との接点は球の直径より少ない面積となります。球がフリンジに乗っていて,パッティンググリーン面にオーバーハングしているとか,その逆の場合がしばしばあります。いずれも球の一部がジェネラルエリアであるフリンジと特定のコースエリアであるパッティンググリーンの両方にある場合ということになり,その球は特定のコースエリアであるパッティンググリーンにあるものとして扱うことになります。

 

3 次に,規則13.1aが規定する球がパッティンググリーン上にある場合について検討します。

 

 ⑴ なぜ,規則は球が特定のコースエリアであるパッティンググリーンにあるだけの場合と,球がパッティンググリーン上にある場合の2つの状況を規定する必要があったのか考えてみます。この手法は旧ゴルフ規則も同じでした。

   新しい規則は,特定のコースエリアとしてのパッティンググリーンを明確に定義し,且つそのエリアに球の一部があることを前提にして,次に球がパッティンググリーン上にあるか否かを判断することにしたのだと思います。

   そして,プレーヤーがプレーしているホールのパッティンググリーンにおいては,規則13を特別に適用するとし(2.2b),球がパッティンググリーン上にある場合に出来ること,またはパッティンググリーン上で認められる改善行為など,パッティンググリーン上とは何を意味するのか,その状況を明確に導き出すために,特定のコースエリアであるパッティンググリーンという概念を明確にしたものと思います。

 

 ⑵ 規則13.1aは,「球がパッティンググリーン上にある場合〈When Ball Is on Putting Green〉」とし,「次の場合,球はパッティンググリーン上にある:〈 A ball is on the putting green when any part of the ball:〉」としています。

   「・球の一部がパッティンググリーンに触れている。または,」

   「・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある。」

  と規定しています。

   1段目は,旧ゴルフ規則定義45に規定された文言と同じです。2段目は,新しく規定されたものです。

「・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって」とは,通常球の一部が,球を上から見てパッティンググリーンとジェネラルエリアであるフリンジの両方に掛かっている場合のことでしょう。

「物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある。」とは,球の一部が特定のコースエリアであるパッティンググリーンにあれば,木の葉や飛んできた菓子袋の上などに乗っていて,球がパッティンググリーンに直接触れていなくても,パッティンググリーンに触れていると看做すということではないでしょうか。

 

 ⑶ 旧ゴルフ規則でも,パッティンググリーンに限らず球が菓子袋の中や上などにあれば,動かせる障害物として取り除く事が出来ました。しかし,球がパッティンググリーンで桑の葉の上に乗っていた場合,球はパッティンググリーンに直接触れていないし,桑の葉はルースインペディメントですから,何ら救済はなく教条的に言えばそのままパッティングすべきということになります。しかし,旧ゴルフ規則においてもそうは解釈していませんでした。2段目の規則は,念のためそれを明確にしたということでしょう。

 

 ⑷ 分かり易く説明すると,2段目の規則は次のことを明確にしています。

 

  ① 球の一部が,パッティンググリーンに触れていればパッティンググリーン上の球である。

   (球がパッティンググリーンの真ん中にあろうが,フリンジに寄りかかっていようが,球が直接パッティンググリーンに触れている。)

 

  ② 球全部がパッティンググリーンにあり,且つ球が落ち葉や菓子袋の上にあって,球がパッティンググリーンに直接触れていなくても,パッティンググリーン上の球である。

   (菓子袋は,動かせる障害物として救済を受け(15.2 a ⑶),もしくは,13.1aによって,菓子袋を取り除けば,球が直接パッティンググリーンに触れる。)

   (落ち葉は,13.1aによって,落ち葉を取り除けば,球が直接パッティンググリーンに触れる。)

 

  ③ 球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあり,且つ球が落ち葉や菓子袋の上にあって,球がパッティンググリーンに直接触れていなくてもパッティンググリーン上の球である。

(球の一部が,パッティンググリーンの縁の内側にある場合でも,球の最下部が落ち葉や菓子袋を挟んで,フリンジの上にある場合もあります。つまり,パッティンググリーンに球がオーバーハングしている場合です。その場合,落ち葉や菓子袋を取り除いてドロップする箇所は,球があった真下(15.2 a ⑶)ですから球の最下部はフリンジ上となり,球はパッティンググリーンに直接触れず,パッティンググリーンにオーバーハングしている状態です。つまり,菓子袋や落ち葉がなかったなら,その状態では,球はパッティンググリーンにあるがパッティンググリーン上の球ではないのです。それなのにパッティンググリーン上の球であると看做しているのは,菓子袋なら動かせる障害物として救済を受けられますが,桑の葉はルースインペディメントですから動かせる障害物として拾い上げることが出来ず,桑の葉の上の球をそのままパッティングしなければならないということになります。そこで,球がパッティンググリーンにオーバーハングしている場合に限り,ルースインペディメントでも取り除けるようにしたのだと思います。)

 

 ⑸ 規則13.1aの2段目の規定が複雑なのは,状況が同じだからと言って全く救済方法が異なる,動かせる障害物とルースインペディメントを一文で規定したことに無理があるのです。

 

4 コースを構成する5つのコースエリアは,ジェネラルエリアと4つ特定のコースエリアがあるとし(2.2a),「特定の規則はジェネラルエリア以外の4つのコースエリアに特別に適用する:」としています(2.2b)。

4つ特定のコースエリアにどのような特定の規則が適用されるかというと,

   ・ティーイングエリアは,規則6.2

   ・ペナルティーエリアは,規則17

   ・バンカーは,規則12

   ・パッティンググリーンは,規則13

と規定されています(2.2b)。

  ここで注意しなければならないのは,「特定の規則は,4つのコースエリアに特別に適用する(2.2b)。」という文言です。これを不用意に読むと,前記2.2cは,「球があるコースエリアの決定」として明確にしているのですから,例えば,球が4つのコースエリアの内パッティンググリーンにあれば,当然規則13の認める,球をマークする,拾い上げる,ふくことなどが全て出来ると思います。しかし,それは大間違いなのです。

  球が,4つの特定のコースエリアにあるか否かと,4つの特定のコースエリアにおいて特定の規則が適用出来るか否かとは全く要件が違うのです。

 

5 例をあげてみましょう。

  規則13.1aは,次のとおり規定しています。

次の場合,球はパッティンググリーン上にある:

   ・球の一部がパッティンググリーンに触れている,または,

   ・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある。

   ・球の一部がパッティンググリーン上とほかのコースエリアの両方にある場合は2.2c参照。

とあります。よく見てください「次の場合,球はパッティンググリーン上にある:」と規定されているのです。すなわち,規則は,特定のコースエリアであるパッティンググリーンに球があるか否かと,パッティンググリーン上に球があるか否かを峻別しているのです。球は特定のコースエリアのパッティンググリーンにあるが,パッティンググリーン上にはないという状況がたくさんあるのです。

  規則13の認める,球をマークする,拾い上げる,ふくことができるのは,特定のコースエリアであるパッティンググリーンに球があるだけでは適用はなく,球がパッティンググリーン上にある場合にのみ適用されるのです。

 

追記 私は最近になり,球は「パッティンググリーン上にある」というのは,球の拾い上げが出来るということだけで,ルースインペディメンとを取り除いた後球をリプレースすべき箇所は,球のあった真下ではないか(フリンジであったらドロップとなる)と考えています。

 

6 球がパッティンググリーン上にあるか否かだけでなく,球がバンカー内にあるか否かにおいても問題となります。さらに,球が修理地にあるかについても検討の余地があります。この規定方法は旧ゴルフ規則でもほぼ同じでした。改善することが出来なかったのは残念です。

R&A,USGAは,2017年3月1日「規則の近代化への新しい取り組みの概略:として,

・すべてのゴルファーによってより容易に理解され,適用され,

・より一貫性があり,シンプルで、公正なものであり,

・より直観的で学習し易いコンセプト,手続き,結果を用い,

・プレーヤーに「罰の罠」を作り出すかもしれない不必要なコンセプトや例外を避け

  と発表していました。

  以上のような規則制定の手法,すなわち,類似し,且つ混乱し易い用語を使用したことは,果たして規則の近代化への新しい取り組みの使命を全うしたといえるでしょうか。

  私は,最初のテーマとして,この問題を順次検討していきたいと思います。

以上

 

 

目的外グリーンから救済を受けなければならない

2019年1月8日

1 規則13.1fの⑴の全文を次に引用します。

 ⑴ 目的外グリーンによる障害の意味。この規則に基づく障害は次の場合に存在する:

  ・ プレーヤーの球の一部が目的外グリーンに触れている場合,またはその球の一部が目的外グリーンの縁の内側にあって,物(例えば,ルースインペディメンとや障害物)の上や中にある。 または,

  ・ 目的外グリーンがプレーヤーの意図するスタンスや意図するスイング区域の物理的な障害となる場合。

    後段の要件は,球の所在は関係なく,例えばスタンスだけが目的外グリーンに掛かる場合などでも該当します。従って,稀有な例ですが,球がバンカー内にあり,スタンスが目的外グリーンに乗る場合もあり得ます。

 

2 規則13.1fの⑴の前段は,球が目的外グリーン上にあれば,プレーヤーが障害と思うか否かは関係なく,この規則に基づく障害が存在すると看做しているのです。

  問題は,規則13.1fの⑴の後段についてです。

  目的外グリーンの存在が,プレーヤーの意図するスタンスをとった場合,あるいはプレーヤーの意図する方法でスイングをした場合,当該プレーヤーにとって物理的な障害が発生する場合は,目的外グリーンによる障害が存在するというのです。

  規則13.1fの⑴の前段は,球が何処にあるかという客観的な事実です。

  ところが,規則13.1fの⑴の後段は,なんとなく曖昧です。当該プレーヤーがどう思うかは関係なく障害となるという意味ですが,プレーヤーの主観的判断を求めているようにも思えるのです。

 

3 R&A・USGAの示す2019年版ゴルフ規則109頁,図13.1f:目的外グリーンからの罰なしの救済のイラストを見てください。

  イラストの下にある解説文に「球Aの完全な救済のニヤレストポイントはP1となり,元の球が止まった同じコースエリアでなければならない(この場合,ジェネラルエリア)。」とあります。

  後段は,前段より「または,」で接続しているので,球の所在は関係なく,目的外グリーンがプレーヤーの意図するスタンスや意図するスイング区域に入っていれば障害が存在すると看做しているのです。

  そのことは,規則13.1fの末尾に「委員会の措置,セクション8;ローカルルールひな形D-3(委員会は意図するスタンス区域が障害となるだけでは目的外グリーンからの救済を認めないローカルルールを採用することができる)参照。」とあることからも間違いなさそうです。

 

4 そもそも,障害という以上,何か不都合な事象のことです。プレーヤーにとって球が目的外グリーン上にあっても,通常,球のライにもスタンスにも不都合なことなど何もなく,プレーに障害などありません。この規則の趣旨は,ジェネラルエリアである目的外グリーン(定義:目的外外グリーン)において,ジェネラルエリアにおいて認められるストロークを許すと目的外グリーンに対し,重大な被害をもたらすからではないでしょうか。

  ゴルフ規則は従前から,ある事象が生じた場合,何々による障害が生じたとし,いわゆる看做し規定の形式をとっていました。ある事象の存在をもって個々のプレーヤーにとって障害か否かを問わず,障害が生じたと看做し,場合によって救済を受けるか否かをプレーヤーの任意としていたのです。

  例えば,規則16.1aの⑴は,「異常なコース状態による障害の意味。次の場合,障害が生じている:」としています。しかし,規則16.1aの⑴の異常なコース状態による障害と規則13.1fの⑴の目的外グリーンによる障害とは決定的に規定の意味とその効果が違います。

  異常なコース状態による障害があっても,プレーヤーが不都合はないと判断すれば,救済を受ける義務などないのです。ところが,目的外グリーンによる障害が生じたら救済を受けないと罰打が課されるのです。規則はそのことを全く考慮していないのです。例えば,目的外グリーンに菓子袋が落ちていてその上に球が止まった場合,球の一部も目的外グリーンに触れていませんが,「その球の一部が目的外グリーンの縁の内側にあって,物(例えば,ルースインペディメンとや障害物)の上や中にある。」の規定により障害が発生しているため,完全な救済のニヤレストポイントからの救済を受けなければならないのです。

 

5 旧ゴルフ規則は,25-3目的外のパッティンググリーンのa.障害の規定で,「球が目的外のパッティンググリーン上にある場合,目的外のパッティンググリーンによる障害が生じたという。プレーヤーのスタンスや意図するスイングの区域が妨げられても,それだけでは規則25-3にいう障害には当たらない。」と規定していました。旧ゴルフ規則は,新しい規則の委員会の措置,セクション8;ローカルルールひな形D-3が例示しているローカルルールをゴルフ規則にしていたのです。

  新しい規則は,旧ゴルフ規則が,それだけでは規則25-3にいう障害には当たらないとした事象を,今度は障害になるとしたのです。

それならば,目的外グリーンがプレーヤーの意図するスタンスや意図するスイング区域に掛かるという客観的事象があれば,物理的な障害が発生したと看做して,二義を許さない規定にしなければならないのです。

  新ゴルフ規則は,「完全な救済のニヤレストポイント」と改訂し定義しました。旧ゴルフ規則が「救済のニヤレストポイント」の定義に,「・・・障害がなくなる所。」としていたのを改め,更に「完全な」を頭にかぶせることにより,如何なる障害もなくなる所を意味しようとしたのではないでしょうか。

しかし,目的外グリーンが,プレーヤーの意図するスタンスや意図するスイング区域に入っていれば障害が存在すると看做すのだという明文がないのに,そう解釈しろというのはあまりにも強引で,言葉を無視しています。

 

 規則13.1fの規定は,プレーヤーにとっては,障害でもなんでもない事象が生じたというだけです。その実態はプレーの禁止です。障害だの救済だのという文言は,伝統的に使用していた為に残したものと思いますが,実態と大きく乖離した極めて不適切な用語なのです。よって,スイングプレーンが目的外グリーンの上空に掛かっても救済を受けなければならないと解釈しなければならないのです。救済のニヤレストポイントは,「完全な」救済のニヤレストポイントでなければならないからです。

  旧ゴルフ規則が,それだけでは規則25-3にいう障害には当たらないとした事象を,新しい規則は何の説明もなく今度は障害になるとしたのです。改正されても規則の連続性を全く無視することは出来ません。規則を改正した委員の考えが及んでいないことも然ることながら,R&Aは,このような改正について,世界中のゴルファーが従っているのですから,誠実にその理由について説明すべきです。そもそも「物理的な障害」という一般的な概念にゴルフ規則だけに通用する意味を持たせることが問題なので,別の用語を使用すべきです。

   以上