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これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『カラオケ行こ!』(2024)

原作は和山やまの漫画。

 

監督 山下敦弘(『マイ・バック・ページ』『味園ユニバース』『オーバー・フェンス』『ハード・コア』他)

脚本 野木亜紀子(『犬王』、『重版出来!』『逃げるは恥だが役に立つ』『コタキ兄弟と四苦八苦』『MIU404』他)

音楽 世武裕子(『オオカミ少女と黒王子』『リバーズ・エッジ』『ママレード・ボーイ』『未と鋼の森』『星の子』『生きてるだけで、愛。』『ロマンスドール』『エゴイスト』他)

 

綾野剛、齋藤潤、芳根京子、岡部ひろき、八木美樹、後聖人(うしろきよと)、井澤徹、橋本じゅん、やべきょうすけ、吉永秀平、宮崎吐夢、今村謙斗、伊島空、坂井真紀、ヒコロヒー、加藤雅也、北村一輝、米村亮太朗、チャンス大城、RED RICE、川上凛子、竹野世椰、他。

 

中学3年生の岡聡実(齋藤潤)は合唱部の部長でパートはソプラノ。けれど成長期で声がうまく出なくなっていた。昨年優勝したコンクールでは銅賞の三位。結果に納得できない2年の同じソプラノ担当の和田(後聖人)はやる気の見えない聡実にイラついている。事情を薄々感づいてる副部長の中川(八木美樹)は二人の間を気にかけている。

その銅賞だったコンクールをたまたま聴いたヤクザ、祭林組若頭補佐の成田狂児(綾野剛)は聡実を待ち伏せし、歌の先生になってくれと頼む。実は近く組長(北村一輝)主催のカラオケ大会があり、歌ヘタ王になると組長の下手くそな刺青を入れられる罰則があるという。それだけは避けたいと、カラオケ屋での個人レッスンを願い出たのだった。

最初は恐怖もあり逃げ出したい一心だったが、一生懸命歌に取り組む姿、「紅」に固執する理由、組員にも少し指導してくれないかと思いやりもある狂児と接するうちに、聡実も情が湧いてくる。何より、聡実に優しくフラット。しかし大人にとっては瑣末なこと、でもまだ子供の聡実には大きなことで一方的に喧嘩をしてしまう。そして合唱部の再びのコンクールとカラオケ大会が同じ日に行われるその日、いつものカラオケ屋の前で狂児の車が事故に遭ったところを見てしまった聡実は…。

 

演者はキャラクターにハマってるし、話は人情ものだし、脚本は無駄がないしわかりやすいし、最高に面白かった。

 

合唱部⇄映画部⇄カラオケと物語のテーマが回る。

ラストの聡実が歌う「紅」は合唱部顧問代理ももちゃん先生(芳根京子)がアドバイスしていた「愛」に溢れ、その「愛」が狂児に対するものであること、ずっと悩んでいた成長期ならではの変声期へのジレンマそしてそれを乗り越えるしかない覚悟が見え、加えて歌詞の切なさがかぶり涙が滲んだ。「紅」っていい歌だったのね…どうしてもあのToshlの声が苦手で好きになれなかった。聡実の「紅」は最高だった。

全ての伏線がきれいに拾われ、もちろん「紅」の歌詞もリンクしていて、ラストもいい。

 

母親役坂井真紀が地味に効く。昔から好きだった。まだ写真集がどこかにあるはず(^^;)

綾野剛はほんとヤクザハマる。やべきょうすけ橋本じゅんも安定してハマる。

 

★★★★★

 

 

 


漫画好きに言わせると、原作もとても良いらしい。「コミックビーム」、良い作品出す。でもこれが脚本家、または監督兼でオリジナルで作れるようになるといいな。

 

制作・配給 KADOKAWA

 

 

『マッチング』(2024)


監督・原作・脚本 内田英治(『下衆の愛』『獣道』『ミッドナイトスワン』『タイトル、拒絶』『異動事例は音楽隊!』他)

共同脚本 宍戸秀紀

 

土屋太鳳、金子ノブアキ、佐久間大介、杉本哲太、斉藤由貴、片岡礼子、片山萌美、永瀬莉子、石田佳央、真飛聖、後藤剛範、円井わん、前原滉、大村彩子、寉岡瑞希(つるおかみずき)、名越志保、小林亜美、畦田ひとみ(うねだひとみ)、瀧川鯉斗(たきがわこいと)、八鍬亜里砂(やくわありさ)、藤本タケ、川田玲那、山口太幹(やまぐちたいき)、中澤功、他。

 

「ナガタウェディング」でウェディングプランナーとして働く唯島輪花(土屋太鳳/幼少期:川田玲那)は29歳になるが恋愛は苦手もあって消極的。受け持つ新郎新婦はマッチングアプリでの出会いが多く、担当した高校時代好意を寄せていた恩師片岡(瀧川鯉斗)までもがマッチングアプリでの出会いだった。ある日、同僚の伊藤尚美(片山萌美)にも推され、流れで一番人気のマッチングアプリ「will will」に登録する。するとすぐに25歳の青年トムこと永山吐夢(佐久間大介)とマッチする。そんな時に、「ナガタウエディング」と「will will」との合同企画が持ち上がり、チーフエンジニアの影山剛(金子ノブアキ)と知り合う。

けっこう積極的なトムに半ばうんざりしながらも、尚美のおせっかいもあり会うことになる。しかし待ち合わせの水族館に現れたのは黒いゴム長靴におよそ初めてのデートには似つかわしくない服装、話すこともどこか気持ち悪く、なんだか怖くなり輪花はその場を逃げ出すが、以降もトムは執拗に連絡をよこし、ストーカー化していく。輪花はトムのことも影山に相談するようになる。

一方、世間では猟奇殺人が連続して起こっていた。不思議なことに輪花が担当した新婚カップルばかりだった。そして片岡夫婦が殺されたことで刑事西山(真飛聖)が輪花を訪ねてきて、周辺が騒がしくなる。輪花が幼い頃母親が失踪して以来、男手一つで育ててくれた父親芳樹(杉本哲太/25年前:藤本タケ)に不倫の過去が浮かび上がる他、不幸や問題が続く。それにつけ親しくなった影山を頼るも、思いもよらない真実が明らかになっていく…。

 

サスペンスか。

 

キーアイテムの四葉のクローバーは、その花言葉に「幸福」の他、「私のものになって」と「復讐」があるという話から、終盤〜ラストの〆まで納得のいく展開だった。さらにかぶせた水族館のクラゲ、クリオネの使い方もきれいだった。


土屋太鳳が素晴らしくうまくなってて驚いた。初めて認識した『鈴木先生』で、メインキャラを当てられたので推されてるんだなと思ったけど、確かに印象に残る子ではあったけど、でもここまで良い女優になるとは。(『まれ』で大嫌いになったんだけど(^^;;あれは脚本が悪い)

父親役杉本哲太の若い頃が藤本タケで、そっくりだった。違和感がない。近年のこういうキャスティング神がかってる出来。

子役山口太幹もとても良くて、期待できる。

 

金子ノブアキが出てきた時点で、犯人は影山だな、と踏んだ。ところが一人ではなかったという面白い〆。トムが腹違いの弟であることは早々に勘づいたけど、どうつながるのかずっと考えながら見てた。他にも父親を殺したのは元不倫相手か影山か? と、どの殺人にしてもどっち、どっち!?と推理が楽しめた。……

 

★★★(★)

 

 

 

 

制作・配給 KADOKAWA

 

 

 


 


 

………そんなわけで以下ネタバレ↓


 

25年前、唯島芳樹はパソコンチャットで知り合った女節子(寉岡瑞希/斉藤由貴)と不倫関係になる。節子は芳樹の子をみごもっていたし、愛が昂じて輪花の前、妻の前にまで姿を現すようになる。別れたい芳樹と別れたくない節子。思い通りにならない節子は精神のバランスを崩していき(もともとサイコだった節はある)、ついには芳樹を刺して事件化する。

節子には前夫との子供(山口太幹)がいて、母親の狂っていくさまを直に見ていたことになる。その子が影山剛であり、みごもった子が永山吐夢。吐夢は節子に産み捨てられていた。つまりは兄弟による復讐劇なのだが、共謀ではなく、個別の理由のもと犯行に及んだと考えられる。影山は単純に壊れた母への思いからだろうが、吐夢は捨てられているからもっと根深い心理が働いている。

失踪したと思われていた輪花の母親美知子(大村彩子/片岡礼子)は実は節子に会いに行ったようで、そのままとらわれることになったようだ。以降ずっと節子と一緒に暮らし車椅子にくくりつけられ廃人化していった。節子の復讐…というより芳樹への愛が歪んだ形で美知子に向けられ続いている感じだ。

 

影山は捕まり、殺人は兄弟で二分したものと観てる側はわかるのだけど、劇中吐夢まではいきつかない。それに犯行の手段だけ取れば影山は模倣犯だ。猟奇的なものは吐夢のもので、殺害スタイルにこだわりが見える。捨てられた所以。

ラスト、輪花は吐夢に心を許すのだけど、輪花の心情描写が足りなくて安易さが気になった。万が一、二人が結ばれたら恐怖なのはわかるけど。それはないだろうな。


『滅相も無い』(2024)毎日放送、TBS、0417〜全8話

 

監督・脚本 加藤拓也{『ドードーが落下する』、『わたし達はおとな』『ほつれる』他)

音楽 UNCHAIN(アンチェイン)

 

中川大志、染谷将太、上白石萌歌、森田想、古舘寛治、平原テツ、中嶋朋子、窪田正孝、堤真一、秋元龍太朗、安藤聖、中山求一郎、宮田早苗、安川まり、鳥谷宏之、他。

 

突如現れた七つの巨大な穴。様々な調査が行われたが、結局なんだかわからないまま3年が経ち、調査は打ち切られる。そのタイミングで禁止されていた穴への立ち入りも自由化され、危険視する者、茶化す者、何かを求め穴へ入っていく者も多く現れる。ただ、調査段階から入っていった人が戻ってきたことはなかった。そして穴を神と見立て、穴の中には救済があると説く信仰宗教が出現する。教祖は小澤(堤真一)と言った。

12月1日、その小澤に入信した8人の男女が小澤の持つ宿泊施設に集まる。年に一度12月1日から30日までの1ヶ月、祝祭と称し穴に入るのだ。その前に、穴に入る理由を話し記録に残すことがルールづけられている。記録係は集まった信者8人のうちの一人、岡本(窪田正孝)が請け負い、穴に入る順番に身上(自分史)を語り始める。ただ、穴に入ることは個人の自由意思で、気を変えやめても良いのだった…。

 

まずは一番先に穴に入る予定の大学生の川端(中川大志)

父母は先に穴に入ってしまっていた。川端は怒り方がわからない。子供の頃からいじめられても理不尽な目にあっても、父親にやり返せと叱咤されても、なあなあで終わらせてきた。大学生になり彼女が出来た。彼女の行動に不満はあるものの、やはり怒れない。川端は嫌なことはわかるが怒ることがわからないのだった。そしてついに怒る練習を始め、小澤にも勇気をもらい、どうにか彼女との言い合いに発展するが…。

社会に抑圧され埋没していく個性かな。自己肯定感が低いのに自意識が高く、マイナスに働く例。という感じだった。

 

次に子供が病気だと嘯く菅谷(染谷将太)

小学生の時空手を習い始め、そこでの合宿で毛利さんという女子に初恋をする。でも毛利さんは引っ越して道場に来なくなってしまった。それから大学生になり留学先で再会を果たす。友人の域を出ない関係が続くが、毛利さんはアメリカでの就職を考え、菅谷は留学が終わると帰国し、再びそれっきりとなる。ところが8年後エジプトの空港で再々会を果たす。すごい偶然だったし、連絡先を交換したが、毛利さんには婚約者がいた。それもあってか菅谷から連絡をすることはなかったが、1年後毛利さんから連絡が来る。日本に帰国した毛利さんと飲み、帰りのタクシーで甘酸っぱい昔の感情が湧き上がり、お互い探るような会話がなされる…。

今ひとつ勇気と自信が持てなくて無難な方へ流れていく人間を描いてる感じだ。無難はひとつのチャンス、ふたつのチャンスと逃していく。

菅谷は穴に入らなかったようで、諦めることも獲得しに行くこともできないということか。だからであり、だけどなんだけど、妻子共に元気な家庭を持っている。

 

仕事を転々とし地方で暮らしていた松岡(上白石萌歌)

殺伐とした職場に嫌気が差し、静かで落ち着いたオルゴール記念館に転職する。そこで観劇しに来た「原幸恵(はらゆきえ)」という同姓同名の二人の女性をSNSを介して結びつけることになる。6年越しの二人の逢瀬に立ち合った松岡だが、次会えるのは4年後らしい。もちろんその時も一緒にと誘われるが、ただ、その頃、松岡はこの世にいないかもしれない。病気が発覚したのだ…。

松岡は何かやりがいを求めていたのかもしれない。自分が繋げた縁で何か得られたろうか? 松岡が一番欲していたのは揺るがない人間関係なのかもしれない。

小澤によると、穴の中でまた二人に会えるだろうという。穴は黄泉の国なのか。

 

5歳までイギリスに居た帰国子女の青山(森田想)

小学1年の時、日本語がしゃべれないから孤独だった。でも一人だけ下校を共にしてくれる石田さんという女子がいた。遊びながら帰るので言葉がいらなかった。しかし2年になって石田さんは転校してしまい、孤独は拍車をかける。母親の機転で、青山はバレエを習い始める。日本語はしゃべれるようになったがひとりぼっちな状況は変わらなかった。中学になった青山はバレエを好きになっていた。母親からはプロになれるわけでなし高校受験もあるからと辞めるよう促される。そんな時、石田さんが街へ戻ってきた。でもいざ話してみると、大切にしていた思い出をまるっと覚えてなかった。バレエの飯田先生はやりたいことをやらせてあげたいと手を貸す。そうして母親に秘密で続けていたバレエ。発表会で役をもらうことになり、秘密にしていたこと、子育てに介入してきた飯島の行動が母親の逆鱗に触れる…。

人の記憶の重要度の差。子供のためを思う母親と子が思うことの違い。毒親だの親ガチャだの揶揄されるけど、過去になればすり傷くらいになるということも感じた。が、母親はすでに穴に入っている。母子共に人生のちょっとしたつまづきを大怪我にしてしまったのかもしれない。

 

父母の離婚後、父親が亡くなり母が借金を抱えることになった青少年期を過ごした渡邊(古舘寛治)

姉と二人母親の苦労のおかげで大学まではいけたが、何度落ちても司法試験を受け続ける渡邊は母親からの仕送りで生活していた。ついに仕送りをストップされるが、今度は姉に頼ろうとする。映画館のバイトを紹介されるが、観客と自分との境遇の差を目の当たりにする毎日に、より一層偏屈になっていく。そして商品をちょろまかしたことがバレてクビになり、姉からは「死」を匂わされる。渡邊は海外に住むインフルエンサーを頼るという一攫千金の博打にかけ、なんやかや着いた先がドバイ。インフルエンサーに会える手立てもないまま、立ちんぼの女性リナと出会う。実はリナは出稼ぎに来ている生粋の日本人だった。両替の問題でなんとなく親しくなった二人は帰国後も数回会うことはあったが…。

言い訳ばかりで、言うだけの努力をしたのかも疑問な、いわゆるこどおじ。やり直して生きることも、全部捨てることも思い切れない。他責意識の強い人間は生命力強いのかもしれない。

 

起業して一応の成功をみた真吾(平原テツ)

小学時代、おとなしい性格ではあるが嫉妬も買いやすく、クラスメイトの崇之によって仲間はずれのいじめが始まる。しかし崇之がいなくなりやがて落ち着く。大学を卒業して就職したが疑問を感じ辞め、旅をしたりアプリ開発をしたり何か新しい事をと自分探しが続き、ついに代理出品ビジネスで名をあげ、フォロワーも多くなったのでSNS運用コンサル業を始める。それなりの手応えも得たがしかし、大手との仕事で担当の佐藤さんに格差を見せつけられ、叩きのめされる。その後佐藤さんが亡くなるのだが、真吾の中ではその時の折り合いがつけられていなかった…。

子供の世界なりのヒエラルキーがよく現れてた。半ば無意識に救いを求め、どこかにか誰かにか属そうとする気持ちがよく描かれてる。それは大人になってからだと人生を揺り動かすほど大きくのしかかってくる。上には上がいるという才能や社会の格差が見て取れる。それでも「死」は平等にやってくる。

真吾が穴に入る前にSNSに書いた言葉は「自分を恨んでる人がいたら入る前に話をしたい」だった。穴が今生の別れであることが暗示されてる。

 

周りに穴に入っていった人の多い井口(中嶋朋子)

子供の頃とても好奇心が強く、住むマンションに変わり者で有名なおばさん古淵(こぶち)さんがいた。一つ下の梅本さんと二人、面白おかしく見ていたが、古淵さんは飛び降り自殺する。その跡を見に行って目にした血痕に好奇心を後悔した。高校になるとよくつるむ男女グループができる。そのグループの男子、交際中の三木が突然学校へ来なくなる。どうやら失踪したという噂が立つ。そうこうして1年、グループの別の男子山下から交際を申し込まれ、梅本に相談をする。三木のことを調べてみると言うので任せるが、結局何もつかめず卒業となる。その日、三木から連絡がある。しかし会う約束の日に三木は現れなかった。ただ、後輩を使って探られたことを怒るメールが届いていた…。

好奇心も必要な時といらない時とある。人が介するとだいたいがろくな事にならない。主観で動くからだ。

これはトラウマの話かなぁ?自分の望むような結果は、まず自ら動かなければ得られない。動いたとて、主観。

中嶋朋子の声変わった。

 

そして岡本(窪田正孝)

他の者たちの話を聞きながら、何を話そうか残そうか考えた結果、子供の頃祖母の家に行った話を始める。それは夢か現か判然としない話で、結果的には夢であったのだけど、岡本の心の中には亡くなった祖母のことが忘れられなかったのかもしれない。

自分の意思で歩んでるであろう人生が、実は自分の預かり知らぬものによって動かされているのではないか。例えば物を見ているようで、何かを考えているようで、実は何も見ていない考えてない空白の一瞬、数分が誰にも経験あるのでは。その間は意識が存在しないから、もしかしたら死と同等の感覚に陥ってるのかもしれない。そこで実際何が起きてるのか、そんな短い空白の謎を描いた感じだった。

で、岡本は穴には入らない。現実を選ぶのだ。

 

毎話冒頭に、穴のこれまでや穴に入って行った人の話が紹介される。回を重ねるほどに穴は「あの世」ではないかと思えてくる。また、小澤の言葉も真髄をつくようになる。

真実より嘘の方が広まりやすいとも言っていた。これは今のネット社会に限らず、紙の時代のもっと昔からそうだなと思った。

 

結局何を言いたいのか大きなテーマや、いろんな考察はあると思うがタイトルとの相関性もわからなかった。でも、ただ、少なくともこの日本の一億二千万人の各々に、類似性はあれどその人だけの人生があるということを見せていたのでは、と思った。それと、人格形成に一番影響する外部との接触は小学生時代なのだなと思ったし、自分を思い返してもそう納得する。そんなのが見えた。

 

自分史を語る思い出のシーンは舞台演劇調の演出。語り手の関係する登場人物は6人の役者(秋元龍太朗安藤聖中山求一郎宮田早苗安川まり鳥谷宏之)に割り振られていた。音楽担当のUNCHAINは舞台上の小道具など美術として位置していた。ナレーション津田健二郎

 

★★★

 

 

 

 

 

 

『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』(2023)

 

監督・脚本 阪元裕吾(『ある用務員』『ベイビーわるきゅーれ』他)

アクション 園村健介

 

髙石あかり、伊澤彩織、丞威(じょうい)、濱田龍臣、水石亜飛夢、橋野純平、飛永翼、中井友望(なかいとも)、安倍乙、渡辺哲、他。

 

殺し屋のアルバイトをしている神村ゆうり(丞威)と弟のまこと(濱田龍臣)は仲介役の赤木(橋野純平)と殺し屋本業化を目指している。ある日、ターゲット伝達ミスから報酬を受け取れず腐ってるところ、赤木から正規の殺し屋を殺せばその空きに自分らが入れるという噂と、そのターゲットに有能な女殺し屋の存在を教えられる。杉本ちさと(髙石あかり)深川まひろ(伊澤彩織)の社会生活不適合コンビだ。

ちさととまひろは元来の怠惰な性格が災いし、300万超えの督促を受け、銀行に振り込みに行った際、銀行強盗とはちあわせになる。期限時刻までに振り込みたい二人は銀行強盗が邪魔になり、勝手に手を出し、組織の規則にのっとって二人のサポート役須佐野(飛永翼)から謹慎処分を言い渡される。

しばらく仕事が見込めず、お金がなくなった二人はバイトを始めるも、ちさとのギャンブルでスカンピンになるなどついてない。そんな状態の時、神村兄弟の襲撃を受け、返り討ちにするも後輩清掃スタッフ茉美(中井友望)と組んでいた田坂(水石亜飛夢)が重症を負ってしまう。復讐に出たいところだが謹慎中だ。そこで、田坂が自費でちさととまひろに抹殺依頼したことで謹慎がとかれ、二人は神村兄弟を追う。神村兄弟はといえば、余計な騒ぎを起こしたとして赤木が始末され、本気を出す。廃工場で二組の殺し屋同士の激闘が繰り広げられる…。

 

数回の接触、戦いによってお互いの能力を認め合った二組は、終盤で「仲間だったら良かったのに」と喧嘩両成敗的な青春展開をも匂わせるが、結局ちさととまひろは容赦ない殺し屋だった、で終わるの気持ち良かった。

とはいえ、殺し屋なのでなあなあでは済まないことは神村兄弟もわかっていたろうことが切ない。

 

アドリブのような中身のない会話や、須佐野と田坂のとうとうとした喋り方、素晴らしいアクション、殺陣、かわいいちさととまひろ、面白かった。

 

濱田龍臣もとても良かった。こういう役もハマるんだ、むしろこっちやってったらいいのにと思うくらい良かった(前歯は治した方がいいなぁ)。

 

新しい学校のリーダーズが商店街福引イベントのにぎやかしで出てた。

 

劇中、商店街のおっちゃん(渡辺哲)が『花束みたいな恋をした』好きとしてネタ化、あれは何だったんだろ???

 

★★★★

 

 

 

 

制作 シェイカー

配給 渋谷プロダクション

 

 

映画「湯道」アナーザーストーリー『湯道への道』(2023)

映画『湯道』がどのようにして映画化に至ったかを新たに物語に書き下ろしたスピンオフもの…というテイの様子。フジテレビジョン製作で配信にて公開だった様子。

 

監督 鈴木雅之片島章三高橋由妃

脚本 中村允俊=なかむらまさとし(『教祖のムスメ』他)

 

生田斗真、窪田正孝、中村アン、金田明夫、竜雷太、六平直政、小野武彦、平泉成、正名僕蔵(まさなぼくぞう)、中丸新将(なかまるしんしょう)、森下能幸、篠原悠伸(しのはらゆうしん)、寺島進、橋本環奈、小日向文世、ウエンツ瑛士、濱田岳、厚切りジェイソン、他。

 

400年の歴史を持つ「湯道」の家元梶山(窪田正孝)は入門者もおらず自分の代で潰える危機に絶望し自死も考えるほど追い詰められていた。一方で借金取りに追われるチンピラ然としたペテン師安藤(生田斗真)は、たまたま通りかかったその「湯道会館」に窃盗目的で侵入、首吊り寸手のところで梶山を救う。そして流れで梶山の「湯道」語りにつきあう。

「湯道」の立て直しを図りたい梶山と、借金返済のため金を得たい安藤は、その後バーで宣伝効果がある映画作りをすすめられる。信長新解釈から信長と湯という切り口で映画を作ろうということになるが、それにはまずスタッフを集めなければならない。ちょうどバーの店主音田(金田明夫)は昔映画の音声をやっていた。音田の昔馴染みを頼り、辻の占い師芳美(正名僕蔵)は美術、隠居の照橋(小野武彦)は照明、花屋の影野(六平直政)は撮影、メンタルを病んでしまった本谷文乃(中村アン)は脚本という経歴の持ち主が集まる。さらに大物監督の大河原(平泉成)からは映画のなんたるかを学び、梶山が監督、安藤はプロデューサーを務め、この七人のプロフェッショナル(?)で、なんとなく集合場所になってるバーと一郎(中丸新将)二郎(森下能幸)兄弟が営む銭湯「七乃湯」から、本格的に映画作りが始まる。

まずは資金集めからだが、出資者はなかなか現れず、やっと賛同者を捕まえたと思ったら湯への思いが強すぎる梶山の企画変更で話はおじゃんになり、とうとう梶山は自ら「湯道会館」を抵当に一千万を準備。これをもとにいよいよ湯道に特化した映画を…というところで、安藤はしょせんペテン師、その金を借金返済に使ってしまい姿をくらます。騙されたと怒り肩を落とすプロフェッショナルたち。

しかして、いざ借金苦から逃れてみると何か物足りない日常に、また真剣に取り組む梶山始めプロフェッショナルたちの姿に、安藤は心を入れ替え再び姿を現す。プロフェッショナルたちはなんだかんだ責めつつも許す。そんな七人の思いや行動を見て来た風呂好き銭湯好きの「七乃湯」常連客元会社経営者蒲島(竜雷太)が一億円の出資を申し出て、今度こそ映画製作へ…。

 

コメディなんだけど、ほんとこんなに豪華なキャスト陣なのに、エンディングは良曲「明日があるさ」だっていうのに、スカなんだよ…どうして?(´;ω;`)

そこかしこに名作映画のパロディが入ってるのだけど…人情ものだし夢もあるし、銭湯好き風呂好きには共感もするだろう(おもしろおかしい)湯の作法だったりするのだが、また新たな銭湯ファンを生み出すかもしれない作品にはなってると思うけど、本編同様つまらない。まあ、、、、これはスピンオフらしいし、、、。。

 

結局、映画の成功があり、梶山は多くの入門者、弟子を迎えられ、「湯道」はさらに歴史を重ねる…。

 

★★

 

 

 

 

 

『湯道』(2023

監督 鈴木雅之(マスカレード・ホテル』『マスカレード・ナイト』他)

脚本・企画 小山薫堂(『おくりびと』他)

音楽 佐藤直紀(『ゴジラ-1.0』『マスカレード・ナイト』『マスカレード・ホテル』『億男』『ういらぶ。』『名もなき世界のエンドロール』、『青天を衝け』他)

 

生田斗真、濱田岳、橋本環奈、小日向文世、柄本明、天童よしみ、クラス・ハート、寺島進、戸田恵子、浅野和之、厚切りジェイソン、笹野高史、吉行和子、ウエンツ瑛士、朝日奈央、梶原善、大水洋介、堀内敬子、森カンナ、藤田朋子、吉田鋼太郎、角野卓造、夏木マリ、窪田正孝、米野真織、生見愛瑠、他。

 

建築家として東京で活躍してる…はずが事務所独立後はさっぱりな三浦史朗(生田斗真)。父親の葬式にも帰らなかった史朗だったが、いよいよ困り果て、実家の銭湯「まるきん温泉」をマンションに建て替えようと帰郷する。

銭湯はそのまま弟の悟朗(濱田岳)が営業していた。秋山いづみ(橋本環奈)という銭湯好きの住み込みの従業員と二人で。また、薪を調達してくる風呂仙人(柄本明)の協力もあった。そして客はほぼお馴染みさん。

「湯道」の家元二之湯薫明(角野卓造)のもとに作法を習いに通う風呂好きの横山正(小日向文世)の家族関係、また二之湯家のお家事情、温泉評論家の太田与一(吉田鋼太郎)の源泉かけ流し主義を貫くこだわり、風呂好きラジオパーソナリティDJ FLOW(ウエンツ瑛士)の些末な秘密、かつて薫明が感動した湯を持つ山奥に住む老婆秋山凪子(夏木マリ)や風呂仙人、いづみの身上が明らかになりつつ、悟朗の本心、亡き父の思い、常連客の縁や「まるきん温泉」への愛情に触れるうち、たかが銭湯されど銭湯、と史朗は考えを改めていく…。

 

生活でありながら嗜みのひとつである風呂。質へのこだわりだったり、作法を重んじた湯の道だったり、苦労の上にあやかる自然の恵だったり、一服の清涼剤だったり、裸を通して得る道徳観、マナーだったりコミュニケーションだったり、人それぞれの風呂に馳せる思いが描かれている。

 

人情に尊ぶ構成もよく出来た脚本で、コメディだし俳優陣は確かな人ばかりなのに、だるい。なんでたろうと思ったら、バカバカしさに振り切れてないのだ。もっとガンガン落としていいのにひらやかに並べるだけという印象。カメラワークで見事にイチモツを隠すのに、きれいな画角に収まってるだけで笑いになってない。持っていきようによっては笑えるところなのにもったいない。

湯道そのものももっとおかしく出来たんじゃないかと思えてならない。

 

エンディングで天童よしみとクリス・ハートから始まる演者みんなでそれぞれの湯に浸かりながら(吉行和子は物語の中で亡くなってる設定たからか出なかった。コメディなんだからどうにだって出せるだろうにもったいない。角野卓造もだ)歌う「You Are My Sunshine」はとても良かった。

 

★★(★)

 

 

 

制作 シネバザール

配給 東宝

 

 

『最後まで行く』(2023)

原作は2014年公開の監督脚本キム・ソンフンの韓国映画『最後まで行く』(邦題/原題『끝까지 간다』=クッカジ カンダ)。

中国、フランスでリメイク映画化されての日本版。

 

監督 藤井道人(『青の帰り道』『デイアンドナイト』『新聞記者』『宇宙でいちばんあかるい屋根』『ヤクザと家族』『余命10年』『ヴィレッジ』他)

脚本 平田研也(『小さな恋のうた』他)、藤井道人

音楽 大間々昴=おおままたかし(『予告犯』『愚行録』『彼女がその名を知らない鳥たち』『見えない目撃者』『宇宙でいちばんあかるい屋根』『浅草キッド』『死刑にいたる病』他)

 

岡田准一、綾野剛、広末涼子、磯村勇斗、駿河太郎、柄本明、杉本哲太、清水くるみ、山田真歩、山中崇、黒羽麻璃央、駒木根隆介、他。

 

年の瀬も押し迫った12月29日に事が起きる。けれどその前日28日に事件への伏線は張られていた。それから年が開けるまでに一通りの解決をみるが、新年とともに主要登場人物の新しい門出ともなるという、数十年続く人生のうちで最も濃い時間がスリルとサスペンス、ちょっとした笑いをもって描かれる。

 

美沙子(広末涼子)から母親の危篤を受けて刑事の工藤祐司(岡田准一)は雨の夜、車で病院へ急いでいた。そこへ刑事課長淡島(杉本哲太)からヤクザ仙葉組との金銭授受について監察官の調査が入るという連絡を受ける。署内では暗黙事項ではあったが、実際組長仙葉泰(柄本明)と関係していたのは工藤だった。さらにとうとう母親が亡くなったという知らせに感情が追いつかない工藤は一瞬の隙に一人の男尾田創(磯村勇斗)を撥ねてしまう。慌ててかけよるが息は止まっていた。目視できる位置に巡回パトカーが通る。とにかく病院に急がねばならない工藤は近くにあったシートに遺体を包みトランクへ入れ、先を急ぐ。しかしその道々検問がある。実は酒も少し入っていたし、事故でフロントガラスにもヒビが入っているやましいことだらけの工藤は、知らないわけでもない交通課の梶(山中崇)相手に刑事課の身分をつきつけひたすら事なきを得ようとするが道理が通らない。そこへ監察官の矢崎(綾野剛)が通りかかり、お咎めなしでその場を後にできた。

やっと病院に到着した工藤だが、淡島や同僚が監察のことで相談もあるからと病院に向かってるという連絡を受ける。遺体を何とかしなければならず、思いつきで苦肉の策を講じる。それが後まで面倒を強いられ、その轢かれた尾田、尾田の女真由子(清水くるみ)、仙葉組長や県警本部長、矢崎が複雑に絡んだ全容が徐々に明らかになっていく…。

 

ネタバレになるが、同僚の久我山(駿河太郎)の爆死はひどい(;_;)さすが韓国映画。

 

岡田准一も綾野剛も素晴らしいアクション、演技だったし(綾野剛はキレたキャラ怖うまい)、他の役者さんも安定して素晴らしい。確かな人ばかり揃えているのだから良い作品になる未来しか見えない。監督もいい。

 

「実は」に次ぐ「実は」で面白かった。だけに、ラストのしつこさは冗長というもの。墓場のシーンで終わっときゃいいものを、サスペンス寄りのスリラー…いや、ホラーかよ!と。

 

というわけで、原作の韓国版を観てみる。

 

★★★★(★)

 

 

 

 

制作 ROBOT

配給 東宝

 


 

韓国映画『最後まで行く』(邦題/原題『끝까지 간다』=クッカジ カンダ)

監督 キム・ソンフン

脚本 キム・ソンフンイ・ヘジュンチェ・クァンヨンチャン・ハンジュン

 

母親の葬儀の日、内部監査が入り焦りの只中にいる殺人課の刑事コ・ゴンス(イ・ソンギュン)は男を撥ねてしまう。息をしてない。巡回パトカーも近づいてくる。物陰に隠れやり過ごし、遺体をトランクへ詰めて、飲酒検問もどうにか逃れ、妹夫婦が仕切る葬儀場へ急ぐ。同僚らもやってきて遺体の処理に苦戦しながらもなんとか葬儀を終える。しかしそれから謎の人物から脅迫と遺体引き渡し要求の電話がかかるようになる。いったい誰なのか、なぜ遺体が必要なのか、遺体の男は何者なのか、が明らかになっていく…。

 

事件全容判明〜解決にかかる日数も違うし、韓国版の方が無駄がなく、複雑さもなく動機が簡単、すっきりまとまってラストも締め方がいい。ただ、韓国の俳優を知らないのでどれだけ実力のある人なのかわからない。だからか、キャラクターは日本版の方がしっくりハマる気がする。特に相対する刑事パク・チョンミン(チョ・ジヌン)のサイコパス具合が綾野剛の方がしっくりくる。

 

始まりは同じだし、遺体の処分も同じ(韓国は土葬なのね)。遺体の重要性はアイテムにあり、そのアイテムが違うが、狙うお宝は同じ。ただ、日本版ではお宝を入手損ねる。それもスッキリしない点かもしれない。

男を撥ねるきっかけになるものが本作では飼い犬、日本版では彼女だった。ここですでに話が簡略化される。ゴンスは離婚しており娘は妹夫婦が面倒をみてくれている。日本版ではまだだ。ここでも話が簡略化される。ただ、亡母に恋人がいた話は余計かな。

同僚のサンホの殺され方も、爆破で湖に沈んだはずのパクが現れるくだりも、娘を人質にする点も(韓国版は匂わせのみ)同じだった。

 

★★★★(★)

 

 

 

ついでにNetflix配信のフランス版も観てみた。

 


 

『レストレス』(2022)Netflixフランス版

原題は『Sans Repit』

監督・脚本 レジス・ブロンドゥ

 

原作に忠実で時間も1時間半ちょっとでけっこう簡略化されてて無駄がない。主人公ブラン・トーマス(フランク・ガスタンビドゥ)と麻薬課長マレリ(シモン・アブカリアン)の爆弾を仕掛けての格闘が原作、日本版と比べ、一番自然だった。あとサイコパス認定がちゃんとされててわかりやすい。サスペンスアクションを楽しむならこれが一番かもしれない。

 

3本観てみて、やはり日本人は細かいなと思った。登場人物の関係性に説得力を出すため脇にもドラマを入れようとする。テーマ的には必要ない。ただ、同じ人種なので感情面の演技は一番良かった。

人種といえば、フランスも大陸にあり多民族だからか、有色人種を使っている。20年後、日本映画もそうなったりして。

 

★★★★

 

 

 

 

『季節のない街』(2024)テレビ東京系列(土曜0時42分〜/0406〜全10話)、Disney+配信(2023)

原作は山本周五郎の小説(1962)

1970年黒澤明によって映画化『どですかでん』

その他テレビ化、NET(テレビ朝日)1963年森繁久弥、西村晃で『たんばさん』、1963年フジテレビで多々良純、日高澄子、菅井きんで『季節のない街』。とのこと。

 

企画・脚本 宮藤官九郎(『GO』『ピンポン』『木更津キャッツアイ』シリーズ、『池袋ウエストゲートパーク』シリーズ、『タイガー&ドラゴン』『あまちゃん』『ごめんね青春』『土竜の唄』シリーズ、『ゆとりですがなにか』シリーズ、『いだてん』『俺の家の話』『不適切にもほどがある!』他)

監督 宮藤官九郎横浜聡子渡辺直樹

音楽 大友良英(『坊っちゃん』『きいろいゾウ』『タロウのバカ』『犬王』『花束みたいな恋をした』、『あまちゃん』『いだてん』『エルピス』『鈴木先生』シリーズ、他)

 

池松壮亮、濱田岳、仲野太賀、渡辺大知、佐津川愛美、鶴見慎吾、皆川猿時、坂井真紀、三浦透子、岩松了、片桐はいり、ベンガル、荒川良々、高橋メアリージュン、MEGUMI、LiLiCo、前田敦子、藤井隆、又吉直樹、大沢一菜、和田正弘、平原テツ、前野健太、広岡由里子、小田茜、YOUNG DAIS、小宮孝泰、塚地武雅、高松咲希、嶋田鉄太、戌井昭人、増子直純、日高ボブ美、伊勢志摩、橋本一郎、他。

 

大災害「ナニ」から12年後、いまだ仮設住宅の並ぶ「街」に半ば共同体で暮らす人々。月収12万円を超えると強制立ち退きになるので、みんなその枠を超えないよう生活している。そんな住民らの生活調査を三本木(鶴見慎吾)から請け負い、飼い猫トラ(擬人化トラ:皆川猿時)と移住してきた半助こと田中新助(池松壮亮)。同じく「ナニ」で家族を失い、無気力の半助だったが、仮設住宅に暮らす人々と触れあい調査報告を重ねるうちに情が芽生え考えに変化が出てくる。しかも自分が実はこの住民らを苦境に追いやる手助けをしていたことに気づく。だが、住民らも未来永劫現状維持ができるとは思っていなかった…。

 

①街へいく電車

「どですかでん」と電車の走る音を口ずさみ「街」を回る電車運転手のつもりの六ちゃん(濱田岳)。六ちゃんのお母さんクニ子(片桐はいり)はお惣菜屋「わんぱくデリカ」をやっている。六ちゃんは頭が足りないのだが、自身はクニ子の方が問題ありと思っている。そんな六ちゃんをみんなは意識することなく暖かく見守っている。六ちゃんの日常と起こる事件を中心にその他ざっくり住人の様子が描かれる。半助は早々に与田タツヤ(仲野太賀)と知り合い、青年部に誘われ、「街」によく出入りしているリカーショップのオカベ(三浦大知)とも親しくなる。

 

②親おもい

父親(前野健太)を「ナニ」で亡くしたタツヤ。母親しのぶ(坂井真紀)は優しいアキオさん(戌井昭人)と再婚するも、兄シンゴ(YOUNG DAIS)は生活に馴染めず出て行き、たまに帰ってきたかと思えば金の無心。妹アカネ(高松咲希)と弟リョウ(嶋田鉄太)ができてもシンゴばかり甘やかし借金が膨らむだけのしのぶに絶望するタツヤ。やがてアキオさんも出て行ってしまう。そんな家庭の事情、一緒にいるからこそわかりあえない気づかないこともあるという悲しさ、自分の視点が絶対であると信じ込む人の裁量の狭さが描かれる。その他ちょいちょいの癖のある住民紹介。

 

③半助と猫

半助が物書きになったいきさつ、実はナニの被災者で自分とトラだけが助かったことが語られる。「街」の中心にある校舎に吊るされてるのは漁師だった半助の父親の大漁旗。また、元から家のないホームレスは仮設に入れず「街」のすみに暮らしている、そんなホームレスの親(又吉直樹)子(大沢一菜)の実情と、トラとホームレスの子供との交流も描かれる。そして半助が三本木に報告書を送ったことでホームレス親子の住まいが撤去されてしまう。いつも将棋をしているたんばさん(ベンガル)の配慮で親子は廃車に住まうようになれたが…。住民感情と行政の相入れないところ。

 

④牧歌調

半助はマスオさん(益子直純)を通じて日雇いの仕事を得る。マスオさんハツさん(荒川良々)とは同僚、飲み仲間になる。ある日、マスオさんちの夫婦喧嘩をきっかけに、しかしふとした拍子に夫婦交換が起こる。マスオさんの嫁ミッチャン(高橋メアリージュン)のところへハツさんが帰り、ハツさんの嫁ヨッチャン(MEGUMI)のところにマスオさんが帰るというとんでもない事態に。でも、半助の計らいで、二人をもとに戻すことができた。他に、沢上家の家父良太郎(塚地武雅)には子供が五人いて、全員父親が違う。しかも子供らの父親はこの街の住人。嫁みさお(前田敦子)が昔ご当地アイドルべじっ娘のメンバーで慰問に訪れ、良太郎はボランティアで「街」に来ていたところ知り合ったのだった。まさに牧歌的な空気、家族愛が描かれる。

 

⑤僕のワイフ

半助の隣に越してきた島(藤井隆)は足に障害がある上、「ケケケフン」という疾患持ち(チック症)。詐欺師みたいなことを言う島にのせられてタツヤは島の会社「NO SEASON」で働くことに。実はカフェをやるのがタツヤの夢で、それが実現できそうなのだ。島には口の悪い態度も悪いワイフ(LiLiCo)がいるが、実は愛がいっぱい。表層しか舐めない他人にはわからない「人の真実」がそこにはあるということが描かれる。他にオカベがぞっこんのかつ子(三浦透子)の家庭事情。そして三本木と島が繋がっていることを知る半助…。

 

⑥プールのある家

ホームレス親子の夢の豪邸建築妄想と現実が描かれる。小難しい理想論ばかり講釈垂れる頭でっかちで世間と隔絶した社会不適合者の父親は、食あたりで子供=息子を死なせてしまう結果に。食べ物を調達してくるのはいつも息子だし基本的にお父さんの言うことは何でも肯定する息子がいなくなることで父親は困窮する。結局街を出て橋の下で野良犬相手に豪邸建築妄想を語りながら暮らし始める。人の生死の空虚さよ…。また、かつ子の叔父京太(岩松了)と叔母妙子(広岡由里子)との三人暮らしの家事情も。一方、タツヤのカフェの話も進んでいる中、シンゴが刺される事件が起きる。

 

⑦がんもどき前編

かつ子とオカベの話。がんもどきはかつ子の母親かなえ(小田茜)が久しぶりに会ったかつ子に対して放った印象。かつ子は母子家庭だったが、かなえが再婚して社長夫人となり出て行った。京太は屁理屈ばかり言う酒飲みで働かず、かつ子と妙子のマスク作りの内職とかなえの仕送りで三人は暮らしてる。妙子が3週間の入院となり、その間にかつ子は京太に性的虐待を受ける。一方、かつ子の誕生日プレゼントに洋服を贈りたいオカベは半助に買い物につきあってもらう。そこで半助は元カノ(佐津川愛美)と再会する。また、タツヤは親子喧嘩し、しのぶはアカネとリュウを連れて車椅子生活となるシンゴの退院に合わせて出て行ってしまう。

 

⑧がんもどき後編

半助の彼女は愛猫ビヨンセ(擬人化ビヨンセ:HARUKA)とよくやって来るようになったが、ひたすら愚痴とゲーム。二人は気が合うけど家族を亡くした半助が人生に前向きになれず別れてしまったのだった。でも、半助の変化に安心したのか彼女は現れなくなる。一方、京太の子の妊娠がわかったかつ子はなぜかオカベを刺してしまう。事件告訴こそしなかったが、性的虐待のことで警察に呼び出される京太は逃走の末、マスクの違法販売で捕まる。オカベが退院し、かつ子も拘留が解け戻ってくる。そこでオカベはなぜ刺したが聞き、(おそらく軽度知的障害で)不器用なかつ子の想い、オカベとかつ子の恋の成就が描かれる。また、タツヤのカフェ作りも具体的になっていく中、島の様子がおかしいことから、「街」の住民は復興住宅建設のため立ち退かされることを知る。

 

⑨たんばさん

たんばさんは何かにつけみんな話を聞いてもらいに来る、信頼のおける存在。ペットのハムスターが「わんぱくデリカ」の油に飛び込む自死で荒れる熊(奥野瑛太)をなだめ、泥棒(芹澤興人)にはこちらから金を渡す。そんなたんばさんに相談員の服部(伊勢志摩)が様子を見に来ている。六ちゃんはショベルカーの運転手になり(エアー)、オカベとかつ子はデートするようになる。半助が「街」へやって来た理由を知ることとなったタツヤは、いつの間にか自分も立ち退きプロジェクトに加担していた自責から、「街」を出ていくことを決め、自暴自棄になって勢い自殺を試みる。心配する半助には、半助が諜報員を辞めたから島が来て、自分が取り込まれることになったんだと嘆き、ここで半助とタツヤは本気でぶつかり合い友情が確固たるものになる。そうしてついに島たちが復興公営住宅への引越しを住民にすすめにくる。その一番に出て行くたんばさん。でも行き先はケアハウスだった…。

 

⑩とうちゃん

半助が来てから1年。「ナニ」から13年。本格的に立ち退きが進む中、月5万の復興住宅家賃が用意できない沢上家がごねる。みさおは新生児だけを連れて出ていくし、残された子供たちは離れ離れになるのが嫌で抵抗をする。血のつながった親子か、情と信頼でつながった親子か、が問われる。また、お別れ会でにぎやかに騒ぐ住民たちだったが、そのうち不平不満が爆発して喧嘩勃発、六ちゃんは本物のショベルカーを動かしたり、島の部屋が火事になるなどはちゃめちゃな展開になるも最後は大団円。

そうして各々新しい生活を始めた住民たちだったが、どこかですれ違っても暗黙のルールで声をかけない。ただ、半助とタツヤだけは大漁旗で繋がっていた…。

 

 

1話目を見た時、「ああ、やばいもの見ちゃった、怖い怖い」という感想が出た。これは深夜帯でないと放送できないんではないか。でもよくよく考えれば、大衆文学作家の作品が原作だ。それにあの黒澤明も映像化している。本当に近年は表現の制約が厳しくなったんだなぁと己の第一感想から思う。良くない。

 

キャストがとにかく個性的。全員が主役になれる構成がいっそう役者の魅力を引き出している。

印象に残ったのはやはり濱田岳の六ちゃんのキャラクター、藤井隆のチック症演技、LiLiCoのすっぴん、荒川良々と益子直純の酔っ払い演技(これは池松壮亮絶対素で笑ってた)、話は又吉と大沢一菜の親子の回、三浦透子の性虐待の回。

他に、「いいところだけどユートピアじゃないからね、まともな人間はみんな出ていくんだよ」という現実をつきつける島の台詞、かつ子が案外まともだったやられた感、母親の頭がよくなるようにお経を唱える六ちゃんの優しさ、半助の部屋に増えていく家電や雑貨は人の繋がりの証な点。

 

カテゴライズが起こす窮屈さ、ホームレスや外国人がすぐ住み着く問題、他人のことを独善の正義感からとやかくいいたい風潮、それに伴う批判、村社会の危うさなどヒシヒシと伝わってくる。

 

ラスト、半助が経験談を書いた小説を編集者(前原滉)に見てもらうのだけど、コンプライアンスで没るというシーンが入っていて、クドカン挑戦ありがとう、と思った。最高でした。

 

★★★★★

 

 

 

 

 

 


 

で、とても気になった作品だったので、今さらながら原作も読んでみた。

こちら山本周五郎「季節のない街」青空文庫で公開されています。

 

1960年前後というと、高度成長期に入ったあたりで、戦後の混乱も過ぎ、しかし貧富の差は居住区で仕切られていた…のかな(同和や部落問題もまだまだある時代)。それは現在でも変わりなくあることで、自然と住まう地域の色になってる。そんな、道や川を一本隔てるだけで住民のレベルが違うというのが見て取れる。

ドラマと違ってストーリーテラーがいるわけではなく、登場人物はもちろんドラマより多く、それだけに多彩で淡々と住民の日常生活がその人となりをもってして描かれていく。その居住区の人間だからとも思えるし、そうと限らず人間なんて多かれ少なかれこうしたもんだとも思える。

気づかなかったことも明確にされていて、六ちゃんが母親の頭がなおりますようにと祈願していた理由にはそこまでの気づきがなかった。クドカンはあえて明確化しなかったのだと思うけど。

かつ子の内外も具体的、ホームレス親子の描写もよりわかりやすい形に描かれていた。

タツヤの母親との親子関係はやはり切なかった。



 

『九十歳。何がめでたい』(2024)

原作は佐藤愛子のエッセイ。

 

監督 前田哲(『こんな夜更けにバナナかよ』『老後の資金がありません!』『水は海に向かって流れる』他)

脚本 大島里美(『サヨナラまでの30分』『漁港の肉子ちゃん』『水は海に向かって流れる』、『わたしに運命の恋なんてありえないと思ってた』『凪のお暇』『おカネの切れ目が恋のはじまり』他)

音楽 富貴晴美(『君が落とした青空』『こんな夜更けにバナナかよ』『そして、バトンは渡された』『総理の夫』『老後の資金がありません!』『不能犯』『今日のキラ君』他)

 

草笛光子、唐沢寿明、真矢ミキ、藤間爽子、木村多江、オダギリジョー、三谷幸喜、片岡千之助、中島瑠菜、石田ひかり、LiLiCo、清水ミチコ、他。




 

断筆宣言をした90歳の佐藤愛子(草笛光子)は日々だらだらと何をするわけでもなく過ごしていた。娘響子(真矢ミキ)と孫娘桃子(藤間爽子)と同居ではあったが、居住空間は一階と二階に分かれていて、一から十まで面倒をみてもらってるわけではない。孤独な毎日だった。

ある日、大手出版社に勤める吉川真也(唐沢寿明)はその古い体質が災いし異動が下り、後輩倉田(宮野真守)の下につくことになる。そこでたった一回のオファーが叶わず流れることになった若手編集水野(片岡千之助)の企画、「佐藤愛子のエッセイ連載」に魅力を感じ引き継ぐことに。吉川は持ち前の昭和魂で何度もしつこく通い、ようやくOKをもらう。90歳の佐藤愛子が何を見て何を考え思うのか、連載は人気を呼び、ついに単行本にまとまりベストセラーになる…。

エッセイ本「九十歳。何がめでたい」の出版を通して佐藤愛子自身の90歳の日常と、吉川の崩壊した家庭問題も並行して描かれる。

コメディながらほろっともさせる。

 

端役に三谷幸喜、オダギリジョー、石田ひかりという贅沢さ。キャスト陣が確かな人ばかりなので悪くなりようがない。これまで唐沢寿明の演技に魅力を感じたことがなかったのだが、渋みも出てきたこともあってか、初めて良いと思えた。テレビドラマと映画とでは演技が違って見えた…という感じ。

 

おおかたの人が経験するであろう加齢による支障。わがままに好きなことを押し通せばいいのよと言う。若い人から見たら「老害」でしかないことも、実は当人にとっては残りの人生いかに生きるかQOLに関わる大切なものであるということ。おそらくその歳にならないと理解できないだろう。


エンディングロールでは佐藤愛子本人のスナップショットが流れる。年賀状のコスプレは事実かと笑えた(原作未読)。面白がる気持ちが人を人生を周りを豊かにするのだなと思った。

 

観客の年齢層がびっくりするほど高かった。ほぼ後期高齢者。そういう年齢の方たちが佐藤愛子の著書を読み、草笛光子を観に、映画館までやって来る、これだけでずいぶん高齢者の意気が上がっていると感じる。


幹がしっかりあり、頭とお尻のまとめ上げもきれいで良かった。

 

★★★

 

 

 

 

制作 スタジオブルー

配給 松竹

 

『君に幸あれよ』(2023)

俳優かつ写真家である櫻井圭佑の初監督作品とのこと。

 

監督・脚本・編集 櫻井圭佑

音楽 鶴田海王(つるたかいおう)

 

小橋川建(こばしかわたつる)、高橋雄祐、玉代勢圭司(たまよせけいじ)、海老沢七海、諏訪太郎、中島ひろ子、久場雄太(くばゆうた)、浦山佳樹、鈴木武、二宮芽生(にのみやめう)、松浦祐也、他。

 

闇金をしのぎにしているヤクザの下で働くシンジ(小橋川建)は凶暴で恐れられていた。今下についてる弟分のタケイ(海老沢七海)の憧れの的だ。しかしシンジはかつて可愛がっていた弟分を亡くしていて、そこから立ち直れていない。やってはいけないクスリに手を出していた。

ある日新入りのリヒト(高橋雄祐)の面倒を任される。リヒトは少し変わっていて、いつのまにかシンジはリヒトのペースに乗せられ、情も湧いてくる。それでもクスリはやめられず、ついに兄貴分(玉代勢圭司)にバレて休みを言い渡される。シンジには恋人のアユミ(二宮芽生)もいたが、心のバランスが取れずクスリを極限まで入れてしまう。それを救ったのは父親がジャンキーだったためドラッグを前にすると過呼吸になってしまうリヒトだった。

しかしどうにか前向きになったシンジの前に現れたのは、シンジに障害を負わされ恨みを持った男(浦山佳樹)であり、リヒトがその復讐の犠牲になってしまう…。

 

リヒトはまあ助かるだろう。アユミはおそらく子供ができたんだろう。仇討ちは兄貴分がやる…これはまさかだったが、それだけに、シンジの未来は希望がある。タイトルはシンジに向けたものであり、シンジの周りの人間たちに向けたものでもあり、観ている私たちに向けたものでもあるように思った。

 

この映画で使われてるのはガラケーなので、設定はギリ任侠道が通る時代かな。

 

なかなかまとまりのいいきれいな脚本だった。役者が良かったし。

リヒトは自閉症かな。少し足りない、でも一点に秀でてる。その感じの演技がとても良かった。

 

リヒトお気に入りの中華屋の店主諏訪太郎スナックのママ中島ひろ子。自然でありながら安定感がある。うますぎる感もある(^^;)

 

★★★★

 

 

 

配給・宣伝 MAP