11月28日千秋楽の大相撲九州場所は、横綱・照ノ富士が自身初の15戦全勝で今年4度目、通算6度目の優勝でした。

 

 白鵬引退で、今後の角界は誰にも優勝のチャンスがある戦国時代...といえば聞こえはいいものの、自分としてはいささか興味索然でしたが、その白鵬だったり、鶴竜親方や荒磯親方(稀勢の里)の新鮮な解説のおかげでおもしろく観られました。いやいや照ノ富士関はツヨい。

 

 

十四日目、阿炎と直接対決

 

 

 思えば、今年の初場所はまだ新関脇だったんですねぇ。

 両膝のケガと糖尿病で、大関陥落どころか2019年3月には序二段まで落ち、そこから2020年1月に十両復帰、7月に再入幕して5年ぶりの優勝、今年3月に大関、7月に横綱昇進と、信じられないリバイヴを遂げた人です。メンタルの強さももちろん、土俵に立てさえすれば誰にも負けないという、自身の才能を信じていたからこそでしょう。

 

 2021年は初場所11勝4敗、三月場所12勝3敗(優勝)、夏場所12勝3敗(優勝)、名古屋場所14勝1敗、秋場所13勝2敗(優勝)、九州場所15勝0敗(優勝)と、通算77勝13敗で優勝4度。かつての北の湖、千代の富士、朝青龍、白鵬に匹敵する驚異の一年でした。

 

 優勝を争ったのは阿炎(あび)で、これまた今年1月には幕下まで落ち、この九州で再入幕したばかりでした。まぁ、この人は2019年11月にSNSで悪ふざけ動画をアップし、2020年4月の研修会で居眠り。同年7月には新型コロナ感染予防のガイドラインを無視して遊びに出かけ、3場所出場停止。

 

 “スリーストライクアウト” では師匠の綴山(しころやま)親方(寺尾)に大カミナリを落とされたのもむべなるかな。クビにしない代わりに、生まれたばかりの娘と奥さんと離れ、綴山部屋に住み込んで再修行を図るという自業自得のすえの復活劇ですから、感慨ひとしおなものがあるでしょう。

 

 復活といえば、宇良(うら)もすごい。

 レスリング出身、バック中も出来るという運動神経からトリッキーな技を見せる人気力士でしたが、体重が増えるにつれ両膝を悪くし、2017年7月には前頭四枚目まで上がりながら、一年以上休場。

 2019年11月には序二段百六枚目まで落ちましたが、2020年11月に十両復帰、今年7月に再入幕。九州場所では10勝5敗で技能賞を授賞しました。

 

 ついこの前までは、関取力士が幕下以下に下がったらもう引退、という雰囲気だったと思いますが、現役寿命が伸びたのと、スポーツ医学の進歩で再起を期す気力が出てきたんですね。休場すると容赦なく番付が下がるため、おちおち休んでおられない過酷な世界なだけに、このように復活してくる力士は尊敬します。

 

 現在、全41人いる幕内では30代以上が19人。24歳以下は琴の若(23)、豊昇龍(22)のふたりだけで、今場所はそのふたりとも負け越したという “若手不在” の状態なので、イキのいい新鋭が待たれるところ。十両の王鵬(21)は大鵬の孫というより、貴闘力の息子だからなぁ...

 

 自分としては、白鵬の内弟子である北青鵬(20)が、身長200cmの巨漢の新十両として期待したのですが、右膝靭帯損傷で休場してしまったのでまた幕下に下がります。これも時間がかかりそう。まったくもってキビしい世界です。