本日は、最近読んでおもしろかった書物です![]()
・水庭れん♂ 「蜃気楼と恋人たち」(講談社,2026)
著者は1995年青森県生まれ、大阪育ち。早稲田大文学部卒。
現役の出版社勤務で、作家の編集協力からプロモーションまで担当しつつ自ら執筆をはじめ、2022年に 《小説現代長編小説新人賞》 を受賞しました。
27歳の篠岡ひかるは東京で7年付き合った航(わたる)と結婚に至らず破局。傷心して故郷富山県の魚津に帰ってきました。両親も旧友も地元に帰ってきた娘を歓迎してくれますが、かえってそれが辛い。
新たな職場は魚津しんきろう博物館。そこに年間パスで通いつめてくる青年は、中学の同級生でかつてほのかに恋心を抱いた松風春作でした。ところが彼は蜃気楼が出現するたびどこかに行ってしまううえ、地元では変人扱い。前科持ちじゃないかとの陰口も。
春作ははじめ気づかず、次第にひかるのことを思いだした様子。寂しさはありながら、短い時間の会話が楽しみになってきたひかるがやがて知ったのは、17歳で逝った春作の高校の同級生、遠海三雲との哀しい関係でした―
全250頁長編。今年5月出版なので新刊本といえましょう。
序盤の展開から青春恋愛小説かと思いきや、少しミステリー風味、少し非日常感もあり内容濃密です。
27歳のひかるが春作を好きだった中学時代のことを思い出すくだりでは、宇多田ヒカルの歌やコミックの 「HUNTER×HUNTER」 の話題に興じて時代性を出しています。自分は残念ながらレオリオとか言われてもわからなかったのですが(笑)
春作と三雲の関係は単純な恋愛模様ではなく重い今日的社会性のなかで描かれます。10年前、いや5年前だったらこのようなストーリーにはならなかったことでしょう。
そして蜃気楼が出てくるたびに姿を消す秘密が明かされるとき、えもいわれぬ感興が包みます。読む人の気分というか、精神衛生状態によって印象が違うだろうな、と思います。自分には正直ダウナー系。でも読了感爽快になれました。文句なし今年いちばん、カメマル進呈です。なにか文学賞を獲るんじゃないでしょうか。
