『最後まで行く』(2023)
原作は2014年公開の監督脚本キム・ソンフンの韓国映画『最後まで行く』(邦題/原題『끝까지 간다』=クッカジ カンダ)。
中国、フランスでリメイク映画化されての日本版。
監督 藤井道人(『青の帰り道』『デイアンドナイト』『新聞記者』『宇宙でいちばんあかるい屋根』『ヤクザと家族』『余命10年』『ヴィレッジ』他)
脚本 平田研也(『小さな恋のうた』他)、藤井道人
音楽 大間々昴=おおままたかし(『予告犯』『愚行録』『彼女がその名を知らない鳥たち』『見えない目撃者』『宇宙でいちばんあかるい屋根』『浅草キッド』『死刑にいたる病』他)
岡田准一、綾野剛、広末涼子、磯村勇斗、駿河太郎、柄本明、杉本哲太、清水くるみ、山田真歩、山中崇、黒羽麻璃央、駒木根隆介、他。
年の瀬も押し迫った12月29日に事が起きる。けれどその前日28日に事件への伏線は張られていた。それから年が開けるまでに一通りの解決をみるが、新年とともに主要登場人物の新しい門出ともなるという、数十年続く人生のうちで最も濃い時間がスリルとサスペンス、ちょっとした笑いをもって描かれる。
妻美沙子(広末涼子)から母親の危篤を受けて刑事の工藤祐司(岡田准一)は雨の夜、車で病院へ急いでいた。そこへ刑事課長淡島(杉本哲太)からヤクザ仙葉組との金銭授受について監察官の調査が入るという連絡を受ける。署内では暗黙事項ではあったが、実際組長仙葉泰(柄本明)と関係していたのは工藤だった。さらにとうとう母親が亡くなったという知らせに感情が追いつかない工藤は一瞬の隙に一人の男尾田創(磯村勇斗)を撥ねてしまう。慌ててかけよるが息は止まっていた。目視できる位置に巡回パトカーが通る。とにかく病院に急がねばならない工藤は近くにあったシートに遺体を包みトランクへ入れ、先を急ぐ。しかしその道々検問がある。実は酒も少し入っていたし、事故でフロントガラスにもヒビが入っているやましいことだらけの工藤は、知らないわけでもない交通課の梶(山中崇)相手に刑事課の身分をつきつけひたすら事なきを得ようとするが道理が通らない。そこへ監察官の矢崎(綾野剛)が通りかかり、お咎めなしでその場を後にできた。
やっと病院に到着した工藤だが、淡島や同僚が監察のことで相談もあるからと病院に向かってるという連絡を受ける。遺体を何とかしなければならず、思いつきで苦肉の策を講じる。それが後まで面倒を強いられ、その轢かれた尾田、尾田の女真由子(清水くるみ)、仙葉組長や県警本部長、矢崎が複雑に絡んだ全容が徐々に明らかになっていく…。
ネタバレになるが、同僚の久我山(駿河太郎)の爆死はひどい(;_;)さすが韓国映画。
岡田准一も綾野剛も素晴らしいアクション、演技だったし(綾野剛はキレたキャラ怖うまい)、他の役者さんも安定して素晴らしい。確かな人ばかり揃えているのだから良い作品になる未来しか見えない。監督もいい。
「実は」に次ぐ「実は」で面白かった。だけに、ラストのしつこさは冗長というもの。墓場のシーンで終わっときゃいいものを、サスペンス寄りのスリラー…いや、ホラーかよ!と。
というわけで、原作の韓国版を観てみる。
★★★★(★)
制作 ROBOT
配給 東宝
韓国映画『最後まで行く』(邦題/原題『끝까지 간다』=クッカジ カンダ)
監督 キム・ソンフン
脚本 キム・ソンフン、イ・ヘジュン、チェ・クァンヨン、チャン・ハンジュン
母親の葬儀の日、内部監査が入り焦りの只中にいる殺人課の刑事コ・ゴンス(イ・ソンギュン)は男を撥ねてしまう。息をしてない。巡回パトカーも近づいてくる。物陰に隠れやり過ごし、遺体をトランクへ詰めて、飲酒検問もどうにか逃れ、妹夫婦が仕切る葬儀場へ急ぐ。同僚らもやってきて遺体の処理に苦戦しながらもなんとか葬儀を終える。しかしそれから謎の人物から脅迫と遺体引き渡し要求の電話がかかるようになる。いったい誰なのか、なぜ遺体が必要なのか、遺体の男は何者なのか、が明らかになっていく…。
事件全容判明〜解決にかかる日数も違うし、韓国版の方が無駄がなく、複雑さもなく動機が簡単、すっきりまとまってラストも締め方がいい。ただ、韓国の俳優を知らないのでどれだけ実力のある人なのかわからない。だからか、キャラクターは日本版の方がしっくりハマる気がする。特に相対する刑事パク・チョンミン(チョ・ジヌン)のサイコパス具合が綾野剛の方がしっくりくる。
始まりは同じだし、遺体の処分も同じ(韓国は土葬なのね)。遺体の重要性はアイテムにあり、そのアイテムが違うが、狙うお宝は同じ。ただ、日本版ではお宝を入手損ねる。それもスッキリしない点かもしれない。
男を撥ねるきっかけになるものが本作では飼い犬、日本版では彼女だった。ここですでに話が簡略化される。ゴンスは離婚しており娘は妹夫婦が面倒をみてくれている。日本版ではまだだ。ここでも話が簡略化される。ただ、亡母に恋人がいた話は余計かな。
同僚のサンホの殺され方も、爆破で湖に沈んだはずのパクが現れるくだりも、娘を人質にする点も(韓国版は匂わせのみ)同じだった。
★★★★(★)
ついでにNetflix配信のフランス版も観てみた。
『レストレス』(2022)Netflixフランス版
原題は『Sans Repit』
監督・脚本 レジス・ブロンドゥ
原作に忠実で時間も1時間半ちょっとでけっこう簡略化されてて無駄がない。主人公ブラン・トーマス(フランク・ガスタンビドゥ)と麻薬課長マレリ(シモン・アブカリアン)の爆弾を仕掛けての格闘が原作、日本版と比べ、一番自然だった。あとサイコパス認定がちゃんとされててわかりやすい。サスペンスアクションを楽しむならこれが一番かもしれない。
3本観てみて、やはり日本人は細かいなと思った。登場人物の関係性に説得力を出すため脇にもドラマを入れようとする。テーマ的には必要ない。ただ、同じ人種なので感情面の演技は一番良かった。
人種といえば、フランスも大陸にあり多民族だからか、有色人種を使っている。20年後、日本映画もそうなったりして。
★★★★