スコアカード提出の厳格性(ゴルフ規則3.3 b)

2024年7月7日

1 ゴルフ規則3.3bは,「ストロークプレーのスコアリング」として,かなり丁寧に解説しています。各ゴルフ倶楽部で行われているアマチュアの競技において参考となるよう考えてみました。

  プロゴルフのスコアリングでは,アテストルームが設けられ,委員会の担当者が同席して,間違いがないよう確認してからスコアカードの提出が行われているようです。しかし各ゴルフ倶楽部で行われているアマチュアの競技において,そのような手続きは難しいので,箱を設置してカードの投入をもってスコアカードの提出としているようです。

  なお,ゴルフ規則3.3b⑵は,速やかに委員会にスコアカードを提出しなければならないとしているが,何をもってスコアカードの提出とするかは,規定がありません。それ故プロゴルフの競技では,プレーヤーがアテストルームを退出したときなどとしているようです。

  プロゴルフのスコアリングですら間違いがあるくらいですから,アマチュア競技ではなお更です。そこで,アマチュア競技でも一定の時間内,あるいは,一定の場所の範囲内で,スコアカード提出後でも間違いの訂正を認めているゴルフ倶楽部があると聞いております。果たしてそのようなことがゴルフ規則上可能なのか,公正なのか,不平等とはならないのか検討してみます。

 

2 先に申しあげたとおり,多くのゴルフ倶楽部では箱へのスコアカードの投入をもって提出としているようです。

  ゴルフ規則3.3b⑵は,

・  マーカーが記入したホールのスコアは変えてはならない。ただしマーカーの同意,または委員会の承認がある場合を除く。

・  スコアカードのホールのスコアを証明し,速やかに委員会にスコアカードを提出しなければならない。その後はスコアカードを変更してはならない。

  と規定しております。その結果ゴルフ規則3.3b⑶は,プレーヤーが(各)ホールについて間違ったスコアのスコアカードを提出した場合

・  提出されたスコアが実際のスコアよりも多い。そのホールに対して提出された多いスコアが有効となる。

・  提出されたスコアが実際のスコアよりも少ない,またはスコアが提出されなかった。そのプレーヤーは失格となる。

  その他にいくつかの例外規定がありますが,間違いがあった場合の効果を明確,且つ厳格に規定しています。

  更に,ゴルフ規則3.3b⑷は,次のように規定しています。

・  スコアカードにハンディキャップを示すこと,またはスコアの加算をすることはプレーヤー(マーカー)の責任ではない。

 

3 以上のとおり,何ら疑問を差し挟む余地のない規定になっているのに,ゴルフ倶楽部のアマチュア競技でも,箱へのスコアカードを投入した後でも一定の時間内,あるいは一定の場所の範囲内で,間違いの訂正を認めている意図は何でしょうか。

⑴  一つは,プロゴルフの競技において,スコアリング時アテストルームで委員会の担当者が同席し,間違いがないよう確認していることが影響していると思います。

⑵  二つ目は,アマチュア競技とはいえ,失格となったら参加者に気の毒であるということだと思います。

  まず,プロゴルフの競技で採用している方式は,プレーヤー,マーカーの不注意で失格者が続出したり順位が変更となったら,委員会は大変な醜態を晒すことになり,大会を主催している団体や後援者に対して申し開きが出来ません。また,観戦者の批判や落胆を考えると何としても避けたいことです。それゆえ,委員会が相当な設備,人員をもって臨んでいるから出来ることです。また,スコアカードの作成にプレーヤー,マーカー以外の人が関与してはならないという規定はゴルフ規則にないので,プレーヤーもマーカーも疲れて,注意力が散漫になっているので手助けする意味も少しはあるでしょう。しかし,プロゴルフの競技においても,プレーヤーやマーカーの責任を軽減する意図をもって,採用している方式とは思えません。

  いくらプロゴルフの競技で採用している方式とはいっても,各ゴルフ倶楽部で実施されているアマチュアの競技において,アテストルームを設置するとか,参加者全員がプレーを終了するまで競技委員が同席するというのは難しいでしょう。

  二つ目の,失格となったら参加者に気の毒であるという理由はもっともです。しかし,間違いが判明する前後の状況をよく考えてください。

①  箱へのスコアカード投入直後に間違いに気付く。

②  競技の順位が発表される掲示板を見て,ハンディキャップ,またはスコアを加算した合計が,プレーヤーの認識と食い違って気付く。

  などではないでしょうか。前記①の間違いも,②の間違いも,プレーヤーやマーカーが責任を取るべき十分な理由があります。

  前記①については,マーカーが記載した各ホールのスコアをプレーヤーが確認してそれでも間違ったのですから,プレーヤーは,過大な申告はそれを認め,過小な申告なら潔く失格の処分を受けるべきで,その責任を軽減する必要があるとは思えません。ましてや,前記②のように時間的,空間的な経過があった場合,すでにマーカーが帰宅している場合,プレーヤーと委員会だけで訂正できるのかという問題もあります。

  ゴルフ規則3.3b⑶は,プレーヤーが間違ったスコアのカードを提出したときの効果について,疑いを差し挟む余地がないほど明確に規定しています。

  以上は,各ホールのスコアだけのことで,ハンディキャップやスコア加算の間違いは,委員会の権限で勝手に訂正できると解釈できます(ゴルフ規則3.3b⑷)。

 

4 いくらプロゴルフの競技で採用しているからと言って,その設備も人員も足りないアマチュアの倶楽部競技で,一定の時間内,あるいは一定の場所の範囲内で,スコアカード提出後でも間違いの訂正を認めるというのは,以上のとおり,ゴルフ規則上の問題があり,公正でなく,競技者間の不平等が甚だしくなり,失格した人の気の毒さを上回る問題が発生します。ましてや,アマチュアの倶楽部競技においては,失格者が続出したり順位が変更となっても,競技を主催している倶楽部に何の責任もなく,参加したプレーヤーだけの問題で,プレーヤーやマーカーがその責任を取るべき十分な理由があり,正に審判のいないゴルフ競技の本質です。

  それゆえ,多くの倶楽部で採用している箱を設置してカードの投入をもって,スコアカードの提出と看做す方法しかないでしょう。

 

5 20年近く前になりますが,私が所属する倶楽部の競技において,私がスコアの加算を間違って提出してしまったのです。入浴中にマスター室の事務の方が,合計が合っていないと訊きに来て下さったので,私は大変恐縮し平謝りでした。合計が多かったのか,少なかったのかは覚えていません。その時,仮にスコアの加算を間違えても,各ホールのスコアを多くすることも,少なくすることも出来ないのに,なぜ風呂場まで訊きに来たのか,スコアの加算は委員会の権限ですから,私に訊く必要はなく委員会が勝手に訂正すれば良いのにと不思議に思っていました。

  私は以上のことがあってから5~6年経過して,もしかしたらと気付いたのです。すなわち,私は当時合計が間違っていることだけしか頭に浮かびませんでした。しかし,合計したスコアが正しい打数で,各ホールのスコアを合計した打数が,私が合計した打数より少なかった場合,どこかのホールで過少申告になっている可能性があったのです。マスター室の事務の方はどちらが正しいスコアなのかを確認するために風呂場まで来たのかもしれないと。                 以上