規則13.1aの第2項批判(球はパッティンググリーン上にあるか

2024年1月12日

(追記)2024年3月28日

 私は,2019年1月1日付で「パッティンググリーン上に球があるとコースエリアのパッティンググリーンに球がある」という題でかなり長い解説をしました。そこでも申し上げましたが,規則制定の趣旨にどうしても納得のいかない箇所があるので,ここで再度検討したいと思います。

 

1 パッティンググリーンの縁は特別に作られたエリアが始まると見て分かる所によって定める」とされています(定義:パッティンググリーン)。

通常パッティンググリーンの縁には,フリンジといわれるパッティンググリーン面より長めで帯状に刈った芝があります。このフリンジは,コースエリアとしてはジェネラルエリアでしょう。

  一方で規則2.2cは,球があるコースエリアの決定として,

   「球は常に1つのコースエリアにだけあるものとして扱う:」とし,

   球の一部がジェネラルエリアと4つの特定のコースエリアのいずれかと両方にある場合,その球はその特定のコースエリアにあるものとして扱う。」と規定しております。

  つまり,ジェネラルエリアであるフリンジとパッティンググリーンの間にある球は,パッティンググリーンというコースエリアにあるということになります。

  各エリアを区切るのは線です。したがって,球が地面にある場合は上から見て,球が木の上にあるような場合は横から見て、いずれのエリアにあるか,あるいは2つのエリアの両方に掛かっているかを判断すべきと言っているのではないでしょうか。この両方にある場合」という文言を平易,且つ適切に解釈すれば当然と思います。

球は地面に置いた場合,通常地面との接点は球の直径より少ない面積となります。球がフリンジに乗っていて,パッティンググリーン面にオーバーハングしている場合がしばしばあります。その球はコースエリアとしてのパッティンググリーンにあるものとして扱うが(規則2.2c),球がパッティンググリーン面に触れていないから球がパッティンググリーン上にある場合には該当しません。従って,球を拾い上げることはできません。

 

2 次に,球がコースエリアとしてのパッティンググリーンにあるだけではなく,規則13.1aが規定する球がパッティンググリーン上にある場合について検討します。

 

⑴   13.1aの1段目は,「球の一部がパッティンググリーンに触れている」場合,球はパッティンググリーン上にあるというのはよく分かります。例えば,桑や泰山木のように大きな葉の上に球が乗った場合,それがパッティンググリーンの真ん中にあったとしても,球の一部すらパッティンググリーンに接触していませんからパッティンググリーン上の球ではありません。

⑵   それでは,13.1aの2段目に,「・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある」というのはどういう趣旨で規定されたのでしょうか。

私は,インプレーの球を拾い上げることができるか否か,すなわち,13.1bの「パッティンググリーン上の球は拾い上げてふくことができる」の適用を受けられる条件を規定したものと理解しています。

   もし私の解釈が間違っていなければ,規則制定者が13.1aの2段目に,(例えば,ルースインペディメントや障害物と括弧書きしたのはどういうつもりだったのでしょうか。

   障害物は,コース上の何処にあっても,動かせない障害物なら規則16.1a⑴によって,動かせる障害物なら規則15.2a⑵,15.2a⑶によって球を拾い上げることができます。例えばフリンジとパッティンググリーンに跨いて動かせる障害物であるタオルが落ちていたとします。その上に球が止まっていた場合,その球がフリンジ上にあろうとパッティンググリーン面側にあろうと15.2a⑵,15.2a⑶によって球の拾い上げができます。そして,球のあった所の真下がパッティンググリーンであればプレースによってパッティンググリーン上の球となり,あるいは球のあった所の真下がジェネラルエリアであれば真下を起点としてドロップすることによってジェネラルエリアの球となります。つまり,13.1aの2段目に(例えば,ルースインペディメントや障害物)と規定し,あたかもこの規定により球の拾い上げが認められた「ルースインペディメント」と同列に扱って「障害物」と規定したのは,必要ないだけでなく,間違いではないでしょうか。

 

⑶   つまり,13.1aの2段目に,例えば,として規定する重要なことは「(例えば,ルースインペディメント)」だけではないでしょうか。

   ルースインペディメントは障害物と異なり球がルースインペディメントの上に乗っていた場合,球が動いてしまう,あるいはライの改善となるので,パッティンググリーンを含め全てのコースエリアで拾い上げられません。13.1aの1段目が言うところの,「・球の一部パッティンググリーンに触れている」場合に該当しないからです。例えば,桑や泰山木のように大きな葉の上に球が乗った場合,パッティンググリーンの真ん中にあったとしても球の一部すらパッティンググリーンに接触していませんから,拾い上げることができず桑や泰山木の葉の上にある球をそのままストロークすることになります。もちろんそのままストロークしても構いません。

   それを救済するのが13.1aの2段目に,「・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある」との規定ではないでしょうか。この規定がなくても障害物であるタオルなら球を拾い上げ,その真下にプレースすることができます。しかし,この規定がなくては,球がパッティンググリーンの真ん中にあったとしても,ルースインペディメントである桑や泰山木の葉の上にある球を拾い上げることはできず,そのままストロークすることになります。

 

3 ジェネラルエリア等においては,ルースインペディメントの上に球があっても,ウッドやウエッジでそのままストロークするのは当然です。しかし,球がコースエリアとしてのパッティンググリーンにあるのに,パターで桑や泰山木の葉の上から球をストロークしなければならないというのは如何なものかということではないでしょうか。そこで「・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある」場合,「球はパッティンググリーン上にある」と看做し,その球は拾い上げることができるとしたものではないでしょうか。

  球がその上に乗った場合,救済方法のないルースインペディメントと,常に救済を受けられる障害物をごちゃまぜに規定したというのは,どういう意図があったのでしょうか。私には,規則制定者が思い付きで規定し,吟味を怠たったとしか思えません。それとも,私が,何か大きな点を見逃しているのかもしれません。どなたかコメントを頂けると幸いです。

  ついでながら,13.1aの2段目に従って,拾い上げた球をどう処理するかは別問題です。私は桑や泰山木の葉の上から拾い上げた球の真下がフリンジであるなら,規則15.2a⑶の球が動かせる障害物の中や上にある場合の処置を準用してドロップをすべきと思います。また,桑や泰山木の葉の上から拾い上げた球の真下がパッティンググリーンの縁の内側であるなら,パッティンググリーン上にプレースすべきと解釈します。                          以上

 

追記

  球がその上に乗った場合,救済方法のないルースインペディメントと,常に救済を受けられる障害物をごちゃまぜに規定した原因について,これではないかと思われる箇所が見つかったので皆さんも検討をしてください。

  13.1f⑴の規定を見てください。

  目的外グリーンによる障害の意味として,

  「・プレーヤーの球の一部が目的外グリーンに触れている場合,またはその球の一部が目的外グリーンの縁の内側にあって,物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある。」との規定があります。

  この規定は13.1aの2段目に,「・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって,物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある」と同じ規定です。ここに間違いの原因があるのではないでしょうか。

  13.1aの2段目の規定は,球を拾い上げることが出来るか否かの規定で,ルースインペディメントや障害物の上にある球をそのままストロークするか否かはプレーヤーの任意です。ところが,13.1f⑴の規定は,規定されている状態が生じたら13.1f⑵の規定によって,あるがままにプレーしてはならないとされているのです。つまり障害物の上に乗っている球をそのままプレーするかどうかは,たとえパッティンググリーン上であっても,通常プレーヤーの任意です。ところが,目的外グリーン上に限っては,障害物の上に乗っている球をそのままプレーしてはならないとしているのです。ですから13.1f⑴の規定は,「・プレーヤーの球の一部が目的外グリーンに触れている場合,またはその球の一部が目的外グリーンの縁の内側にあって,物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある。」と規定されていないとプレーを禁止したことにならないのです。

  13.1f⑴の規定は,プレーを禁止するための規定であるから当然,完全な救済のニヤレストポイントを起点として救済を受けなければならないとする規定です。ところが,13.1aの2段目の規定は,球の拾い上げを許すだけの規定なのです。ですから,球の拾い上げをしないで,ルースインペディメントや障害物(タオルなど)の上にある球をそのままストロークするのはプレーヤーの任意です。この規則を制定した担当者は,そのことに全く気付いていないと思います。

 

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